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第10章 舞踏会の長い夜
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こんなはずではなかった。
本当に、こんなはずではなかったのだ。
見たこともない獰猛な巨大魚の魔獣相手に、壮絶な苦戦を強いられている男たちの姿を見せられながら、アダラールは後悔の念に駆られていた。
目の前で命がけで剣を振るう一人は、自分と血がつながる実の弟だ。
私は間違えたのだ。
自分に与えられなかったものを欲しすぎた。
その結果が……これか。
アダラールの頬に一筋の涙が伝った。
アダラール・ブリアック・ドゥラメトリアは、ドゥラメトリア王国の現国王の長男として生まれた。
幼い頃から聡明で、次期国王として期待されて育てられていたが、彼には一つだけ大きな欠点があった。
それは、王族とは思えないほど脆弱な魔力だった。
国王になるために魔力は必須ではない。
しかし、代々の国王は魔力が高く、それが王のカリスマ性を高めていたことは否めなかった。
四つ年下の第二王子エドゥアールは、父親の国王以上の魔力を持っており、アダラールがなけなしの魔力をかき集めて纏っても、一緒にいるだけで見劣りした。
第一王子であるアダラールの王太子としての立場は揺るぎないものであったが、エドゥアールが成長するにつれ、彼に期待を寄せる貴族たちも出てきた。
だから。
第二王子には薬を盛った。
第三王子のフィリベールも人並み以上の魔力を持っていたが、母親の身分が低く、卑屈な性格で引きこもりがちだったため、敵とみなしていなかった。
そして、第四王子のヴィルジール。
彼の婚約者であったミレイユ嬢を事故に見せかけて殺害し、父親のマルシャン公爵を陥れたのは、王太子妃の実父だった。
それは、アダラールが指示したものでも、望んだことでもなかった。
しかし、そんな事件を引き起こすほど、第四王子の実力とその後ろ盾が、王太子派にとって見過ごせないほど強力になっていた。
末の弟は「王座を望んでいない」とはっきりと明言していた。
しかし、いつ誰が彼を担ぎ上げ、自分を追い落とすのか分からなかった。
私に『彼』のような強い魔力があったなら——。
弟王子も反王太子派も、すべて力でねじ伏せられたのに。
誰もが納得する王として君臨できたのに。
なぜ私にあるのは、記憶だけなのだ!
記憶の中の『彼』は、強い魔力を持ち、攻撃術から治癒術までを自在に操る優秀な魔導師だった。
彼の生涯の記憶と、易々と大魔術を繰り出す感覚、魔術に関する膨大な知識は、物心ついた時から自分の中に明確に残っていた。
しかし、過去から受け継いだ財産を行使するに足る魔力を、持ち合わせていなかった。
『彼』は今も昔も、聖者として有名な存在だ。
しかし『彼』にはたった一つ、心残りがあった。
それは『死の森』の奥地に残された、謎の椅子と魔法陣の解明だった。
四百年前。
ベレニスが『魔王城』の前で、漆黒の甲冑を身につけた魔王に挑んだ直後、周囲の様子は一変した。
崩れかけた古城は霧のように消え、魔王の姿も霞んでいく。
気づけば、そこにあったのは石造りの椅子と、それを中心に円形に敷き詰められた石の床だけ。
椅子の上には、ぼろを纏ったやせ細った少年がぐったりと座っていた。
「大丈夫?」
ベレニスが少年に駆け寄っていく。
しかしその少年は、みるみるうちに白骨化し、その後、砂のように崩れ去っていった。
「すべてが……幻だったのか?」
ベレニスが石の床にへたりこんで呟く。
そしてばたりと仰向けに倒れると、周囲にそびえる大木に丸く切り取られた薄曇りの空を、万感の思いで見上げていた。
そう。
魔王の姿も魔王城もすべて幻だった。
しかし、深い森の最奥に残された石の床とその中央に据え付けられた椅子は、現実に目の前に存在する。
そして、この場所から生まれたと思われる様々な恐ろしい魔獣は、決して幻ではなかった。
チェスラフはふらつく身体を引きずるようにして、円形に形作られた石の床の上に足を踏み入れた。
「僕の推測が間違っていなければ、この円はきっと……」
冷たい石の床に座り込む。
魔力切れ寸前で目が霞み、吐き気も襲ってくる。
下手に魔力を使うとこのまま昏倒しそうだ。
「だが、少しくらいなら」
自分の推測をどうしても確認したくて、ほんのわずかな魔力を床に流してみた。
すると、円形に敷き詰められた石の床の円周に沿って魔力がすっと流れていく。
「やはりこれは、魔法陣なんだな。しかも、かなり巨大で緻密に描かれている」
どれほど昔に描かれたか分からないこの巨大な魔法陣が、恐ろしい魔獣を次々と生み出し、精巧な魔王城と魔王の幻を作り出していたのだ。
少年の亡骸が座っていた中央にある椅子は、魔力の発生源か増幅装置のようなものだろう。
「ああ、なんて素晴らしい」
その全体像をこの目で見てみたかった。
緻密に構築された古代の魔法陣を解読して、自分のものにしたかった。
それは、純粋な知的好奇心だった。
満身創痍のチェスラフは、いつか必ずもう一度この場所に来ると心に誓い『死の森』を後にした。
しかし彼はその後、当時の国王に聖者と認定され、神殿に迎え入れられることにより自由を奪われた。
仲間のベレニスは軍属となり、戦場で命を落としたと聞いた。
信頼できる最強の仲間を失った彼は、二度とその森に足を踏み入れることができなかった。
『死の森』は四百年たった今でも、恐ろしい魔獣が巣食う地だ。
だが、私ならば『死の森』の奥地に入ることができるのではないか?
自分の乏しい魔力に劣等感を抱くアダラールは、ふと思いつく。
幼少期に二度、『死の森』を視察で訪れたことがあった。
しかし、多くの魔獣が棲むはずの『死の森』は静まり返っており、なぜか小さな鼠の魔獣一匹すら出くわさなかった。
もしそれが偶然でないとしたら、なんの危険もなく『死の森』の奥に眠る秘密に近づけるはず。
そう考えたアダラールは、信頼のおける親衛隊長とその部下の二人だけを連れ、密かに『死の森』に向かった。
そして予想通り、全く魔獣にくわすことなく、易々と『死の森』の奥地に到達した。
そこにあったのは、聖者チェスラフの記憶と全く同じ、円形に敷き詰められた石の床と、その中央に置かれた石の椅子だった。
不思議なことに、周囲の木々の様子は変わっているのに、その円の中は彼の記憶と全く変わっていなかった。
敷き詰められた石の隙間から雑草が生えることもなく、泥に覆われることもなく、誰かが手入れしているかの如く美しかった。
この場所は四百年経った今も、生きている。
足元には、想像を絶する力を秘めた魔法陣が広がっているはずだ。
その力を手に入れることができたら、私も……。
アダラールは石の床に手を置いて、持てるだけの魔力を注ぎ込んだ。
しかし、魔法陣は全く反応を示さなかった。
「くそっ! やはり私の魔力ではだめなのか……」
打ちのめされたアダラールは、拳を石に打ちつけた。
魔法陣を利用すれば少ない魔力で強い魔術を行使できることは、『彼』の記憶から知っていた。
魔法陣を自分の目で見ることができれば、解読できる自信もある。
しかし、魔法陣を浮かび上がらせる方法を知っていても、発動させるだけの魔力がない。
同行した二人は騎士のため、魔術師的な魔力の使い方はできなかった。
「どうしたら、この力が手に入るのだ。どうしたら……」
この地に眠る底知れぬ魔力を、どうしても手に入れたかった。
強大な魔力を操り、誰からも畏怖される国王になりたかった。
幼い頃から劣等感をもたらし続けてきた、聖者チェスラフの記憶を見返してやりたかった。
そこでアダラールは、彼らに協力を求めることにした。
それが、大きな過ちだった。
……いや、違うな。
こんな状況にあっても保身を考えてしまう自分に吐き気がする。
己の欲望のために『死の森』の禁忌に触れたことが、そもそもの間違いたっだのだ。
本当に、こんなはずではなかったのだ。
見たこともない獰猛な巨大魚の魔獣相手に、壮絶な苦戦を強いられている男たちの姿を見せられながら、アダラールは後悔の念に駆られていた。
目の前で命がけで剣を振るう一人は、自分と血がつながる実の弟だ。
私は間違えたのだ。
自分に与えられなかったものを欲しすぎた。
その結果が……これか。
アダラールの頬に一筋の涙が伝った。
アダラール・ブリアック・ドゥラメトリアは、ドゥラメトリア王国の現国王の長男として生まれた。
幼い頃から聡明で、次期国王として期待されて育てられていたが、彼には一つだけ大きな欠点があった。
それは、王族とは思えないほど脆弱な魔力だった。
国王になるために魔力は必須ではない。
しかし、代々の国王は魔力が高く、それが王のカリスマ性を高めていたことは否めなかった。
四つ年下の第二王子エドゥアールは、父親の国王以上の魔力を持っており、アダラールがなけなしの魔力をかき集めて纏っても、一緒にいるだけで見劣りした。
第一王子であるアダラールの王太子としての立場は揺るぎないものであったが、エドゥアールが成長するにつれ、彼に期待を寄せる貴族たちも出てきた。
だから。
第二王子には薬を盛った。
第三王子のフィリベールも人並み以上の魔力を持っていたが、母親の身分が低く、卑屈な性格で引きこもりがちだったため、敵とみなしていなかった。
そして、第四王子のヴィルジール。
彼の婚約者であったミレイユ嬢を事故に見せかけて殺害し、父親のマルシャン公爵を陥れたのは、王太子妃の実父だった。
それは、アダラールが指示したものでも、望んだことでもなかった。
しかし、そんな事件を引き起こすほど、第四王子の実力とその後ろ盾が、王太子派にとって見過ごせないほど強力になっていた。
末の弟は「王座を望んでいない」とはっきりと明言していた。
しかし、いつ誰が彼を担ぎ上げ、自分を追い落とすのか分からなかった。
私に『彼』のような強い魔力があったなら——。
弟王子も反王太子派も、すべて力でねじ伏せられたのに。
誰もが納得する王として君臨できたのに。
なぜ私にあるのは、記憶だけなのだ!
記憶の中の『彼』は、強い魔力を持ち、攻撃術から治癒術までを自在に操る優秀な魔導師だった。
彼の生涯の記憶と、易々と大魔術を繰り出す感覚、魔術に関する膨大な知識は、物心ついた時から自分の中に明確に残っていた。
しかし、過去から受け継いだ財産を行使するに足る魔力を、持ち合わせていなかった。
『彼』は今も昔も、聖者として有名な存在だ。
しかし『彼』にはたった一つ、心残りがあった。
それは『死の森』の奥地に残された、謎の椅子と魔法陣の解明だった。
四百年前。
ベレニスが『魔王城』の前で、漆黒の甲冑を身につけた魔王に挑んだ直後、周囲の様子は一変した。
崩れかけた古城は霧のように消え、魔王の姿も霞んでいく。
気づけば、そこにあったのは石造りの椅子と、それを中心に円形に敷き詰められた石の床だけ。
椅子の上には、ぼろを纏ったやせ細った少年がぐったりと座っていた。
「大丈夫?」
ベレニスが少年に駆け寄っていく。
しかしその少年は、みるみるうちに白骨化し、その後、砂のように崩れ去っていった。
「すべてが……幻だったのか?」
ベレニスが石の床にへたりこんで呟く。
そしてばたりと仰向けに倒れると、周囲にそびえる大木に丸く切り取られた薄曇りの空を、万感の思いで見上げていた。
そう。
魔王の姿も魔王城もすべて幻だった。
しかし、深い森の最奥に残された石の床とその中央に据え付けられた椅子は、現実に目の前に存在する。
そして、この場所から生まれたと思われる様々な恐ろしい魔獣は、決して幻ではなかった。
チェスラフはふらつく身体を引きずるようにして、円形に形作られた石の床の上に足を踏み入れた。
「僕の推測が間違っていなければ、この円はきっと……」
冷たい石の床に座り込む。
魔力切れ寸前で目が霞み、吐き気も襲ってくる。
下手に魔力を使うとこのまま昏倒しそうだ。
「だが、少しくらいなら」
自分の推測をどうしても確認したくて、ほんのわずかな魔力を床に流してみた。
すると、円形に敷き詰められた石の床の円周に沿って魔力がすっと流れていく。
「やはりこれは、魔法陣なんだな。しかも、かなり巨大で緻密に描かれている」
どれほど昔に描かれたか分からないこの巨大な魔法陣が、恐ろしい魔獣を次々と生み出し、精巧な魔王城と魔王の幻を作り出していたのだ。
少年の亡骸が座っていた中央にある椅子は、魔力の発生源か増幅装置のようなものだろう。
「ああ、なんて素晴らしい」
その全体像をこの目で見てみたかった。
緻密に構築された古代の魔法陣を解読して、自分のものにしたかった。
それは、純粋な知的好奇心だった。
満身創痍のチェスラフは、いつか必ずもう一度この場所に来ると心に誓い『死の森』を後にした。
しかし彼はその後、当時の国王に聖者と認定され、神殿に迎え入れられることにより自由を奪われた。
仲間のベレニスは軍属となり、戦場で命を落としたと聞いた。
信頼できる最強の仲間を失った彼は、二度とその森に足を踏み入れることができなかった。
『死の森』は四百年たった今でも、恐ろしい魔獣が巣食う地だ。
だが、私ならば『死の森』の奥地に入ることができるのではないか?
自分の乏しい魔力に劣等感を抱くアダラールは、ふと思いつく。
幼少期に二度、『死の森』を視察で訪れたことがあった。
しかし、多くの魔獣が棲むはずの『死の森』は静まり返っており、なぜか小さな鼠の魔獣一匹すら出くわさなかった。
もしそれが偶然でないとしたら、なんの危険もなく『死の森』の奥に眠る秘密に近づけるはず。
そう考えたアダラールは、信頼のおける親衛隊長とその部下の二人だけを連れ、密かに『死の森』に向かった。
そして予想通り、全く魔獣にくわすことなく、易々と『死の森』の奥地に到達した。
そこにあったのは、聖者チェスラフの記憶と全く同じ、円形に敷き詰められた石の床と、その中央に置かれた石の椅子だった。
不思議なことに、周囲の木々の様子は変わっているのに、その円の中は彼の記憶と全く変わっていなかった。
敷き詰められた石の隙間から雑草が生えることもなく、泥に覆われることもなく、誰かが手入れしているかの如く美しかった。
この場所は四百年経った今も、生きている。
足元には、想像を絶する力を秘めた魔法陣が広がっているはずだ。
その力を手に入れることができたら、私も……。
アダラールは石の床に手を置いて、持てるだけの魔力を注ぎ込んだ。
しかし、魔法陣は全く反応を示さなかった。
「くそっ! やはり私の魔力ではだめなのか……」
打ちのめされたアダラールは、拳を石に打ちつけた。
魔法陣を利用すれば少ない魔力で強い魔術を行使できることは、『彼』の記憶から知っていた。
魔法陣を自分の目で見ることができれば、解読できる自信もある。
しかし、魔法陣を浮かび上がらせる方法を知っていても、発動させるだけの魔力がない。
同行した二人は騎士のため、魔術師的な魔力の使い方はできなかった。
「どうしたら、この力が手に入るのだ。どうしたら……」
この地に眠る底知れぬ魔力を、どうしても手に入れたかった。
強大な魔力を操り、誰からも畏怖される国王になりたかった。
幼い頃から劣等感をもたらし続けてきた、聖者チェスラフの記憶を見返してやりたかった。
そこでアダラールは、彼らに協力を求めることにした。
それが、大きな過ちだった。
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