歴史から消された皇女〜2人の皇女の願いが叶うまで終われない〜

珠宮さくら

文字の大きさ
38 / 50
『隠された皇女』

14

しおりを挟む

店にしばらくぶりにあの身なりのよい若様が来た。お付きの人はジュンユーというらしく、そちらの方が、1人でここにふらっと現れることが増えていたから、2人で来たのを久しぶりに見たと思ってしまった。

ジュンユーの方は、婚約者がいるとかで、彼女への贈り物についてあれこれ聞かれることがリーシーは増えた。


(婚約者どころか。お付き合いもしてないのに聞かないでほしかったわ)


「おい、ジュンユー。なんで、彼女にそんなことを聞くんだ!」
「いや、彼女も、リーシーさんと同じぐらいなので」
「だからって、お前は……」


若様は、自分が中々来れなかった間に仲良くなっていることに怒っていた。仲良くするつもりはない。常連の相談に乗っていただけだ。


(する相手を間違えていたけど)


だが、リーシーがずっと言いたかったことを言葉にしたのは、相談したいのにできずに通い詰めてやっとそれを聞いて来た後だった。


「なら、私にしちゃ駄目ですよ」
「へ?」


ジュンユーは、散々通って聞き出したのに何を言い出すんだとばかりにした。


(これは、はっきりと言ってあげなきゃ駄目ね)


何気にやたらとここに通っているため、ジュンユーの婚約者はここに来ているのだ。彼の浮気相手ではないかと。でも、そのことをジュンユーは知らないのだ。

その辺の話を彼にはしないと彼女と誓ったが、リーシーにアドバイスを受けて買い物しようとしていることを阻止するために動くことにした。


(そんなことのためにここに通うなんて、あり得ない)


「よく知りもしない女のアドバイスに従って婚約者が買ってくれたものなんて、私なら欲しくないです」
「……そういうものか?」
「なら、婚約者の女性が、あなたへのプレゼントに男の方にプレゼントのアドバイスをもらったものを貰ったら、嬉しいですか? その方のオススメなのよ。なんて、言われても、持ち歩けますか?」
「……悪かった。自分で考える」


ようやくわかってくれたようだ。物凄く嫌そうな顔をして謝ってくれた。


「その方が、婚約者の方も喜びますよ。自分のために一生懸命に選んでくれたって」
「それが、彼女の好み似合わなかったら?」
「君のことを知るために今後のこともあるから、一緒に選びに行ってくれ。それか、君の喜んだ顔を見たいから、一緒に選ばせてくれとか?」
「……確かに彼女の喜んだところは、是非とも見たいな」


そう言ってニヤけている。その顔はここでしないでほしい。残念な顔にしか見えない。


(本当に世話のやける方だわ。ここに通ってアドバイスを聞くより、婚約者の方のところに通えば、変な心配をかけなかったのに)


それを彼は気づいていないのだ。婚約者の女性は、疑ったことを知られたくないとリーシーに言わないでと言って泣いていた。

しかも、ジュンユーが皇太子の護衛をしていて、いつも忙しいのだと言ったのをバッチリ聞いてしまったのだ。


(こうして、来るのを見ているとまさかとは思うけど、若様が皇太子じゃないわよね?)


そうだったら結構な頻度で通っていることになる。こんなところに通い詰めているのが、皇太子だとは思いたくない。


「? どうかしたか?」
「いえ、若様にも婚約者いるのかなと思って」
「ごほっ!?」
「っ、大丈夫ですか?!」


リーシーの言葉に器官に食べものが入ってしまったようだ。


(しまった。タイミングを間違えた)


「お、お前、いきなり、何なんだ」
「えっと、気になって……?」
「気になるのか?!」
「良かったですね。若様」
「えぇ、婚約者の方とは、是非ともお友達になりたいです」
「は?」


(お付き合いするの大変そうだから、並大抵の方じゃ無理そうだもの)


「若様、どんまい」
「お前、勘違いするな。恋愛感情はない。こいつの……、兄みたいなもんだ」
「はぁ、それなら、いらっしゃるじゃないですか」
「あれは……」
「え? そうなんですか?」
「っ、勘定を頼む」
「あ、はい」


若様は、妹のことを話したくなかったようでジュンユーの顔色が悪くなった。

さっさと出て行ってしまい、リーシーは何とも言えない顔をした。


(これは、私が悪いのかな?)


「リーシーさん、ごめんな」
「いえ、こちらこそ、すみません」
「リーシーさんは悪くないよ。また、来る。今度は、婚約者を連れて来るから、友達になってやってくれないか?」
「え?」
「ひきこもり気味で、あまり外に出ないんだ」
「そうなんですね」


(なら、あの方、凄い頑張って、ここまで来たのね。愛されてるわね)


リーシーは、ジュンユーの婚約者が羨ましくなってしまった。

そのせいで、皇太子らしき人が、なぜここに通っているのかまで気にする余裕がなかった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

置き去りにされた恋をもう一度

ともどーも
恋愛
「好きです。付き合ってください!」  大きな桜の木に花が咲き始めた頃、その木の下で、彼は真っ赤な顔をして告げてきた。  嬉しさに胸が熱くなり、なかなか返事ができなかった。その間、彼はまっすぐ緊張した面持ちで私を見ていた。そして、私が「はい」と答えると、お互い花が咲いたような笑顔で笑い合った。  中学校の卒業式の日だった……。  あ~……。くだらない。  脳味噌花畑の学生の恋愛ごっこだったわ。  全ての情熱を学生時代に置いてきた立花美咲(24)の前に、突然音信不通になった元カレ橘蓮(24)が現れた。  なぜ何も言わずに姿を消したのか。  蓮に起こったことを知り、美咲はあの頃に置き去りにした心を徐々に取り戻していく。 ──────────────────── 現時点でプロローグ+20話まで執筆ができていますが、まだ完結していません。 20話以降は不定期になると思います。 初の現代版の恋愛ストーリーなので、遅い執筆がさらに遅くなっていますが、必ず最後まで書き上げます! 少しでも楽しんでいただければ幸いです。

傾国の王女は孤独な第一王子を溺愛したい

あねもね
恋愛
傾国の王女と評判のオルディアレス王国の第一王女フィオリーナが、ラキメニア王国の第一王子、クロードに嫁ぐことになった。 しかし初夜にクロードから愛も華やかな結婚生活も期待しないでくれと言われる。第一王子でありながら王太子ではないクロードも訳ありのようで……。 少々口達者で、少々居丈高なフィオリーナが義母である王妃や使用人の嫌がらせ、貴族らの好奇な目を蹴散らしながら、クロードの心をもぎ取っていく物語。

聖なる森と月の乙女

小春日和
恋愛
ティアリーゼは皇太子であるアルフレッドの幼馴染で婚約者候補の1人。趣味である薬草を愛でつつ、アルフレッドを幸せにしてくれる、アルフレッドの唯一の人を探して、令嬢方の人間観察に励むことを趣味としている。 これは皇太子殿下の幸せ至上主義である公爵令嬢と、そんな公爵令嬢の手綱を握る皇太子殿下の恋物語。

【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで

白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。 ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。 程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが… 思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。 喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___  ※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)   異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》

婚約者を喪った私が、二度目の恋に落ちるまで。

緋田鞠
恋愛
【完結】若き公爵ジークムントは、結婚直前の婚約者を亡くしてから八年、独身を貫いていた。だが、公爵家存続の為、王命により、結婚する事になる。相手は、侯爵令嬢であるレニ。彼女もまた、婚約者を喪っていた。互いに亡くした婚約者を想いながら、形ばかりの夫婦になればいいと考えていたジークムント。しかし、レニと言葉を交わした事をきっかけに、彼女の過去に疑問を抱くようになり、次第に自分自身の過去と向き合っていく。亡くした恋人を慕い続ける事が、愛なのか?他の人と幸せになるのは、裏切りなのか?孤独な二人が、希望を持つまでの物語。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

【完結】赤い薔薇なんて、いらない。

花草青依
恋愛
婚約者であるニコラスに婚約の解消を促されたレイチェル。彼女はニコラスを愛しているがゆえに、それを拒否した。自己嫌悪に苛まれながらもレイチェルは、彼に想いを伝えようとするが・・・・・・。 ■《夢見る乙女のメモリアルシリーズ》1作目の外伝 ■拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』のスピンオフ作品。続編ではありません。 ■「第18回恋愛小説大賞」の参加作品です ■画像は生成AI(ChatGPT)

狂おしいほど愛しています、なのでよそへと嫁ぐことに致します

ちより
恋愛
 侯爵令嬢のカレンは分別のあるレディだ。頭の中では初恋のエル様のことでいっぱいになりながらも、一切そんな素振りは見せない徹底ぶりだ。  愛するエル様、神々しくも真面目で思いやりあふれるエル様、その残り香だけで胸いっぱいですわ。  頭の中は常にエル様一筋のカレンだが、家同士が決めた結婚で、公爵家に嫁ぐことになる。愛のない形だけの結婚と思っているのは自分だけで、実は誰よりも公爵様から愛されていることに気づかない。  公爵様からの溺愛に、不器用な恋心が反応したら大変で……両思いに慣れません。

処理中です...