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『隠された皇女』
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しおりを挟む(ジンリー視点)
夫よりも先に帰ったリーシーは、部屋で勉強をしている。学び舎でできた友達がいい子たちのようで、通えずに店の手伝いをしているリーシーに今日の授業の写しを持って来てくれているのだ。
あの子は、友達を作るのが上手いようで何よりだ。平民だけでなく、貴族の娘までもが、リーシーと友達なのだから、驚かされるばかりだ。
身分など関係なく、困っている人を見過ごせない。
幼い頃から、教えたわけでもなく、あの子はそういう子供だった。
若干、打算的なものがあるのかと勘ぐってしまったが、皇女に幸せになってもらうのに負担を減らしたいという思いがある気がする。
後宮で皇女として暮らしているよりも、ここで暮らしている方が良かったと思うのは、いつの間にやら、困りごとをどうにかしていっていることだ。
私は、それを見て語り継がれる皇女とリーシーが重なって見えて仕方がない。
だからといって後宮で暮らしている皇女が、国を滅ぼす者だと決めつけることもできなかった。噂では、皇太子の母に苦労させられているようだ。
ズーウェイ様の娘なら、それもどうにかすることだろう。
そんなことを考えていたら、夫が何やらブツブツ言って店から帰って来た。珍しいことだった。厳ついから、そんな風にして歩いていたら、何人かが怖がって逃げたことだろう。
「お帰り。どうしたの?」
「リーシーが、小悪魔になりそうだ」
「え?」
何を言い出すのかと思えば、どこぞの貴族の兄弟に本気で気に入られているようで思わず、夫が娘にどっちが気に入ってるのかと聞いたら、選ばなきゃいけないのか取り返したことに夫とその兄弟は、固まったらしい。
しかも、リーシーは……。
「こうしていると楽しいし、凄く安心感があるから、私が選ぶより、選んでもらえたら、嬉しいな」
そう言って、珍しく頬を染めたのだとか。それを聞いて、私は目をパチクリさせた。
「どう気に入っているかを聞いてないから、そう答えただけよ。恋愛感情を含む好きなのか。それ以外で、気に入っているかでだいぶ違うわよ」
「だが、頬を染めてたぞ」
「どっちも、常連だから手放せないもの。リップサービスも必要なのよ。2人共、貴族なのでしょ?」
「あぁ、そういうことか」
夫は、妙に納得した。幼い頃から客商売をしていて、それを見聞きして来たのだ。
これから、街を良くする手助けをしてくれる文官と街の用心棒のようなことをしながら武官を目指している弟。
どちらとも、仲良くしておいて損はないのだ。店としても、リーシーの今後のためにも。
選んでくれたら嬉しいが、そちらと一緒になるとも言ってはいないのだ。
「……末恐ろしいな」
「何を言っているのよ。そもそも、あなたがリーシーの前でそんなこと聞くからいけないのよ」
「悪い」
だが、私は夫を叱りながらも、そんな兄弟に好かれたリーシーに何かあっても味方してくれる者が増えることを願わずにいられなかった。
見つからないままでいたいが、一生を隠し通せるとは思っていなかった。
それでも、この幸せが続く事を祈らずにいられなかった。どちらも、この国を救った皇女となってくれればいいのだ。
でも、そんな願いは叶うことはなかった。
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