【完結】悪役令嬢の断罪から始まるモブ令嬢の復讐劇

夜桜 舞

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モブ令嬢とつかの間の戯れ

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カーテンの隙間から漏れる、朝の陽ざしに気が付き、私はゆるりと体を起こす。
ここは、ライリオン王国の王宮の客間。すなわち、魔王・シュエルの家である。

私は行く当てもないので、しばらくはシュエルのもとで寝泊まりさせてもらえることになった。

「今日は、何をしようか……」

今、人間界に行くのは危ない。人間界に行けば、ソフィアに敵対したものとして、面倒なことに巻き込まれるのは目に見えている。これ以上、私はシュエルに迷惑を掛けたくない。だからこそ、今はシュエルに心配させるようなことは避けるべきである。

寝起きの頭をフル回転させながら思考していると、お腹が減っていることに気が付く。昨日、シュエルの家に泊まらせてもらうことになった時、シュエルには家事は従者にやらせるから問題ない、と言われたのだが、やはり、居候の身としてはそういうわけにはいかないだろう。さすがに、泊まらせてもらったうえに家事までしてもらうのは、気が引ける。

「シュエルは、もう起きているかな?」

ふと疑問に思い、私はベッドから抜け出し、客間から出る。
眠たい目をこすりながら、私は広い王宮のどこかにいるはずのシュエルを探すのであった。

―――――

おかしい、全然いない。

それから私は、思いつく限り王宮の中を探したのだが、なかなか見つからない。残りはトイレか中庭なのだが……

よし、トイレにしよう。

私はそう決め、トイレへと向かおうとしたのだが……

「はは、くすぐったいからやめろって」

どこからか、シュエルの笑い声が聞こえる。
聞こえた方角てきに、シュエルは中庭にいるのだろう。

ただ、何故朝っぱらから中庭に?そして、何故笑っているのだ……?

そんなことを考えながら、私は中庭へと向かったのだった。

―――――

私が中庭に一歩、足を踏み入れると、そこには、シュエルと、シュエルに戯れる色々な種族の魔物がいた。魔物たちの共通点を上げるとすれば、とにかくみんな楽しそうであった。

そこで改めて、私は本当にシュエルは魔王なのだと実感する。

「――おはよう、シュエル」

私がシュエルの背後にそろりそろりと近づき、そう声を掛けると、シュエルはまるで気が付いていたかのように、驚く様子を見せずに、「あぁ、おはよう、ヴィル」と、返事をする。

「今日は、何をする?人間界に行くのであれば、変装をしなければならないけど……」

シュエルにそう言われ、私は少しばかし考えたが、すぐに結論を出す。

「今日は、魔物の皆さんに、挨拶をしたい」
「あぁ、いいよ。ここには数多くの魔物が訪れるから、みんなのことを知りたいのなら、俺の方からみんなに頼んでみるよ」
「ありがとう」

私はシュエルにお礼を伝え終えると、中庭にいる魔物たちに視線を移す。
魔物たちは、人間が珍しいのであろう。私を、好奇の目で見てくる。

「今日から……いや、昨日からお世話になっております、ヴィルです。皆さん、仲良くしてくださいね?」

私がニコリと微笑みながらそういうと、魔物たちは私を品定めするかのように見つめ、一匹、また一匹と私に近寄ってくる。
……猫を被る作戦が、上手くいったようだ。

私が近寄ってきた猫のような魔物に手を差し出すと、のどをゴロゴロ鳴らしながら、すりすりと私の手に頬をこすりつける。

か、可愛い……!!

私がそう思いながら、あまりの可愛さにフリーズしていると、他の魔物たちも、私は危害を加えないと思ったのか、さらに私に近づいてきて、私に甘えだす。

「ちょ、ちょっとま……ははっ!!そ、そこ、くすぐったいから、やめ……!!」

私の制止を聞かず、魔物たちは私にすり寄ってくる。
シュエルに助けて、と視線を送ったが、シュエルは穏やかな目で、私を……魔物たちを見るだけ。

止めなさいよ!!と思いながらも、私はくすぐったさで、声が出せなったのであった。

―――――

その後も、私は次々と王宮に訪れる魔物たちと戯れ、私は今日一日で、魔物たちと打ち解けてしまった。
ただ、不思議なのは、数多くいる魔物だが、人型の魔物は誰一人として訪れなかったのである。
その疑問をシュエルにぶつけると、シュエル曰く、人型の魔物は貴重で、ライリオン王国では、人型の魔物はすべて、王宮に奉公する決まりがあるらしい。

今日のことを振り返りながら、私はベッドに仰向けに倒れる。

さて、明日からは人間界での復讐の準備だ。
朝はなぜか思いつかなかったが、この国には魔法があるのだ。魔法であれば、全くの別人に変わることだって、できるはず。

それに、魔物という強力な仲間もできた。魔物は人間よりもはるかに魔力が強く、身体能力も高い。そんな彼らを仲間にできたことは、ここ数日で一番の成果と言える。

それにしても、今日は、久々に穏やかな時間を過ごせた気がする。まぁ、疲れたことには変わりないが。

そう考えながら、私は深い眠りへとついた。
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