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第5話 絶対服従ゲーム
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暖房の効いた温かい部屋で、冷えたグレープソーダを全裸で飲む……始めは嫌だったけれど、こういうのもなかなか解放感があって良いかもしれない。
家では全裸です、というスタイルの人も普通にいるという。別に頼寿に見られようとどうってことないし、これなら服従ゲーム関係なくたまにやっても──
「タマちゃん、機嫌良さそうだな」
「へへ、誰かとゲームで遊んで白熱したの初めてなんだ。それに裸でいるのも慣れたっていうか、案外悪くないしさ。なんかこう、開放的でいい感じ」
「それは良かった」
飲み終わって空になったボトルをテーブルに置き、俺はソファに寄りかかり大きく深呼吸をした。
「……ん」
そしてふと、慣れ親しんだ生理現象に気付く。
「ちょっと」
「どこ行くんだ?」
「トイレトイレ。朝行ったきりだし一気にジュース飲んだから、急にしたくなったよ」
瞬間、頼寿の手が俺の腕を掴んで動きを止めた。
振り向いた先にあったのは、ついさっきゲームで遊んでいた時よりもずっと真剣な眼をした頼寿の無表情──尿意もあって、思わず背筋がゾクッとしてしまう。
「な、なに……?」
「ここでしろ、玉雪」
「え、えっ……?」
一瞬何のことを言われたのか分からず、俺は頼寿の無表情を二度見してしまった。ここでしろ。まさか、トイレをか。
「ちょ、──」
嫌だ、は言えない。言ったら俺の負けになる。ついでに文句も言ってはいけない。
頭の中が混乱し、俺はしどろもどろになりながら両手を合わせて頼寿に言った。
「ここでって? だって濡らしちゃったら、頼寿がお掃除するの大変じゃないかな? 迷惑かかっちゃいませんか? え? ていうか本当に、ここでおしっこしろってそのままの意味で言ってる?」
質問は拒否でも文句でもない。一応は「頼寿に迷惑がかかるといけない」という逃げ道を用意して、俺は続けた。
「フローリングならまだしも、カーペットだし洗濯大変じゃないかな?」
頼寿が無言で口元を弛め、テーブルに置いてあった空の500mlペットボトルを取る。
まさか──まさか、まさか!
「床に寝て股を開いてしろ。俺から目を逸らすなよ」
大きなソファの上で脚を組み、王のような笑みを浮かべている頼寿。その目はどこまでも冷たく、笑っているのにまるで感情というものが伺えない。
「玉雪」
「う、……ぅ」
これは服従ゲームで、俺が勝てば最高の明日が待っている。負ければ最悪。だから勝たなきゃならない──それなのに何故か俺は、「やらなきゃ」という脳の命令が服従ゲームの勝敗とは関係ない所から出されている気がしてならなかった。
「どうした? ギブアップか?」
「っ……」
射貫くような頼寿の目。穏やかな口調なのに恐ろしく低い声。
俺はぶるぶると頭を振り、震える手で頼寿からペットボトルを受け取った。
何で──嫌なら断ればいいのに。ゲームに負けたって死ぬわけじゃないのに。
どうして断れないんだ。
どうして俺は、普通に従おうとしてるんだ──。
家では全裸です、というスタイルの人も普通にいるという。別に頼寿に見られようとどうってことないし、これなら服従ゲーム関係なくたまにやっても──
「タマちゃん、機嫌良さそうだな」
「へへ、誰かとゲームで遊んで白熱したの初めてなんだ。それに裸でいるのも慣れたっていうか、案外悪くないしさ。なんかこう、開放的でいい感じ」
「それは良かった」
飲み終わって空になったボトルをテーブルに置き、俺はソファに寄りかかり大きく深呼吸をした。
「……ん」
そしてふと、慣れ親しんだ生理現象に気付く。
「ちょっと」
「どこ行くんだ?」
「トイレトイレ。朝行ったきりだし一気にジュース飲んだから、急にしたくなったよ」
瞬間、頼寿の手が俺の腕を掴んで動きを止めた。
振り向いた先にあったのは、ついさっきゲームで遊んでいた時よりもずっと真剣な眼をした頼寿の無表情──尿意もあって、思わず背筋がゾクッとしてしまう。
「な、なに……?」
「ここでしろ、玉雪」
「え、えっ……?」
一瞬何のことを言われたのか分からず、俺は頼寿の無表情を二度見してしまった。ここでしろ。まさか、トイレをか。
「ちょ、──」
嫌だ、は言えない。言ったら俺の負けになる。ついでに文句も言ってはいけない。
頭の中が混乱し、俺はしどろもどろになりながら両手を合わせて頼寿に言った。
「ここでって? だって濡らしちゃったら、頼寿がお掃除するの大変じゃないかな? 迷惑かかっちゃいませんか? え? ていうか本当に、ここでおしっこしろってそのままの意味で言ってる?」
質問は拒否でも文句でもない。一応は「頼寿に迷惑がかかるといけない」という逃げ道を用意して、俺は続けた。
「フローリングならまだしも、カーペットだし洗濯大変じゃないかな?」
頼寿が無言で口元を弛め、テーブルに置いてあった空の500mlペットボトルを取る。
まさか──まさか、まさか!
「床に寝て股を開いてしろ。俺から目を逸らすなよ」
大きなソファの上で脚を組み、王のような笑みを浮かべている頼寿。その目はどこまでも冷たく、笑っているのにまるで感情というものが伺えない。
「玉雪」
「う、……ぅ」
これは服従ゲームで、俺が勝てば最高の明日が待っている。負ければ最悪。だから勝たなきゃならない──それなのに何故か俺は、「やらなきゃ」という脳の命令が服従ゲームの勝敗とは関係ない所から出されている気がしてならなかった。
「どうした? ギブアップか?」
「っ……」
射貫くような頼寿の目。穏やかな口調なのに恐ろしく低い声。
俺はぶるぶると頭を振り、震える手で頼寿からペットボトルを受け取った。
何で──嫌なら断ればいいのに。ゲームに負けたって死ぬわけじゃないのに。
どうして断れないんだ。
どうして俺は、普通に従おうとしてるんだ──。
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