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『隠された皇女』
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しおりを挟む(ジュンユー視点)
皇太子がとんでもないものを忘れたことから、おかしなことになった。いくら何でも、うっかりでは落とせないものだ。そのはずだ。
こうなることを見越したのか?……そんなわけないか。皇太子が、そこまで考えているとは、どうしても思えない。
そのせいで、関係ないはずのリーシーさんを巻き込んで、ここまで来てしまった。
いくら、皇太子が探している人だと思っていても、私にはそうは思えなかった。ただ、街で幸せに暮らしている。普通の娘にしか見えなかった。
街の人たちに慕われて、こことは全然違っていた。日々の祈りと感謝を見直すきっかけも、彼女だった。
「私は、皇女様に頼らない国になってほしいだけ。そうなれば、皇女様は幸せになれる」
「……」
そんなことを言うのは、私の周りには、彼女しかいなかった。
だから、街の困った人たちを助け続けていたのだ。
そんな彼女が、もう1人の皇女だとは、思えなかった。だって、彼女は皇女様を思っていた。誰よりも、思っている。そう感じた。
あれこれ考えているとたどり着いてしまった。
この先に皇帝陛下がいる。何なら父上もいるだろう。
……入りたくないな。
そんなことを考えていると走って来て汗をかいたリーシーが、顔を拭った。
「リーシーさん、……っ、!?」
大丈夫かと問いかけるようとしたら、見目麗しい女性がいた。
「何か?」
「いや、え? リーシーさん??」
「? そうですけど?」
「え? それ、化粧……?」
「あぁ、落ちてしまいました」
「落ちたってことは、素顔……?」
「そうです」
「っ!?」
素顔で、こんなにも美しい女性がいるとは思わなかった。
それにその顔は、どことなく皇女様に似て見えた。
「見惚れちゃ駄目」
「っ、」
「あなたには、運命の人がいるわ」
「っ!?」
そう言って、皇太子が中に入る許可を取っているのが遠くに聞こえた。
もう、父に叱られるなんて、どうでもよくなった。
「あなたは……」
「私は、私よ。ひた隠しにしてきただけで、中身は変わっていないわ」
そう言いながらも、雰囲気が既に別人になり始めている。リーシーさんであって、別の方だ。
これから起こることに感化されて、本来の彼女が現れ始めているようだった。その圧倒的な存在感に跪きたくなった。
皇女様を見ても、そこまでではなかったのに。彼女は、ずっと抑えていたものを出し惜しみをしなくなった気がする。
それを見て、泣きたくなった。
「あなたは……」
死ぬ気なのでは?
そう、言葉にしかけた。その目が、死地に行く者の目に見えた。
「あなたは、自分の役目を全うして。あんな大事なものをうっかり忘れる方だもの。あなたが、しっかりしてないと今日みたいにはならないわ」
「……そうですね」
それは、皇太子のことを頼むことだ。そう言われた気がした。
皇太子は中に入ることに必死で、そんなやり取りなんて見ても、聞いてもいなかった。
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