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第31話
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帰るのが遅くなり、冬弥はマンションの下まで送ってくれる。
しかし、視線の先には一つの人影があった。
「あれ? なんで慎二がここに……」
と呟いた時、冬弥が一つ深呼吸をして、僕の手を取った。
しかし、それほど不快感はない。
居酒屋を出たあと、冬弥は僕を連れ回し、手袋をプレゼントしてくれた。それから公園のベンチで瞑想し始めたかと思うと、指の先でちょんちょんと僕の手や肩をつついて、気持ち悪いかどうか聞き始めたのだ。
それを何度か繰り返していると、不思議と不快感が和らいだ。
今は手袋越しの握手くらいなら、特に問題なかった。
「あいつが那月の番か?」
耳元で囁かれたので、僕は頷く。
まだ慎二はこちらに気付いていない。それなのに意外と僕の提案に乗り気なのか、恋人っぽい雰囲気を出してくれる。
なんだか懐かしい。
こうして手を繋いでいると、昔に戻ったみたいだ。まだ冬弥が優しかったあの頃に。
一方的な暴力を受けることもなく、優しく僕を気遣って、こうやって手を繋いでデートをして。
二人で愛を誓いあって、このまま冬弥と番になるんだろうって思っていた。
そんなことを考えていると、「ごめん」という言葉が隣から降ってきた。
顔を上げると、何かを伝えようとする冬弥の瞳とぶつかる。そして手を引っ張られ、木陰に連れていかれる。
慎二が振り向いても見えないような位置だ。
木を背中に、冬弥を見上げる。
「三年前、那月のこと大切にできなかったこと、本当にごめん」
冬弥は伏し目がちに、絞り出したような声で呟く。
「何度も謝ろうと思ったんだけど連絡つかなくてさ。それなのにいきなり連絡が来るから、今更なんの用だって今日も初めの方とか那月に当たってた」
「…………」
「本当にごめん」
胸がギュッと苦しくなる。
今更、謝られることになるなんて思ってもいなかった。
あの時は本当に苦しくて、でも逃げる勇気もなくて、あのときの女の子に出会ってなかったら、今でもあの状況が続いていたかもしれない。
奥歯から歯ぎしりする音が聞こえてくる。
「別に大丈夫。もうそんなこと忘れたから」
「……そうか、忘れたか」
僕の言葉に何故だか傷ついたような顔をする。
しかしそれも一瞬。冬弥はまたも耳元に顔を近づけてくる。
「さっきは仕事を辞めろだの、家事をやれだの言ったが、別にそんなことしなくても離婚の手伝いはしてやる。だからもし別れたら、俺とやり直してくれ」
僕がその言葉に目を瞠る。
冬弥はもしかして僕のことがまだ……。
それと同時に苦々しい気持ちが湧き上がる。
「それならなんで……」
DVするようになったのか。そう尋ねようとして辞めた。
今の僕の目的は、慎二と離婚することで、冬弥に恨み辛みを吐き出すことじゃない。
冬弥には協力してもらわなければならない。
僕が「分かった」と頷いた時、とてつもない威圧感のある声が聞こえた。
「おい、そこで何をやっている?」
声の方を向くと、険しい顔をした慎二がいた。
説明しようと慎二に近づこうとしたが、それを冬弥に阻まれる。
そして冬弥は、慎二を睨みつける。
「恋人とイチャついてるだけですが何か? というか、どちらさん?」
僕は、おぉー! と内心感心した。本当に恋人っぽい!
冬弥は、僕を慎二から守るような位置で立っている。しかも、手を握って。
慎二の視線は、その手に注がれている。
「俺は那月の番であり夫だ。その手を離せ」
腕を掴まれ、慎二の方に引き寄せられた。
空気がとてつもなくピリピリしている。そして、冬弥は冷や汗をかいて固まっている。
掴まれた腕が鬱血しそうなほど痛い。
そのまま慎二に引きずられて、マンションの中に連れていかれる。
エントランスに入った時、冬弥がこちらに走ってくる。
「待てよッ!」
冬弥はドアが閉まりきる前に滑り込み、慎二の行く手を阻んだ。しかし顔色が悪く、少し走っただけなのに息が上がっている。
しかし、視線の先には一つの人影があった。
「あれ? なんで慎二がここに……」
と呟いた時、冬弥が一つ深呼吸をして、僕の手を取った。
しかし、それほど不快感はない。
居酒屋を出たあと、冬弥は僕を連れ回し、手袋をプレゼントしてくれた。それから公園のベンチで瞑想し始めたかと思うと、指の先でちょんちょんと僕の手や肩をつついて、気持ち悪いかどうか聞き始めたのだ。
それを何度か繰り返していると、不思議と不快感が和らいだ。
今は手袋越しの握手くらいなら、特に問題なかった。
「あいつが那月の番か?」
耳元で囁かれたので、僕は頷く。
まだ慎二はこちらに気付いていない。それなのに意外と僕の提案に乗り気なのか、恋人っぽい雰囲気を出してくれる。
なんだか懐かしい。
こうして手を繋いでいると、昔に戻ったみたいだ。まだ冬弥が優しかったあの頃に。
一方的な暴力を受けることもなく、優しく僕を気遣って、こうやって手を繋いでデートをして。
二人で愛を誓いあって、このまま冬弥と番になるんだろうって思っていた。
そんなことを考えていると、「ごめん」という言葉が隣から降ってきた。
顔を上げると、何かを伝えようとする冬弥の瞳とぶつかる。そして手を引っ張られ、木陰に連れていかれる。
慎二が振り向いても見えないような位置だ。
木を背中に、冬弥を見上げる。
「三年前、那月のこと大切にできなかったこと、本当にごめん」
冬弥は伏し目がちに、絞り出したような声で呟く。
「何度も謝ろうと思ったんだけど連絡つかなくてさ。それなのにいきなり連絡が来るから、今更なんの用だって今日も初めの方とか那月に当たってた」
「…………」
「本当にごめん」
胸がギュッと苦しくなる。
今更、謝られることになるなんて思ってもいなかった。
あの時は本当に苦しくて、でも逃げる勇気もなくて、あのときの女の子に出会ってなかったら、今でもあの状況が続いていたかもしれない。
奥歯から歯ぎしりする音が聞こえてくる。
「別に大丈夫。もうそんなこと忘れたから」
「……そうか、忘れたか」
僕の言葉に何故だか傷ついたような顔をする。
しかしそれも一瞬。冬弥はまたも耳元に顔を近づけてくる。
「さっきは仕事を辞めろだの、家事をやれだの言ったが、別にそんなことしなくても離婚の手伝いはしてやる。だからもし別れたら、俺とやり直してくれ」
僕がその言葉に目を瞠る。
冬弥はもしかして僕のことがまだ……。
それと同時に苦々しい気持ちが湧き上がる。
「それならなんで……」
DVするようになったのか。そう尋ねようとして辞めた。
今の僕の目的は、慎二と離婚することで、冬弥に恨み辛みを吐き出すことじゃない。
冬弥には協力してもらわなければならない。
僕が「分かった」と頷いた時、とてつもない威圧感のある声が聞こえた。
「おい、そこで何をやっている?」
声の方を向くと、険しい顔をした慎二がいた。
説明しようと慎二に近づこうとしたが、それを冬弥に阻まれる。
そして冬弥は、慎二を睨みつける。
「恋人とイチャついてるだけですが何か? というか、どちらさん?」
僕は、おぉー! と内心感心した。本当に恋人っぽい!
冬弥は、僕を慎二から守るような位置で立っている。しかも、手を握って。
慎二の視線は、その手に注がれている。
「俺は那月の番であり夫だ。その手を離せ」
腕を掴まれ、慎二の方に引き寄せられた。
空気がとてつもなくピリピリしている。そして、冬弥は冷や汗をかいて固まっている。
掴まれた腕が鬱血しそうなほど痛い。
そのまま慎二に引きずられて、マンションの中に連れていかれる。
エントランスに入った時、冬弥がこちらに走ってくる。
「待てよッ!」
冬弥はドアが閉まりきる前に滑り込み、慎二の行く手を阻んだ。しかし顔色が悪く、少し走っただけなのに息が上がっている。
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