90 / 102
89 不穏分子(sideシュルツ)
しおりを挟む
しばらく駆けて行くと、ほどなくして精霊達の気配が強く感じられて速度を落とす。
そのまま少し歩いて行くと、闇の精霊王ダルクが俺に気付いて振り向いた。他にも光の精霊王ルキアと地の精霊王ノルムもいる。彼らは結界の際にいて、その先を見据えていた。
『来たか。イツキはどうした?』
「眠っております。側に影とフェアグリンを付けています」
『そうか、なら心配ないな。……竜の子はアレをどう見る?』
闇の精霊王ダルクの指す方角を見れば、大きく茂った木々から、チラリと蠢くモノが見えた。
それは、俺の知識が正しければ───。
「ファードラゴン?」
『そうだな』
「俺も見るのは初めてですが……我ら竜人とは違い、人型にならない、鱗の代わりにふわふわの毛が生えている竜ですよね?」
体格も、我ら竜人が竜体になったときのように大きくなくて、尻尾まで入れても、せいぜいが今の俺の背の倍くらいだろう。
『そうだ。その毛皮を目当てに乱獲され、数が激減した。我らもめったにお目にかかれない稀少種だぞ』
『腐っても精霊王だから、探そうと思えばいつでも探せるが、興味がなくて探したことがないだけで、ある意味稀少だな。まあ隠れ住んでいるだけで絶滅はしておらんがな』
「……それが、どうしてこんなところに?」
『それが分からないから、困ってるんだよ。見たところ、怪我や病気というわけでもなく、ただ、ギリギリ結界の外にああしてゴロゴロしているだけで』
地の精霊王ノルムが困り顔で言う。
『ゴロゴロって言っても、けっこう大きいから、草達が潰されて地面が見えてえぐれてさあ、アソコだけ土地が可哀想で』
「……そうですね、地の精霊王ですもんね。悪気はなくても、荒らされたら不快ですよね。むしろ、よく我慢してますね」
『うん、まあ……アレの首にさあ、隷属の首輪が嵌まってるの、見える?』
「え」
ノルムがムスッとしてそう言ったので、俺は思わずアレを凝視した。
もふもふの首に、チラリと見えた金属製の輪っか。アレは確かに、隷属の首輪だ。しかも比較的新しい。隷属されたのは最近なのか?
ただの迷子かとも思ったが、しかし、隷属されているとなると、話は変わってくる。
そうでなくとも、ここにちょっかいをかけるヤツらは多い。
つい先日は、イツキの誘拐騒ぎで景緑国に宣戦布告をして大騒動だった。しかしそれを知ってなお、懲りない輩の多いこと。
今回のファードラゴンも、そんな輩の策略なのだろうか。
「確かに、隷属の首輪ですね。いつからここに?」
『イツキ達が公爵家に行ったその日からだな』
『狙ったようにね』
『イツキ達の留守の間、我らで監視していたのだ』
「だから今日、戻っても精霊達がいなかったんですね。おそらく、イツキに接触させるつもりなんでしょう。実際、首輪を見たら、イツキはどうにかしようとするでしょうし」
これは公爵家に調べてもらう案件だな。いや、影警護達がすでに動いているか?
「こちらでも早急に対処いたします。お手数ですが、もうしばらく、こちらの監視をお願いしても?」
『おう、もちろんだ』
『くれぐれもイツキには内緒にな』
『監視しながら、我らは交代でイツキに会いに行くよ』
「はい。ではひとまず、戻ります」
一礼して、その場をあとにすると、俺に付いてきていたヌルに声をかける。
「ヌル」
『心得てございます』
「任せる」
『御意』
サッと姿を消すのを見届けて、自分もイツキの元に転移する。
どうやら何事もなかったようで、フェアグリンが右手をサッと挙げた。ウノも頷いて姿を消す。
「───さて、アレは、どう動くか」
やっと戻った平穏を荒らしてくれるなよ。
そのまま少し歩いて行くと、闇の精霊王ダルクが俺に気付いて振り向いた。他にも光の精霊王ルキアと地の精霊王ノルムもいる。彼らは結界の際にいて、その先を見据えていた。
『来たか。イツキはどうした?』
「眠っております。側に影とフェアグリンを付けています」
『そうか、なら心配ないな。……竜の子はアレをどう見る?』
闇の精霊王ダルクの指す方角を見れば、大きく茂った木々から、チラリと蠢くモノが見えた。
それは、俺の知識が正しければ───。
「ファードラゴン?」
『そうだな』
「俺も見るのは初めてですが……我ら竜人とは違い、人型にならない、鱗の代わりにふわふわの毛が生えている竜ですよね?」
体格も、我ら竜人が竜体になったときのように大きくなくて、尻尾まで入れても、せいぜいが今の俺の背の倍くらいだろう。
『そうだ。その毛皮を目当てに乱獲され、数が激減した。我らもめったにお目にかかれない稀少種だぞ』
『腐っても精霊王だから、探そうと思えばいつでも探せるが、興味がなくて探したことがないだけで、ある意味稀少だな。まあ隠れ住んでいるだけで絶滅はしておらんがな』
「……それが、どうしてこんなところに?」
『それが分からないから、困ってるんだよ。見たところ、怪我や病気というわけでもなく、ただ、ギリギリ結界の外にああしてゴロゴロしているだけで』
地の精霊王ノルムが困り顔で言う。
『ゴロゴロって言っても、けっこう大きいから、草達が潰されて地面が見えてえぐれてさあ、アソコだけ土地が可哀想で』
「……そうですね、地の精霊王ですもんね。悪気はなくても、荒らされたら不快ですよね。むしろ、よく我慢してますね」
『うん、まあ……アレの首にさあ、隷属の首輪が嵌まってるの、見える?』
「え」
ノルムがムスッとしてそう言ったので、俺は思わずアレを凝視した。
もふもふの首に、チラリと見えた金属製の輪っか。アレは確かに、隷属の首輪だ。しかも比較的新しい。隷属されたのは最近なのか?
ただの迷子かとも思ったが、しかし、隷属されているとなると、話は変わってくる。
そうでなくとも、ここにちょっかいをかけるヤツらは多い。
つい先日は、イツキの誘拐騒ぎで景緑国に宣戦布告をして大騒動だった。しかしそれを知ってなお、懲りない輩の多いこと。
今回のファードラゴンも、そんな輩の策略なのだろうか。
「確かに、隷属の首輪ですね。いつからここに?」
『イツキ達が公爵家に行ったその日からだな』
『狙ったようにね』
『イツキ達の留守の間、我らで監視していたのだ』
「だから今日、戻っても精霊達がいなかったんですね。おそらく、イツキに接触させるつもりなんでしょう。実際、首輪を見たら、イツキはどうにかしようとするでしょうし」
これは公爵家に調べてもらう案件だな。いや、影警護達がすでに動いているか?
「こちらでも早急に対処いたします。お手数ですが、もうしばらく、こちらの監視をお願いしても?」
『おう、もちろんだ』
『くれぐれもイツキには内緒にな』
『監視しながら、我らは交代でイツキに会いに行くよ』
「はい。ではひとまず、戻ります」
一礼して、その場をあとにすると、俺に付いてきていたヌルに声をかける。
「ヌル」
『心得てございます』
「任せる」
『御意』
サッと姿を消すのを見届けて、自分もイツキの元に転移する。
どうやら何事もなかったようで、フェアグリンが右手をサッと挙げた。ウノも頷いて姿を消す。
「───さて、アレは、どう動くか」
やっと戻った平穏を荒らしてくれるなよ。
794
あなたにおすすめの小説
王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。(完結)
薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。
アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。
そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!!
え?
僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!?
※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。
色んな国の言葉をMIXさせています。
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
主人公の義弟兼当て馬の俺は原作に巻き込まれないためにも旅にでたい
発光食品
BL
『リュミエール王国と光の騎士〜愛と魔法で世界を救え〜』
そんないかにもなタイトルで始まる冒険RPG通称リュミ騎士。結構自由度の高いゲームで種族から、地位、自分の持つ魔法、職業なんかを決め、好きにプレーできるということで人気を誇っていた。そんな中主人公のみに共通して持っている力は光属性。前提として主人公は光属性の力を使い、世界を救わなければいけない。そのエンドコンテンツとして、世界中を旅するも良し、結婚して子供を作ることができる。これまた凄い機能なのだが、この世界は女同士でも男同士でも結婚することが出来る。子供も光属性の加護?とやらで作れるというめちゃくちゃ設定だ。
そんな世界に転生してしまった隼人。もちろん主人公に転生したものと思っていたが、属性は闇。
あれ?おかしいぞ?そう思った隼人だったが、すぐそばにいたこの世界の兄を見て現実を知ってしまう。
「あ、こいつが主人公だ」
超絶美形完璧光属性兄攻め×そんな兄から逃げたい闇属性受けの繰り広げるファンタジーラブストーリー
【本編完結】落ちた先の異世界で番と言われてもわかりません
ミミナガ
BL
この世界では落ち人(おちびと)と呼ばれる異世界人がたまに現れるが、特に珍しくもない存在だった。
14歳のイオは家族が留守中に高熱を出してそのまま永眠し、気が付くとこの世界に転生していた。そして冒険者ギルドのギルドマスターに拾われ生活する術を教わった。
それから5年、Cランク冒険者として採取を専門に細々と生計を立てていた。
ある日Sランク冒険者のオオカミ獣人と出会い、猛アピールをされる。その上自分のことを「番」だと言うのだが、人族であるイオには番の感覚がわからないので戸惑うばかり。
使命も役割もチートもない異世界転生で健気に生きていく自己肯定感低めの真面目な青年と、甘やかしてくれるハイスペック年上オオカミ獣人の話です。
ベッタベタの王道異世界転生BLを目指しました。
本編完結。番外編は不定期更新です。R-15は保険。
コメント欄に関しまして、ネタバレ配慮は特にしていませんのでネタバレ厳禁の方はご注意下さい。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる