【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞

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モブ令嬢は微笑む

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昔は仲が良かったことが嘘のように他人行儀にしゃべるフィランス。別にそんなのどうでもいいのだが、やはりレイナを貶めた人物の一人として、目の前にすると顔が引きつってしまいそうになり、必死に顔の筋肉に力を籠める。

「お邪魔しています、フィランス様。今日はお忙しい中私とお相手してくださること、心より感謝いたします」
「いえいえ、俺と貴女は幼き日からの仲ですから。これくらいでお礼なんて、こそばゆいですよ」

薄っぺらい、感情のこもっていない笑み。胡散臭い笑みだが、私はそれに気づかないふりをし、にっこりと笑みを返しながら、「えぇ、そうね」と答える。

「それにしても、何をしていたのですか?」

もしかしたらソフィアの情報を引き出せるかもしれない。そう思い、私はフィランスにそう聞くと、フィランスは少しだけ頬を染める。それだけで、先ほどまで彼はソフィアと一緒にいたのだと察せられた。

「実は先ほどまで、ソフィア様とルネンスと共に 城下町の散策に……」
「……へぇ」

予想通り、ソフィアと一緒にいたのか。それにしても、ソフィアと一緒にいたことを思い出すだけで頬を染めるだなんて、気持ち悪いにもほどがある。

「なにをしていたんですか?」

私は興味があるふりを装ってそう聞くと、フィランスは照れ臭そうにしながら話してくれる。

「貴女に話すほどのことはしていませんが……私は王弟ゆえ、あまりソフィア様とご一緒する機会はありません。そんな俺と一緒にいても、楽しい、と笑ってくださって……」

何をしたかを聞いたのに、ソフィアがフィランスを誑かしている最中の話をされてしまった。

「それはよかったですね」

心底どうでもいい話をされ、私はそれ以外の言葉が見当たらなくなってしまったが、何とか会話をつなげる。

「これまでは私が城下町に誘っても断られていたのですが、何故、ここにきて急に、ソフィアさんは皆さんの誘いに乗るようになったのでしょうか?」
「それはたぶん、レイナが亡くなったからではないでしょうか?レイナが存命中は、城下町でレイナに会って虐げられるのを懸念していたのだと思います」
「そう、ですか……話は変わりますが、フィランス様はレイナが死んで、よかったと思っていますか?」
「当たり前ではありませんか。愛しい人を傷つけてきた者がいなくなって、清々していますよ」

私がレイナの親友だと存じ上げていないのかと思うほどの、強がりでも何でもない、心の底からの言葉。これに似た心無い言葉を、レイナは毎日言われていたかと思うと、強い憎しみが心の底から溢れてくる。

「それでは……貴方は今、幸せですか?」
「どうしたのですか、急に?……まぁ、でも。ソフィア様と一緒にいる機会が増え、我々を脅かすものもいない。そう考えれば、私は今、確かに幸せですよ」

――その幸せが、誰かレイナの犠牲の上に成り立っているのを、貴方は分かっているのですか?

そんな問いかけが頭をよぎったが、そんなことを言ってしまえば、フィランスの機嫌を損ねてしまうかもしれない。
そう考え、私はにっこりと微笑み、「それはよかったです」と答える。

その微笑みは、もしかしたら人のことを言えないような、薄っぺらい笑みだったかもしれない。
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