【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ

文字の大きさ
8 / 11
番外編

そうだ、海に行こう! (中)

しおりを挟む
「酷い妄想だと言ったんだよ、ナタリー」

女将の言葉に周りはポカンとした。
僕達も例外ではない。

「そ、そんな・・・酷いのは女将さんでしょ?! 何でそん・・・」
「だってその方『ユーリさん』じゃないもの」
「・・・・・・へ? だって、あの人がユーリって呼んで・・・え?」
「その方は以前からこちらの宿を利用して下さっている冒険者の方です。間違ってもあなたの言う『旅の商人』の『ユーリさん』では有りません。そもそも『ユーリさん』は人族でしょう?」
「そうですけど」

それを聞いて俺をチラッと見た2人・・・とその他大勢。
はぁっと溜息を吐いて髪をかきあげる。

「俺はハイエルフだ。人違いどころか種族違いだな。・・・・・・気は済んだか?」

エルフの特徴で有る長い耳を曝して告げる。

今度こそ女は黙った。

よし、誤解は解けた。
今のうちだな、と踵を返すと女将さんから声がかかった。

「大変ご迷惑をおかけしました。宿代は結構ですので、是非とも当宿でおもてなしをさせて頂けませんか?」
「断る。女将さんが悪いわけじゃないが、連れがとてもじゃないが拒絶しててね。今回は別の宿を取るよ」
「・・・・・・大変申し訳ございませんでした。次回はご利用頂けるように精進致しますので、どうかご容赦下さいませ」
「・・・・・・二度はないよ」
「ありがとうございます」

そう言って俺達が離れるまで頭を下げ続けた女将さんは出来た人だった。

でもあの女は駄目だ。
俺達は耳もいい。
聞こえてないと思っているんだろうが、しっかり聞こえてた。

『どうしてアタシが悪者みたいになってるのよ! ちょっと間違えただけじゃない! ただの冒険者なんでしょ?! 何様よ!』

自分は一つも謝らずに、自分の事だけ。
どっちが何様だ。

あの女がいる限りあそこには二度と近づかないと誓った。
ギルマスにも言っておこう。





結局、さっきの宿からかなり離れた高台の所にある、閑静な宿に泊まった。

値段はかなりしたが、稼いでいるので問題ない。
敷地内に10棟の離れが立っていて、一軒家のようだ。
食事は宿の中の食堂か、離れに運んで貰うかを選べる。俺達は今日は離れで取ることにした。
色々と疲れたのだ。

「・・・・・・はあ、なんだな、精神的に疲れたな」
「本当にね、せっかくの初日がアレって」

ランはめちゃくちゃ怒っていた。
周りに出る被害を考えてもの凄ーく我慢していたけども。

「先に湯を浴びてサッパリしよう。気分転換にもなるぞ」

ランにそう言うと、さんせーっ!と諸手を挙げてはしゃいだ。
そういうとこ、子供だな。言わないけど。

早速素っ裸になって湯船に飛び込むラン。
慎みとか羞恥心とかないんかい。
まあ、俺達には今更な話だけどな?

思わずいちゃいちゃしてしまったが。
夕ご飯の時間があるのでほどほどにして出た。

お風呂上がりに涼んでいると食事の用意をしに宿の従業員が来た。

「お食事のご用意をさせて頂きます」

そう言って手際よく皿を並べていく。
海の街なだけあって海鮮料理だ。
新鮮だからか、刺し身もあった。

ランが目を輝かせている。
早く食べたくてウズウズしているのが可愛い。

「後で伺いますので、食器はワゴンに乗せて廊下に出して置いて下さい」
「ありがとうございます」
「ではごゆっくりどうぞ」

そう言って去っていった従業員を見送り、料理に釘付けのランを見て苦笑した。

お預けされた竜って・・・・・・。

思わず『ヨシ!』って言いそうになっちゃったよ。

「ラン、料理は逃げないよ。ほら、頂きます」
「頂きます!」

早速、刺し身を一口。

「うんまあ---っ!」
「うん、美味い・・・ぅあ、ツンときた!」

わさびだっけ。
美味しいけど付けすぎた!

魚の煮付けも美味い。
ご飯にも合う。

「はー、食った。もう、無理」
「美味しかったねえ! 幸せだ」

ランの機嫌も直ったし、よかった。
じゃあ寝るか、となったときにランがギラリとした目をしていて、やばいと思った。

食欲が満たされて、今度は性欲かあ!

まあ、俺に拒否する気はないし、ランの好きにしてくれって感じで、はい。

朝までコースでした。
もちろん防音結界の魔法付きで。

その日は昼過ぎまで起きれなかったが。





ユーリが宿の受付の女に変な言いがかりをつけれた。

結婚の約束?

冗談じゃない!
ユーリは僕の番いなの!

イライラして殺気が漏れる。
でもここで大騒ぎにしたくない。我慢我慢!!

宿の女将が来て事態を収拾してくれた。

はあ?
人違いどころか種族違いって馬鹿なの?
どうせ顔しか見てないんだろう!
ユーリは確かに格好いいけどね!

それにしても結局謝るどころか悪態をつくばかりで駄目だね、あの女。

二度と見たくない。

結局、高台の閑静な離れのような造りの宿に泊まる事になった。
部屋に食事を運んでくれるって言うから頼んで、先にお風呂---!

テンションマックスで迎えたご飯は、SASIMIが!!
いや刺し身が!!
テンションおかしくて脳内もバグった。

ヒャッホイ!!
うまうま、サイコー!
ユーリも美味しそう・・・・・・。

ご馳走様の後にユーリも美味しく頂きました。

こっちもご馳走様!
朝までゴメンね?
 
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

当て馬系ヤンデレキャラになったら、思ったよりもツラかった件。

マツヲ。
BL
ふと気がつけば自分が知るBLゲームのなかの、当て馬系ヤンデレキャラになっていた。 いつでもポーカーフェイスのそのキャラクターを俺は嫌っていたはずなのに、その無表情の下にはこんなにも苦しい思いが隠されていたなんて……。 こういうはじまりの、ゲームのその後の世界で、手探り状態のまま徐々に受けとしての才能を開花させていく主人公のお話が読みたいな、という気持ちで書いたものです。 続編、ゆっくりとですが連載開始します。 「当て馬系ヤンデレキャラからの脱却を図ったら、スピンオフに突入していた件。」(https://www.alphapolis.co.jp/novel/239008972/578503599)

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

龍は精霊の愛し子を愛でる

林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。 その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。 王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。

悪役令息の兄って需要ありますか?

焦げたせんべい
BL
今をときめく悪役による逆転劇、ザマァやらエトセトラ。 その悪役に歳の離れた兄がいても、気が強くなければ豆電球すら光らない。 これは物語の終盤にチラッと出てくる、折衷案を出す兄の話である。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

異世界転生した悪役令息にざまぁされて断罪ルートに入った元主人公の僕がオメガバースBLゲームの世界から逃げるまで

0take
BL
ふとひらめいたオメガバースもの短編です。 登場人物はネームレス。 きっと似たような話が沢山あると思いますが、ご容赦下さい。 内容はタイトル通りです。 ※2025/08/04追記 お気に入りやしおり、イイねやエールをありがとうございます! 嬉しいです!

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

処理中です...