【完】100枚目の離婚届~僕のことを愛していないはずの夫が、何故か異常に優しい~

人生2929回血迷った人

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第12話

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「とりあえず、ベンチに座ろうか」

 慎二にそう言われ、僕らはさっきまで座っていたベンチに再び座った。

「ごめん、一件だけ連絡入れていい?」

 僕はうなずいた。
 慎二は少しの間、スマホに文字を打ち込んみ、再び口を開いた。

「まずは今日、せっかく那月が誘ってくれたのに、色々と傷つけてごめん」
「わ、分かったから! 謝罪はもう大丈夫。その……理由があったん……」

 だよね。と言おうとして気付いた。

 そっか、そうだよ! 人気者の慎のお昼休憩に、先約がないわけがない。僕にお昼の約束を取り付ける程の交友関係がないばかりに気付かなかった……。

 僕は、なんてことを……。

 あったはずの先約を潰して、僕のところに来てくれたのに。僕はそんな彼に謝罪までさせた。

 身体をわなわなと震わせる。

「そう、那月の言う通り理由があったんだ」

 慎二の言葉を聞きたくない。
 でも、聞かなければ。僕がしでかしてしまったことの重大さを認識しないと。
 どれだけ慎二に迷惑をかけてしまったのかを知らなければ。

 慎二の次の言葉を聞く為に、僕は身構えた。
 慎二は誰と約束をしていたんだ?

 それが次の言葉で分かるはず。

「でも、那月のせっかくの誘いを断るべきじゃなかった!」

 ――――ん?

「何をおいても、那月を優先するべきだったんだ! いくら昨夜の出来事でやる気に満ちに満ち溢れていたとしても、優先順位を間違えてはいけなかった……ッ!」

 慎二は、何を言ってるんだ?

 僕を優先?
 昨夜の出来事?
 やる気?
 優先順位?

 それじゃまるで、僕が何よりも大事な人みたな言い方じゃないか。阿呆らしい。

 それに、昨夜の出来事って何だ?

 昨日僕が寝た後、慎二は何かしていた? それが楽しくてやる気に満ち溢れていた?

 とにかく慎二の話し方は、僕に説明するというよりも、思いつくままに喋っている感じで分かりにくい。言葉が足りない。

 だから僕は、知るべきことを端的に質問するべきなんだ。

「それでつまり、何が理由で僕の誘いを断ったの?」
「ああ、それは、営業部と商品開発部の昼食会だよ」
「……営業部と商品開発部の昼食会?」

 慎二の説明によると、その昼食会について話すには、約二年前まで時間を遡らなければならないらしい。

 二年前。営業部と商品開発部の仲は、信じられないほど悪かった。
 商品の売上が悪い時、営業部は製品が悪いのだと商品開発部のせいに。反対に、商品開発部は売り方が悪いのだと営業部のせいにした。

 営業部に所属する慎二は、入社当時から製品開発部に友人がいた。そして慎二は、その友人から商品の良い点、悪い点を聞き出し、その知識を営業に役立てていた。
 売りたい商品について知れば知るほど、慎二の営業成績は伸びていった。

 だからこそ慎二は、営業部と商品開発部の仲の悪さに勿体なさを感じた。

 そして、二年前。
 慎二は営業部と商品開発部の上司、そして経営陣に、この二部署の仲を回復するメリットと、その方法をプレゼンした。

 初めは訝しげに聞いていた人も、慎二が自分の営業成績が良い理由について話し始めると、真剣に話を聞いた。
 プレゼンの後日、一部の経営陣が営業部の中でも特に成績がいい人達に対して、聞き取り調査を行っていた。
 そこで営業成績が良い人の殆どが、商品開発部に友人を持っている。もしくは、商品について異常に詳しく調べることがある。
 といった共通点を持っていることから、慎二の意見は全てとはいかないまでも、一部実行に移された。

 僕と慎二の所属する会社は、風土的にも仕事に熱量を持って取り組む人が多い。だからこの二年、熱くなりすぎて会社の経営にまで影響が出るほど、部署間の仲が悪くなったりもした。

 しかし、最近ではそれも落ち着いてきて、むしろ仲が良くなってきている。
 それに伴って商品の売上は上がり、会社の営業成績も調子がいいそうだ。
 
 そして今日。
 二部署合同の昼食会が開かれているらしい。ここ二年、仕事で徐々に交流の機会は増えていたが、仕事が全く関係していないのは初めて。

 参加は自由。ケータリングもある程度、提供されるが、参加人数が読めないため基本、昼食は持参だった。
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