3 / 11
三
しおりを挟む「知晴、これはどういう状況なんだ???」
校舎裏へ全速力で走ってきた高木宮澄晴は知晴に尋ねる。
それに対して知晴は「喧嘩。」としか答えない。
「け、喧嘩?知晴がか?」
「うん、勝ったけど。」
すると先程まで二、三m先で俯いて息を整えていた澄晴が知晴の目の前まで来て肩をがっしり掴む。
「怪我は?」
そう言いながら知晴の身体をチェックしようとするが、顔を殴られた形跡はなく身体は服で見えない。
「怪我はしてないよ。」
近いと澄晴の胸を手で押して遠ざける。
そして、首筋に垂れる汗を腕で拭った。
それを、澄晴がガン見していたのだが知晴は気づかない。
「暑いよな、とりあえず風紀室に移動するか。それから話は聞く。」
そう言った澄晴は一人で縛られた生徒会の3人を引きずって風紀室に向かった。
先程の会話中、ずっと3人は喚いていたが澄晴と知晴はずっとそれを無視しながら会話をしていた。そして、風紀室に向かって歩いている道中もそれは変わらないのであった。
「知晴は喧嘩強いんだな。生徒会の奴らに勝つなんて。」
風紀委員となると暴力を奮う場面も多いが、知晴は基本的に委員会活動時は澄晴と行動する。そして澄晴は危ない時、知晴を後ろに下がらせる為知晴は学園内で暴力を奮う機会がなかった。
「うん。」
実力を隠している訳では無い為、知晴はシンプルに頷く。
基本的に澄晴と知晴の会話は8:2くらいの割合で成り立っている。この2という割合も澄晴が知晴に対して質問したり興味持ちそうな話を話題に出したり、そんな努力によって成り立っていると言える。
「それにしても鈴谷凛と知り合いだったなんて驚いたよ。」
そう言った澄晴の目は知晴の手と繋がれた鈴谷凛の手を睨んでいた。
その澄晴の眼光に気づいた凛は慌てて話し出す。
「さっきも庇ってくれましたし知晴様は僕のこととってもお好きなんですね~!」
凛は澄晴に睨まれるのが嫌で否定して貰おうとわざとふざけたことを言った。
「うん、好き。」
のだが、凛の思惑とは真逆の返答を知晴がした為凛は澄晴にめちゃくちゃ睨まれる。
「あ、そ、そうなんですね~……。」
”そ、そこは否定しろよー!!!”
凛の内心はこれに尽きる。が、ストレートに好意を示されることのない凛は心臓がバクバク鳴っていることに気づきながらも無視をする。
少し汗ばんだ空いている方な掌で頬を触り、顔赤くなってるかも、と温度確認をする。
「凛の敵は僕の敵、だから凛は安心して。」
”隣!隣!あなたの隣に絶賛僕を敵視する人がいるんですけど!”と思いながら凛が澄晴の方を向くと彼はバッと明後日の方向を向いた。
そんな風に会話をしながら廊下を歩いていると風紀室に到着した。事務仕事などは基本的に放課後行う為、鍵を開けると部屋には誰もいない。
「よしじゃあ全員分の椅子はないが、そこの席に座ってくれ。」
澄晴は机を挟んで二人がけのソファが二つ置いてある場所を指さした。
それを聞くや否や知晴は内ひとつのソファに腰をかけ、隣に凛を座らせる。
「知晴、お前はそっちじゃ……」
「うるさい。」
「そ、そうか……。」
澄晴が「そっちじゃなくてこっち。」と、違うところから持ってきた椅子を二つのソファの横に置くが、ピシャリと言葉で遮られてしまう。
この二人の力関係が垣間見える一幕だっただろう。
学園の大多数の生徒から見た二人の関係性は澄晴が暴れて後ろに付いている知晴が宥めて落ち着かせるといったものの為、風紀室内にいる全員がとても驚いた。
後ろに付いているのは全部澄晴がやってくれるから楽だという理由だったり、宥めているわけではなく知晴が不機嫌になるのを察知した澄晴が自主的に落ち着いているのが実際のところだった。
「あの澄晴がしょんぼりしてるぞ!」
「あの風紀委員長の弱点は氷の女王だったんですね。」
「その弱点が強すぎてもはや弱点になってないけどね~。」
風紀室に連れてこられた生徒会の三人が澄晴について好き勝手言いまくる。既に拘束は解かれていて殴られて怪我したところを痛そうに摩っている。
「おいお前ら、話してないで座れよ。」
生徒会の三人はいつの間にか近くにいた澄晴にソファと椅子にそれぞれ座るよう背中を押された。
そうして話し合いの場が設けられたのだった。
澄晴は座ると「じゃあ何があったか教えてくれ。」と、視線を凛に向けながら言った。
「普通話って第三者かもしくは被害者から先に聞くんじゃないのかよ。」
凛のことが余程嫌いなのか生徒会長は初っ端から突っかかってくる。
「ああ、そうだな。じゃあこの件においての被害者は誰なんだ?」
澄晴がそういうと、会長、副会長、会計、転校生、そして凛が手を挙げる。凛は手を挙げたというよりも知晴が手を掴んで挙げているのだが。
「親衛隊長は被害者じゃねぇだろ!」
生徒会長は机から身を乗り出し知晴の胸ぐらを掴もうとするが、その手は澄晴に掴まれる。
「落ち着け。」
知晴に手を出されそうになった澄晴のその声は言葉の内容に反して怒気を孕んでいた。
それを聞いた会長は乗り出していた身を引いてソファに座り直す。
「凛は何も悪くないのにお前に殴られそうになってた。俺がいなかったら確実に殴られてたのに被害者じゃないってどういうこと?それと、お前らこそ被害者ぶってんじゃねぇよ。俺は殴られた……殴られそうになったから正当防衛で殴っただけなんだけど?その程度の怪我で喚いてんじゃねぇよ。」
「ち、知晴さん……?」
急に、態度と言葉遣いが変わり饒舌になった知晴に一同は吃驚する。特にこの中で一番長い付き合いである澄晴は驚きすぎて名前をさん付けで呼んでしまってる。
知晴はついにキレてしまった。
126
あなたにおすすめの小説
風紀委員長様は王道転校生がお嫌い
八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。
11/21 登場人物まとめを追加しました。
【第7回BL小説大賞エントリー中】
山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。
この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。
東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。
風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。
しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。
ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。
おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!?
そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。
何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから!
※11/12に10話加筆しています。
僕はただの平民なのに、やたら敵視されています
カシナシ
BL
僕はド田舎出身の定食屋の息子。貴族の学園に特待生枠で通っている。ちょっと光属性の魔法が使えるだけの平凡で善良な平民だ。
平民の肩身は狭いけれど、だんだん周りにも馴染んできた所。
真面目に勉強をしているだけなのに、何故か公爵令嬢に目をつけられてしまったようでーー?
Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。
それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。
友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!!
なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。
7/28
一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
腐男子ですが何か?
みーやん
BL
俺は田中玲央。何処にでもいる一般人。
ただ少し趣味が特殊で男と男がイチャコラしているのをみるのが大好きだってこと以外はね。
そんな俺は中学一年生の頃から密かに企んでいた計画がある。青藍学園。そう全寮制男子校へ入学することだ。しかし定番ながら学費がバカみたい高額だ。そこで特待生を狙うべく勉強に励んだ。
幸いにも俺にはすこぶる頭のいい姉がいたため、中学一年生からの成績は常にトップ。そのまま三年間走り切ったのだ。
そしてついに高校入試の試験。
見事特待生と首席をもぎとったのだ。
「さぁ!ここからが俺の人生の始まりだ!
って。え?
首席って…めっちゃ目立つくねぇ?!
やっちまったぁ!!」
この作品はごく普通の顔をした一般人に思えた田中玲央が実は隠れ美少年だということを知らずに腐男子を隠しながら学園生活を送る物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる