5 / 40
第5話
しおりを挟む
夕飯を食べ終えると、慎二はソファに座ってテレビを見ていた。
彼とこうやって暮らすのも、あと一週間か。
僕は、慎二の横顔を見つめながら思いを馳せていた。
「……那月? 一緒に見る?」
慎二が僕の方を向いたので、彼と目が合う。
いつもならすぐ自室に戻る僕が、リビングで突っ立っているのを見て、気にかかったんだろう。
普段なら、きっと断ってる。
距離が近づけば近づくほど、彼が僕のことを好きなんだと錯覚しそうになるから。
しかし、今日の僕は頷いた。
「って、俺と一緒は嫌だ……って、えっ!? マジで?」
慎二がゴニョゴニョと何かを呟いた後、唐突に大きな声を出したので、僕の肩はビクリと震えた。
大きな声や音は嫌いだ。特にいきなりだと怖い。でも、それはあまり表に出したくない。
「慎二が誘ってきたんじゃん……」
僕は、そのお世辞で誘ったような驚き方に不満げな顔を浮かべた。
一緒にテレビ見たがるのって、そんなに驚くこと?
「嫌なら部屋に戻りますけど?」
「いっ! 嫌じゃない、嫌じゃない!」
慎二は、僕が座るスペースを空けて、トントンとソファを叩いてくれた。
僕は「どーも」と、ソファに腰を下ろす。
ああ、僕今すごい嫌な態度取っちゃってる。
「今日はどうしたの?」
「えっ、どうって……?」
「いつも夕食終わったら、すぐ部屋に籠ってるから」
慎二は、僕を不思議そうに見つめてくる。
「それに、今日は朝からちょっと様子が変というかなんというか……」
今朝と言うのは、僕が佐々木さんを殴ったことだろうか。
いやその前、慎二に会いに行ったところからいつもの僕の行動とは違っただろう。
しかし、一度も番に抱いて貰えない発情期を過ごしたオメガが、その発情期明けにいつもと様子が違うのは、不思議なことではないだろう?
それなのに、なんて残酷なことを聞くんだろう?
口から恨み言が出てしまいそうだ。
「え? 今日そんなに変だった? 発情期明けでちょっと情緒不安定になってたかも」
「……ッ、そうか。体調には気を付けるんだよ」
発情期という単語を出すと、慎二が少し動揺した。
僕は昔、発情期に抱いて欲しいと慎二に、何度か頼んだことがあった。
しかし、僕はその全てを断られていた。
だから、その罪悪感があるのかもしれない。
「それよりも、那月は見たい番組ある?」
「いや、何でもいいよ」
露骨に話題を逸らされた。でも、僕もそっちの方が都合がいい。
それよりも、今日から思い出作りの一週間は始まっているんだ。今日は月曜日。つまり、六日後の日曜日までに、出来るだけ慎二との思い出を作る。
まず今日は、慎二と手が繋ぎたい。
彼とこうやって暮らすのも、あと一週間か。
僕は、慎二の横顔を見つめながら思いを馳せていた。
「……那月? 一緒に見る?」
慎二が僕の方を向いたので、彼と目が合う。
いつもならすぐ自室に戻る僕が、リビングで突っ立っているのを見て、気にかかったんだろう。
普段なら、きっと断ってる。
距離が近づけば近づくほど、彼が僕のことを好きなんだと錯覚しそうになるから。
しかし、今日の僕は頷いた。
「って、俺と一緒は嫌だ……って、えっ!? マジで?」
慎二がゴニョゴニョと何かを呟いた後、唐突に大きな声を出したので、僕の肩はビクリと震えた。
大きな声や音は嫌いだ。特にいきなりだと怖い。でも、それはあまり表に出したくない。
「慎二が誘ってきたんじゃん……」
僕は、そのお世辞で誘ったような驚き方に不満げな顔を浮かべた。
一緒にテレビ見たがるのって、そんなに驚くこと?
「嫌なら部屋に戻りますけど?」
「いっ! 嫌じゃない、嫌じゃない!」
慎二は、僕が座るスペースを空けて、トントンとソファを叩いてくれた。
僕は「どーも」と、ソファに腰を下ろす。
ああ、僕今すごい嫌な態度取っちゃってる。
「今日はどうしたの?」
「えっ、どうって……?」
「いつも夕食終わったら、すぐ部屋に籠ってるから」
慎二は、僕を不思議そうに見つめてくる。
「それに、今日は朝からちょっと様子が変というかなんというか……」
今朝と言うのは、僕が佐々木さんを殴ったことだろうか。
いやその前、慎二に会いに行ったところからいつもの僕の行動とは違っただろう。
しかし、一度も番に抱いて貰えない発情期を過ごしたオメガが、その発情期明けにいつもと様子が違うのは、不思議なことではないだろう?
それなのに、なんて残酷なことを聞くんだろう?
口から恨み言が出てしまいそうだ。
「え? 今日そんなに変だった? 発情期明けでちょっと情緒不安定になってたかも」
「……ッ、そうか。体調には気を付けるんだよ」
発情期という単語を出すと、慎二が少し動揺した。
僕は昔、発情期に抱いて欲しいと慎二に、何度か頼んだことがあった。
しかし、僕はその全てを断られていた。
だから、その罪悪感があるのかもしれない。
「それよりも、那月は見たい番組ある?」
「いや、何でもいいよ」
露骨に話題を逸らされた。でも、僕もそっちの方が都合がいい。
それよりも、今日から思い出作りの一週間は始まっているんだ。今日は月曜日。つまり、六日後の日曜日までに、出来るだけ慎二との思い出を作る。
まず今日は、慎二と手が繋ぎたい。
203
あなたにおすすめの小説
六年目の恋、もう一度手をつなぐ
高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。
順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。
「もう、おればっかりが好きなんやろか?」
馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。
そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。
嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き……
「そっちがその気なら、もういい!」
堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……?
倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
夫には好きな相手がいるようです。愛されない僕は針と糸で未来を縫い直します。
伊織
BL
裕福な呉服屋の三男・桐生千尋(きりゅう ちひろ)は、行商人の家の次男・相馬誠一(そうま せいいち)と結婚した。
子どもの頃に憧れていた相手との結婚だったけれど、誠一はほとんど笑わず、冷たい態度ばかり。
ある日、千尋は誠一宛てに届いた女性からの恋文を見つけてしまう。
――自分はただ、家からの援助目当てで選ばれただけなのか?
失望と涙の中で、千尋は気づく。
「誠一に頼らず、自分の力で生きてみたい」
針と糸を手に、幼い頃から得意だった裁縫を活かして、少しずつ自分の居場所を築き始める。
やがて町の人々に必要とされ、笑顔を取り戻していく千尋。
そんな千尋を見て、誠一の心もまた揺れ始めて――。
涙から始まる、すれ違い夫婦の再生と恋の物語。
※本作は明治時代初期~中期をイメージしていますが、BL作品としての物語性を重視し、史実とは異なる設定や表現があります。
※誤字脱字などお気づきの点があるかもしれませんが、温かい目で読んでいただければ嬉しいです。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
陰日向から愛を馳せるだけで
麻田
BL
あなたに、愛されたい人生だった…――
政略結婚で旦那様になったのは、幼い頃、王都で一目惚れした美しい銀髪の青年・ローレンだった。
結婚式の日、はじめて知った事実に心躍らせたが、ローレンは望んだ結婚ではなかった。
ローレンには、愛する幼馴染のアルファがいた。
自分は、ローレンの子孫を残すためにたまたま選ばれただけのオメガに過ぎない。
「好きになってもらいたい。」
…そんな願いは、僕の夢でしかなくて、現実には成り得ない。
それでも、一抹の期待が拭えない、哀れなセリ。
いつ、ローレンに捨てられてもいいように、準備はしてある。
結婚後、二年経っても子を成さない夫婦に、新しいオメガが宛がわれることが決まったその日から、ローレンとセリの間に変化が起こり始める…
―――例え叶わなくても、ずっと傍にいたかった…
陰日向から愛を馳せるだけで、よかった。
よかったはずなのに…
呼ぶことを許されない愛しい人の名前を心の中で何度も囁いて、今夜も僕は一人で眠る。
◇◇◇
片思いのすれ違い夫婦の話。ふんわり貴族設定。
二人が幸せに愛を伝えあえる日が来る日を願って…。
セリ (18)
南方育ち・黒髪・はしばみの瞳・オメガ・伯爵
ローレン(24)
北方育ち・銀髪・碧眼・アルファ・侯爵
◇◇◇
50話で完結となります。
お付き合いありがとうございました!
♡やエール、ご感想のおかげで最後まではしりきれました。
おまけエピソードをちょっぴり書いてますので、もう少しのんびりお付き合いいただけたら、嬉しいです◎
また次回作のオメガバースでお会いできる日を願っております…!
伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き
メグエム
BL
伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる