372 / 499
第12部
第六章 鬼才再び①
しおりを挟む
「……え?」
その時、ルカは目を丸くした。
「今日、ユーリィちゃん、仮面さんとデート、なんですか?」
そこは王城にあるルカの部屋。
目の前には、彼女の師であるメルティアがいた。
「はい。今朝がた、九号が来て教えてくれました」
そう答える彼女は、普段の着装型鎧機兵はまだ着ていなかった。
その機体は隣にあり、装甲の前面が上に開いている。
「『ラフィルの森』というところで二人きりでピクニックをするそうです。《地妖星》が来ているようですから、ユーリィもお義兄さまに甘えたいのでしょう」
続けて、メルティアはそう告げた。
彼女は今、珍しくストレッチしていた。
前屈みになったり、大きな胸を反らしたりとしている。
あまり運動をしたがらない彼女にしては、非常に珍しい行為だ。
「あの、お師匠さま?」
いつにない師匠の様子に、ルカが小首を傾げた。
まるでこれから徒競走でもしそうな趣である。
その上、額には白い鉢巻を巻いていた。
「これから、何かあるんですか?」
率直にそう尋ねると、
「ネコ狩りです」
メルティアは、そう答えた。
「昨日の昼からコウタが帰ってきていません。もはや確信しました。恐らく《地妖星》のみならず、あの女も来ているでしょう」
「……あの女、ですか?」
かなり不機嫌そうな口調の師に、ルカはおずおずと尋ねる。
まるで敵にでも出会ったような感じだ。
「私の敵です」
「て、敵ですか?」
ルカは目を丸くする。本当に敵だったらしい。
メルティアは、説明を続けた。
「コウタが何かを隠していることは気付いていました。もしかすると、あの女がいるのではないかと疑ってもいました。そして、九号からあの女に強奪された三十三号と遭遇したという報告がありました。これで確定です。きっと、昨日ぐらいから、あのニセネコ女をどこかに匿っていたのでしょうね」
「……は、はァ」
いまいち状況が分からず生返事をするルカ。
「……まったく。コウタは」
しかし、メルティアのご立腹ぶりだけは何となく感じ取れた。
これは、相当ピリピリしている。
「捕まえて、お仕置きです」
メルティアが、ポツリと呟く。
――と、その時、ノックの音が響いた。
ルカのメルティアの視線が、ドアに向けられる。
メルティアは、反射的に着装型鎧機兵の中に退避しようとするが、
「ルカ。メルティア。わたくしです」
ドアの向こうから、そんな声が聞こえた。
メルティアが動きを止める。どうやらリーゼのようだ。
「あっ、入って、ください」
と、ルカが招く。
リーゼはメルティアにとって親しい友人の一人だ。
メルティアが、素の姿のままで会える数少ない人物である。
「では、失礼しますわ」
そんな返答と共に、ドアが開かれる。
廊下にはリーゼ。そしてアイリの姿があった。
何故か、彼女達も鉢巻をしている。
「そちらの準備は完了ですの?」
「はい。ゴーレム隊も配置につきましたか?」
メルティアがそう尋ねると、答えたのはアイリだった。
「……うん。言われた通り、魔窟館から召喚した五十二機。零号達も含めて、五機ずつで編隊を組ませたよ」
「ありがとうございます。アイリ。リーゼ」
言って、メルティアは着装型鎧機兵に乗り込んだ。
「本当は全機投入したいところなのですが、あまり派手に動くと、ルカに迷惑がかかりますからね。さて。では私達も」
――ガシュンッと。
着装型鎧機兵が胸部装甲を降ろした。
そして、ズシンと鋼の巨人が動き出す。
『――ネコ狩りです』
着装型鎧機兵の中から、メルティアが宣言する。
『本来ならば、彼女のことは、お義兄さまにもお伝えすべきことですが、《地妖星》のこともあります。お義兄さまや、お義姉さま方にこれ以上の負担をおかけしたくありません。せめてあのニセネコ女だけは私達が始末――コホン。確保しましょう』
「ええ。そうですわね」
リーゼが、目が全く笑っていない笑顔を見せる。
「わたくしは一度、彼女とは話をしてみたいと思っていましたわ。この機会にひっ捕らえて――コホン。保護して話を聞きましょう」
「……うん。そうだね」
アイリも、ギュッと鉢巻を締めなおして言う。
「……完全に油断していたよ。私が義妹ポイントを稼いでいる間に、本丸に攻め入れられていたのは不覚だよ」
言って、シュッ、シュッと拳を繰り出した。
「……コウタを丸一日も独り占めするなんてズルいよ。ううん、時には独り占めはいいけど、それはちゃんと皆で合議してからだよ。ペナルティものだよ」
『ええ。そうですね』
メルティアが言う。
着装型鎧機兵が、ズシン、ズシンと足音を響かせる。
『いよいよ、私の愛機・《フォレス》が真価を発揮する時が来たということです。では、そろそろ行きますか。リーゼ。アイリ』
「ええ」「……うん」
リーゼとアイリが応える。
そして、エリーズ国の少女達は只ならぬオーラを放ちつつ、部屋を出て行った。
一人残されたルカは、しばらく顔を強張らせていたが、
「……それにしても」
コホン、と喉を鳴らして呟く。
「ユーリィちゃん。仮面さんとデートかあ、いいなあ」
その時、ルカは目を丸くした。
「今日、ユーリィちゃん、仮面さんとデート、なんですか?」
そこは王城にあるルカの部屋。
目の前には、彼女の師であるメルティアがいた。
「はい。今朝がた、九号が来て教えてくれました」
そう答える彼女は、普段の着装型鎧機兵はまだ着ていなかった。
その機体は隣にあり、装甲の前面が上に開いている。
「『ラフィルの森』というところで二人きりでピクニックをするそうです。《地妖星》が来ているようですから、ユーリィもお義兄さまに甘えたいのでしょう」
続けて、メルティアはそう告げた。
彼女は今、珍しくストレッチしていた。
前屈みになったり、大きな胸を反らしたりとしている。
あまり運動をしたがらない彼女にしては、非常に珍しい行為だ。
「あの、お師匠さま?」
いつにない師匠の様子に、ルカが小首を傾げた。
まるでこれから徒競走でもしそうな趣である。
その上、額には白い鉢巻を巻いていた。
「これから、何かあるんですか?」
率直にそう尋ねると、
「ネコ狩りです」
メルティアは、そう答えた。
「昨日の昼からコウタが帰ってきていません。もはや確信しました。恐らく《地妖星》のみならず、あの女も来ているでしょう」
「……あの女、ですか?」
かなり不機嫌そうな口調の師に、ルカはおずおずと尋ねる。
まるで敵にでも出会ったような感じだ。
「私の敵です」
「て、敵ですか?」
ルカは目を丸くする。本当に敵だったらしい。
メルティアは、説明を続けた。
「コウタが何かを隠していることは気付いていました。もしかすると、あの女がいるのではないかと疑ってもいました。そして、九号からあの女に強奪された三十三号と遭遇したという報告がありました。これで確定です。きっと、昨日ぐらいから、あのニセネコ女をどこかに匿っていたのでしょうね」
「……は、はァ」
いまいち状況が分からず生返事をするルカ。
「……まったく。コウタは」
しかし、メルティアのご立腹ぶりだけは何となく感じ取れた。
これは、相当ピリピリしている。
「捕まえて、お仕置きです」
メルティアが、ポツリと呟く。
――と、その時、ノックの音が響いた。
ルカのメルティアの視線が、ドアに向けられる。
メルティアは、反射的に着装型鎧機兵の中に退避しようとするが、
「ルカ。メルティア。わたくしです」
ドアの向こうから、そんな声が聞こえた。
メルティアが動きを止める。どうやらリーゼのようだ。
「あっ、入って、ください」
と、ルカが招く。
リーゼはメルティアにとって親しい友人の一人だ。
メルティアが、素の姿のままで会える数少ない人物である。
「では、失礼しますわ」
そんな返答と共に、ドアが開かれる。
廊下にはリーゼ。そしてアイリの姿があった。
何故か、彼女達も鉢巻をしている。
「そちらの準備は完了ですの?」
「はい。ゴーレム隊も配置につきましたか?」
メルティアがそう尋ねると、答えたのはアイリだった。
「……うん。言われた通り、魔窟館から召喚した五十二機。零号達も含めて、五機ずつで編隊を組ませたよ」
「ありがとうございます。アイリ。リーゼ」
言って、メルティアは着装型鎧機兵に乗り込んだ。
「本当は全機投入したいところなのですが、あまり派手に動くと、ルカに迷惑がかかりますからね。さて。では私達も」
――ガシュンッと。
着装型鎧機兵が胸部装甲を降ろした。
そして、ズシンと鋼の巨人が動き出す。
『――ネコ狩りです』
着装型鎧機兵の中から、メルティアが宣言する。
『本来ならば、彼女のことは、お義兄さまにもお伝えすべきことですが、《地妖星》のこともあります。お義兄さまや、お義姉さま方にこれ以上の負担をおかけしたくありません。せめてあのニセネコ女だけは私達が始末――コホン。確保しましょう』
「ええ。そうですわね」
リーゼが、目が全く笑っていない笑顔を見せる。
「わたくしは一度、彼女とは話をしてみたいと思っていましたわ。この機会にひっ捕らえて――コホン。保護して話を聞きましょう」
「……うん。そうだね」
アイリも、ギュッと鉢巻を締めなおして言う。
「……完全に油断していたよ。私が義妹ポイントを稼いでいる間に、本丸に攻め入れられていたのは不覚だよ」
言って、シュッ、シュッと拳を繰り出した。
「……コウタを丸一日も独り占めするなんてズルいよ。ううん、時には独り占めはいいけど、それはちゃんと皆で合議してからだよ。ペナルティものだよ」
『ええ。そうですね』
メルティアが言う。
着装型鎧機兵が、ズシン、ズシンと足音を響かせる。
『いよいよ、私の愛機・《フォレス》が真価を発揮する時が来たということです。では、そろそろ行きますか。リーゼ。アイリ』
「ええ」「……うん」
リーゼとアイリが応える。
そして、エリーズ国の少女達は只ならぬオーラを放ちつつ、部屋を出て行った。
一人残されたルカは、しばらく顔を強張らせていたが、
「……それにしても」
コホン、と喉を鳴らして呟く。
「ユーリィちゃん。仮面さんとデートかあ、いいなあ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~
さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』
誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。
辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。
だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。
学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる
これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる