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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ
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コンコン
どこかでドアを叩く音がして目が覚めた。
あれからどの位時間が経ったんだろう。
隣を見ると相変わらず安らかな顔でルースが眠っていた。そんな場合じゃないのに、その綺麗な寝顔に見入ってしまう。
コンコン
催促する様に再びノック音がした。寝室の向こう、玄関からだった。
ルースを起こしたくなくて、急いで服を着ると玄関へ向かった。
ドアを開けると、見た事のないエルフの女性が立っていた。
薄い緑色の髪と目の綺麗な女性だった。女性が太陽を見て驚いた顔をする。
「あの…ルース様は?」
「ルースさんは今寝てて、起こして来た方がいいですか?」
「……」
女性がチラリと太陽の格好に視線を向ける。
服を着たものの慌てたせいで、ボタンが途中までだったし、服の裾も上に捲れていた。
それに気づいて、太陽は慌てて裾を直す。慌てて着たのがバレバレだ。
「ルース様がお休みなら、ちょうどいいですわ。貴方ともお話したいと思ってましたの」
女性がそう言って、花が綻ぶ様に笑った。
「私、ルース様の親戚にあたるマリィと申します」
「あ、俺は…セーヤです」
タイヨウと名乗りそうになってセーヤと言い直した。ルースから本名は伏せた方がいいと言われたからだ。
この世界は太陽と空の関係の様に、名で相手を縛ったり操ったりする術もあるらしい。
太陽の金の力を狙う者が知ったら悪用されかねないと教えてもらった。
「少しだけお邪魔していいかしら?用が済んだらすぐ戻ります」
ルースが寝てるのに、どうしよう、とふとマリィに背後に目をやると、少し距離をあけて、マリィ以外にも3人の女性がいた。
「セーヤ!そいつを中に入れるな。嫌な臭いがする」
空の声がした。
女性達のすぐ側の木から、銀の狼が飛び降りて来た。女性達がその姿に気づいて悲鳴をあげる。
マリィの背後まで来ると、空は人型に戻った。
「エルフの娘よ。オレの主に害をなす事は許さん。失せろ」
「な、何?魔物?こんなのが下僕なんて…あなたはやはり、黒の者だったのね!私は騙されてないんだから!」
言うと、マリィは太陽をドンと押すと無理やり部屋に入った。
そのまま走って白い壁に手をつく。そこに描かれた紋様を瞬く間に光を点らせると、太陽に向かって叫んだ。
「ルース様に近づかないで!」
一瞬、強い光が辺りを包んだ。反射的に閉じた目を恐る恐る開けると、部屋の中にマリィはいなかった。
開いていた筈の玄関も閉まっている。何が起きたかわからず、ドアを開ける。
外にはポツポツと民家が建っていた。エルフの里に来る前に見た南の街中だった。
「そんな…空?どこ?」
すぐ目の前にいた空もいない。ハッとして、玄関もそのままに、太陽は寝室へ駆け込んだ。
寝室にルースはいなかった。元々誰もいなかった様にベッドは綺麗な状態だった。
「ルースさん、何で?どこ?」
状況が理解出来なくて、思わずベッドを手で探る。無情にも柔らかいベッドの感触しか感じられなかった。
考えられるのは。こちらからエルフの里へ行った時の仕掛けを使って、太陽だけ里から追い出された、だ。
多分、ルースも空も向こうに残されたままだろう。
ならきっと、この家で大人しくしていれば2人が見つけてくれるかもしれない。
そこまで考えたところで、いる筈のない人の声が聞こえた。
「よぉ、可愛い子ちゃん。相変わらずルースに相手にしてもらえてないのかよ」
この声は。まさか。
信じられない思いで振り返ると、大男のラドが寝室のドアの所に立っていた。
「何でここに」
「ダメだぜ?玄関は開けっぱなしにしちゃあよぉ。襲われちゃうぜ?俺みたいのに」
舌舐めずりするその目は以前見たより明らかに濁っていた。
「く、来るな」
「安心しろよ。可愛がってやるからよ」
ラドが太陽の前までやってきた。
太陽も、逃げる様に移動したが元々出入り口はラドに押さえられていて、逃げ場が無い。
ジリジリと壁際に追い詰められた。
「本当はこの場で襲いたいけどよ。ルースが戻って来るかもしれないからな。もっと落ち着ける所でたっぷり可愛がってやるよ」
「な、誰が…」
全部は言えなかった。ラドが素早い動きで布で太陽の鼻と口を押さえたからだ。
何かの匂いがした。くらり、と目眩がする。ルースさん…たすけて…。
「お前は俺のもんだ」
ラドのその言葉を最後に、太陽は気を失った。
どこかでドアを叩く音がして目が覚めた。
あれからどの位時間が経ったんだろう。
隣を見ると相変わらず安らかな顔でルースが眠っていた。そんな場合じゃないのに、その綺麗な寝顔に見入ってしまう。
コンコン
催促する様に再びノック音がした。寝室の向こう、玄関からだった。
ルースを起こしたくなくて、急いで服を着ると玄関へ向かった。
ドアを開けると、見た事のないエルフの女性が立っていた。
薄い緑色の髪と目の綺麗な女性だった。女性が太陽を見て驚いた顔をする。
「あの…ルース様は?」
「ルースさんは今寝てて、起こして来た方がいいですか?」
「……」
女性がチラリと太陽の格好に視線を向ける。
服を着たものの慌てたせいで、ボタンが途中までだったし、服の裾も上に捲れていた。
それに気づいて、太陽は慌てて裾を直す。慌てて着たのがバレバレだ。
「ルース様がお休みなら、ちょうどいいですわ。貴方ともお話したいと思ってましたの」
女性がそう言って、花が綻ぶ様に笑った。
「私、ルース様の親戚にあたるマリィと申します」
「あ、俺は…セーヤです」
タイヨウと名乗りそうになってセーヤと言い直した。ルースから本名は伏せた方がいいと言われたからだ。
この世界は太陽と空の関係の様に、名で相手を縛ったり操ったりする術もあるらしい。
太陽の金の力を狙う者が知ったら悪用されかねないと教えてもらった。
「少しだけお邪魔していいかしら?用が済んだらすぐ戻ります」
ルースが寝てるのに、どうしよう、とふとマリィに背後に目をやると、少し距離をあけて、マリィ以外にも3人の女性がいた。
「セーヤ!そいつを中に入れるな。嫌な臭いがする」
空の声がした。
女性達のすぐ側の木から、銀の狼が飛び降りて来た。女性達がその姿に気づいて悲鳴をあげる。
マリィの背後まで来ると、空は人型に戻った。
「エルフの娘よ。オレの主に害をなす事は許さん。失せろ」
「な、何?魔物?こんなのが下僕なんて…あなたはやはり、黒の者だったのね!私は騙されてないんだから!」
言うと、マリィは太陽をドンと押すと無理やり部屋に入った。
そのまま走って白い壁に手をつく。そこに描かれた紋様を瞬く間に光を点らせると、太陽に向かって叫んだ。
「ルース様に近づかないで!」
一瞬、強い光が辺りを包んだ。反射的に閉じた目を恐る恐る開けると、部屋の中にマリィはいなかった。
開いていた筈の玄関も閉まっている。何が起きたかわからず、ドアを開ける。
外にはポツポツと民家が建っていた。エルフの里に来る前に見た南の街中だった。
「そんな…空?どこ?」
すぐ目の前にいた空もいない。ハッとして、玄関もそのままに、太陽は寝室へ駆け込んだ。
寝室にルースはいなかった。元々誰もいなかった様にベッドは綺麗な状態だった。
「ルースさん、何で?どこ?」
状況が理解出来なくて、思わずベッドを手で探る。無情にも柔らかいベッドの感触しか感じられなかった。
考えられるのは。こちらからエルフの里へ行った時の仕掛けを使って、太陽だけ里から追い出された、だ。
多分、ルースも空も向こうに残されたままだろう。
ならきっと、この家で大人しくしていれば2人が見つけてくれるかもしれない。
そこまで考えたところで、いる筈のない人の声が聞こえた。
「よぉ、可愛い子ちゃん。相変わらずルースに相手にしてもらえてないのかよ」
この声は。まさか。
信じられない思いで振り返ると、大男のラドが寝室のドアの所に立っていた。
「何でここに」
「ダメだぜ?玄関は開けっぱなしにしちゃあよぉ。襲われちゃうぜ?俺みたいのに」
舌舐めずりするその目は以前見たより明らかに濁っていた。
「く、来るな」
「安心しろよ。可愛がってやるからよ」
ラドが太陽の前までやってきた。
太陽も、逃げる様に移動したが元々出入り口はラドに押さえられていて、逃げ場が無い。
ジリジリと壁際に追い詰められた。
「本当はこの場で襲いたいけどよ。ルースが戻って来るかもしれないからな。もっと落ち着ける所でたっぷり可愛がってやるよ」
「な、誰が…」
全部は言えなかった。ラドが素早い動きで布で太陽の鼻と口を押さえたからだ。
何かの匂いがした。くらり、と目眩がする。ルースさん…たすけて…。
「お前は俺のもんだ」
ラドのその言葉を最後に、太陽は気を失った。
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