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『認められた皇女』
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しおりを挟む(花影視点)
幼い頃から、皇女を見守ってきた。
「お前は今日から、皇女の影となれ。ただし、言葉を交わすことを禁ずる」
「……」
「お前は、皇女をその命尽きるまで守ればいい」
「……承知しました」
皇帝にそう言われてから、守ってきた。
ずっと部屋に閉じこもっていて、勉強ばかりしていた。子供ながら、よく集中力が続くものと思って見ていた。
「あなたは、だぁれ?」
「っ、」
「そこにいるのでしょう?」
彼女は、存在に気づいていた。気配なんてさせていたつもりはないのに。
「……あなた、それがしごとなのね」
答えられないことがわかったのか。寂しそうにした。
なのにそれから、何かと話しかけられるようになった。
他愛無いことばかりだったが、答えられないのにそれでいいから聞き流してと皇女は、その日のことをぽつりぽつりと話した。
本当に他愛ないことばかりだったが、周りが思っていることと彼女が思っていることが違っていた。
それに気づいてしまってからは、周りの期待通りに思惑通りに動く彼女が、皇女であり続けようと必死に頑張っている彼女が、かつて幼い頃に自分が抱いたものと重なって見えた。
「お前は、人の影として生きよ」
そうあれと育てられた。それが役割なのだと教え込まれて育った。
この国を救った方の生まれ変わりのはずなのに。なぜ、彼女が、ここに囚われているのかが分からなかった。
だから、らしくないことをしてしまった。彼女が喜ぶかどうかもわからないが、花を摘んで机に飾った。
そわそわとして、やっぱりやめておけばよかったと思っていると。
「お前の取ってくれる花、私とても好きよ」
その言葉を聞けて嬉しくてたまらなかった。彼女が、本心からそう言ったのだ。
そこから、頑張り続ける彼女のために時折、花を生けた。彼女のために誂えられた庭で手入れされて咲くものではない。
自然にあるがままに咲く花を。囚われ続けている彼女に見せてあげたかった。
それなのに彼女は、皇女として、役目を与えられ閉じ込められたまま、逝こうとしている。
そこに現れた者に縋り付いた。
その方こそ、皇女が待ちわびた人だとまでは分からなかったが、ただ持って生まれた雰囲気が皇女に似ていた。
双子ではなく、同じ日に生まれた腹違いの姉妹のはずなのに。彼女は、私の知る皇女に似ていた。
彼女が、皇女の幸せを願ってくれるなら、安心できる。腕の中で、服を握りしめ続ける皇女に意識はないはずなのにその声を聞いて安心しているのがよくわかった。
彼女なら、救ってくれる。そのためなら、この命がどうなっても、かまわない。
そう思って疲れているわけでもないのに眠気に襲われた。
ただ、もう一度、皇女に名前を呼んでほしかった。元々、影として育ったから名前なんてなかった。
それがわかっていたかのように皇女は、名前を付けてくれた。その名前を彼女に呼んでもらえたら、それだけで幸せだ。
だって、その名を呼ぶ時に皇女は嬉しそうに笑ってくれる。
愛おしいと言わんばかりの顔をしてくれる。
それは無意識のようだが、それにつられて笑えるようになった。その顔を見てほしかった。
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