推しを擁護したくて何が悪い!

人生2929回血迷った人

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 日中の校舎裏。

 6月の上旬、梅雨入り前のこの時期は夏前だからといって暑くないわけでもなく気をつけなければ暑さで体調を崩したりする人も出てくるだろう。


 昨日は涼しかったが、今日は暑く、気温の寒暖差で体調を崩したのかクラスで一人や二人休みが出たりしている中、制服移行期間にも関わらず彩凪知晴は今日も例に漏れず冬服を選択した。

 彩凪知晴は夏でも半袖を着ない。

 もう少し暑くなれば夏服に長袖のカーディガンを着るが、肌を見せることは無い。



 そんな暑そうな格好をしながら知晴は校舎裏にいくつもある木の内の一つに登っていた。

 太陽は真上にあり、影の範囲は狭いがそこに収まるように校舎に身を寄せる小柄な生徒二人と陽の光など気にした様子の無いガタイのいい二人の生徒が見える。

 誰かを待っているようだ。

 そこへやって来たのは東條陽太。
 彼は約二ヶ月前に転入して来て、学園内を騒がせている話題の人だ。学園内に親衛隊というファンクラブのようなものまで持つ有名人達と悉く仲良くなっていってにも関わらず、本人はもっさりヘアーに瓶底メガネという清潔感なんて欠片の無い格好をしているのだ。
 憧れや好意を持って親衛隊に入った人達にとっては納得いかない状況だろう。

 せめてもう少し親衛隊への配慮があればこの状況も変わったかもしれないのに。

 陽太と影で日の光を避けていた二人の生徒は目が合い、じっと見つめあった後逸らした。

「会長様に近づかないでって言ったよね?」

 二人の小柄な生徒は生徒会長親衛隊の隊員だ。親衛隊が制裁をする時にお決まりで言う言葉を発する。

「生徒会の皆様と君は釣り合わない。だから、身を引けって。それなのに言うことは聞かないし呼び出しには応じるし僕達を舐めてるの!?」

 初めは冷静そうに話していた生徒は次第に怒りを見せ始め声を荒らげた。

「なんで!?なんでここに来たの!!!理事長の親戚だから僕達は手を出せないって?もしくは、目障りだから手を出させて退学にさせるつもり?」

「……え?だって呼び出したの君達だよね?何がいけないの?」

 転校生は危機管理が足りないのかそんなことを言う。これでは舐めていると捉えられても仕方がない。

「むっっっかつく!もうやっちゃって!!!」

 それを聞いたガタイのいい男二人は それぞれ陽太に殴りかかる。しかしその拳は空を切ることになる。陽太が小柄な体型を活かしながら素早く拳から逃げたからだ。

 男はこんなチビを相手にしてもすぐに片付いてしまうだろうと思っていただけに拳が空振りで終わったことに驚愕した。そして数瞬後、次の拳を振りかざす。

 東條陽太は弱くない。
 それは単純に喧嘩慣れをしているからだ。中学の頃は族の副リーダーをするくらいには夜の世界で暴力を奮っていた。

 しかしながらそんな陽太もガタイのいい男との2対1では不利らしく防戦一方だ。
 体力の限界か、次第に男達の拳が決まるようになってくる。

「何やってるの!?」

 この声が聞こえたのはそれほど酷くはないが、すぐ様保健室に連れて行った方がいいだろうくらいの怪我を負って、そろそろ陽太が一方的に殴られるようになりそうな頃合だった。

 声の主は鈴屋凛。
 俺の憧れの人………というより推しだ。
 生徒会長親衛隊隊長をしており、わがままぶりっ子なお坊ちゃんという評価で周りから嫌われている人だ。

 俺は手元にある一冊の本を見る。
 その本には今目の前で起こっている状況がそのまま文字に書き起こされている文章がある。これが何を意味しているかというとこの本は鈴屋凛を主人公とした小説であると同時に予言の書であるということだ。
 つまり俺が介入しない限りこの本の通りにことは進んでいく。そしてこの本の読者である俺は鈴谷凛が大好きなのだ。

 この本は俺の中学時代を支えてくれた。
 鈴谷凛は噂通りの人物ではない。とある事情で道化を演じているだけで実際はとても健気で良い子なのだ。
 理不尽な目に会いながらも学園の平穏を守る為風紀に頼らず見回りをしたり、親衛隊隊長の仕事を全うしたり、胸を打たれて仕方がなかった。

 凛が声をかけたことにより男達の攻撃の手が止まる。

「制裁は禁止って言ったよね。」

「た、隊長……。」

凛の目は真っ直ぐに親衛隊員の二人の生徒を見ていた。

 彼らはは凛が立場上禁止しなければならないが、内心は制裁をしたいと思っていると考えていた為、この展開は意外だった。

「転校生……えっと、陽太くん、僕の監督不行届きでこんな目に合わせてしまってごめんなさい。まずは保健室だよね。」

 凛は保健室に連れていこうと転校生に手を貸す。

「隊長!なんでそいつに謝るんですか!謝ったらまた調子乗って会長様から離れなくなるじゃないですか!」

 納得のいっていない親衛隊員の二人が凛を止めようとする。

「俺が会いに行ってるんじゃない!あいつらが俺のところに来てるんだ!」

 自分が生徒会役員達にくっついて回ってると思われるのがよほど嫌なのか転校生は否定する。

 それを聞いた親衛隊員は転校生の方へ近づく。

「そんなこと知ってる!」

 激昂した隊員は手を振りかざし転校生の頬へ命中する。


パチーーーン!!!


 人気の少ない校舎裏は静かでその音は周りに響く。

「陽太!!!」

そこへ間の悪いことにこの現状の元凶とも言える生徒会役員達がやってきた。

生徒会長に副会長に会計と、書記以外は揃ってしまっている。





 
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