優しい庭師の見る夢は

エウラ

文字の大きさ
24 / 102

23 シュルツの家族 2(sideシュルツ)

しおりを挟む

精霊の森から飛び立って竜帝国のシュヴァルツ家実家に向かうシュルツ。

先ほど飛び立つ前に父であるゼクスに通信を入れておいたので、自分が邸につく前には仕事を片付けて待っていることだろう。


───それにしても・・・。

イツキの魔法の才は底知れない。

転移の魔法など、名のある高位の魔導士でも両手で数えるくらいしか使い手はいない。
大陸で一番の国土と軍事力を有する竜帝国でさえ、お抱えの帝国魔導士の中で二人だけだ。

そんな二人さえも凌駕するほどの腕前・・・。

幾ら精霊王の力を借りたとはいえ、最初に魔石を手に取ったときの衝撃と言ったら・・・。

これでただの練習で魔法を籠めた?
嘘だろう?

純度の高い掌サイズの魔石にぎりぎりの量で高密度の魔力を注いであった。
そこに目視できないほどの精緻な転移魔法の魔法陣がびっしり転写されていて。

そこにどうやったのか、闇の精霊王ダルクの指示の元、魔法陣を描き換えたり追加したり。
なんてこと無いようにサラサラと・・・。

おそらく、比較するものが無いため本人は気付いていないのだろうが・・・。

・・・本当にイツキが善良なエルフで良かった。

そもそも精霊の森の【管理者】はそういう心根の者が喚ばれるそうだから当然と言えばそうなのだが・・・。

イツキには申し訳ないが、やはり迂闊に精霊の森からは出せないな。
危険すぎる。

そう思う心の内には、実は本人にも自覚のない独占欲が十二分に入っていたのだが・・・。
真面目で今まで浮いた話も無いシュルツは、そういう恋愛感情にもの凄く疎かった。



そうして凄い速さで翔んで行くことおよそ3時間。
竜帝国の外門に着いたシュルツは竜人の姿に戻り、門衛にギルドカードを提示して城下街に入った。

別にギルドカードを見せなくても門衛はシュルツがSランク冒険者でわが国の宰相閣下の次男だと知っているが、そこはキチンとお役所仕事なので確認はしっかりとする。

「さて、父上は在宅かな?」
『先ほどお戻りです』
「そうか。じゃあ、まっすぐ帰宅しても問題ないな」

当然のように側に控えた公爵家の影が告げた言葉に、ちょうど良いと早歩きで向かった。

そうして邸に戻ると、執事長のスミスがすでに待機していて、ゼクスが待つ執務室へと案内された。

執務室では公爵家の書類仕事をしていたらしいゼクスが、シュルツを見てキリのいいところで手を止めた。

「やあ、お帰り。10日振りくらい?」
「ええ、そうですね。急で申し訳ありません」

二人は挨拶もほどほどにソファに移動してスミスに淹れて貰ったお茶を飲んだ。

「・・・で?」
「先日、父上がイツキに会いたいと言ってたでしょう? その件をイツキに話したら精霊王に声をかけてくれて、会えることになったので」
「・・・え、もう?!」

思わず腰を上げるゼクスに苦笑したシュルツ。

「ええ。それで詳しい話をしに来ました。兄上は・・・?」
「今、こちらに向かっている。少し待て・・・ああ、来たな。入っていいぞ」

兄の所在を訪ねていると、ちょうど来たので部屋に通す。

「やあシュルツ、久しぶり」
「久しぶりです、アハト兄上」
「───じゃあ、その詳しい話を聞かせて貰おうかな」
「・・・何の話です、父上?」

話が見えないアハトにシュルツが最初から伝える。

「イツキに会う手段を持って帰ってきました」
「え? もう?!」

父親と同じ反応にシュルツは笑った。

「まずは父上と兄上、後は影の者でイツキに付けられる者限定で、会って頂きたい。場所は精霊の森の【管理者】のロッジです」
「・・・私達が行くんだね?」
「ええ、申し訳ないのですが、なので今はとにかくイツキを外に出せないのです」

シュルツがそう言うと、父達は思案顔になった。

「危険な意味は色々とありそうだが・・・そうだね、こちらから訪ねた方が良いだろう。影はすでに選定済みだ。構わないよ」
「ありがとうございます。ではここからは他言無用で。誓約魔法を使わせてもらいます。影は・・・」
「すでに公爵家に雇う時点で誓約魔法で縛ってあるから他言出来ないよ、大丈夫。私とアハト、今はスミスもいるがこの3人で良いか?」

側で控えるスミスも頷いたので、では、と誓約魔法を発動した。

「ありがとうございます。実は移動にはコレを使うのです」

そう言ってマジックバッグからあの魔石を取り出した。

テーブルの上にそっと置くと、父達は目を瞠った。

「───シュルツ、これは・・・」
「イツキが作った、転移魔法を組み込んだ魔石です」

それを聞いた全員が絶句した。

「だからだと申し上げたのです」

シュルツは真顔でそう言った。







※寝落ちて書き上がらず、遅くなりました。













しおりを挟む
感想 234

あなたにおすすめの小説

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい

発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』 そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。 そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。 あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。 「あ、こいつが主人公だ」 超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー

【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません

ミミナガ
BL
 この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。 14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。  それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。  ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。  使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。  ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。  本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。  コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

処理中です...