歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

文字の大きさ
8 / 50
『認められた皇女』

しおりを挟む

(他所から来たから、知らないことだらけなのでしょうけど、そんなのが母親だから皇帝が中々皇太子にできないなんて思わないみたいね。一番足を引っ張っているのは、彼女のやっていることだというのに)


そんなことを思いながら、その話を聞いて、こう言った。


「……そう、気を遣わせてしまったのね」
「皇子は、とても良い方ですよ。皇女殿下と同じく、何でも一生懸命で、ご自分も休みを取らずにいたようで、最近おやつを食べることを始めたのだとか。和気藹々としておられて、あちらの侍従が、そんなことを申しておりました」


ズールイは、そんなことを言った。きっと、母親とは全然違うと言いたいのだろう。


「そう、あちらの侍従とは、あなたはここに入った時からの仲だったわね」
「はい。あー、あれは、気を抜いて要領よく生きるのが上手いので、皇子が毒されないかが心配なのですが、良い面を引き出すのも上手いようです」


ズールイの言葉に心配しながらも褒めたが、ディェリンは……。


(皇子が、何かにそんなにすぐに染まるなら、それだけのことよ)


それを言葉にせずに別のことを言った。


「そう、面白そうね。わかった。休憩にするわ」


それにズールイは、言い過ぎたと思ったようだが、面白そうだと言うのに苦笑した。

ジュエランは、ディェリンが休憩することに喜んで、すぐにお茶を準備させるとはりきった。

物心ついた後から、皇子は朝と夕にきちんと挨拶にディェリンのところに来ている。でも、扉越しでの挨拶で、決して会おうとしなかった。


(てっきり会いたくないものと思っていたけど)


年も近いから、皇子はディェリンの顔を見るのを遠慮していたことを知って、そこから部屋に入っていいと言うようになった。

だが、対面を避けた挨拶のみにしたいと言われ、他に人がいても長居すれば、あらぬことを言われかねないと言うのだ。それを聞いて、母親越しに兄皇子を見てしまっていたとは思った。

そして、今回のことだ。周りの評判を地道に上げることにしたのかも知れない。


(母親があぁだから、そう見せることで見える景色を少しでも良くしようとしているのかしらね。それとも、ただ本当に兄妹だから気遣っているだけなのか。わからないわね)


ディェリンは対面した会ったことがないため、何を思ってやっているのかが、いまいちわからなかった。

疑いたくないが、彼の母親も上手く隠せばいいのだ。それをやる気がないのを利用している可能性がある。どんな粗悪なものでも、使い道はある。

ディェリンは、そんなことまで考えたくなかったが、皇子の母親とやり合うのにそれも必要になりそうで、これを活かすことにした。


「皇子のところに遣いを」
「皇女殿下?」


ズールイは、いきなりのことに驚いた。今まで、皇子のところに遣いなど出したことがないのだ。


「外で花見をしながら、頂いたお菓子を食すから、ご一緒したいとお伝えして」
「っ、」
「急だから、駄目ならいいの。断られたら別の日にする。そうね。丁度、私の庭は見頃だから、ここに呼んでみて」
「わかりました!」


いつも、見頃なのだが、丁度いいとばからにした。それを聞いて、ズールイが大慌てで皇子のところに行った。

ジュエランは、ディェリンの側にすぐに寄って来た。


「皇女殿下」
「花見の準備を庭にして」
「すぐに準備いたします」
「それと毒見をしておいて」
「済ませております。全てのものを確認をしましたが、毒の反応はありません。毒見も済ませてありますが、今のところ問題なさそうです」


皇子からしてジュエランも、それを気にしたようだ。


(全く、嫌なところよね。腹違いの兄のやることなすことに疑を持つなんて。でも、あの女の息子だし、いつそちらに落ちるかわからない。そんなのに巻き込まれたくないけど、今は仲良くしていて損はないでしょ。他に弟もいないんだし)


ディェリンは、側妃の何人かは、懐妊中だと聞いていた。全員、生まれるのは男だと思っていた。

だって、皇女は既にいるのだ。必要ない。

それに皇女が生まれたとわかったら、皇子の母のことは言えないほど暴れる自信しかなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖なる森と月の乙女

小春日和
恋愛
ティアリーゼは皇太子であるアルフレッドの幼馴染で婚約者候補の1人。趣味である薬草を愛でつつ、アルフレッドを幸せにしてくれる、アルフレッドの唯一の人を探して、令嬢方の人間観察に励むことを趣味としている。 これは皇太子殿下の幸せ至上主義である公爵令嬢と、そんな公爵令嬢の手綱を握る皇太子殿下の恋物語。

【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~

吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。 ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。 幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。 仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。 精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。 ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。 侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。 当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!? 本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。 +番外編があります。 11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。 11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。

変人令息は悪女を憎む

くきの助
恋愛
「ブリジット=バールトン。あなたを愛する事はない。」 ああ、ようやく言えた。 目の前の彼女は14歳にしてこれが二度目の結婚。 こんなあどけない顔をしてとんでもない悪女なのだ。 私もそのことを知った時には腹も立ったものだが、こちらにも利がある結婚だと割り切ることにした。 「当初話した通り2年間の契約婚だ。離婚後は十分な慰謝料も払おう。ただ、白い結婚などと主張されてはこちらも面倒だ。一晩だけ付き合ってもらうよ。」 初夜だというのに腹立たしい気持ちだ。 私だって悪女と知る前は契約なんて結ぶ気はなかった。 政略といえど大事にしようと思っていたんだ。 なのになぜこんな事になったのか。 それは半年ほど前に遡る。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

恋が温まるまで

yuzu
恋愛
 失恋を引きずる32歳OLの美亜。 営業課のイケメン田上の別れ話をうっかり立ち聞きしてしまう。 自分とは人種が違うからと、避けようとする美亜に田上は好意を寄せて……。

お城のお針子~キラふわな仕事だと思ってたのになんか違った!~

おきょう
恋愛
突然の婚約破棄をされてから一年半。元婚約者はもう結婚し、子供まで出来たというのに、エリーはまだ立ち直れずにモヤモヤとした日々を過ごしていた。 そんなエリーの元に降ってきたのは、城からの針子としての就職案内。この鬱々とした毎日から離れられるならと行くことに決めたが、待っていたのは兵が破いた訓練着の修繕の仕事だった。 「可愛いドレスが作りたかったのに!」とがっかりしつつ、エリーは汗臭く泥臭い訓練着を一心不乱に縫いまくる。 いつかキラキラふわふわなドレスを作れることを夢見つつ。 ※他サイトに掲載していたものの改稿版になります。

毒姫ライラは今日も生きている

木崎優
恋愛
エイシュケル王国第二王女ライラ。 だけど私をそう呼ぶ人はいない。毒姫ライラ、それは私を示す名だ。 ひっそりと森で暮らす私はこの国において毒にも等しく、王女として扱われることはなかった。 そんな私に、十六歳にして初めて、王女としての役割が与えられた。 それは、王様が愛するお姫様の代わりに、暴君と呼ばれる皇帝に嫁ぐこと。 「これは王命だ。王女としての責務を果たせ」 暴君のもとに愛しいお姫様を嫁がせたくない王様。 「どうしてもいやだったら、代わってあげるわ」 暴君のもとに嫁ぎたいお姫様。 「お前を妃に迎える気はない」 そして私を認めない暴君。 三者三様の彼らのもとで私がするべきことは一つだけ。 「頑張って死んでまいります!」 ――そのはずが、何故だか死ぬ気配がありません。

アクアリネアへようこそ

みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。 家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!? 可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ! やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。 私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ! 働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。

処理中です...