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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
26 the others
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太陽以外の視点です。
少し時間を遡ります。
ーーー
それは彼女達にとって到底納得のいかない話だった。
以前、エルフ族の長が言った「エルフ族でまだ伴侶のいない女性の内から、甥のルースの結婚相手を探す」という話が無くなったからだ。
どうやら彼に想い人が出来たのが原因らしかった。
元々その話は、長が出来ればそうしたいと思ってるという程度だったし、何よりルース本人の意志が一番だ。
だが、前からルースに想いを寄せていた女達は、それをさも決定事項かの様に受け止めていた。
だって、エルフ族一の勇士の伴侶になれるまたとないチャンスだからー。
300年前の大戦を語る時、人間とエルフでは認識が違う。
魔王に唯一対抗できる光の力を持つ者がいないのだから勝てる訳がない。初めから負け戦とわかっていた戦いを起こした反逆側の首謀者は愚か者だ。
それが今現在の300年後の人間達の共通認識だった。
だがエルフは違った。
1000年以上という長い寿命を持つ彼らには、300年前はそう昔の事では無い。だからこそ先の大戦を歴史上の出来事として振り返る事が出来なかったのだ。
ゆえに彼らは、自らの家族や友、恋人が選択した決断を正当化した。愚かだと判断出来ずに、あの戦いを肯定したのだ。
その為に唯一生き残ったルースは哀れにも、最後は魔王に一矢報いて撃退した勇士。エルフの誇りとして祭り上げられてしまったのだった。
彼らのその誤った認識がルースを追い詰め、危険を冒してまで旅を続ける理由になったとも知らずに。
「ルース様をたぶらかしたのはどこの誰なの?今日ルース様が戻られた時に人間と獣を連れて来たと聞いたけど」
その場にはエルフ族の女性が5~6人集まっていた。発言したのはマリィ。長やルースの親戚筋にあたる女性だった。
集まった女性達はまだ100年程しか生きていない若いエルフだった。
生まれた時から空は雲に覆われ、世界は瘴気に満ちている。その為、他の種族と触れる機会も無かった。
結果、視野が狭くなってしまった彼女達は自然とエルフ至上主義になりがちだった。
エルフの誇りなら相手はエルフであるべき。勝手に若いエルフ達はそう考えて、ルースの相手は自分達のいずれかから選ばれると信じていたのだ。
「もしやその人間では?」
「まさか!噂では黒を纏ってるとか。そんな者が選ばれる訳ありません!」
この時、既にルースは数人の側近がいる中、長に太陽と空を紹介しハッキリ金の光を見たと発言していた。
だがそれは重大な案件だった為、彼女達の様な一般エルフに伝えられる事はなかったのだ。
「じゃあ何故かしら?こうしてる間にもルース様は蝕まれているのに…。私が癒やしてさしあげられたら…」
「もう無理よ。あんなにハッキリ断られた上に、長も発言を撤回されたわ」
長と共に現れたルースに彼女達は対面した。長が選んだ婚約者候補として。
だがルースにはハッキリ断られた。しかもこれ以上婚姻を押しつけるのであれば、エルフの里に2度と戻らないとまで言われたのだ。
これには長も婚約者候補達も引き下がるしかなかった。
エルフの里はエルフにとっての聖地。それを捨てるとまで言われて、流石にプライドを傷つけられた。
その後、再び長に彼女達は呼ばれ、婚約者候補の話は正式に無くなったと告げられた。
理由はルースには既に想い人がいたからと言う事だった。
それならば仕方ない。
普通ならそう思う筈だった。
相手が同じエルフなら。
だが、相手は恐らく違う。それが彼女達の引けない理由だった。
「マリィ。もうやめましょう。終わった事よ。それよりこの後に長から全員招集がかけられているんだから、そっちの方が重大だわ」
メンバーの中で1番年上のプレンナが冷静な意見を述べた。そうね、と彼女と同年代のもう1人のエルフが同意する。
「プレンナ!貴女悔しくないの?ルース様の相手がエルフ以外なんて!」
「悔しくないわ。だって選ぶのはルース様だもの」
エルフ至上主義が強いマリィと、そこまでこだわらないプレンナとは元々馬が合わなかった。
「私は長の決定に従うわ。もうこの話し合いも無用ね。先に戻るわ」
プレンナが部屋を出て行く。比較的プレンナに考えが近いもう1人も出て行った。
残ったのはマリィ同様、エルフ至上主義のメンバーのみだった。
「信じられないわ。私達のプライドはどうなるの?」
「せめて一泡吹かせたいですわね」
「本当よ!ほんの少しでいいから困らせたいわ!」
「…それ良い案ね」
もう決定は覆らない。
なら、ほんの少し自分達の気がすむ程度の仕返し…悪戯くらいしても構わない筈。
親戚で優しい長とルース様ならその程度許してくれる。
そんな甘い考えが後に重大な事件を引き起こすとは思わずに、彼女達はルースの想い人にする悪戯について話し始めた。
少し時間を遡ります。
ーーー
それは彼女達にとって到底納得のいかない話だった。
以前、エルフ族の長が言った「エルフ族でまだ伴侶のいない女性の内から、甥のルースの結婚相手を探す」という話が無くなったからだ。
どうやら彼に想い人が出来たのが原因らしかった。
元々その話は、長が出来ればそうしたいと思ってるという程度だったし、何よりルース本人の意志が一番だ。
だが、前からルースに想いを寄せていた女達は、それをさも決定事項かの様に受け止めていた。
だって、エルフ族一の勇士の伴侶になれるまたとないチャンスだからー。
300年前の大戦を語る時、人間とエルフでは認識が違う。
魔王に唯一対抗できる光の力を持つ者がいないのだから勝てる訳がない。初めから負け戦とわかっていた戦いを起こした反逆側の首謀者は愚か者だ。
それが今現在の300年後の人間達の共通認識だった。
だがエルフは違った。
1000年以上という長い寿命を持つ彼らには、300年前はそう昔の事では無い。だからこそ先の大戦を歴史上の出来事として振り返る事が出来なかったのだ。
ゆえに彼らは、自らの家族や友、恋人が選択した決断を正当化した。愚かだと判断出来ずに、あの戦いを肯定したのだ。
その為に唯一生き残ったルースは哀れにも、最後は魔王に一矢報いて撃退した勇士。エルフの誇りとして祭り上げられてしまったのだった。
彼らのその誤った認識がルースを追い詰め、危険を冒してまで旅を続ける理由になったとも知らずに。
「ルース様をたぶらかしたのはどこの誰なの?今日ルース様が戻られた時に人間と獣を連れて来たと聞いたけど」
その場にはエルフ族の女性が5~6人集まっていた。発言したのはマリィ。長やルースの親戚筋にあたる女性だった。
集まった女性達はまだ100年程しか生きていない若いエルフだった。
生まれた時から空は雲に覆われ、世界は瘴気に満ちている。その為、他の種族と触れる機会も無かった。
結果、視野が狭くなってしまった彼女達は自然とエルフ至上主義になりがちだった。
エルフの誇りなら相手はエルフであるべき。勝手に若いエルフ達はそう考えて、ルースの相手は自分達のいずれかから選ばれると信じていたのだ。
「もしやその人間では?」
「まさか!噂では黒を纏ってるとか。そんな者が選ばれる訳ありません!」
この時、既にルースは数人の側近がいる中、長に太陽と空を紹介しハッキリ金の光を見たと発言していた。
だがそれは重大な案件だった為、彼女達の様な一般エルフに伝えられる事はなかったのだ。
「じゃあ何故かしら?こうしてる間にもルース様は蝕まれているのに…。私が癒やしてさしあげられたら…」
「もう無理よ。あんなにハッキリ断られた上に、長も発言を撤回されたわ」
長と共に現れたルースに彼女達は対面した。長が選んだ婚約者候補として。
だがルースにはハッキリ断られた。しかもこれ以上婚姻を押しつけるのであれば、エルフの里に2度と戻らないとまで言われたのだ。
これには長も婚約者候補達も引き下がるしかなかった。
エルフの里はエルフにとっての聖地。それを捨てるとまで言われて、流石にプライドを傷つけられた。
その後、再び長に彼女達は呼ばれ、婚約者候補の話は正式に無くなったと告げられた。
理由はルースには既に想い人がいたからと言う事だった。
それならば仕方ない。
普通ならそう思う筈だった。
相手が同じエルフなら。
だが、相手は恐らく違う。それが彼女達の引けない理由だった。
「マリィ。もうやめましょう。終わった事よ。それよりこの後に長から全員招集がかけられているんだから、そっちの方が重大だわ」
メンバーの中で1番年上のプレンナが冷静な意見を述べた。そうね、と彼女と同年代のもう1人のエルフが同意する。
「プレンナ!貴女悔しくないの?ルース様の相手がエルフ以外なんて!」
「悔しくないわ。だって選ぶのはルース様だもの」
エルフ至上主義が強いマリィと、そこまでこだわらないプレンナとは元々馬が合わなかった。
「私は長の決定に従うわ。もうこの話し合いも無用ね。先に戻るわ」
プレンナが部屋を出て行く。比較的プレンナに考えが近いもう1人も出て行った。
残ったのはマリィ同様、エルフ至上主義のメンバーのみだった。
「信じられないわ。私達のプライドはどうなるの?」
「せめて一泡吹かせたいですわね」
「本当よ!ほんの少しでいいから困らせたいわ!」
「…それ良い案ね」
もう決定は覆らない。
なら、ほんの少し自分達の気がすむ程度の仕返し…悪戯くらいしても構わない筈。
親戚で優しい長とルース様ならその程度許してくれる。
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