18 / 23
モブ令嬢とゆるぎない決意
しおりを挟む
「テイラン先輩……ソフィアさんの言っていることは本当なんですか!?何とか言ってください!!」
「あら、では一つ聞きますが、私がソフィアさんの言葉を否定したところで、貴方は私の言葉を信じますか?」
「そ、それは……」
言葉を濁したって、そんなの分かり切っている。私の言葉だなんて、信じないであろう。現に、レイナの言葉を、何一つとして信じなかったのだから。
「――ヴィル、どこだ!?」
近くで私を探す声。その声の主は、シュエルのもので、間違えようがなかった。
どうして、シュエルがここに?よりにもよって、ソフィアがいるときに……
そう考えながら、内心来ないでほしいと思ってしまう私の想いを無視し、シュエルは私の居場所を見つけてしまう。
「ヴィル、ここにいたのか!!」
瞬間、ソフィアの顔がパッと輝くのが分かった。一体なぜ、と思ったが、この場合、可能性は一つしかないであろう。
――彼女は転生者で、シュエルのことを狙っている
薄々感づいてはいたが、この瞬間、私の推測は確信へと変わった。
「シュエル様!!まさか、私を探しに……」
「ヴィル、すまない!!」
「「へ?」」
ソフィアの声を遮りながら私に謝るシュエルに困惑し、少々気に食わないが、私とソフィアの声が完全にハモる。
「きみ……貴様にとって、無神経な発言をしてしまったこと、心から詫びる……どうか、俺の元から離れないでほしい」
「そ、そんな……!!」
絶対に私の方がシュエルに対して失礼な発言をしてしまっているのに、それでも私を探し、謝ってくれるシュエルに、私はどう言葉を掛ければいいのかわからず、私は言葉を詰まらせる。
「ちょ、ちょっと待ってください、シュエル様!!そいつ……ヴィル様は、私を押して、転ばせたんですよ!?そんな奴に、シュエル様が謝る必要はありません!!」
「……それは、本当か?」
私は、シュエルの言葉に答えることができなかった。無意識のうちに、私は自分の言葉は信じてもらえないと、そう思ってしまっているからだ。
「答えろ、ヴィル!!貴様が否定してくれないと、俺は貴様を信じることができない!!」
そんな私を叱責するシュエル。その言葉は荒いが、それでも言葉の端々から私を心配してくれている様子がくみ取れ、私は勇気を出して、声を絞り出す。
「私は……私はソフィアさんを押してなんかいない!!」
私がそう否定すると、シュエルは私の言葉を疑うことなく、「だ、そうだ」と、ソフィアとルナソルに言う。
「う、嘘よ、そんなの……私は確かにヴィル様に押されて……」
「では、その証拠は?」
「 ! で、でも!!ヴィル様が私を押してない証拠もないじゃない!!」
「では、証拠があればいいのだな?」
シュエルはそう言い終えるや否や、指を鳴らす。
すると、今まさに飛び立とうとしていた小鳥が動きを止め、私たち4人以外の時が止まる。
これは……
「い、一体何なのよ、これ!?」
「時間魔法……ですよね?」
「さすがはヴィル。その通りだ」
私の言葉にそう返事をしながら、シュエルはもう一度指を鳴らし、時間を巻き戻す。
「今からソフィアがヴィルに押されたという時に時間を巻き戻せば、真実がわかるだろう……それでよいよな、ヴィル、ソフィア」
「えぇ、問題ないわ」
「……」
ソフィアを押してなどいない私は、余裕の表情を浮かべながらそう答えるが、ソフィアは私と対照的に、顔面を蒼白にさせながら、見るからに焦っている。
「そ、ソフィアさん……?」
さすがに怪しいと思ったのか、ルナソルは心配した様子でソフィアにそう声を掛けるが、ソフィアは反応を示さない。
「それでは、時間を巻き戻すぞ」
そんなソフィアをシュルは無視し、時間を巻き戻したのだった。
―――――
結果は火を見るよりも明らかで、私は冤罪であった。
「なによ、なによなによなによなによ!!」
ソフィアは結果に半狂乱となったが、シュエルは冷静に転移魔法を使い、ソフィアとルナソルの二人を、ソフィアの自宅前へと転移させた。
「……ごめん」
私が二人になったタイミングを見計らい、シュエルにそう謝罪する。
「いや、いいよ。俺も悪かったし……それに、俺は君のありのままの姿が好きだ」
「え?」
突然、何を言い出すの?
私のありのままの姿……?それに、好きって……!?
「俺は、君の強気で、ちょっと傲慢なところが好きだ。それでいて、人一倍弱いところが好きだ」
私が自身の嫌なところを、シュエルは好きだって言ってくれる。
不思議だった。ただ、言葉を並べているだけなのに、とっても嬉しい。何より、シュエルがソフィアの言葉をうのみにせず、私を信じてくれたことが嬉しい。
「君がソフィアたちを妬み、憎しむ気持ちはよくわかる。だからこそ、復讐をするのを辞めろ、なんて、無責任なことは言わない。でも、俺にも手伝わせてほしい。君一人で、抱え込まないでほしい」
そう優しく言ってくれるシュエルが、何よりも嬉しい。でも、やっぱり……
「ごめん、それはできない。これは、私とレイナの問題。できれば、自分で解決したいの」
他人に手伝ってもらった復讐には何の意味もない。私は、自分の手で、レイナを傷つけたものたちに、復讐したい。
そんな私の想いを察してくれたらしいシュエルは、「そうか……」と一言つぶやいた後、私の頭をぽんっと撫でる。
「何かあればすぐに俺の元へ来い。貴様をかくまってやることぐらいならできるから。なぜなら俺は……」
「――魔王、ですものね?」
前に似たような言葉を聞いた覚えがある私は、シュエルが全て言い終える前に、くすくすと笑いながらそう言う。
「あぁ、そうだ」
シュエルも私につられ、笑みをこぼす。
もう、私の気持ちはごまかせない。私は、シュエルのことが……。
「あら、では一つ聞きますが、私がソフィアさんの言葉を否定したところで、貴方は私の言葉を信じますか?」
「そ、それは……」
言葉を濁したって、そんなの分かり切っている。私の言葉だなんて、信じないであろう。現に、レイナの言葉を、何一つとして信じなかったのだから。
「――ヴィル、どこだ!?」
近くで私を探す声。その声の主は、シュエルのもので、間違えようがなかった。
どうして、シュエルがここに?よりにもよって、ソフィアがいるときに……
そう考えながら、内心来ないでほしいと思ってしまう私の想いを無視し、シュエルは私の居場所を見つけてしまう。
「ヴィル、ここにいたのか!!」
瞬間、ソフィアの顔がパッと輝くのが分かった。一体なぜ、と思ったが、この場合、可能性は一つしかないであろう。
――彼女は転生者で、シュエルのことを狙っている
薄々感づいてはいたが、この瞬間、私の推測は確信へと変わった。
「シュエル様!!まさか、私を探しに……」
「ヴィル、すまない!!」
「「へ?」」
ソフィアの声を遮りながら私に謝るシュエルに困惑し、少々気に食わないが、私とソフィアの声が完全にハモる。
「きみ……貴様にとって、無神経な発言をしてしまったこと、心から詫びる……どうか、俺の元から離れないでほしい」
「そ、そんな……!!」
絶対に私の方がシュエルに対して失礼な発言をしてしまっているのに、それでも私を探し、謝ってくれるシュエルに、私はどう言葉を掛ければいいのかわからず、私は言葉を詰まらせる。
「ちょ、ちょっと待ってください、シュエル様!!そいつ……ヴィル様は、私を押して、転ばせたんですよ!?そんな奴に、シュエル様が謝る必要はありません!!」
「……それは、本当か?」
私は、シュエルの言葉に答えることができなかった。無意識のうちに、私は自分の言葉は信じてもらえないと、そう思ってしまっているからだ。
「答えろ、ヴィル!!貴様が否定してくれないと、俺は貴様を信じることができない!!」
そんな私を叱責するシュエル。その言葉は荒いが、それでも言葉の端々から私を心配してくれている様子がくみ取れ、私は勇気を出して、声を絞り出す。
「私は……私はソフィアさんを押してなんかいない!!」
私がそう否定すると、シュエルは私の言葉を疑うことなく、「だ、そうだ」と、ソフィアとルナソルに言う。
「う、嘘よ、そんなの……私は確かにヴィル様に押されて……」
「では、その証拠は?」
「 ! で、でも!!ヴィル様が私を押してない証拠もないじゃない!!」
「では、証拠があればいいのだな?」
シュエルはそう言い終えるや否や、指を鳴らす。
すると、今まさに飛び立とうとしていた小鳥が動きを止め、私たち4人以外の時が止まる。
これは……
「い、一体何なのよ、これ!?」
「時間魔法……ですよね?」
「さすがはヴィル。その通りだ」
私の言葉にそう返事をしながら、シュエルはもう一度指を鳴らし、時間を巻き戻す。
「今からソフィアがヴィルに押されたという時に時間を巻き戻せば、真実がわかるだろう……それでよいよな、ヴィル、ソフィア」
「えぇ、問題ないわ」
「……」
ソフィアを押してなどいない私は、余裕の表情を浮かべながらそう答えるが、ソフィアは私と対照的に、顔面を蒼白にさせながら、見るからに焦っている。
「そ、ソフィアさん……?」
さすがに怪しいと思ったのか、ルナソルは心配した様子でソフィアにそう声を掛けるが、ソフィアは反応を示さない。
「それでは、時間を巻き戻すぞ」
そんなソフィアをシュルは無視し、時間を巻き戻したのだった。
―――――
結果は火を見るよりも明らかで、私は冤罪であった。
「なによ、なによなによなによなによ!!」
ソフィアは結果に半狂乱となったが、シュエルは冷静に転移魔法を使い、ソフィアとルナソルの二人を、ソフィアの自宅前へと転移させた。
「……ごめん」
私が二人になったタイミングを見計らい、シュエルにそう謝罪する。
「いや、いいよ。俺も悪かったし……それに、俺は君のありのままの姿が好きだ」
「え?」
突然、何を言い出すの?
私のありのままの姿……?それに、好きって……!?
「俺は、君の強気で、ちょっと傲慢なところが好きだ。それでいて、人一倍弱いところが好きだ」
私が自身の嫌なところを、シュエルは好きだって言ってくれる。
不思議だった。ただ、言葉を並べているだけなのに、とっても嬉しい。何より、シュエルがソフィアの言葉をうのみにせず、私を信じてくれたことが嬉しい。
「君がソフィアたちを妬み、憎しむ気持ちはよくわかる。だからこそ、復讐をするのを辞めろ、なんて、無責任なことは言わない。でも、俺にも手伝わせてほしい。君一人で、抱え込まないでほしい」
そう優しく言ってくれるシュエルが、何よりも嬉しい。でも、やっぱり……
「ごめん、それはできない。これは、私とレイナの問題。できれば、自分で解決したいの」
他人に手伝ってもらった復讐には何の意味もない。私は、自分の手で、レイナを傷つけたものたちに、復讐したい。
そんな私の想いを察してくれたらしいシュエルは、「そうか……」と一言つぶやいた後、私の頭をぽんっと撫でる。
「何かあればすぐに俺の元へ来い。貴様をかくまってやることぐらいならできるから。なぜなら俺は……」
「――魔王、ですものね?」
前に似たような言葉を聞いた覚えがある私は、シュエルが全て言い終える前に、くすくすと笑いながらそう言う。
「あぁ、そうだ」
シュエルも私につられ、笑みをこぼす。
もう、私の気持ちはごまかせない。私は、シュエルのことが……。
308
あなたにおすすめの小説
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
悪役令嬢に相応しいエンディング
無色
恋愛
月の光のように美しく気高い、公爵令嬢ルナティア=ミューラー。
ある日彼女は卒業パーティーで、王子アイベックに国外追放を告げられる。
さらには平民上がりの令嬢ナージャと婚約を宣言した。
ナージャはルナティアの悪い評判をアイベックに吹聴し、彼女を貶めたのだ。
だが彼らは愚かにも知らなかった。
ルナティアには、ミューラー家には、貴族の令嬢たちしか知らない裏の顔があるということを。
そして、待ち受けるエンディングを。
地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】
いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。
陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々
だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い
何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ
モブの声がうるさい
ぴぴみ
恋愛
公爵令嬢ソフィアには、幼い頃より決まった婚約者がいる。
第一王子のリアムだ。
いつの頃からか、ソフィアは自身の感情を隠しがちになり、リアム王子は常に愛想笑い。
そんなとき、馬から落ちて、変な声が聞こえるようになってしまって…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる