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番外編
そうだ、海に行こう!(後)
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ランに抱き潰された俺は、食べ損ねた朝と昼ご飯の調達に、街に繰り出した。
屋台では海鮮の香ばしい匂いが漂い、食欲をそそる。
シンプルに塩焼きの魚の串焼きを頬張った。
「上手いな。淡泊な身に塩が効いてる」
「うん、美味しい!」
もぐもぐ。
他にも海老や貝などを食べた。
そうしてひとまずお腹を軽く満たしてからギルドへ向かった。
昨日の苦情を言うためだ。
まあ、ギルドが悪いわけではないが、さすがにあの女はいただけない。
他にも不快に思う者がいるかも知れないしな。
ギルドに入ると昨日の今日だからか、視線は集まるものの声をかけるヤツはいなかった。
ランもあからさまにホッとしてる。
うんうん。
昨日のはウザかったもんな。
受付でギルマスの事を聞くと居るというので会えるか聞いてみた。
「お会いになるそうです。こちらへどうぞ」
案内されたのはギルマスの執務室。
綺麗に整頓されていて、見た目に反して几帳面なようだ。
「昨日振りです」
「おう、昨日は悪かったな。それでどうしたんだ? 何やら面倒ごとな予感がするが・・・」
「おや、面倒ごとだなんて。いやね、昨日ギルマスに言われて行った宿でいちゃもんつけられて。ていうか、言いがかり?」
「---は? あそこの女将はそんな人じゃないぜ?」
驚くギルマス。うん、それは俺も知ってる。
問題は受付の女なんだよなあ。
「あそこの受付のナターシャってヤツ。アレはダメ。アイツがいる限りあそこには行かない」
ランがブスッとしながら言った。
俺も同意見。
「俺を5年前に結婚の約束をした『ユーリ』ってヤツだと言い張って大騒ぎしたんだよ。最初から否定してんのに。おかげでランが殺気だって大変だった」
それを聞いてギルマスが苦い顔をした。
もしかしたら昨日今日に始まった事ではないのかも知れない。
「ユーリがハイエルフって分かって誤解は解けたけど、一言も謝らないし自分は悪くない、冒険者の癖に何様だってさ。あんなのが居たら悪い噂が立つんじゃないの?」
「いくら他のヤツらがいいヤツでもたった1人の悪評でガタ落ちするぞ。だから忠告にきた。後は知らん」
ギルマスが深い溜息を吐いた。
「・・・・・・すまない。アレはその、5年前からあんな感じで問題を起こして仕事もちょくちょく変わってるんだ。最近は大人しかったのに」
「ギルマスと何か関係が?」
「・・・俺の弟の子で、姪っ子なんだ。弟が甘やかしてしまって、我が儘に育ってなあ。母親が亡くなってるから厳しく言うヤツも居なくて貞操観念も緩く、5年前も騙されたんだと思うが」
体の関係を持って貢いで、商売が上手くいったら迎えに来るなんて言って去ったそうだ。
それって明らかに詐欺の手口。
たまたま俺に色合いが似てて愛称がユーリだったから本人かと思ったようだが。
いい迷惑だ。
「まあ、そう言うことなんで、よろしく」
「お邪魔しました」
「---ああ、すまなかった」
目に見えて落ち込んでるけど慰めないよ。
ギルドを出て海岸沿いに向かう。
いや、泳がないよ?
ただ、今世の海を見たかっただけ。
なのに何でこうなるかなあ・・・。
「クラーケンってタコ? イカ?」
「何だって?」
「・・・いや、ナンデモナイデス」
僕達の目の前には10mくらいあるクラーケンが何本もの触手をうねうねさせて漁師さん達を襲っている。
キモッ!
そんなプレイは小説の中だけでいいんだよ。
ブレスで焼いちゃっていいかな?
「ユーリ、クラーケンって美味しい?」
「へあ?!! 何言ってんの?! 食ったことないよ! そもそもそんなに遭遇しないって!」
「じゃあどうなってもいいよね?」
「え、どうするの」
「焼き殺してくる。ちょっと待ってて」
「はあ?!」
ユーリに断ってから久々に翼を出す。
二、三羽ばたいて空に飛ぶと、今世初のドラゴンブレスをお見舞いしてあげた。
もろに直撃を食らったクラーケンはブスブス焦げていい感じに焼きイカ?になった。
海に沈む前に異空間収納庫に仕舞ってユーリの元へ帰る。
「ただいま。クラーケンどうしよっか? ギルドで買い取ってくれるかなあ?」
「聞くだけ聞いてみるか。・・・・・・はあ、また逆戻り」
「お邪魔しました!」
漁師さん達、怪我の手当しないと。ポカンとしてちゃ駄目でしょ?
しょうがないなあ。
『エクストラヒール』
広範囲の回復魔法かけたからね?
「奇跡だ!」
「伝説の竜様!!」
なんか聞こえたけど知ーらないっと!!
「そういうわけでクラーケン買い取って」
「・・・・・・何がそういうわけだ・・・・・・」
ついさっき海にクラーケンが現れたと聞いて慌てて討伐隊を組もうとしていたら、竜が倒したと連絡が来て、はあ?となった。
竜と聞いて思い浮かぶのは1人だけだ。
ランと言ったか。
真っ白い髪と肌の綺麗な顔で、金色の瞳を持つ竜人。
ハイエルフの番い。
唖然として居るうちにギルドに戻ってきて、クラーケンを買い取れって・・・。
いや、買い取るけどさあ・・・・・・。
「すぐには報酬は用意できないから、明日来てくれると助かるが」
「買い取ってくれるならいいよ。どうせもう一泊するし。明日の朝、ギルドに寄ってから街を出ようか」
「そうだな。じゃあ明日」
そういって宿に帰った。
戦闘後の昂ぶりをユーリにぶつけて抱き潰してしまって、朝、怒られることになった。
ギルドで報酬を受け取って、さっさと街を出る。
行き先は特に決めてない。
ユーリとぶらぶら歩きながら、次はどこへ行こうか、なんて話しながらのんびり過ごす。
今度は寒いところでもいいかも、なんて思いながらユーリに口づけをした。
「なんだ、急に」
照れながら聞いてくるユーリに、何でもないと言いながら、幸せだなと思った。
余談だが、僕達が街を出た後、ナターシャは宿をクビになって、その後修道院に入れられたらしい。なぜかギルマスから連絡があった。
皆、迷惑していたようで、誰も引き留めなかったそうだ。
お花畑のおつむは一生治らないんじゃないかなと思うよ。
屋台では海鮮の香ばしい匂いが漂い、食欲をそそる。
シンプルに塩焼きの魚の串焼きを頬張った。
「上手いな。淡泊な身に塩が効いてる」
「うん、美味しい!」
もぐもぐ。
他にも海老や貝などを食べた。
そうしてひとまずお腹を軽く満たしてからギルドへ向かった。
昨日の苦情を言うためだ。
まあ、ギルドが悪いわけではないが、さすがにあの女はいただけない。
他にも不快に思う者がいるかも知れないしな。
ギルドに入ると昨日の今日だからか、視線は集まるものの声をかけるヤツはいなかった。
ランもあからさまにホッとしてる。
うんうん。
昨日のはウザかったもんな。
受付でギルマスの事を聞くと居るというので会えるか聞いてみた。
「お会いになるそうです。こちらへどうぞ」
案内されたのはギルマスの執務室。
綺麗に整頓されていて、見た目に反して几帳面なようだ。
「昨日振りです」
「おう、昨日は悪かったな。それでどうしたんだ? 何やら面倒ごとな予感がするが・・・」
「おや、面倒ごとだなんて。いやね、昨日ギルマスに言われて行った宿でいちゃもんつけられて。ていうか、言いがかり?」
「---は? あそこの女将はそんな人じゃないぜ?」
驚くギルマス。うん、それは俺も知ってる。
問題は受付の女なんだよなあ。
「あそこの受付のナターシャってヤツ。アレはダメ。アイツがいる限りあそこには行かない」
ランがブスッとしながら言った。
俺も同意見。
「俺を5年前に結婚の約束をした『ユーリ』ってヤツだと言い張って大騒ぎしたんだよ。最初から否定してんのに。おかげでランが殺気だって大変だった」
それを聞いてギルマスが苦い顔をした。
もしかしたら昨日今日に始まった事ではないのかも知れない。
「ユーリがハイエルフって分かって誤解は解けたけど、一言も謝らないし自分は悪くない、冒険者の癖に何様だってさ。あんなのが居たら悪い噂が立つんじゃないの?」
「いくら他のヤツらがいいヤツでもたった1人の悪評でガタ落ちするぞ。だから忠告にきた。後は知らん」
ギルマスが深い溜息を吐いた。
「・・・・・・すまない。アレはその、5年前からあんな感じで問題を起こして仕事もちょくちょく変わってるんだ。最近は大人しかったのに」
「ギルマスと何か関係が?」
「・・・俺の弟の子で、姪っ子なんだ。弟が甘やかしてしまって、我が儘に育ってなあ。母親が亡くなってるから厳しく言うヤツも居なくて貞操観念も緩く、5年前も騙されたんだと思うが」
体の関係を持って貢いで、商売が上手くいったら迎えに来るなんて言って去ったそうだ。
それって明らかに詐欺の手口。
たまたま俺に色合いが似てて愛称がユーリだったから本人かと思ったようだが。
いい迷惑だ。
「まあ、そう言うことなんで、よろしく」
「お邪魔しました」
「---ああ、すまなかった」
目に見えて落ち込んでるけど慰めないよ。
ギルドを出て海岸沿いに向かう。
いや、泳がないよ?
ただ、今世の海を見たかっただけ。
なのに何でこうなるかなあ・・・。
「クラーケンってタコ? イカ?」
「何だって?」
「・・・いや、ナンデモナイデス」
僕達の目の前には10mくらいあるクラーケンが何本もの触手をうねうねさせて漁師さん達を襲っている。
キモッ!
そんなプレイは小説の中だけでいいんだよ。
ブレスで焼いちゃっていいかな?
「ユーリ、クラーケンって美味しい?」
「へあ?!! 何言ってんの?! 食ったことないよ! そもそもそんなに遭遇しないって!」
「じゃあどうなってもいいよね?」
「え、どうするの」
「焼き殺してくる。ちょっと待ってて」
「はあ?!」
ユーリに断ってから久々に翼を出す。
二、三羽ばたいて空に飛ぶと、今世初のドラゴンブレスをお見舞いしてあげた。
もろに直撃を食らったクラーケンはブスブス焦げていい感じに焼きイカ?になった。
海に沈む前に異空間収納庫に仕舞ってユーリの元へ帰る。
「ただいま。クラーケンどうしよっか? ギルドで買い取ってくれるかなあ?」
「聞くだけ聞いてみるか。・・・・・・はあ、また逆戻り」
「お邪魔しました!」
漁師さん達、怪我の手当しないと。ポカンとしてちゃ駄目でしょ?
しょうがないなあ。
『エクストラヒール』
広範囲の回復魔法かけたからね?
「奇跡だ!」
「伝説の竜様!!」
なんか聞こえたけど知ーらないっと!!
「そういうわけでクラーケン買い取って」
「・・・・・・何がそういうわけだ・・・・・・」
ついさっき海にクラーケンが現れたと聞いて慌てて討伐隊を組もうとしていたら、竜が倒したと連絡が来て、はあ?となった。
竜と聞いて思い浮かぶのは1人だけだ。
ランと言ったか。
真っ白い髪と肌の綺麗な顔で、金色の瞳を持つ竜人。
ハイエルフの番い。
唖然として居るうちにギルドに戻ってきて、クラーケンを買い取れって・・・。
いや、買い取るけどさあ・・・・・・。
「すぐには報酬は用意できないから、明日来てくれると助かるが」
「買い取ってくれるならいいよ。どうせもう一泊するし。明日の朝、ギルドに寄ってから街を出ようか」
「そうだな。じゃあ明日」
そういって宿に帰った。
戦闘後の昂ぶりをユーリにぶつけて抱き潰してしまって、朝、怒られることになった。
ギルドで報酬を受け取って、さっさと街を出る。
行き先は特に決めてない。
ユーリとぶらぶら歩きながら、次はどこへ行こうか、なんて話しながらのんびり過ごす。
今度は寒いところでもいいかも、なんて思いながらユーリに口づけをした。
「なんだ、急に」
照れながら聞いてくるユーリに、何でもないと言いながら、幸せだなと思った。
余談だが、僕達が街を出た後、ナターシャは宿をクビになって、その後修道院に入れられたらしい。なぜかギルマスから連絡があった。
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