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38 続・竜皇帝アウトクラトル
しおりを挟む「───つまり?」
「精霊の森の【管理者】が次男の番いです」
「何故報告しなかった?!」
「あの時はまだはっきりとは分かりませんでしたので」
アウトクラトルの叫びをしれっと流してそう言うと、ゼクスは神妙な声で続けた。
「言っておきますけど、邪魔はしないように。くれぐれもよろしくお願い致しますよ。【管理者】殿は貴方と違って小柄で細くて純真なハイエルフなんです。先に上げた報告書にありましたよね? 奴隷狩りの被害者の可能性を」
「───ああ、覚えている。だからこそ、あんなに大柄な竜人を怖がらないかと、心配なんだ。シュルツはガッチリ体型だったろう?」
アウトクラトルも真面目な顔で言った。
エルフのイツキにとっては誰でも大柄な種族に見えるだろう。
時々摘発される奴隷狩りの組織のヤツらも皆、似たような大柄な者だし。
しかし・・・イツキにとってはシュルツの大きな体は逆に安心感を齎すような感じだった。
そしてそれはやはりシュルツ限定で、番いの本能なのだろう。
「イツキ殿はシュルツに何時も抱きかかえられて運ばれていますし、同衾も当たり前にしてますし、食事も膝の上でシュルツに給餌されて、何なら入浴も・・・おっと、話しすぎましたね」
わざとらしく口を押さえて目を逸らすゼクスにアウトクラトルはイラッとした。
「オイコラまて。何だソレは! 羨まけしからん!! ていうかソレを【管理者】殿は、イツキ殿は許容しているのか!」
「ええ。この間、崖から落ちて溺れかけたのでシュルツの過保護に拍車がかかってまして・・・」
「───は? 落ちた? 溺れた? ・・・エルフが?」
アウトクラトルだけでなく、黙って聞いていたドレイクも唖然としていた。
「・・・・・・彼の方は、エルフらしからぬ鈍臭さ・・・ああいえ、運動音痴・・・まあ・・・とにかく目を離せば躓いたり転んだり、なので必然的に抱っこ移動になるようで・・・」
言いながら若干遠い目になるゼクスに訝しげなアウトクラトル。
「・・・・・・本当にエルフなのか?」
「・・・・・・エルフもエルフ。ハイエルフですよ。ただ、エルフらしい生活をしてはいなかったようでしたので、そのせいなのか先天性のものなのかは分かりかねます。とにかくその辺りは刺激したくないのです。本人が言いたがらないので、深く追及はしておりません」
含みを持たせたような言い様にアウトクラトルも思うところがあったようで・・・。
「・・・そうか。そうだな。今は幸せなんだな?」
「ええ。そう聞いております」
「なら、良い。しかしそうか・・・シュルツに番いねえ・・・。そういえばシュルツにウサギのぬいぐるみを貰ったそうだな?」
そう言って、話の矛先を別に向けてきたのだが・・・。
無表情で応えるゼクスに噂を尋ねるアウトクラトル。
「・・・そうですね」
「そのぬいぐるみに奥方の名を付けて呼んでいるとか」
「・・・・・・そうですね」
「───マジか?!」
是と聞いたアウトクラトルはぱあっといい笑顔になった。
「マジですが何か? 悪いですか? 白い毛並みにガーネット色の瞳でとっても愛らしいウサギですが? めちゃくちゃ不審者を撃退して頼もしいですが?」
「へー、そうなんだー、奥方そっくりな色で撃退・・・・・・撃退? はあ?」
ニヤニヤ笑いながら聞いていたアウトクラトルは、ある一言に引っかかりを覚えた。
「・・・・・・ぬいぐるみ、だよな?」
「ええ」
「撃退って何だ?」
「読んで字の如くですが?」
「ぬいぐるみだろ?!」
「ええ、ぬいぐるみです。・・・・・・もう良いですか良いですよね、じゃあ戻ります。では」
アウトクラトルがボケッとしているうちに有無を言わせずサッサと部屋をあとにしたゼクスをドレイクと一緒に見送ってから、二人で顔を見合わせて・・・。
「意味が分からん」
「私もです」
公爵家の面々にしか分からない話であった。
「でもまあ、ちょっと、いやだいぶ、そのイツキ殿に会いたくなった」
歳が近いのと高位貴族だったために学友として良く一緒につるんでいたアハトとシュルツ。
シュルツは冒険者としてあちこち飛び回っているからここ暫くはあまり顔を合わせていない。
そのシュルツが番いを得たと聞き、今回無理に宰相に話を聞いたわけだが・・・。
「・・・まさかねえ」
「竜帝国にとっては喜ばしいことですが・・・」
「うん、まあ・・・。他所の国とか、黙っちゃいないんだろうな。でもシュルツだよ? Sランク冒険者だよ? おバカでもなきゃ、手は出さないと思うんだけどな・・・」
「どこにでもバカはいるもんですよ」
呆れたように言うドレイクに、それもそうかと思う。
「こっちも色々と警護が必要だな」
「しっかり手配致しますよ」
ニヤリと笑う。
こちらも腹黒い竜達だった。
※急な身内の体調不良に執筆出来ませんでした。今は落ち着いたので大丈夫です。
でも今週はなかなか難しいかもです。
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