【完結】妖精は竜に抱かれて夢を見る

エウラ

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番外編

前世リノの両親(前)

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俺は、リノの前世の竜人の卵のことが頭に引っかかっていた。
だから、アルフに頼んで、リノの容姿に似た竜人の調査をして貰っていた。

リノが生まれてからあの泉でどれ位の時が経ったのかはっきりしないが、竜人族はあらゆる種族の頂点にいて一番長命だ。
探せば白竜の中で卵が孵らなかった者がいるかも知れない。

出来ればその竜人にリノを会わせてやりたいと思う。
自己満足かもしれないが。

もし見つかったら、リノと白竜双方合意の元、引き合わせてあげたい。



一方で、この間ヴァルツの邸に突撃した竜王も心当たりがあったようで、こちらも独自に動いていた。

「どうだ? 白竜の中で過去に卵が孵らなかった者はいそうか?」
「おおよそ絞り込めましたが、いかが致しますか?」
「ん・・・、一度ヴァルツにも知らせて精査しようか。私としては彼らのような気がするが」
「勘ですか」
「勘なんだよね。だから確証がなくて」

でも、あのリノの容姿に一番似通っているのが彼らなんだよね。
ヴァルツも薄々気付いていそうだけど。



かくしてヴァルツと竜王の協力なタッグの元、さほどの時間を待たずにリノの前世の両親であろう白竜の竜人が特定されて。

竜王の私室に通された白竜の番いが困惑気味にソファに座っていた。
向かいには竜王陛下と第三王子のヴァルツ殿下が、その後ろには近衛騎士二名にヴァルツ殿下の側近。

私的な謁見とはいえ、何故自分達が呼ばれたのか理由を知らされていないのだ。

「そう固くなるな。久しぶりだな、リコリス、ノルム」
「陛下も恙無く・・・。それで、あの、今回は一体どのようなご用件で?」
「ああ、少し確認したいことがあってな・・・」

この白竜二人は私の父、先王の友人の息子夫夫で、私とも幼馴染みのような関係だった。
私にとって気の置けない親友だ。

「確認したいこと、ですか?」

リコリスが不思議そうに首を傾げる。ノルムも何のことか分からないようだった。

「うん、ああ、ここでは普通に話してくれ。敬語は無しでいいね。それと、確認事項は少し・・・君達には辛い事を思い出させてしまう事なんだけど・・・」

そう言ったら、直ぐにピンときたらしいリコリスが少し眉を寄せた。

「もしかして、卵の事・・・かな?」

ノルムも悲しそうな顔になった。
あの時のことを思い出したのだろう。

「何で今頃・・・。ずいぶん前の事だけど、俺達にとってはついこの間のような、辛い事だったんだ。そっとしておいてくれ」

苛立ちを隠さないリコリスに近衛騎士がピクッと反応するがそれを手を挙げて制する。
ヴァルツは無言で成り行きを見守っている。

「分かっているさ。長命が故に滅多に生まれない卵だ。その辛さは失った者しか分からないだろう事も・・・。だが、傷を抉るようだがそれでも確認しなくてはいけないことなんだ。頼む」

そういってヴァルツと共に頭を下げた。
コレには近衛騎士のみならずリコリス達もびっくりして、慌てて頭をあげるように言った。

王族が簡単に頭を下げてはいけないのだから。

だが、それで事の重大さが分かったのか、リコリス達の雰囲気が少し固くなった。

「・・・・・・一体何だというんだ。俺達の卵に何があるというんだ?」
「---『リノ』」
「!!」
「生まれた卵にそう名付けて温めていた、そうだよな?」

ヴァルツには知らせていなかった事柄。
故にヴァルツも瞬時に反応した。

「・・・そうだ。いつも、何度も、そう呼びかけて大切に温めていたんだ。・・・なのに孵ることが出来ずに、砂になって崩れてしまった。・・・俺達の大切なリノ

「父上・・・」
「・・・ああ、おそらく間違いない」
「・・・・・・何の話だ?」

私達は確信し、リコリス達に詳しく話すことにした。

「ヴァルツが最近番いを得た」
「ヴァルツ殿下が・・・おめでとうございます。でもまだ公表をしていないのだろう? 初めて聞いた」
「俺の番いは『妖精族』なんだ。それも前代未聞なんだが、妖精族としてはかなり力の弱い、本人曰く『出来損ない』と・・・」
「そんなことが・・・でもそれと卵の事とどう関係が?」
「・・・『リノ』と言うんだ。番いの名は」
「・・・え?」

リコリス達が息を呑む。

「・・・リノは前世の記憶があって、自分は孵らなかった竜人の魂で、魂のまま彷徨ってたまたま魔力の塊と融合し、妖精族として生まれ直したと。今の容姿は竜人の魂の記憶で作られたものだから羽が2枚なんだと・・・」

ヴァルツが淡々と語ったそれに、リコリス達の目が驚愕に彩られた。
期待と不安、しかし有り得ないという色。

「・・・・・・ま、まさか・・・その子は・・・」
「・・・色も顔の造りも、お前達にそっくりなんだ。だからもしかしてと、探していた。リノの前世での両親を」
「リノが会いたいと言ったら、会ってくれるか?」

私の問いに、震える声で「是」と応えた。






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