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『隠された皇女』
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しおりを挟む店にしばらくぶりにあの身なりのよい若様が来た。お付きの人はジュンユーというらしく、そちらの方が、1人でここにふらっと現れることが増えていたから、2人で来たのを久しぶりに見たと思ってしまった。
ジュンユーの方は、婚約者がいるとかで、彼女への贈り物についてあれこれ聞かれることがリーシーは増えた。
(婚約者どころか。お付き合いもしてないのに聞かないでほしかったわ)
「おい、ジュンユー。なんで、彼女にそんなことを聞くんだ!」
「いや、彼女も、リーシーさんと同じぐらいなので」
「だからって、お前は……」
若様は、自分が中々来れなかった間に仲良くなっていることに怒っていた。仲良くするつもりはない。常連の相談に乗っていただけだ。
(する相手を間違えていたけど)
だが、リーシーがずっと言いたかったことを言葉にしたのは、相談したいのにできずに通い詰めてやっとそれを聞いて来た後だった。
「なら、私にしちゃ駄目ですよ」
「へ?」
ジュンユーは、散々通って聞き出したのに何を言い出すんだとばかりにした。
(これは、はっきりと言ってあげなきゃ駄目ね)
何気にやたらとここに通っているため、ジュンユーの婚約者はここに来ているのだ。彼の浮気相手ではないかと。でも、そのことをジュンユーは知らないのだ。
その辺の話を彼にはしないと彼女と誓ったが、リーシーにアドバイスを受けて買い物しようとしていることを阻止するために動くことにした。
(そんなことのためにここに通うなんて、あり得ない)
「よく知りもしない女のアドバイスに従って婚約者が買ってくれたものなんて、私なら欲しくないです」
「……そういうものか?」
「なら、婚約者の女性が、あなたへのプレゼントに男の方にプレゼントのアドバイスをもらったものを貰ったら、嬉しいですか? その方のオススメなのよ。なんて、言われても、持ち歩けますか?」
「……悪かった。自分で考える」
ようやくわかってくれたようだ。物凄く嫌そうな顔をして謝ってくれた。
「その方が、婚約者の方も喜びますよ。自分のために一生懸命に選んでくれたって」
「それが、彼女の好み似合わなかったら?」
「君のことを知るために今後のこともあるから、一緒に選びに行ってくれ。それか、君の喜んだ顔を見たいから、一緒に選ばせてくれとか?」
「……確かに彼女の喜んだところは、是非とも見たいな」
そう言ってニヤけている。その顔はここでしないでほしい。残念な顔にしか見えない。
(本当に世話のやける方だわ。ここに通ってアドバイスを聞くより、婚約者の方のところに通えば、変な心配をかけなかったのに)
それを彼は気づいていないのだ。婚約者の女性は、疑ったことを知られたくないとリーシーに言わないでと言って泣いていた。
しかも、ジュンユーが皇太子の護衛をしていて、いつも忙しいのだと言ったのをバッチリ聞いてしまったのだ。
(こうして、来るのを見ているとまさかとは思うけど、若様が皇太子じゃないわよね?)
そうだったら結構な頻度で通っていることになる。こんなところに通い詰めているのが、皇太子だとは思いたくない。
「? どうかしたか?」
「いえ、若様にも婚約者いるのかなと思って」
「ごほっ!?」
「っ、大丈夫ですか?!」
リーシーの言葉に器官に食べものが入ってしまったようだ。
(しまった。タイミングを間違えた)
「お、お前、いきなり、何なんだ」
「えっと、気になって……?」
「気になるのか?!」
「良かったですね。若様」
「えぇ、婚約者の方とは、是非ともお友達になりたいです」
「は?」
(お付き合いするの大変そうだから、並大抵の方じゃ無理そうだもの)
「若様、どんまい」
「お前、勘違いするな。恋愛感情はない。こいつの……、兄みたいなもんだ」
「はぁ、それなら、いらっしゃるじゃないですか」
「あれは……」
「え? そうなんですか?」
「っ、勘定を頼む」
「あ、はい」
若様は、妹のことを話したくなかったようでジュンユーの顔色が悪くなった。
さっさと出て行ってしまい、リーシーは何とも言えない顔をした。
(これは、私が悪いのかな?)
「リーシーさん、ごめんな」
「いえ、こちらこそ、すみません」
「リーシーさんは悪くないよ。また、来る。今度は、婚約者を連れて来るから、友達になってやってくれないか?」
「え?」
「ひきこもり気味で、あまり外に出ないんだ」
「そうなんですね」
(なら、あの方、凄い頑張って、ここまで来たのね。愛されてるわね)
リーシーは、ジュンユーの婚約者が羨ましくなってしまった。
そのせいで、皇太子らしき人が、なぜここに通っているのかまで気にする余裕がなかった。
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