1 / 52
その日、僕は人生をRestartした
しおりを挟む僕の名は御堂瑠華。17才。
---暗い森の中、僕はひたすら走っていた。
・・・もうあの家にいるのはイヤだった。
僕の家は古くからある旧華族の名家で、資産家だ。
跡取りとして、生まれた時から全てを言われたとおりに熟して言われた以上の成果をあげて。
愛情なんてお互い無かったけど。
家の為って言われて頑張ってきたのに。
母が病気で亡くなると直ぐに後妻と僕より一つ下の少年を家に入れて。
『お前の腹違いの弟が跡取りだ』
『お前は外に出す。家同士の繋がりのためにな』
そういって勝手に婿養子先を決めるだなんて。
いくら政略結婚で愛がない女の子供だからってあんまりじゃないか。
それなら最初からその子を認知して教育すれば良かったんだ。
静かに怒っていたから周りは気付かなかった。
この時すでに、僕の心は折れたんだ。
もうこんな家の為に生きてやるものか!
大人しく部屋に戻ったふりをして、動きやすいデニムにパーカー、スニーカーを身に着けて。
ポーチにサイフとスマホ・・・はGPSで居場所が知られるから置いていく。
鍵の付いた引き出しから二つの指輪を通したプラチナのチェーンを取り出す。
これは母さんが実家から持ってきた、母さんの家で代々受け継ぐ指輪だ。
『大切な人が出来たら、その人に渡しなさい』
そういって、死ぬ間際に僕にくれた。
・・・母さん、二つ揃ってるって事は、父さんは母さんにとって大切な人じゃ無かったんだね。
・・・まあ、政略結婚で愛してくれずに浮気してるヤツなんて大切じゃ無いよね。
母さんだけは僕を確かに愛してくれていた。
僕を可愛がると父さんが不機嫌になるから人前では顔に出さなかったけど。
亡き母の形見のチェーンを首にかけてこっそり部屋を出る。
警備の目をかいくぐって屋敷を出ると、往来でタクシーを拾い、街外れの神社に向かった。
神隠しの神社として有名なところだ。
鳥居を潜って石段を登っていく。
息を弾ませながら登り切り、もう一つの鳥居も潜って・・・・・・。
顔をあげたら、そこは見たことのない薄暗い森だった。
咄嗟に振り向けば、今しがた潜った鳥居の影も形も無く、鬱蒼と生い茂った木々のみ。
「・・・・・・深い森だから暗いのか? うん? なんか月らしいものが二つあるような・・・夜??」
あれ、さっきまでは遅くても夕方だったはず。
そもそも月が二つって時点でおかしい。
でも僕にはそんな些細な事より、二度とあの家には戻らなくてすむかも、という事の方が重要だった。
とにかくこのままここに留まって居ても仕方がない。
噂通りの神隠しなら、ここは僕が居た世界とは違うところかもしれない。
だとすると常識が当て嵌まらない方が可能性としては高い。
方角は北極星を目標に、とか。
当て嵌まりそうもないかな。
そもそも北極星なんて見当たらないから。
仕方なく、月を目標に歩き出す。
月が地球と同じく東から南経由で西に沈む事を祈ろう。
やがて小さな沢にあたり、おそるおそるひと舐めすると普通に美味しい水のようだったので、意を決して飲んだ。
ひと心地ついて少し休憩していると、遠くで狼のような遠吠えが聞こえた。
ハッとして足を動かして沢から離れる。
動物たちも利用するだろう沢に肉食獣が来るのは当然だ。
そこを狙われてはたまったもんじゃない。
足早に立ち去るが気付かれたようだ。
「っマズい」
そこからは無我夢中だった。
慣れない森の中、後ろを気にしながら闇雲に走る。
狼は何頭か居て、徐々に僕の周りを取り囲むように追い詰めてきた。
思わず後ろを振り返った瞬間。
「!!」
僕の踏み出した足は空を切り、ガクンと自由落下した僕は咄嗟に頭を抱え込んだ。
茂みに隠れてなだらかな崖になっていたようだ。
逃げるのに必死で気付かなかった!
体のあちこちを転がりながらぶつけ、痛みに呻く。
幸い狼は追ってこないようだ。
助かった・・・。
しばらく転がって、最終的に何処かの木の根元に背中を強打して止まったようだ。
その時にはすでに、瑠華の意識はほとんど無かった。
狼の遠吠えではない誰かの声が聞こえた気がした・・・・・・。
1,448
あなたにおすすめの小説
不遇聖女様(男)は、国を捨てて闇落ちする覚悟を決めました!
ミクリ21
BL
聖女様(男)は、理不尽な不遇を受けていました。
その不遇は、聖女になった7歳から始まり、現在の15歳まで続きました。
しかし、聖女ラウロはとうとう国を捨てるようです。
何故なら、この世界の成人年齢は15歳だから。
聖女ラウロは、これからは闇落ちをして自由に生きるのだ!!(闇落ちは自称)
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
婚約破棄された令息の華麗なる逆転劇 ~偽りの番に捨てられたΩは、氷血公爵に愛される~
なの
BL
希少な治癒能力と、大地に生命を呼び戻す「恵みの魔法」を持つ公爵家のΩ令息、エリアス・フォン・ラティス。
傾きかけた家を救うため、彼は大国アルビオンの第二王子、ジークフリート殿下(α)との「政略的な番契約」を受け入れた。
家のため、領民のため、そして――
少しでも自分を必要としてくれる人がいるのなら、それでいいと信じて。
だが、運命の番だと信じていた相手は、彼の想いを最初から踏みにじっていた。
「Ωの魔力さえ手に入れば、あんな奴はもう要らない」
その冷たい声が、彼の世界を壊した。
すべてを失い、偽りの罪を着せられ追放されたエリアスがたどり着いたのは、隣国ルミナスの地。
そこで出会ったのは、「氷血公爵」と呼ばれる孤高のα、アレクシス・ヴァン・レイヴンだった。
人を寄せつけないほど冷ややかな瞳の奥に、誰よりも深い孤独を抱えた男。
アレクシスは、心に傷を抱えながらも懸命に生きようとするエリアスに惹かれ、次第にその凍てついた心を溶かしていく。
失われた誇りを取り戻すため、そして真実の愛を掴むため。
今、令息の華麗なる逆転劇が始まる。
運悪く放課後に屯してる不良たちと一緒に転移に巻き込まれた俺、到底馴染めそうにないのでソロで無双する事に決めました。~なのに何故かついて来る…
こまの ととと
BL
『申し訳ございませんが、皆様には今からこちらへと来て頂きます。強制となってしまった事、改めて非礼申し上げます』
ある日、教室中に響いた声だ。
……この言い方には語弊があった。
正確には、頭の中に響いた声だ。何故なら、耳から聞こえて来た感覚は無く、直接頭を揺らされたという感覚に襲われたからだ。
テレパシーというものが実際にあったなら、確かにこういうものなのかも知れない。
問題はいくつかあるが、最大の問題は……俺はただその教室近くの廊下を歩いていただけという事だ。
*当作品はカクヨム様でも掲載しております。
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
文章がおかしな所があったので修正しました。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄をするから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
婚約破棄署名したらどうでも良くなった僕の話
黄金
BL
婚約破棄を言い渡され、署名をしたら前世を思い出した。
恋も恋愛もどうでもいい。
そう考えたノジュエール・セディエルトは、騎士団で魔法使いとして生きていくことにする。
二万字程度の短い話です。
6話完結。+おまけフィーリオルのを1話追加します。
龍は精霊の愛し子を愛でる
林 業
BL
竜人族の騎士団団長サンムーンは人の子を嫁にしている。
その子は精霊に愛されているが、人族からは嫌われた子供だった。
王族の養子として、騎士団長の嫁として今日も楽しく自由に生きていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる