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第10部(外伝)
第五章 「ホルド村」③
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「この独特の鳴き声は《猪王》か……」
アッシュは呟く。
それから他の三人に目をやり、
「ここは俺とスコラさんで迎え撃つ。ライクは馬を落ち着かせておいてくれ。それとユーリィはこっちに来い」
アッシュに手招きされ、ユーリィは「分かった」と頷いた。
そして馬車の荷台の縁まで来ると、そのままアッシュに抱き上げてもらう。
「ユーリィは俺と一緒に《朱天》に乗るんだ」
「うん。分かった」
こくんと頷くユーリィ。が、そこでシャルロットが声をかける。
「いえ。その必要はありません」
彼女はアッシュに視線を向けた。
「ここは私にお任せください。クライン君。《猪王》は四セージル級の比較的小型な魔獣。群れを成さないとも聞きます。鎧機兵が一機あれば倒せる相手です」
「いや、確かにそうだが、それはなぁ」
ユーリィを抱き上げたまま、アッシュは困った表情を見せた。
「何度も言うがスコラさんは本職じゃねえんだ。メイドのスコラさんが戦って、傭兵の俺が高みの見物ってのは出来ねえよ」
と、正論を語るが、シャルロットの方は平然としたものだ。
「お気遣いは嬉しく思います。クライン君」
彼女はアッシュの視線を真っ直ぐ受け止めて告げる。
「ですが、これは本当に好機だと考えています。《蜂鬼》戦において私に信用できるだけの実力があるのか。それをお見せするには丁度いい相手です」
「う~ん、それもそうなんだが……」
アッシュはなお渋る。シャルロットは苦笑を零した。
「クライン君は頑固ですね」
「まあ、戦闘に関してだけはどうしてもな」
アッシュはユーリィを一旦荷台の上に戻すと、シャルロットの方へと足を向けた。
真剣な表情で近付いてくる少年にシャルロットは少しドキッとした。
「スコラさん。命がけの戦闘で必勝ってのはねえもんだ。どんな実力者でも呆気なく死ぬ時がある。いいか。格下相手でも油断だけはしちゃいけねえ」
そう言って、アッシュは彼女の肩に手を置いた。
シャルロットは少し躊躇いながらも彼の手にそっと触れて、
「ご心配していただきありがとうございます。肝に命じておきます。ですので、どうかここは私にお任せください」
「……やれやれだな」
アッシュは苦笑いを見せる。
「分かったよ。けど、俺も鎧機兵で待機だけはしておく。危ないと思ったらすぐに割って入るからな。それぐらいならいいだろ?」
「はい。承知いたしました。私の愛しきあるじさま」
「うん。それもやめような」
頬を引きつらせるアッシュ。どうもこの先ずっと言われそうで怖い。
それに対し、シャルロットは微笑むだけで何も答えなかった。
そして彼女は十数歩前に出るとスカートを翻し、短剣を抜刀した。
そこに至って、バキバキッと木々が押し倒される音が森の奥から響いてくる。時折雄叫びも轟く。魔獣が確実に接近している証拠だ。
シャルロットは表情を引き締めて愛機の名を呼ぶ。
「――来なさい。《アトス》」
途端、彼女の前方に転移陣が描かれた。
そしてゆっくりと地面から浮上してきたのは薄藍色の鎧機兵だった。
手に携えるのは大剣。鎧装は速度重視の軽装型。全高は三・三セージルと、極めてオーソドックスな騎士タイプだ。
「……意外」
その時、ユーリィが呟く。
「てっきりメイドさん型が出てくると思ってた。少しがっかり」
「期待に添えず申し訳ありません。ユーリィさん」
シャルロットは苦笑をもらす。
「私はあまり裕福な出自ではないので、どうしても安価で入手しやすいオーソドックスタイプになったのです。《アトス》は恒力値も四千ジン程度。外装も塗装以外はほぼ手を加えていない、至って普通の機体です。ですが――」
そこで彼女は軽やかに舞って愛機に乗り込んだ。
「それでも学生時代、私と苦楽を共にした愛機です。それに私はこの《アトス》で騎士学校では次席を勝ち取りました。それだけに腕には自信がありますから」
ガシュン、と胸部装甲が降りる。《アトス》の両眼が光った。
『どうか安心して構えていてください。クライン君』
拡声器越しにそう告げて、《アトス》は大剣を両手で構えた。
アッシュは「ああ、分かったよ」と告げる。次いで森の奥へと目をやり、
「さあ、お客さんだ。ライク。馬をしっかり抑えておけよ。ユーリィ。俺も《朱天》を喚んでおく。構えておいてくれ」
対し、ライクは「了解。シャル姉ちゃん! よろしく頼むよ」と応え、ユーリィは「うん、分かった」と頷いた。
アッシュは短剣の柄に手をかけつつ、《アトス》に目をやった。
そして――いよいよ招かざるお客さまが登場する。
「――ブオオオオオオオオオオオオッッ!」
木々を吹き飛ばし、街道に現れたそいつは巨大な猪だった。
鼻先から尾までは三セージルほどか。この種族の中では若干小柄だ。
特徴としては黒い体毛と血走った赤い双眸を持っている。中でも特筆すべきは鋭く太い牙だろう。長さにして二セージルはある凶器だ。
四セージル級の魔獣――《猪王》。
性格は獰猛で攻撃性が強い。普段は森の奥で生息しているが、稀に街道に出没すると暴れ回る魔獣だ。足も相当速く、馬でもなければ逃げ切るのは難しい相手だった。
「ブオ? ブオッ! ブオオオオオオオオオオ!」
《猪王》は《アトス》の存在に気付き、警戒心を露わにした。
しかし逃げ出すような素振りはない。飛び出すタイミングを計っているようだ。
「さて」《アトス》が身構える中、アッシュが呟く。
「俺の方も準備しておくか」
『――はい。お願いします。では参ります!』
言って、シャルロットが操る《アトス》が地を蹴った。
《猪王》は猪に似た魔獣。その攻撃方法も猪そのものだ。ゆえに後手に回っては不利。突進で先制される前に撃って出たのだ。
大剣が《猪王》の眉間めがけて振り下ろされる!
「――ブオオオオオ!」
対する《猪王》は二本の牙で迎え撃った。
――ギイイィン!
まるで金属同士がぶつかるような音が響き、大剣は大きく弾かれた。
が、シャルロットは焦らない。愛機が非力なの百も承知だ。その場で反転すると《アトス》の竜尾で《猪王》の横っ面を殴打した。
「――ブオオオオオオオオオオオオオッ!?」
為す術なく吹き飛ぶ《猪王》。
だが、そこは魔獣の耐久力。即座に立ち上がると前脚で地面を削った。
そして猪突猛進の名に恥じない突進力で《アトス》に迫る!
『――はあ!』
それに対し、シャルロットは裂帛の気迫を吐く。
《アトス》は右の掌底を繰り出した。撃ち出されたのは恒力の塊。《黄道法》の放出系闘技・《穿風》だ。不可視の衝撃波は土煙を巻き起こし、《猪王》に直撃する。衝撃が周囲に散った。一流の傭兵や騎士と比べても見劣りもしない威力だ。
だが、それでも勢いに乗った《猪王》の突進は止められない。それどころか苛立った巨大な猪はさらに地面を深く削って加速する。
「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
轟く雄叫び。
《猪王》の突進は城壁さえ粉砕するほどの速度になっていた。
(どうやら上手く挑発に乗ってくれたようですね)
一方、操縦棍を握るシャルロットは双眸を鋭くする。
同時に《アトス》が横に大剣を構えた。
この速度を引き出させることこそが彼女の狙いだった。どうしても非力さが目立つ《アトス》。ゆえにシャルロットの戦術はカウンターに特化していた。
そして《猪王》とは対照的に、《アトス》は滑るような足さばきで前に出た。
直後、魔獣と鎧機兵が交差する――。
「――ブオオオオオオオオオオオオオッ!?」
絶叫を上げたのは魔獣の方だった。
前脚を二つとも切断され、《猪王》は地面に腹を擦りつけた。濛々と立ち上る土煙。「ブオッ!? ブオオッ!?」と唾液を零して《猪王》はのたうち回る。
『少し可哀想ですが……』
シャルロットは告げる。
『街道に出てきた魔獣を放置は出来ません。トドメを刺させてもらいます』
そう宣言すると、《アトス》が動き出す。せめて苦しめないように大剣を魔獣の喉へと突き立てた。《猪王》が力尽るのに数秒もかからなかった。
シャルロットがホッと吐息を零す。
それからアッシュ達の方に目をやった。
『終わりました。クライン君』
『ああ。そうだな』
と、応えるのは馬車の前で陣取る一機の鎧機兵だ。
白い鋼髪に漆黒の鎧装。まるで鬼のような威圧感を放つ機体だ。
(これがクライン君の機体ですか)
シャルロットはちらりと《万天図》に目をやる。
(流石は傭兵が扱う鎧機兵ですね)
――恒力値・一万六千ジン。
まさに第一線級の大出力だ。外装以上に印象が強い。とは言え、彼の実力を鑑みればこのクラスの鎧機兵を所有している方が当然か。
(まあ、それはさておき)
シャルロットは小さく吐息を零した。
何にせよ、これで自分の実力のお披露目は無事終了した。そつなくこなせたと自分では評価しているが、果たして彼のお眼鏡にはかなったのだろうか……。
『見事なもんだったよ。スコラさん』
すると、アッシュは朗らかに声を掛けてきた。
『相手の動きをよく読んでいる。その出力の機体でそこまで動けるなんて並みの訓練じゃ無理だったろ。本当に大したもんだ』
『そ、そうですか』
彼の声には紛れもない賞賛が宿っている。
褒められたシャルロットはとても嬉しくなった。思わず口元が綻んでくる。あまりに嬉しくて気付けば両手を胸元に寄せて、ギュッと握りしめていたぐらいだ。
と、そこでシャルロットは自分の拳を見つめて、
(……え?)
普段ならすることのない仕草までして喜ぶ自分に困惑した。
こう言ってはなんだが、自分はそれなりに優秀な人間だ。学べば大抵のことはこなせる自信があるし、褒められることも多かった。しかし子供の頃から振り返っても、褒められてここまで嬉しいと思ったことはなかった。
――どうして自分はここまで喜んでいるのだろうか……?
自分で自分の感情に疑問符を投げかけるが、実のところ心当たりはある。
ただ、自分でもまだ認めたくないのだ。プライド的に。
シャルロットは「ムム」と渋面を浮かべた。
と、その時だった。
『スコラさんの実力は確認させてもらったよ』
アッシュが語り始めた。
『そんだけの判断力と実力があれば《蜂鬼》相手でも大丈夫だろう。だから後の連中は俺に任せておいてくれ』
『…………え?』
アッシュの台詞にシャルロットは眉をひそめた――次の瞬間、
「――ブゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」
先程とは比べものにならない雄叫びが上がった。
シャルロットがハッとして振り向くと、そこには三セージル級の《猪王》が三頭。そしてひと際大きく、五セージルにも至りそうな一頭がいた。
四頭の魔獣は双眸を血走らせて《アトス》を睨み付けていた。
『ま、まさか《猪王》が群れを!?』
『いや、群れって言うよりも親子連れみてえだな。察するにデケえのが親か』
と、アッシュが冷静に分析する。
一方、シャルロットは表情を険しくして《アトス》に大剣を構えさせた。
『ああ、ちょっと待った』
が、それをいつの間にか横にまで移動していたアッシュ――《朱天》が止める。
『こっから先は俺の仕事だ。スコラさんは下がってくれ』
『いえ。クライン君』シャルロットは頭を振った。『四頭を一人で受け持つのは危険です。私も戦います』
『いや大丈夫だ。その必要はねえよ。こんぐらいなら問題ねえ』
『いえ、ですが』
と、なお言い募ろうとするシャルロットに、アッシュは苦笑を零した。自分のことを頑固だと言っていたが、このメイドさんの方こそ結構な頑固者だ。
しかし、いつまでも押し問答している場合ではないし、何よりプロの傭兵としてこれ以上シャルロットを危険にさらすことを容認する訳にはいかない。
アッシュは《アトス》の中で息巻いているであろう女性を見据えた。
そして――。
『――シャル』
あえて愛称で呼んだ。
当人としては少しでも親密度を上げて説得しやすくすることが狙いだ。
『……え』
が、それに対し、唐突に愛称を呼ばれたシャルロットはただただ硬直した。
アッシュは特に気にもせず説得を続ける。
『シャルは充分戦った。目的は果たしただろう? ならここからは俺の仕事だ』
『で、ですが……』
『……シャル』
『……う』
愛称を呼ばれるたびに鼓動が跳ね上がる。今もバクバクと鳴り続けていた。
(ま、まさか、ここまで深く浸透しているなんて……)
頬が熱を帯びる。
胸の奥の鼓動をはっきりと感じつつ、改めてシャルロットは思い知る。
流石にもう認めるしかなかった。
――やはり自分の心は、すでに彼の手によって手折られているのだと。
先日の一件は芝居だと聞いた。だから自分もそれで納得しようと思っていた。
しかし、結局あの時点ですでに手遅れだったのだ。
芝居だろうが、シャルロットの心は完全に掌握されていたのである。自分は彼の所有物だと冗談と少しの皮肉を込めて言ってみたが、それはまさに的を射ていた。
だから、彼に褒められるだけでこんなにも嬉しいのだ。
『……シャル? どうした? 聞いているか?』
その時、彼の声が耳に届く。
シャルロットは豊かな胸元を両手で押さえて「うゥ……」と呻いた。
彼は常識的で優しい人間だ。非情なこともしない。先程のように話をすれば要求も受け入れてくれる。嫌なことは嫌だと拒絶も出来る。
けれど、きっと彼が本気で望むことだけは拒めない。
女の本能がそう告げていた。
ましてや……。
『シャル。譲歩するのもここまでだ。これ以上お前を危険にはさらさねえ』
それが彼女の身を案じてのことなら尚更だ。
『どうかここは退いてくれ。シャルが負けるとは思わねえが、四頭もいると怪我ぐらいはあり得る。俺はお前に傷ついて欲しくねえんだよ』
鋼の鬼が放つ優しい声に、シャルロットの心臓が激しく早鐘を打つ。
カアアアっと頬が真っ赤に染まった。
――嬉しい。心配されることが褒められた時以上に嬉しかった。
どこかふわふわとした気分になり、このまま余韻に浸りたくなるが、シャルロットはハッとしてブンブンと頭を振った。幸せ気分になっている場合ではない。どんなに嬉しくてもこのまま彼だけに危険を押しつけることなど納得いかなかった。
ゆえに、どうにか唇を開いてみるが、
『? いま何か言ったか? シャル』
『い、いえ。その……』
言葉が出てこない。するとアッシュは《朱天》の中で頭を下げた。
『頼む。ここは俺に任せてくれ』
『は、はい……』
やはり彼の本気の望みは拒めない。
結局、ロクな反論も出来ず、ただ受け入れてしまった。
まるで逆らうことを魂が拒絶しているようだ。
――だからだろうか。無意識の内にポツリと呟いていた。
『しょ、承知、しました。私のあるじさま……』
『いや、だからそれはやめてくれって。スコラさん』
アッシュはやれやれと苦笑をした。
自分が完膚なきまでにシャルロットの心を掌握していることに気付きもしない。
『…………灰色さん』
しかし、同乗しているユーリィはシャルロットの心境に何となく気付いた。
自分の恋心もまだ自覚していない歳だが、それでも彼女も女なのである。ユーリィはむすっとした。そしてぎゅうっとアッシュの腹筋をつねる。
「ん? どうしたユーリィ? 怖いのか?」
「………むう」
彼女の指の力では、アッシュにとっては子猫にじゃれつかれた程度にしか感じなかったようだ。天罰が通じない。不愉快だ。別に保護者であるアッシュが誰と付き合おうとユーリィには関係のないことだ。そう思っているのだが、何だか嫌だった。
「……灰色さん。嫌い」
「えッ!? な、なんでだ!? お父さん何かしたかユーリィ!?」
と、騒がしい二人であるが、愛機である《朱天》は黙々と歩み続けていた。
目的は荒ぶる《猪王》達の討伐だ。
一方その傍ら、《アトス》の中でシャルロットは《朱天》の後ろ姿に見入っていた。
そして数分後、彼女は目撃することになる。
自分が心から敗北を認めた男の力を。
いずれ輝く《極星》の力の一片を垣間見ることになるのだ。
(……私の、あるじさま……)
まるで少女のように指を組みながら。
アッシュは呟く。
それから他の三人に目をやり、
「ここは俺とスコラさんで迎え撃つ。ライクは馬を落ち着かせておいてくれ。それとユーリィはこっちに来い」
アッシュに手招きされ、ユーリィは「分かった」と頷いた。
そして馬車の荷台の縁まで来ると、そのままアッシュに抱き上げてもらう。
「ユーリィは俺と一緒に《朱天》に乗るんだ」
「うん。分かった」
こくんと頷くユーリィ。が、そこでシャルロットが声をかける。
「いえ。その必要はありません」
彼女はアッシュに視線を向けた。
「ここは私にお任せください。クライン君。《猪王》は四セージル級の比較的小型な魔獣。群れを成さないとも聞きます。鎧機兵が一機あれば倒せる相手です」
「いや、確かにそうだが、それはなぁ」
ユーリィを抱き上げたまま、アッシュは困った表情を見せた。
「何度も言うがスコラさんは本職じゃねえんだ。メイドのスコラさんが戦って、傭兵の俺が高みの見物ってのは出来ねえよ」
と、正論を語るが、シャルロットの方は平然としたものだ。
「お気遣いは嬉しく思います。クライン君」
彼女はアッシュの視線を真っ直ぐ受け止めて告げる。
「ですが、これは本当に好機だと考えています。《蜂鬼》戦において私に信用できるだけの実力があるのか。それをお見せするには丁度いい相手です」
「う~ん、それもそうなんだが……」
アッシュはなお渋る。シャルロットは苦笑を零した。
「クライン君は頑固ですね」
「まあ、戦闘に関してだけはどうしてもな」
アッシュはユーリィを一旦荷台の上に戻すと、シャルロットの方へと足を向けた。
真剣な表情で近付いてくる少年にシャルロットは少しドキッとした。
「スコラさん。命がけの戦闘で必勝ってのはねえもんだ。どんな実力者でも呆気なく死ぬ時がある。いいか。格下相手でも油断だけはしちゃいけねえ」
そう言って、アッシュは彼女の肩に手を置いた。
シャルロットは少し躊躇いながらも彼の手にそっと触れて、
「ご心配していただきありがとうございます。肝に命じておきます。ですので、どうかここは私にお任せください」
「……やれやれだな」
アッシュは苦笑いを見せる。
「分かったよ。けど、俺も鎧機兵で待機だけはしておく。危ないと思ったらすぐに割って入るからな。それぐらいならいいだろ?」
「はい。承知いたしました。私の愛しきあるじさま」
「うん。それもやめような」
頬を引きつらせるアッシュ。どうもこの先ずっと言われそうで怖い。
それに対し、シャルロットは微笑むだけで何も答えなかった。
そして彼女は十数歩前に出るとスカートを翻し、短剣を抜刀した。
そこに至って、バキバキッと木々が押し倒される音が森の奥から響いてくる。時折雄叫びも轟く。魔獣が確実に接近している証拠だ。
シャルロットは表情を引き締めて愛機の名を呼ぶ。
「――来なさい。《アトス》」
途端、彼女の前方に転移陣が描かれた。
そしてゆっくりと地面から浮上してきたのは薄藍色の鎧機兵だった。
手に携えるのは大剣。鎧装は速度重視の軽装型。全高は三・三セージルと、極めてオーソドックスな騎士タイプだ。
「……意外」
その時、ユーリィが呟く。
「てっきりメイドさん型が出てくると思ってた。少しがっかり」
「期待に添えず申し訳ありません。ユーリィさん」
シャルロットは苦笑をもらす。
「私はあまり裕福な出自ではないので、どうしても安価で入手しやすいオーソドックスタイプになったのです。《アトス》は恒力値も四千ジン程度。外装も塗装以外はほぼ手を加えていない、至って普通の機体です。ですが――」
そこで彼女は軽やかに舞って愛機に乗り込んだ。
「それでも学生時代、私と苦楽を共にした愛機です。それに私はこの《アトス》で騎士学校では次席を勝ち取りました。それだけに腕には自信がありますから」
ガシュン、と胸部装甲が降りる。《アトス》の両眼が光った。
『どうか安心して構えていてください。クライン君』
拡声器越しにそう告げて、《アトス》は大剣を両手で構えた。
アッシュは「ああ、分かったよ」と告げる。次いで森の奥へと目をやり、
「さあ、お客さんだ。ライク。馬をしっかり抑えておけよ。ユーリィ。俺も《朱天》を喚んでおく。構えておいてくれ」
対し、ライクは「了解。シャル姉ちゃん! よろしく頼むよ」と応え、ユーリィは「うん、分かった」と頷いた。
アッシュは短剣の柄に手をかけつつ、《アトス》に目をやった。
そして――いよいよ招かざるお客さまが登場する。
「――ブオオオオオオオオオオオオッッ!」
木々を吹き飛ばし、街道に現れたそいつは巨大な猪だった。
鼻先から尾までは三セージルほどか。この種族の中では若干小柄だ。
特徴としては黒い体毛と血走った赤い双眸を持っている。中でも特筆すべきは鋭く太い牙だろう。長さにして二セージルはある凶器だ。
四セージル級の魔獣――《猪王》。
性格は獰猛で攻撃性が強い。普段は森の奥で生息しているが、稀に街道に出没すると暴れ回る魔獣だ。足も相当速く、馬でもなければ逃げ切るのは難しい相手だった。
「ブオ? ブオッ! ブオオオオオオオオオオ!」
《猪王》は《アトス》の存在に気付き、警戒心を露わにした。
しかし逃げ出すような素振りはない。飛び出すタイミングを計っているようだ。
「さて」《アトス》が身構える中、アッシュが呟く。
「俺の方も準備しておくか」
『――はい。お願いします。では参ります!』
言って、シャルロットが操る《アトス》が地を蹴った。
《猪王》は猪に似た魔獣。その攻撃方法も猪そのものだ。ゆえに後手に回っては不利。突進で先制される前に撃って出たのだ。
大剣が《猪王》の眉間めがけて振り下ろされる!
「――ブオオオオオ!」
対する《猪王》は二本の牙で迎え撃った。
――ギイイィン!
まるで金属同士がぶつかるような音が響き、大剣は大きく弾かれた。
が、シャルロットは焦らない。愛機が非力なの百も承知だ。その場で反転すると《アトス》の竜尾で《猪王》の横っ面を殴打した。
「――ブオオオオオオオオオオオオオッ!?」
為す術なく吹き飛ぶ《猪王》。
だが、そこは魔獣の耐久力。即座に立ち上がると前脚で地面を削った。
そして猪突猛進の名に恥じない突進力で《アトス》に迫る!
『――はあ!』
それに対し、シャルロットは裂帛の気迫を吐く。
《アトス》は右の掌底を繰り出した。撃ち出されたのは恒力の塊。《黄道法》の放出系闘技・《穿風》だ。不可視の衝撃波は土煙を巻き起こし、《猪王》に直撃する。衝撃が周囲に散った。一流の傭兵や騎士と比べても見劣りもしない威力だ。
だが、それでも勢いに乗った《猪王》の突進は止められない。それどころか苛立った巨大な猪はさらに地面を深く削って加速する。
「ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」
轟く雄叫び。
《猪王》の突進は城壁さえ粉砕するほどの速度になっていた。
(どうやら上手く挑発に乗ってくれたようですね)
一方、操縦棍を握るシャルロットは双眸を鋭くする。
同時に《アトス》が横に大剣を構えた。
この速度を引き出させることこそが彼女の狙いだった。どうしても非力さが目立つ《アトス》。ゆえにシャルロットの戦術はカウンターに特化していた。
そして《猪王》とは対照的に、《アトス》は滑るような足さばきで前に出た。
直後、魔獣と鎧機兵が交差する――。
「――ブオオオオオオオオオオオオオッ!?」
絶叫を上げたのは魔獣の方だった。
前脚を二つとも切断され、《猪王》は地面に腹を擦りつけた。濛々と立ち上る土煙。「ブオッ!? ブオオッ!?」と唾液を零して《猪王》はのたうち回る。
『少し可哀想ですが……』
シャルロットは告げる。
『街道に出てきた魔獣を放置は出来ません。トドメを刺させてもらいます』
そう宣言すると、《アトス》が動き出す。せめて苦しめないように大剣を魔獣の喉へと突き立てた。《猪王》が力尽るのに数秒もかからなかった。
シャルロットがホッと吐息を零す。
それからアッシュ達の方に目をやった。
『終わりました。クライン君』
『ああ。そうだな』
と、応えるのは馬車の前で陣取る一機の鎧機兵だ。
白い鋼髪に漆黒の鎧装。まるで鬼のような威圧感を放つ機体だ。
(これがクライン君の機体ですか)
シャルロットはちらりと《万天図》に目をやる。
(流石は傭兵が扱う鎧機兵ですね)
――恒力値・一万六千ジン。
まさに第一線級の大出力だ。外装以上に印象が強い。とは言え、彼の実力を鑑みればこのクラスの鎧機兵を所有している方が当然か。
(まあ、それはさておき)
シャルロットは小さく吐息を零した。
何にせよ、これで自分の実力のお披露目は無事終了した。そつなくこなせたと自分では評価しているが、果たして彼のお眼鏡にはかなったのだろうか……。
『見事なもんだったよ。スコラさん』
すると、アッシュは朗らかに声を掛けてきた。
『相手の動きをよく読んでいる。その出力の機体でそこまで動けるなんて並みの訓練じゃ無理だったろ。本当に大したもんだ』
『そ、そうですか』
彼の声には紛れもない賞賛が宿っている。
褒められたシャルロットはとても嬉しくなった。思わず口元が綻んでくる。あまりに嬉しくて気付けば両手を胸元に寄せて、ギュッと握りしめていたぐらいだ。
と、そこでシャルロットは自分の拳を見つめて、
(……え?)
普段ならすることのない仕草までして喜ぶ自分に困惑した。
こう言ってはなんだが、自分はそれなりに優秀な人間だ。学べば大抵のことはこなせる自信があるし、褒められることも多かった。しかし子供の頃から振り返っても、褒められてここまで嬉しいと思ったことはなかった。
――どうして自分はここまで喜んでいるのだろうか……?
自分で自分の感情に疑問符を投げかけるが、実のところ心当たりはある。
ただ、自分でもまだ認めたくないのだ。プライド的に。
シャルロットは「ムム」と渋面を浮かべた。
と、その時だった。
『スコラさんの実力は確認させてもらったよ』
アッシュが語り始めた。
『そんだけの判断力と実力があれば《蜂鬼》相手でも大丈夫だろう。だから後の連中は俺に任せておいてくれ』
『…………え?』
アッシュの台詞にシャルロットは眉をひそめた――次の瞬間、
「――ブゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!」
先程とは比べものにならない雄叫びが上がった。
シャルロットがハッとして振り向くと、そこには三セージル級の《猪王》が三頭。そしてひと際大きく、五セージルにも至りそうな一頭がいた。
四頭の魔獣は双眸を血走らせて《アトス》を睨み付けていた。
『ま、まさか《猪王》が群れを!?』
『いや、群れって言うよりも親子連れみてえだな。察するにデケえのが親か』
と、アッシュが冷静に分析する。
一方、シャルロットは表情を険しくして《アトス》に大剣を構えさせた。
『ああ、ちょっと待った』
が、それをいつの間にか横にまで移動していたアッシュ――《朱天》が止める。
『こっから先は俺の仕事だ。スコラさんは下がってくれ』
『いえ。クライン君』シャルロットは頭を振った。『四頭を一人で受け持つのは危険です。私も戦います』
『いや大丈夫だ。その必要はねえよ。こんぐらいなら問題ねえ』
『いえ、ですが』
と、なお言い募ろうとするシャルロットに、アッシュは苦笑を零した。自分のことを頑固だと言っていたが、このメイドさんの方こそ結構な頑固者だ。
しかし、いつまでも押し問答している場合ではないし、何よりプロの傭兵としてこれ以上シャルロットを危険にさらすことを容認する訳にはいかない。
アッシュは《アトス》の中で息巻いているであろう女性を見据えた。
そして――。
『――シャル』
あえて愛称で呼んだ。
当人としては少しでも親密度を上げて説得しやすくすることが狙いだ。
『……え』
が、それに対し、唐突に愛称を呼ばれたシャルロットはただただ硬直した。
アッシュは特に気にもせず説得を続ける。
『シャルは充分戦った。目的は果たしただろう? ならここからは俺の仕事だ』
『で、ですが……』
『……シャル』
『……う』
愛称を呼ばれるたびに鼓動が跳ね上がる。今もバクバクと鳴り続けていた。
(ま、まさか、ここまで深く浸透しているなんて……)
頬が熱を帯びる。
胸の奥の鼓動をはっきりと感じつつ、改めてシャルロットは思い知る。
流石にもう認めるしかなかった。
――やはり自分の心は、すでに彼の手によって手折られているのだと。
先日の一件は芝居だと聞いた。だから自分もそれで納得しようと思っていた。
しかし、結局あの時点ですでに手遅れだったのだ。
芝居だろうが、シャルロットの心は完全に掌握されていたのである。自分は彼の所有物だと冗談と少しの皮肉を込めて言ってみたが、それはまさに的を射ていた。
だから、彼に褒められるだけでこんなにも嬉しいのだ。
『……シャル? どうした? 聞いているか?』
その時、彼の声が耳に届く。
シャルロットは豊かな胸元を両手で押さえて「うゥ……」と呻いた。
彼は常識的で優しい人間だ。非情なこともしない。先程のように話をすれば要求も受け入れてくれる。嫌なことは嫌だと拒絶も出来る。
けれど、きっと彼が本気で望むことだけは拒めない。
女の本能がそう告げていた。
ましてや……。
『シャル。譲歩するのもここまでだ。これ以上お前を危険にはさらさねえ』
それが彼女の身を案じてのことなら尚更だ。
『どうかここは退いてくれ。シャルが負けるとは思わねえが、四頭もいると怪我ぐらいはあり得る。俺はお前に傷ついて欲しくねえんだよ』
鋼の鬼が放つ優しい声に、シャルロットの心臓が激しく早鐘を打つ。
カアアアっと頬が真っ赤に染まった。
――嬉しい。心配されることが褒められた時以上に嬉しかった。
どこかふわふわとした気分になり、このまま余韻に浸りたくなるが、シャルロットはハッとしてブンブンと頭を振った。幸せ気分になっている場合ではない。どんなに嬉しくてもこのまま彼だけに危険を押しつけることなど納得いかなかった。
ゆえに、どうにか唇を開いてみるが、
『? いま何か言ったか? シャル』
『い、いえ。その……』
言葉が出てこない。するとアッシュは《朱天》の中で頭を下げた。
『頼む。ここは俺に任せてくれ』
『は、はい……』
やはり彼の本気の望みは拒めない。
結局、ロクな反論も出来ず、ただ受け入れてしまった。
まるで逆らうことを魂が拒絶しているようだ。
――だからだろうか。無意識の内にポツリと呟いていた。
『しょ、承知、しました。私のあるじさま……』
『いや、だからそれはやめてくれって。スコラさん』
アッシュはやれやれと苦笑をした。
自分が完膚なきまでにシャルロットの心を掌握していることに気付きもしない。
『…………灰色さん』
しかし、同乗しているユーリィはシャルロットの心境に何となく気付いた。
自分の恋心もまだ自覚していない歳だが、それでも彼女も女なのである。ユーリィはむすっとした。そしてぎゅうっとアッシュの腹筋をつねる。
「ん? どうしたユーリィ? 怖いのか?」
「………むう」
彼女の指の力では、アッシュにとっては子猫にじゃれつかれた程度にしか感じなかったようだ。天罰が通じない。不愉快だ。別に保護者であるアッシュが誰と付き合おうとユーリィには関係のないことだ。そう思っているのだが、何だか嫌だった。
「……灰色さん。嫌い」
「えッ!? な、なんでだ!? お父さん何かしたかユーリィ!?」
と、騒がしい二人であるが、愛機である《朱天》は黙々と歩み続けていた。
目的は荒ぶる《猪王》達の討伐だ。
一方その傍ら、《アトス》の中でシャルロットは《朱天》の後ろ姿に見入っていた。
そして数分後、彼女は目撃することになる。
自分が心から敗北を認めた男の力を。
いずれ輝く《極星》の力の一片を垣間見ることになるのだ。
(……私の、あるじさま……)
まるで少女のように指を組みながら。
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