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2 優しい世界
しおりを挟む自分が死んだ事は覚えている。
でも当然、その後何があったのかは分からない。
「・・・・・・死んで生まれ変わった、のかな? でも樹希として生きた記憶はあるんだけど、ここで生きてた記憶は無いなあ・・・」
多分だけど、ちょっと死んだときより若い。
15歳くらい?
精霊さんを知って、いわゆる異世界ものの小説とか中古で買って読んでたから、神様には会わなかったけど、きっとこれはちょっと若返ってからの異世界転生だと思う。
それで今、僕がロッジで目を覚ましたのが、朝の7時頃かと思われる。
どうして時間が分かるかというと、ベッドの横のサイドテーブルに時計のようなものがあり、知らない文字や数字なのに何故だか読めるソレを見ると、中に浮かんでいる浮き球の数字が7となっているからだ。
そしてその道具が水時計だと頭に知識が浮かぶ。
知らない知識が何故か頭にあった。
少し考えると、パッと浮かぶ知識。
この世界の名前はユトピア。
このロッジはかつてこの森や山を管理していた人が代々住んでいた家。
元々この場所は精霊の森と呼ばれ、何処の国も関与出来ない不可侵の領域だそうだ。
精霊が気に入った者を喚んで住まわせて、森を手入れして貰っていた。
だが今は誰も管理しておらず、森林は結構荒れているらしい。
「何で僕がここにいるのか分からないけど、ようはここに住んで精霊達が居心地良く棲みやすいように森の手入れをするのが仕事って事かな?」
そう呟くと、いつの間にか集まっていた光達がピカピカチカチカしながら『そうだよ』と言っていた。
「・・・君達、もしかしてあの時の精霊さん?」
小さい頃からずっと側にいた精霊達。
『そうよ。イツキが死んじゃった後、一緒にこの世界に連れて来て貰ったの』
『ユトピアの神様、優しい』
『精霊の仲間、いっぱい。この世界、イツキに優しい』
『よかったね、イツキ。何にも気にしなくていいんだよ』
「・・・・・・そっか。うん、分かった。なるほど、神様が僕のためにこの世界のいろんな知識を与えて転生してくれたんだね。ありがとうございます、ユトピアの神様」
《とんでもない! こちらこそありがとうだよ!》
「えっ?!」
何気なく口に出して拝んだら、急に誰かの声がしてびっくりした。
『あっ、神様だ』
『ユトピアの神様!』
『神様ありがとう!』
『イツキと一緒、ありがとう!』
《どう致しまして。こちらこそ、精霊の森の管理者にぴったりのイツキが来てくれて嬉しいんだよ!》
「えっ・・・と?」
僕が戸惑っていると、神様が静かに話し出した。
《実はね、森の管理者には森人が一番適任なんだけど、色々あって長い年月で数が減ってしまってね。今じゃ100人いるかどうかってくらい少ないんだ。だからこの森に独りで長く住まわせるのが可哀想で・・・》
もの凄くしょんぼりしている神様。
ええと、つまり、数が少ない上にここに一人で連れて来たら子供を作ることが出来ないから、さらに少子化・・・って事か?
「二人でとか、家族で纏めて住んで貰って、とかは出来ないんですか?」
《それがね、今はかなりの高齢か、子供が数人、まだ小さい子達で親も子供にかかりきりなエルフしかいなくて・・・》
うわあ、過疎化の進んだ限界集落・・・。
「エルフさんって、僕の知ってる小説みたいに長生きで精霊達と仲良しで美人さんで、でも子供が出来にくいって感じですか?」
《! そうなんだよ! 長生きな種族って子供が出来にくいんだよね・・・それに一部の悪い考えのヤツらが攫ったりして酷い目に・・・》
───うわあ、それって小説みたいに奴隷とかって事でしょ?!
知識で奴隷制度が出て来てぞっとした。
《でね、君を地球の神から託されたときに、君がエルフの血を引く人間だって分かったんだ》
「・・・えっ?!」
・・・・・・僕が、エルフの血を引いてる?!
《そうなんだよ、ごく稀に時空の歪みで神隠しにあう者がいて、おそらくエルフが一人地球に飛ばされたんだと思う。そのエルフが地球の誰かと子供を作って、その子孫が君だったんじゃないかな》
「・・・・・・もしかして僕が精霊を見ることが出来たのって・・・」
《十中八九その血を引いてるせいだろうね》
・・・・・・マジか?!
捨て子で早世した幸薄い僕が実は異世界人との混血だったなんて、盛りすぎだろう?!
思わず唖然としてしまったのだった。
《君が亡くなった後、地球の神様が君のご両親を調べてくれたようだけど・・・知りたい?》
「えっ」
思わぬ言葉に一瞬言葉を失った。
知りたい。
でも、要らない子だって捨てられたなら・・・?
ずっと気にしないようにしていた。
怖い・・・。
でも・・・知りたい。
ここには僕の精霊達がいるから・・・。
「知り・・・たい、です」
《・・・・・・うん、じゃあ結論から言うね。君は望まれて生まれてきた子だった》
「───ぇ・・・」
望まれて・・・?
でも、じゃあ、何で?
《うん。ご両親は・・・お母さんの方だけど、エルフの血を継いでいて、君のような美人さんだった。お父さんとは相思相愛だったんだけど、お母さんに横恋慕した男がご両親を襲って・・・出産直後で逃げ切れないと判断して君を施設の前に置いて男を引きつけようと逃げて・・・交通事故で二人とも亡くなったそうだ》
「・・・・・・事故・・・」
《それも目撃者がいて、男がご両親を車道に突き飛ばしたって。だから男は殺人の罪で服役中だよ》
僕が話を噛み砕いて呑み込むのを待ってから神様が告げた。
《君はご両親や精霊達に愛されて、今、ここにいるんだ。だからね、ここで幸せに暮らして欲しいな》
「・・・・・・はい」
いつの間にかぼろぼろ、大粒の涙を溢していた僕は、神様に抱き締められて涙が枯れるまで泣きじゃくった。
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