推しを擁護したくて何が悪い!

人生2929回血迷った人

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「知晴、これはどういう状況なんだ???」

 校舎裏へ全速力で走ってきた高木宮澄晴は知晴に尋ねる。

 それに対して知晴は「喧嘩。」としか答えない。

「け、喧嘩?知晴がか?」

「うん、勝ったけど。」

 すると先程まで二、三m先で俯いて息を整えていた澄晴が知晴の目の前まで来て肩をがっしり掴む。

「怪我は?」

 そう言いながら知晴の身体をチェックしようとするが、顔を殴られた形跡はなく身体は服で見えない。
 
「怪我はしてないよ。」

 近いと澄晴の胸を手で押して遠ざける。
 そして、首筋に垂れる汗を腕で拭った。

 それを、澄晴がガン見していたのだが知晴は気づかない。

「暑いよな、とりあえず風紀室に移動するか。それから話は聞く。」

そう言った澄晴は一人で縛られた生徒会の3人を引きずって風紀室に向かった。

 先程の会話中、ずっと3人は喚いていたが澄晴と知晴はずっとそれを無視しながら会話をしていた。そして、風紀室に向かって歩いている道中もそれは変わらないのであった。

「知晴は喧嘩強いんだな。生徒会の奴らに勝つなんて。」

 風紀委員となると暴力を奮う場面も多いが、知晴は基本的に委員会活動時は澄晴と行動する。そして澄晴は危ない時、知晴を後ろに下がらせる為知晴は学園内で暴力を奮う機会がなかった。

「うん。」

 実力を隠している訳では無い為、知晴はシンプルに頷く。
 
 基本的に澄晴と知晴の会話は8:2くらいの割合で成り立っている。この2という割合も澄晴が知晴に対して質問したり興味持ちそうな話を話題に出したり、そんな努力によって成り立っていると言える。

「それにしても鈴谷凛と知り合いだったなんて驚いたよ。」

 そう言った澄晴の目は知晴の手と繋がれた鈴谷凛の手を睨んでいた。

 その澄晴の眼光に気づいた凛は慌てて話し出す。

「さっきも庇ってくれましたし知晴様は僕のこととってもお好きなんですね~!」

 凛は澄晴に睨まれるのが嫌で否定して貰おうとわざとふざけたことを言った。

「うん、好き。」

 のだが、凛の思惑とは真逆の返答を知晴がした為凛は澄晴にめちゃくちゃ睨まれる。
 
「あ、そ、そうなんですね~……。」

 ”そ、そこは否定しろよー!!!”
 凛の内心はこれに尽きる。が、ストレートに好意を示されることのない凛は心臓がバクバク鳴っていることに気づきながらも無視をする。
 少し汗ばんだ空いている方な掌で頬を触り、顔赤くなってるかも、と温度確認をする。

「凛の敵は僕の敵、だから凛は安心して。」

 ”隣!隣!あなたの隣に絶賛僕を敵視する人がいるんですけど!”と思いながら凛が澄晴の方を向くと彼はバッと明後日の方向を向いた。

 
 そんな風に会話をしながら廊下を歩いていると風紀室に到着した。事務仕事などは基本的に放課後行う為、鍵を開けると部屋には誰もいない。

「よしじゃあ全員分の椅子はないが、そこの席に座ってくれ。」

 澄晴は机を挟んで二人がけのソファが二つ置いてある場所を指さした。
 それを聞くや否や知晴は内ひとつのソファに腰をかけ、隣に凛を座らせる。

「知晴、お前はそっちじゃ……」

「うるさい。」

「そ、そうか……。」

 澄晴が「そっちじゃなくてこっち。」と、違うところから持ってきた椅子を二つのソファの横に置くが、ピシャリと言葉で遮られてしまう。

 この二人の力関係が垣間見える一幕だっただろう。

 学園の大多数の生徒から見た二人の関係性は澄晴が暴れて後ろに付いている知晴が宥めて落ち着かせるといったものの為、風紀室内にいる全員がとても驚いた。

 後ろに付いているのは全部澄晴がやってくれるから楽だという理由だったり、宥めているわけではなく知晴が不機嫌になるのを察知した澄晴が自主的に落ち着いているのが実際のところだった。


「あの澄晴がしょんぼりしてるぞ!」

「あの風紀委員長の弱点は氷の女王だったんですね。」

「その弱点が強すぎてもはや弱点になってないけどね~。」

 風紀室に連れてこられた生徒会の三人が澄晴について好き勝手言いまくる。既に拘束は解かれていて殴られて怪我したところを痛そうに摩っている。

「おいお前ら、話してないで座れよ。」

 生徒会の三人はいつの間にか近くにいた澄晴にソファと椅子にそれぞれ座るよう背中を押された。


 そうして話し合いの場が設けられたのだった。


澄晴は座ると「じゃあ何があったか教えてくれ。」と、視線を凛に向けながら言った。

「普通話って第三者かもしくは被害者から先に聞くんじゃないのかよ。」

 凛のことが余程嫌いなのか生徒会長は初っ端から突っかかってくる。

「ああ、そうだな。じゃあこの件においての被害者は誰なんだ?」

 澄晴がそういうと、会長、副会長、会計、転校生、そして凛が手を挙げる。凛は手を挙げたというよりも知晴が手を掴んで挙げているのだが。

「親衛隊長は被害者じゃねぇだろ!」

 生徒会長は机から身を乗り出し知晴の胸ぐらを掴もうとするが、その手は澄晴に掴まれる。

「落ち着け。」

 知晴に手を出されそうになった澄晴のその声は言葉の内容に反して怒気を孕んでいた。
 それを聞いた会長は乗り出していた身を引いてソファに座り直す。

「凛は何も悪くないのにお前に殴られそうになってた。俺がいなかったら確実に殴られてたのに被害者じゃないってどういうこと?それと、お前らこそ被害者ぶってんじゃねぇよ。俺は殴られた……殴られそうになったから正当防衛で殴っただけなんだけど?その程度の怪我で喚いてんじゃねぇよ。」

「ち、知晴さん……?」

 急に、態度と言葉遣いが変わり饒舌になった知晴に一同は吃驚する。特にこの中で一番長い付き合いである澄晴は驚きすぎて名前をさん付けで呼んでしまってる。


 知晴はついにキレてしまった。







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