歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

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『認められた皇女』

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「どうぞ」
「い、頂きます」


皇子は、お茶を淹れてもらえるとわかって益々緊張してしまったようだ。ずっと吃っている。


(初々しいのよね。それに私が淹れたからって、毒の心配もしないなんて将来が心配だわ)


ディェリンは、どうにも演技をしているようには見えなかった。むしろ、兄が年下の弟のように見えてならなかった。


「っ、美味しい!」
「お口にあって、よかった。こちらは、皇子の侍従に」
「へ? わ、私ですか?」
「えぇ、おやつを皇子に教えたのは、あなただとズールイに聞きました。とても良いですね。私も真似ることにします」


にっこりと言えば、照れた。こちらも、わかりやすい性格のようだ。皇子の侍従として大丈夫なのかと思ってしまうレベルだった。


「っ、い、いえ、そんな」
「どうぞ。良いことを教えてくれたお礼です」
「ありがたき幸せ。いただきます!」


ズールイは、それを羨ましそうに見た。そんな顔を隠しもしないところが、彼だ。ディェリンは、それをどうにかしろとは言わない。丁度良いと思うだけだ。

そして、皇子の侍従はそれを羨ましいだろうという顔をしなかった。申しわけなさそうにしたのだ。


(良い友ね)


ここで、羨ましいだろうと言わんばかりにしていたら、ディェリンは今後のことを考えていたが、そこまでしなくてよさそうだ。


「ズールイ。あなたにも」
「わ、私にも?」
「良い友を持っているわね。そのおかげで、こうして皇子と花見ができた。ありがとう」
「そ、そんな、滅相もありません。お役に立てたのであれば、それだけで私は幸せです」
「あら、じゃあ、いらないのね」
「いえ、いただきます!」
「「っ」」


それに皇子と彼の侍従が笑っていた。他の者たちも、楽しそうにしていた。


(良い人たちの集まりになったわね。……私の心だけが、濁っているようで、物凄く嫌だわ)


お菓子を食べたが、それはとても美味しかった。


(優しい味。……私のために作ってくれたのね。それを毒の心配をしたり、こうして疑ってしまっている。後宮とは、恐ろしいところだわ)


その日から、皇子が朝と夕に挨拶に来ても、扉越しではなく、きちんと挨拶してくれるようになった。

そのたび、ディェリンはにっこりと微笑み続けた。

何なら、他の側妃たちも、しばらくしてディェリンの庭に呼んで、楽しくお茶をするまでになった。一片に呼んでも、話をするのが難しくなるから、後宮に来た順に呼んだ。

身分で呼ぶと面倒なことになったからだ。ただ、どうしても参加ができなかった者は次の時に呼ぶことにした。

流石に皇子を最初に呼んだ時のような急なことはしなかった。ディェリンが開くとなれば、側妃のほとんどが集まった。そこに皇子が常に参加していた。彼には側妃たちと仲良くしてほしかった。

実母があんなんだからだ。

そして、毎回来なかったのは、皇子の実の母だけだった。


「母が申し訳ありません」
「あなたが謝ることではありません」
「ですが……」


何度目になるだろうか。彼の母親の席を毎回作ったまま訪れないことが、気になったのだろう。皇子が、何とも言えない顔をして謝罪した後に尋ねてきた。


「なぜ、席を?」
「恐れながら、出欠の返事をいただいたことがないのです」


ディェリンの女官であるジュエランが、そう言うと皇子は目を丸くしていた。


「え? ない??」
「はい。今まで一度も、お返事がありません」
「っ!?」


皇子は、それに顔を真っ青にさせた。他の側妃たちも、眉を顰めずにはいられなかった。


「何だ。私だけかと思っておりました」
「私もです」
「え?」


側妃たちも、同じく無視されているようで、益々皇子の顔色は悪くなった。

それでも、そこから数年して今は皇太子となり、それに準じて、そのありえないことばかりをしていた側妃が皇妃となった。他に皇女どころか、皇男も生まれなかったからだ。

側妃たちが妊娠したと報告があっても、無事に生まれなかった。それが続くうちに皇帝は、皇子を皇太子にすることにしたのは、後ろ暗い噂が流れ始めていたからだ。

皇子の母親が、妊娠している側妃たちを堕胎させるべく画策して動いたと。

本当かどうかわからないが、流産した知らせを喜んでいるらしく、ディェリンの後に生まれた側妃の時も、裏で手を回していたのではと言われている。

そんなのを皇妃にしたくはないが、息子が皇太子となれば、恐ろしいことをやめると思ったようだ。

それに生まれる前の子供たちだけでなく、ディェリンにまで何かしたら、困ると思ったのもあったようだ。

一応は、皇妃となる試験に合格したと言われているが、昔と変わったところがあるとしたら、態度が益々大きくなったくらいで、この大国のことをきちんと学んだようには思えなかったことだ。


(あれで、合格したなんて、どうしても思えないけど。でも、陛下が決めたことだもの)


その辺もディェリンには口出しできたがしなかった。皇妃の仕事も、引き継ぐに値しないからとやらせないことをディェリンはしなかった。

それこそ、それをしていたら、今度こそディェリンの命を狙い始めただろう。


(できると言うなら、やってみればいい。それで、皇太子がどう動くかで、私がどう動くかを決めればいい)


何より、こんな皇妃が大国で、誕生してしまったのだ。それによって、殺されかけることはなくなったようで、じわじわとディェリンが疲れる日々が、自然と増えていって、いつしか危うい状態となっていたことに誰も気づいていなかった。

それは、当の本人も、そこまでとは思っていなかった。そこに母との約束が関係しているとは、思いもしなかった。


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