17 / 50
『認められた皇女』
13
しおりを挟むあまりにも間抜けすぎるというか、お粗末すぎる。どこかの子息にディェリンの側に近寄るに近寄れなかった歳の近い男子たちは、それで一気に抜けた感じがする。
(ここにいるのは、みんないざとなると助けてはくれない人ばかりね。さっき、いたのは、少しは見込みがありそうだったけど、もういなくなってしまった。私に興味がないのね)
普段は、男子の学び舎に来ている時は幼なじみと言えなくもない子息が、常にディェリンの側にいた。
でも、そのせいで話しかけてもらえないと思って離した途端、これだ。どうして今日に限って、変なのに遭遇してしまったのか。
見計らったかのようにその人物はやって来た。ここに来るまで慌てて来たようだが、武官になるべく日々の鍛錬に勤しんでいると言っていたはずなのに遠くで息を整えているのが見える。
(そこで、一旦休憩するのね)
ディェリンの見えないところで、休憩してほしいところだ。皇太子の方は、彼の兄が側にいるらしいが、昔は弟の方が将来有望みたいに彼らの父は言っていたが、最近はそれを聞かなくなった。
こういうところだろうなとその残念さを見ながら、ようやく息が整って何気なく身だしなみを整えてから現れた。
この男は、いざとなったら、ディェリンの危険に身なりを気にして現れることがわかった。とても残念でならない。
(まぁ、元々期待してもいないけど)
周りは気づかずともディェリンにはよくわかった。彼にしては大慌てでここまで来たが、身体が訛りすぎて辛かったのだ。護衛を目指しているはずなのにおかしな話だ。
長い付き合いなこともあり、マジマジと観察しなくともわかる。ディェリンの護衛になって、訓練も鍛錬も怠っているのだ。
なのに側にいて、口やかましいことしか言わないのだから、煩わしくもなる。
彼がやって来るなり、こう言った。
「皇女殿下。このようなところで、いかがなさいましたか?」
「……」
「へ? こんなのが……?」
どの口がと思っていたら、別のところから聞き捨てならないことを言われた。
(こいつら、何なの?)
その反応から、無礼にも一方的に話しかけていた子息は、本当に知らなかったのだろうことは、ディェリンでなくともわかった。
知っていてやったなら、それをきっかけにお近づきになるのかも知れないが、そんなことを目論む子息が、婚約破棄の撤回をしてくれとは言わないはずだ。
そして、幼なじみのような方の態度にもイラッとした。
でも、それよりも、初対面の子息だ。
(ここで、そんなこと言うなんて、どれだけ無知なのかしらね。ここにいられる女性なんて、皇女の私しかいないのに何も知らないのね)
残念なインパクトしかない。それこそ、婚約者だった女性の顔すら知らないなんて、間抜けすぎる。
(……あれ? そうか。顔を知らないってことになるのか。よく婚約していたものね)
ディェリンは、そこに行き着いてしまっていた。元婚約者に破棄の撤回をしてもらいたいはずなのに、その相手のことをまるで知らないのだということに気づいた。どうやら、目の前の子息の思考にびっくりし過ぎて、ディェリンまでも間抜になってしまったようだ。
それなのにこの態度でいられるのだ。こんな息子のいる家は、一体何をしているのだろうか? こんなのを野放しにしておく方が、どうかしている。
そんなことを思っていると……。
「この者は?」
「っ、」
ギロッとあとから来た男子生徒は、無礼な子息を睨みつけながら、ディェリンに尋ねてきた。
そんなことをしてきた彼の名前は、ユーシュエン。ディェリンとは同じ年で、彼の父親がディェリンの父の護衛長を務めている。
彼も、護衛となるために日々鍛錬していたはずだが、先ほどのを見ていると違うようだ。同じ年なこともあり、学び舎では何かとディェリンの側にいようとした。同じ年なこともあり、幼なじみのようなものだとしても、ディェリンにはそこが問題だらけだった。
そんな彼をディェリンは煩わしく思っていた。学び舎にいる時くらい、他の人と話がしたい。各々の時間を大切にしようと言って、1人でうろちょろしていたら、これだ。
こんなことになるとは、思っていなかった。ユーシュエンは、実父に叱られるだろうが、先ほどの行動を見るからには叱られておいた方がいいだろう。
ディェリンが、そうしてくれと言ったから、こうなっているとしても、万が一の時にあんな休憩挟む護衛なんていらない。
(私には花影がいるからいいのだけど)
27
あなたにおすすめの小説
アクアリネアへようこそ
みるくてぃー
恋愛
突如両親を亡くしたショックで前世の記憶を取り戻した私、リネア・アージェント。
家では叔母からの嫌味に耐え、学園では悪役令嬢の妹して蔑まれ、おまけに齢(よわい)70歳のお爺ちゃんと婚約ですって!?
可愛い妹を残してお嫁になんて行けないわけないでしょ!
やがて流れ着いた先で小さな定食屋をはじめるも、いつしか村全体を巻き込む一大観光事業に駆り出される。
私はただ可愛い妹と暖かな暮らしがしたいだけなのよ!
働く女の子が頑張る物語。お仕事シリーズの第三弾、食と観光の町アクアリネアへようこそ。
【完結】呪いのせいで無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになりました。
里海慧
恋愛
わたくしが愛してやまない婚約者ライオネル様は、どうやらわたくしを嫌っているようだ。
でもそんなクールなライオネル様も素敵ですわ——!!
超前向きすぎる伯爵令嬢ハーミリアには、ハイスペイケメンの婚約者ライオネルがいる。
しかしライオネルはいつもハーミリアにはそっけなく冷たい態度だった。
ところがある日、突然ハーミリアの歯が強烈に痛み口も聞けなくなってしまった。
いつもなら一方的に話しかけるのに、無言のまま過ごしていると婚約者の様子がおかしくなり——?
明るく楽しいラブコメ風です!
頭を空っぽにして、ゆるい感じで読んでいただけると嬉しいです★
※激甘注意 お砂糖吐きたい人だけ呼んでください。
※2022.12.13 女性向けHOTランキング1位になりました!!
みなさまの応援のおかげです。本当にありがとうございます(*´꒳`*)
※タイトル変更しました。
旧タイトル『歯が痛すぎて無言になったら、冷たかった婚約者が溺愛モードになった件』
冷徹宰相様の嫁探し
菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。
その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。
マレーヌは思う。
いやいやいやっ。
私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!?
実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。
(「小説家になろう」でも公開しています)
一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む
浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。
「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」
一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。
傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語
【完結】精霊姫は魔王陛下のかごの中~実家から独立して生きてこうと思ったら就職先の王子様にとろとろに甘やかされています~
吉武 止少
恋愛
ソフィアは小さい頃から孤独な生活を送ってきた。どれほど努力をしても妹ばかりが溺愛され、ないがしろにされる毎日。
ある日「修道院に入れ」と言われたソフィアはついに我慢の限界を迎え、実家を逃げ出す決意を固める。
幼い頃から精霊に愛されてきたソフィアは、祖母のような“精霊の御子”として監視下に置かれないよう身許を隠して王都へ向かう。
仕事を探す中で彼女が出会ったのは、卓越した剣技と鋭利な美貌によって『魔王』と恐れられる第二王子エルネストだった。
精霊に悪戯される体質のエルネストはそれが原因の不調に苦しんでいた。見かねたソフィアは自分がやったとバレないようこっそり精霊を追い払ってあげる。
ソフィアの正体に違和感を覚えたエルネストは監視の意味もかねて彼女に仕事を持ち掛ける。
侍女として雇われると思っていたのに、エルネストが意中の女性を射止めるための『練習相手』にされてしまう。
当て馬扱いかと思っていたが、恋人ごっこをしていくうちにお互いの距離がどんどん縮まっていってーー!?
本編は全42話。執筆を終えており、投稿予約も済ませています。完結保証。
+番外編があります。
11/17 HOTランキング女性向け第2位達成。
11/18~20 HOTランキング女性向け第1位達成。応援ありがとうございます。
変人令息は悪女を憎む
くきの助
恋愛
「ブリジット=バールトン。あなたを愛する事はない。」
ああ、ようやく言えた。
目の前の彼女は14歳にしてこれが二度目の結婚。
こんなあどけない顔をしてとんでもない悪女なのだ。
私もそのことを知った時には腹も立ったものだが、こちらにも利がある結婚だと割り切ることにした。
「当初話した通り2年間の契約婚だ。離婚後は十分な慰謝料も払おう。ただ、白い結婚などと主張されてはこちらも面倒だ。一晩だけ付き合ってもらうよ。」
初夜だというのに腹立たしい気持ちだ。
私だって悪女と知る前は契約なんて結ぶ気はなかった。
政略といえど大事にしようと思っていたんだ。
なのになぜこんな事になったのか。
それは半年ほど前に遡る。
隠された第四皇女
山田ランチ
恋愛
ギルベアト帝国。
帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。
皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。
ヒュー娼館の人々
ウィノラ(娼館で育った第四皇女)
アデリータ(女将、ウィノラの育ての親)
マイノ(アデリータの弟で護衛長)
ディアンヌ、ロラ(娼婦)
デルマ、イリーゼ(高級娼婦)
皇宮の人々
ライナー・フックス(公爵家嫡男)
バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人)
ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝)
ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長)
リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属)
オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟)
エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟)
セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃)
ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡)
幻の皇女(第四皇女、死産?)
アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補)
ロタリオ(ライナーの従者)
ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長)
レナード・ハーン(子爵令息)
リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女)
ローザ(リナの侍女、魔女)
※フェッチ
力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。
ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる