🐈せっかく猫になったのに~病弱な第二王子に身代わりを押し付けられた件

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2 アサータ王国へ

閑話 マダナが”外泊”した夜、レーナの部屋でのお話

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アサータ王国の王城で 隣国の辺境伯夫人と彼女の縁続きの子爵令嬢を歓迎するガーデンパーティが開催された日の夜のお話です。


「ただいま、マダナ、いい子にしていたかしら?」

留学期間に暮らすことになる王宮の離れ、その中の私室のドアを開けながら、レーナは両手を広げました。
でも、いつもならばレーナの帰りを待ちわび、その手の中に飛び込んでくるマダナの気配はありません。

「マダナ?眠ってしまったのかしら? 灯れ!」

レーナは部屋をうっすら明るくすると、マダナの名前を呼びながらマダナを探します。そして、居室の窓が開いていることに気が付きました。

「まさか、マダナったら外に出て行ったのかしら?」

レーナは窓から顔を出し、眼下の庭を眺めますが闇の中に紫色の猫の姿を見つける事は出来ませんでした。

マダナはコドモトビネコと呼ばれる魔獣ですから、正式にこの国に連れてくる事、ましてやレーナ個人のペットとして連れてくることは不可能でした。
ですから、レーナはマダナをこっそりと連れてきたのです。そして、少し落ち着いたら紫猫のマダナを迷い猫とでも言って一緒に暮らそうと思っていたのです。

レーナを紫猫に変身させる魔法のリボンは、身元保証人でもある叔母のバルカ様と別れてから使うつもりでしたが、マダナに甘えられてつい、レーナはマダナを紫猫に変身させてしまったのです。

レーナは、マダナが紫猫に変身して部屋の中で遊ぶつもりだと思っていましたからね。

「マダナ どこにいるの?」

レーナは椅子に座り、両手で顔を覆いました。

「やはり、外に出たようですね。コドモトビネコは好奇心が強くて自由を好む性質がありますから」

レーナの侍女のマオリの言葉にレーナは再び窓から外を見つめます。

「マダナ」

レーナの口から呟きが漏れますが大きな声で呼ぶわけにはいきません。
マダナの事はマオリと二人だけの秘密ですから。

「探しに行きたいわ お願いマオリ」

バルカ様はまだ部屋に帰ってきていません。たぶん、レーナの今後についての打ち合わせをしているのでしょう。

「外の空気を吸いに参りましょう」

レーナは着替えもせずにマオリと共に庭に出ました。
散歩をするふりをしてマダナを探していますが、すこし挙動不審だったようです。

「何かお探し物ですか」
「赤い、鈴のついたリボンを見つけたらフォレサクレのレーナリア付きの侍女までお知らせください」

見回りの兵に声をかけられて、マオリが答えました。

「レーナ様、リボンが見つからなければマダナは紫猫のまま、どこかで遊んでいるのだと思いますよ」

マオリが慰めるように言うのにレーナは黙って頷きました。

「レーナどうしたの?元気がないようだけど?」

離宮に帰るとレーナの帰りを待っていたバルカ様が心配そうに声をかけます。
レーナとマオリはさっと視線をかわします。

「実はなくしものをしてしまって……」
「あら、それは大変ね、でも今日はもう遅いわね、それに、ワタクシはもう帰るから一緒に探してはあげられないの ごめんなさいね」
「え?今からですか?」
「ええ」

バルカ様が答えながら書類をマオリに渡します。

「マオリ、これが学院へ出す書類。寄宿に入るならその下の書類が必要なの、もうサインは済んでいるわ。寄宿に入る場合は週末のみ使用人が必要でしょうから、その手続きの仕方はこっちの赤い紙の挟まった書類で、ああ、レーナそんなに心配そうな顔をしなくても大丈夫よ、マオリはこう見えても優秀だから。そうね、先に湯あみを済ませてらっしゃい。誰か!」

疲れた顔のレーナはメイドたちにバスルームへと連れていかれ、バルカ様はマオリに書類の説明を続けています。


「叔母様にはマダナの事はお願いできないのね。マダナ、どうしているかしら?
 マダナは食いしん坊だから、お腹を空かせていないといいけれど……」

レーナの顔が濡れているのは湯あみのせいだけではありません。


「さあ、レーナ大丈夫よ、困ったら風に頼りを乗せなさいね。困らなくても手紙をくれたら嬉しいわ。風便りの封筒はマオリに渡してあるから使ってちょうだい」

バルカ様は泣きそうな顔のレーナ様の頭を撫でます

「探し物なら大丈夫よ、第二王子のセクウに頼みなさい。あの子は幽霊王子なんて言われて寝付いていることが多いけど、城中の事を知っている賢い子よ。そうねえ レーナとは気が合うかもしれないわ。今日のパーティに居なかったから明日にでもお見舞いに行ってらっしゃい。これから陛下に挨拶に行くから、お見舞いの手筈も整えておくわ」

「第二王子のセクウ殿下 ですね」
「そうよ、じゃあ、ワタクシはもう帰るわね。今から帰れば明日の朝食には間に合うはずだわ」
「明日の朝食?」
「ええ 元気でね」

レーナを一度抱きしめてからドアに向かうバルカ様の背中にマオリが小さくつぶやきます

「幽霊王子とレーナ様が、気が合うかもしれないって一体どういう意味でしょう?」


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