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第16話
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会社のオフィスに入ると、幾重もの視線が突き刺さった。
「あの人が写真の……」
「なんであの地味男が須田さんと……」
「男のオメガのくせに調子乗るから……」
至るところから、悪意のある言葉が聞こえてくる。しかしそのどれもが面と向かってではなく、ヒソヒソとどこからともなく聞こえてくるものだった。
どうやら本当に、会社中に拡散されてしまったみたいだ。
慎二は人気者だから、こうなってしまうのも頷ける。昨日、営業部と商品開発部の話を聞いたので、尚更そう納得してしまう。
本当に僕にはもったいない人だ。
僕は全ての視線を無視し、営業部へと向かう。慎二の元に向かうためだ。
結婚してることを絶対に言うなと釘を刺しに行く。
まあ、行かなくても、慎二のことだから勝手に話したりはしないだろうけど。
エレベーターに乗る為、列に並ぶ。しかし、どうにも周りの視線が気になって、じっとしているのが嫌になった。
今日は階段で行こう。
僕は、全くもって使われていない薄暗い階段を上る。丁度、二階から三階に差し掛かったところで、何者かに後ろから口を塞がれた。
僕は抵抗しなかった。
なんでだろう? いつもだったら怖がって、どうにかしようと暴れているはずなのに、今日はそんなことしようとも思えない。
なんかどうにでもなれって感じだ。
二階の使われていない会議室に、連れ込まれる。その時、男の顔が見えた。
なんで慎二がここに?
慎二は会議室の鍵を閉めると、途端に怒鳴った。
「なんで抵抗しないんだッ!!!」
僕の身体は、反射的にビクリと震えた。
それを見た慎二はハッとした顔をして、手で口を覆った。
「……いや、怒鳴るつもりはなかったんだ。ごめん」
なんで慎二が謝るんだ。
僕の中でふつふつと怒りが湧き上がる。
何で僕は、こんなにも弱いんだ。
怒鳴られたくらいで身体を震わせて、慎二に気を遣わせて……。
本当に自分が情けない。
こんなんだから慎二も、僕に構わざるお得なくなるんだ。
昨日だって、大事な昼食会があったのに、僕のせいで欠席させてしまった。
僕は拳をギュッと握りしめて、顔に笑みを貼り付けた。
「ううん、僕は全然大丈夫。それで抵抗しなかった理由だっけ? それは、すぐに慎二だって分かったからだよ。僕だって本気でヤバそうだったら、ちゃんと抵抗するよ?」
僕はブンブンと腕を回した。
慎二には、心配かけない。頼らない。全部、自分でなんとかする。
そうじゃないと、自分が情けなさ過ぎて嫌いになりそうだった。
「だから僕の心配はしなくて大丈夫。自分でなんとか出来るから」
笑う。
大丈夫って思って貰えるように笑う。
僕は強くなるんだ。慎二に勝手に愛を期待して、勝手に裏切られた気分になるなんてこと、もうしたくないから。
と僕が覚悟を決めていると、慎二が呆れたような声を出した。
「はぁ? 心配しなくて大丈夫。って何? 心配するなってこと? そんなの無理に決まってるでしょ」
ヤレヤレとでも言いたげな目で、僕を見てくる。
「那月は自分自身のことを何だと思ってるわけ? 君は僕の番だよ。つ、が、い」
慎二はわざと口を開けて強調してきた。
「なのに、つ、が、い、の俺に心配すらさせてくれないの?」
それは酷くない? と、何故か非難めいた瞳で見られる。
「いや、別にそういうことじゃなくて……そもそも番関係だってあってないようなもんだし……」
「えっ? そうなのっ?」
慎二はショックを受けたような顔をする。
え……? なんで? 僕達ってどこかに番らしい要素あったっけ?
ショボンとする慎二に、僕は焦る。
「いやっ、えっ、うん。そうじゃない? ……あっ、いや、一緒に住んでるし、そんなことも無いのかも?」
悲しそうな表情をする慎二を見て、自分の言葉を訂正する。
こんな慎二、初めて見た。なんか……子供っぽい?
というか、ちゃんと僕のこと番だって思ってくれてたんだ。
「あの人が写真の……」
「なんであの地味男が須田さんと……」
「男のオメガのくせに調子乗るから……」
至るところから、悪意のある言葉が聞こえてくる。しかしそのどれもが面と向かってではなく、ヒソヒソとどこからともなく聞こえてくるものだった。
どうやら本当に、会社中に拡散されてしまったみたいだ。
慎二は人気者だから、こうなってしまうのも頷ける。昨日、営業部と商品開発部の話を聞いたので、尚更そう納得してしまう。
本当に僕にはもったいない人だ。
僕は全ての視線を無視し、営業部へと向かう。慎二の元に向かうためだ。
結婚してることを絶対に言うなと釘を刺しに行く。
まあ、行かなくても、慎二のことだから勝手に話したりはしないだろうけど。
エレベーターに乗る為、列に並ぶ。しかし、どうにも周りの視線が気になって、じっとしているのが嫌になった。
今日は階段で行こう。
僕は、全くもって使われていない薄暗い階段を上る。丁度、二階から三階に差し掛かったところで、何者かに後ろから口を塞がれた。
僕は抵抗しなかった。
なんでだろう? いつもだったら怖がって、どうにかしようと暴れているはずなのに、今日はそんなことしようとも思えない。
なんかどうにでもなれって感じだ。
二階の使われていない会議室に、連れ込まれる。その時、男の顔が見えた。
なんで慎二がここに?
慎二は会議室の鍵を閉めると、途端に怒鳴った。
「なんで抵抗しないんだッ!!!」
僕の身体は、反射的にビクリと震えた。
それを見た慎二はハッとした顔をして、手で口を覆った。
「……いや、怒鳴るつもりはなかったんだ。ごめん」
なんで慎二が謝るんだ。
僕の中でふつふつと怒りが湧き上がる。
何で僕は、こんなにも弱いんだ。
怒鳴られたくらいで身体を震わせて、慎二に気を遣わせて……。
本当に自分が情けない。
こんなんだから慎二も、僕に構わざるお得なくなるんだ。
昨日だって、大事な昼食会があったのに、僕のせいで欠席させてしまった。
僕は拳をギュッと握りしめて、顔に笑みを貼り付けた。
「ううん、僕は全然大丈夫。それで抵抗しなかった理由だっけ? それは、すぐに慎二だって分かったからだよ。僕だって本気でヤバそうだったら、ちゃんと抵抗するよ?」
僕はブンブンと腕を回した。
慎二には、心配かけない。頼らない。全部、自分でなんとかする。
そうじゃないと、自分が情けなさ過ぎて嫌いになりそうだった。
「だから僕の心配はしなくて大丈夫。自分でなんとか出来るから」
笑う。
大丈夫って思って貰えるように笑う。
僕は強くなるんだ。慎二に勝手に愛を期待して、勝手に裏切られた気分になるなんてこと、もうしたくないから。
と僕が覚悟を決めていると、慎二が呆れたような声を出した。
「はぁ? 心配しなくて大丈夫。って何? 心配するなってこと? そんなの無理に決まってるでしょ」
ヤレヤレとでも言いたげな目で、僕を見てくる。
「那月は自分自身のことを何だと思ってるわけ? 君は僕の番だよ。つ、が、い」
慎二はわざと口を開けて強調してきた。
「なのに、つ、が、い、の俺に心配すらさせてくれないの?」
それは酷くない? と、何故か非難めいた瞳で見られる。
「いや、別にそういうことじゃなくて……そもそも番関係だってあってないようなもんだし……」
「えっ? そうなのっ?」
慎二はショックを受けたような顔をする。
え……? なんで? 僕達ってどこかに番らしい要素あったっけ?
ショボンとする慎二に、僕は焦る。
「いやっ、えっ、うん。そうじゃない? ……あっ、いや、一緒に住んでるし、そんなことも無いのかも?」
悲しそうな表情をする慎二を見て、自分の言葉を訂正する。
こんな慎二、初めて見た。なんか……子供っぽい?
というか、ちゃんと僕のこと番だって思ってくれてたんだ。
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