【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞

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王宮での出来事

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翌日。私は王宮を訪ねていた。
なぜならば、現国王陛下の第一王子、ルネンス・マダミリオンと王弟、フィランス・マダミリオンが、まほひかゲームの攻略対象だからである。

「お久しゅうございます、国王陛下。今日は謁見の場を設けていただき、誠にありがとうございます」
「いや、私も君と久しぶりに話したかったからな。して、用とは一体?」
「はい。陛下はルネンス様とフィランス様が一人の女性……ソフィアさんにご執心のことを存じておりますか?」
「あぁ、勿論。それがどうかしたか?」

問題だらけの物事を、問題と認識していない陛下に嫌気がさしそうになりながら、私は質問を続ける。

「いえ、別に……話は変わりますが、陛下は我が友・レイナが亡くなったことをどうお思いで?」
「 ? いましき悪女をを、我が手を下さず処罰できたのは大変うれしく思うが……」

友という人の目の前で言うセリフなのか疑うほど、陛下はさらっとそう言う。

「そう……ですか」

もしかしたら、陛下ならばソフィアに毒されてはいないという可能性に賭けたのだが、どうやらそれは過大評価だったらしい。陛下も殿下も王弟も。みんなみんな、ソフィアに魅入られてしまっていた。

「さて、そろそろ私は用事がある。あとの相手は時期に到着するはずのフィランスに依頼しておくから、それまでは客室でゆっくりしていてくれ」
「……はい」

私はそう答え、王宮に仕えるメイドに案内され、客間へと移動する。

「ヴィル様。何かあればお呼びください」
「えぇ、ありがとうございます」

案内してくれたメイドさんは、そう声をかけた後、私を一人残して客間から出る。
手持ち無沙汰になった私は、王族であるルネンスとフィランスが、どうやってレイナと仲良くなったのか。そして、この二人がどのようにレイナを裏切ったのかを思い起こした。

―――――

確か二人と初めて出会ったのは、レイナと私が6歳のころだったと思う。
親の都合で王宮に来た時、私たちは第一王子の機嫌でもとっておけと親に言われた為、レイナはうきうきと、私は渋々ルネンスの元へと向かった。

ルネンスは私たちが話しかけても不愛想に「あぁ」とか「うん」とか返事をしないため、さすがのレイナでもイラつくと思っていたが、レイナはイラつくという感情を知らないと思うほど積極的に話しかけ、ルネンスもレイナと話していくと、レイナは親に命令されたからだけではなく、自らが仲良くなりたいと思ってルネンスに話しかけていると分かったらしく、孤独だった彼がレイナに心開くのもあっという間であった。

そんな私たちだったが、三人でいると普段よりもはっちゃけてしまうので、お目付け役がつけられた。それが、王弟であるフィランスであった。王弟といっても、陛下とは年の離れた兄弟であったため、私たちと大して年が変わらない当時はあまり仕事を与えられなかった。故に暇だったらしく、お目付け役という大義名分のもと、私たちと遊んでいた。

それから約5年後、ルネンス誘拐事件が起きた。
この事件は名前の通り、ルネンスが誘拐された事件である。
誘拐先も犯人もわからず、国を挙げての捜索だったが見つからず、もう駄目かと思われたころ。なんとレイナが、探知魔法でルネンスの居場所を見つけ出し、ルネンスを誘拐した犯人を自慢の魔法で倒し、ルネンスを無傷で救出したのだ。

その出来事がきっかけで、自分を救ってくれたルネンスと、大切な甥を救出してくれたフィランスはレイナを崇拝していくのだが……

それから四年後、私たちは王立学園に入学した。
ソフィアは入学早々、廊下ですれ違いざまにレイナに押し倒されたと腑抜けたことを言っていたのだが、これまでレイナが積み重ねてきたものが嘘だったかのように、周りの人間はレイナの言うことは信じず、ソフィアの言うことだけを一方的に信じたのだ。

全てを見ていた私は、咄嗟に否定しようとしたが、レイナに止められ、昔の約束にとらわれていた私はそれ以上何も言うことができなくなってしまい、レイナが悪役に仕立てられるのを黙ってみているしかなかった。その後、学園にいたルネンスから話を聞いたらしいフィランスも、レイナを敵対するようになる。

ゲームの強制力。もしかしたら、そんな馬鹿げた力が働いたのかもしれない。でも、そんな馬鹿げた力が働いていたとしても、彼らがレイナを傷つけ、レイナを裏切ったことに変わりはない。
モブという立場を最大限利用して、私はレイナを傷つけたすべての人々に復讐する。

「そのためには、まずは皆さんからの信頼を得ねば。信頼得てからの裏切りの方が、絶望の転換が大き……」
「――失礼します」

私が独り言をぶつぶつとつぶやいていると、若々しい青年の声が聞こえ、ドアがガチャリと開く。

「お待たせしました、ヴィル嬢。陛下から話は聞いています」

そう言って客間に入ってきたのはフィランス。彼は私を見るや否や、薄っぺらい笑みを浮かべた。
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