58 / 102
57 ノンノン、ナニかを生み出す 2
しおりを挟む「だーかーらーっ!! ホントなんですってば!!」
「『よっ!』って、『おっひさー』って言ったんです!!」
「あーはいはい。分かったから仕事しなさいね」
「「絶対、信じてなーい!!」」
執事長のスミスに適当に流されて、ぶうぶう文句を言いつつも仕事に戻っていく使用人達を見送り、溜息を吐く。
「まあ、喋っても不思議では無いのですが・・・」
本当にあのウサギのぬいぐるみは亡き奥方様に見た目も行動もそっくりなので有り得無い話では無いのですが・・・。
そもそも、あのウサギのぬいぐるみは【管理者】イツキ様が錬金術で造った上に、転移魔法陣を刻んだ魔石が万能霊薬の材料の一つという稀少なモノ。
その事を知るのは公爵家当主と御子息様方二人、イツキ様の専属護衛の影5人、そして執事長である私のみ。
それ故、私達以外の者はただの動くぬいぐるみという認識のため、最初は皆、普通のぬいぐるみなのだと思っていました。
シュルツ坊ちゃまが旦那様のために奥方様に似せたぬいぐるみを御用意なされたのだとほのぼのとしていましたが・・・。
深夜の徘徊での不審者撃退や先頃のイツキ様奪還の様子に、奥方様降臨を疑いだした使用人達。
そこへ来て先ほどの「喋った」騒動・・・。
そして最近奥方様のお部屋へ出没しているとの影からの情報。
---影達も、あまり近付くと気配を察知されて威圧されるため、近寄れないのだとか。
ますます奥方様降臨説、有力ですね。
一体何をしておられるのか・・・。
一方その頃、生前ノインが過ごした公爵夫人の部屋で、ノンノンは一心不乱に手を動かしていた。
恐るべき速さで作成しているソレは、自分に似たウサギのぬいぐるみ二つ。
一つは金茶色に新緑色の瞳で、もう一つは薄い金色に右目が黒で左目が翠。
サイズは自分の身長の半分くらい。
---そう、イツキとギルミアにプレゼントするぬいぐるみ・・・自分の分身を縫っていたのだ。
生前のノインは武闘派だったが、実は裁縫が得意で、可愛らしいモノも大好きだった。
なので人形を作ったり、更には髪飾りや衣装などの小物も作って着せたりしていたのだ。
その腕を活かして息子達の可愛い番い達に自分のような、護衛も出来るぬいぐるみを作ろうと思い立ち・・・。
そのまま残っている公爵夫人の部屋で裁縫をしていたのだ。
幸いなことに材料もそのまま保管してあったので、気兼ねなくバンバン使う。
そして完成したぬいぐるみに入れるため、空の魔石に自分の魔力を分け与えた。
---この場合はノンノンの中の転移魔法陣を刻んだ魔石の魔力だが・・・。
そのお陰で、ノンノンよりは劣るが彼女と同じ戦闘センスを持つ動く小振りなウサギのぬいぐるみが完成した。
『コレを一度イツキちゃんに見せて、物理・魔法耐性と状態保存の魔法を付けて貰おうっと』
鼻唄でも出そうな感じでご機嫌になったノンノンは、早速二体の子ウサギを両脇に抱えてゼクスのいる執務室にのすのすと歩いて行くのだった。
ゼクスの執務室に到着すると、ノンノンは念話で叫びながら片脚でドアを蹴ってノックした。
・・・・・・両手が塞がっていたので。
『たのも---!!』
同時にドアの下をげしげし蹴る。
「---はいはい。・・・・・・ノイン、相変わらず口も足癖も悪いねぇ」
『しゃーない。そこは死んでも変わらんよー』
「・・・はは、やっぱりノインはノインだね」
ドアを開けると両脇に子ウサギを抱えているノインが可愛くて、以前のような口調も聞こえて、ゼクスは泣き笑いのような顔で微笑んだ。
「どうぞ中へ、愛しの奥様」
『・・・驚かないなー、ゼクスも相変わらずだね』
「いやだって、最初からソレっぽかったし?」
『えー、漸く喋れて、コレで驚かせられると思ったのにぃ・・・ちぇー』
「そういうところもノインだよ。・・・・・・お帰り、で良いのかな?」
『・・・・・・ふふっ、うん。ただいま、愛しの旦那様』
中に入ってひとしきり話して、二体の子ウサギのぬいぐるみの件を話すと、イツキの影に持っていって貰うことになった。
『じゃあ、魔法付与、頼むね。金茶で新緑色の子ウサギはそのままイツキちゃんのところに置いといて、オッドアイの子ウサギはギルミアちゃんにあげるから持って帰ってきてね』
『畏まり、奥方様』
『---あー、ノンノンで良いよ』
『・・・は、ノンノン』
そう言ってノンノンに触れると気配が消えた。
『・・・気に入ってくれると良いなー』
「君の作ったぬいぐるみだ、喜ぶよ」
何となく執務室にはほのぼのとした空気が流れていた。
「久しぶりに話すことがたくさんあるね。今夜は夜通し語ろうか」
『・・・・・・身体に悪いからソレはヤメロ』
「---ぷっ・・・そうだね。ほどほどにね」
そんなことも懐かしいやり取りだと、二人は笑った。
689
あなたにおすすめの小説
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい
発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』
そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。
そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。
あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。
「あ、こいつが主人公だ」
超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる