空のない世界(裏)

石田氏

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外伝・劇場版(風) 黒い世界

02

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なった人間を指で操った。まるで、見えない糸に繋がれたかのように、人間は世界構築の少女に向かって前進した。
 世界構築の少女は、躊躇わず光の光線を前進してくる人間に向けて放った。
「や、やめて・・・・」
唯一、操られていない口から助けを求めたが、それも光の中で消えた。
「あらあら、どちらが凶悪か分かりませんわ」
「この方たちには悪いことをしました。この件が終われば、再生の能力で蘇らせるとしましょう。ですが、今はトリニティの王の対処に専念しましょう」
「あまり嘗めないでもらいたいですわ」
黒の少女はそう言うと、右手をかざし、世界構築の少女真上に、黒い玉を出現させた。


「   冷たい暗黒物質   」
     (アクシオン)


黒の少女の詠唱で、技が炸裂しようとしたが、世界構築の少女にある周りの光がそれをさえぎり、結果として防いだ。
「往生際が悪いですよ、黒の王。私は再生の能力者。どんな怪我をおわせようが、自信を治療するまで。例え殺されたとしても、死から再び再生される。何故なら、時間軸を操作しての再生だからです。かつての過去の情報から、それをコピーしているに過ぎません。コピーが結果として再生に繋がっているだけ。私の周りにある光は、全ての物質を時間軸によってなかったことにしているのです。言わば再生の能力と言うより、時間干渉の能力。故に、あなたは私を今まで見つけることができなかった。別の時間軸へと避難した私に、今のあなたが出会うことは出来ない。
 黒の王よ。私は、私と接触した者にも時間干渉の能力を有するのだ。つまり、私と接触した時点で、もうそなたに勝ち目は残されていない。退くのだ、黒の王よ」
しかし、黒の少女は甲高く笑い、その申し出を突っぱねた。
「世界構築の少女よ、私は王であるぞ。色ありの少女に色を与える者。色とは能力を意味する。私の能力が滅びの能力だけだと語った覚えはない」
その宣言直後、世界構築の少女の周りにあった、虹色の光が突然消えた。
「これは!?」
「無効と無力の能力。または虚無の能力」
「相手の能力を使えなくする能力ですか」
「御名答。でも、そんな余裕も今、無くしてあげますわ」
再び黒の少女は右手をかざした。
「さっきは防がれましたが、次はちゃんと受けてもらいましょうか」


「   冷たい暗黒物質   」
     (アクシオン)


世界構築の少女の真上に、あの黒い玉があらわれ、一瞬空間が歪んだと思ったら、つかの間に炸裂して、世界構築の少女に直撃した。
「クククク、見事に粉々に散ったね世界構築の少女よ」
黒の少女は勝利を確信した。しかし、
「な、何アレは・・・・」
突然虹色の光がその場で大きく光り、あまりの眩しさに、手で目をかばう。
「黒の王よ、いや黒の少女よ。これで満足いただけただろうか」
強い光は徐々におさまっていった。黒の少女は恐る恐る、目をかばっていた手をどかし、その先を見た。
「ど、どういうことだ!?」
「先程の虚無とやらの能力のことなら、その虚無すら無効になるよう上書きしたのです」
「馬鹿な・・・・」
「黒の少女よ。私は先程から私と接触した時点で、接触された者は時間干渉の対象となると申したはず。それは、あなたが虚無の能力を使えたことを、あなたと接触した時点であらかじめ知っていた事実であり、その上でその能力発動前に能力を無効化させてもらいました」
「つまり、能力が消えたと見せかけたのは演技だと?」
「はい。おかげさまで一瞬の隙をあなたから奪うことができました」
「何を・・・・何をした!」
「上をご覧下さい」
黒の少女は、最初は従わなかった。世界構築の少女から目線をそらせるのが目的かもしれないと、警戒をおこなっていたからだ。しかし、世界構築の少女が言った上には『空のない世界』があった。見ざるおえない黒の少女は、徐々に視線を上に向ける。そして、ほぼ完全に上を見上げた時点で、黒の少女の目は点となった。
 それはあるはずの、先程まで出現していた『空のない世界』が、滅びの災悪が徐々に消えてなくなろうとしていた。世界構築の少女は、その黒の少女に事態を聞かれる前に、答えた。
「黒の少女よ。そなたが『空のない世界』を出現できたのは、人間の多くの犠牲があり、東の協力があってからでしょう。しかし、お忘れですか?前回の『空のない世界』の出現を阻止したのが誰だったのか」
「・・・・」
「黒の少女よ。あなたが世界を滅ぼすのに、『空のない世界』を出現させようとしても、その犠牲となった人間達を再び再生し、『空のない世界』を消すことは、容易に想像できたはずでは?」
「・・・あ」
「?」
「ああああ・・・・」
「!?」
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

遂に壊れ、狂った。黒の少女は目を真っ赤に光らせ、そして世界構築の少女に向かって雄叫びを上げた。
「黒の王よ、そこまでして世界が憎いか。かつての貴様も、私も人間だったろ。・・・・なぜ神は、我らにこの役目を与えるのだ」
狂い襲う黒に、世界構築の少女は光を集結させ、そして一瞬、敵に涙を見せ、光線を放った。


光は辺りを照らし続け、やがて終結した。




                                 +  +  +



 「グオオォォーーー!!」
ドラコンの雄叫びと共に、血を流す巨大熊に再び攻撃を与える。
「ベア!もう、いい。戻れ」
クマランは右手を差し出すと、ベアは光を放ち、徐々に小さくなって、クマランの右手の中にベアはパペットに戻った。
「人間よ、この借りは絶対に返すからな」
そう言い残し、黒い霧の中へと消えていった。
 もう敵はいない。しかし、ドラゴンに変身した真紀は攻撃の手をやめなかった。いない敵を探すかのように、あちこち学びやの校舎を破壊していく。
「真紀ちゃん、もう敵はいないの。だからお願い、止まって!」
その声に反応したドラゴンは山吹をじっと見た。そして
「グオオォォーーーー!!」
ドラゴンは山吹を敵、もしくは獲物だと思い、山吹に向かって攻撃体勢にうつった。しかし、山吹は恐れず、じっと真紀を見る。
 ドラゴンはその山吹の目線に、動きをとめたが、意を決したのか再び山吹に向かって雄叫びをあげるなり、襲いかかってきた。
 山吹はとっさに目をつぶった。しかし、いくら待っても、ドラゴンが攻撃してくる様子がない。恐る恐る目を開けると、ドラゴンは山吹のすんでのところで止まっていた。いや、身動きが取れないでいた。
「真紀よ、もう敵はいません。見方の友人に手を出してはいけません。さぁ、元の姿に戻りなさい」
すると、ドラゴンの周りが虹色にかがやき、徐々に人の姿へと戻っていった。
「真紀ちゃん!」
その場に倒れこむ真紀に、山吹は急いで駆け寄った。
「真紀ちゃん、大丈夫?」
しかし、真紀に返事はなかった。代わりに、寝息が微かに聞こえる。それに安心したのか、山吹は大きな溜め息をはいた。
「でも、さっきの声は!?」
すると、空高く上空に、虹色の光と共に少女の姿があらわれた。
「よく、トリニティ相手に頑張りました。これは、私からのささやかな褒美です」
そう言うと、虹色の光は学校じゅうに広がり、破壊された校舎は戻り、殺された生徒も蘇った。
「貴方はもしかして・・・・」
山吹が正体を確かめようとした時、後方から
「ゲホゲホ・・・・」
咳き込みながら血を吐く東がいた。
「東先生!」
「山吹さん・・・・。私はもう先生ではありません。ゲホゲホ・・・どうやら能力の後遺症が今になってきたみたいです」
「東よ、そなたと出会うのは久しぶりですね」
「貴方は世界構築の少女・・・・」
「!?あれが、世界構築の少女・・・・」
「東よ、その後遺症はそなたの命を奪うだろう。しかし、黒に染まったお前を助けることは出来ない」
「承知しております」
「そんな!?」
「東よ、黒の少女も『空のない世界』も消えた。しかし、恐らく黒の少女は再び姿を表すだろう。あの人も、私も互いにしつこい性格の故、分かってしまうのだ」
「貴方は黒の少女のことをかなり知っているようですが・・・・」
「長い付き合いだからかもしれない。
 東よ、この結果は私は納得していない。だが、そなた自身はどうなんですか」
「私は・・・私は少なくとも納得しているつもりです」
「つもりですか。分かりました。ならば、私はあなたの過ちも尊重するとしましょう。
 それでは、私はそろそろ消えるとしましょう。最後に山吹さん」
「は、はい」
「貴方は生前の記憶が無いようですが、」
「?」
「真紀のことを宜しくお願いします。真紀の存在はこの世界を滅びから守るのに必要な力を持っています。どうか、彼女を守ってあげて下さい」
「はい」
その返事に御納得したのか、世界構築の少女は光と共に姿を消した。
「山吹・・・・」
「先生!」
「僕からも頼む・・・・真紀を!」
そう言い残し、東はこの世を去った。



                               +  +  +


 黒い少女に『空のない世界』の出現と、いっぺんに大きなことがおきたが、世界構築の少女によって被害はゼロだった。
 東に殺されたさくらとキャプラも、無事回復し、今は職務に励んでいた。
 しかし、英雄だった東に、確認されていなかった新たな色ありの少女出現により、世界の危機はまだ去っていないと言えよう。



 
 さて場所はかわり、ここは真紀と山吹がいる学校。
 「さくら教官、また政治のお仕事に戻るんだってね」
「そっか。じゃあ、今度は誰が教官やるんだ?」
「できれば知っている人がいいね」
「それは流石にないだろ」
そんな話が教室で飛び交うなか、学校のチャイムが鳴った。それと同時に教室の扉が開く。
 入って来る教官を見て、その人物に驚き、皆歓声をあげた。
「お帰りなさい、水口教官!」
「ただいま、みんな」





 外伝・黒い世界        完
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