【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第五章 果てなき旅路より戻りし者

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 ルースは太陽を抱きしめたまま、再び口付けた。

 角度を変え、何度も口付けながら深めていく。

「は…ん、ルースさん…」

 太陽の悩まし気な声に、ハッとルースが我に返り慌てて太陽の上から飛び起きた。

「ルースさん?」

 乱れた息遣いに、紅潮した頬。潤んだ瞳でベッドに横たわった太陽が、ルースの名を呼んだ。

 駄目だ。このままだと流されて彼を抱いてしまう。自分の欲望を抑える為、ルースは深呼吸を繰り返した。

「ごめんセーヤ」
「どうして謝るんですか?俺はルースさんに抱いて欲しいです」
「まだ自分の気持ちが分からないんだ。だから抱けない」

 自分はこの少年に惹かれている。それは間違い無かった。

 でも時折、自分の中に浮かぶ人影がある。

 顔も覚えてないけど、とても大事な人だった。それが誰か分かるまでは、これ以上は踏み込めない。

「僕は暖炉の側で休むよ」

 ルースの言葉に、太陽が今にも泣きそうな表情を浮かべた。

 それを見るのが辛くてルースは逃げる様にベッドから離れた。



◇◇◇



 温かい…。

 温もりと人の気配に、ルースはぼんやりと目を開けた。

 暖炉の前で厚めの布で包まって考え事をしていたら、いつの間にかうたた寝をしてしまった。

 横を見ると、同じ様に布に包まった太陽がルースに寄りかかって寝ていた。

 全くこの子は。つい先程、危うく自分に襲われかけたのに、また無防備に。

 少しの呆れと、自分へのひたむきな好意がくすぐったい。

 ベッドに寝かせた方がいいのにー。

 太陽の温もりを感じさせる優しい香りが心地よくて、また微睡む。

 そういえば、今夜は何故、悪夢を見ないんだろう。東の結界のせい?それとも金の者が側にいるから?

 答えを出す前に、ルースは再び夢の中と旅立った。



◇◇◇



 カチャ カチャ コト

 食事の用意をしている音がした。

 部屋の中が明るい事で、夜が明けたのだと分かった。暖炉の火も消えていた。

 音につられて視線を向けると、金の髪の少年がテーブルに食事を並べているのが見えた。

 誰かと一緒に生活して過ごすのは、どの位ぶりだろう。ぼんやり思った。

 ルースが起きた事に気づいた太陽が、こちらを振り返った。

 朝の柔らかい空間の中で、綺麗な金の髪がきらめく。

「ルースさん、おはようございます」
「…おはよう」

 ルースの挨拶一つで太陽は嬉しそうに笑う。

「簡単ですけど、朝ご飯作ったんです」
「…ありがとう」

 ルースのお礼一つで太陽は幸せそうにはにかむ。

 こんなに真っ直ぐな好意。他の奴に渡したくない。彼が家族だと親しくしているソラやワルオにもー。

 だから早く、自分の中で答えを出さなければ。

 少しずつ自分の中に芽生えて来た想いを、ルースは自覚していた。
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