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第11部
第一章 交流会、来たる①
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――冬の寒さが微かに残る『2の月』の上旬。
森の国・エリーズ国。
その王都パドロにある騎士学校は今、一つの話題で持ちきりだった。
「さて。いよいよ交流会が近づいてきたんだが……」
騎士学校の教室の一つ。
このクラスの担任教師であるアイザック=ハリーが、教壇に手をついて告げる。
「交流先の学校も決まった。来るのは『アノースログ学園』の二回生だ」
「「「おお~」」
生徒たちから、感嘆の声が上がる。
「やっぱ本命が来たな」「皇国一番の有名校か」「あれだろ? アノースログって、爵位持ちの貴族しか通ってねえっていう学校だろ?」
ざわざわ、と生徒たちが騒ぎ出す。
「ああ~、静かにしろ、お前たち」
アイザックが苦笑を浮かべた。
「まあ、お前たちが興奮する気持ちも分かるがな」
今回の交流会は、過去に例のない初めての催しだった。
隣国であるグレイシア皇国と、エリーズ国は長い間、不仲な間柄だった。
時には戦争にまで発展した歴史もある。
だが、近年になって徐々に交流関係も改善し、友好国に近い発展を遂げていた。
そしてその友好の証の一つとして行われるのが、今回の交流会なのだ。
未来を担う騎士学校同士の交流。
二大国が、これからも友好を続けたいと願う象徴でもあった。
「お前達たちも知っての通り、皇国には三つの騎士学校がある」
アイザックは言葉を続けた。
「『アノースログ』、『フルスコウ』、『ドレアレス』」
三本の指を掲げる。
「元々は競い合わせるために分校にしたそうだ。その中でも今回、交流会に参加するアノースログは名門で知られる学校だ」
「「「おお~」」」
と、再び声を上げる生徒たち。
そんな中、一人の生徒が手を上げる。シルバという名前の少年だ。
「あれっすよね。アノースログって、レイハートみたいなガチの令嬢とか、お坊ちゃんが通っているっていう貴族御用達の学校なんすよね」
「まあ、他の二校や、うちとは違い、通うのは貴族とその従者だけとは聞いているな」
アイザックが腕を組んで告げる。
元々、王立の騎士学校とは貴族のためにあるものだ。
多くの市民は日曜学校か、個人や市民団体で運営する学校に通う。例外としては、貴族の子弟の従者である者たちぐらいだった。
しかし、昨今では、優秀な人材を幅広く募るため、貴族でない者にも騎士への門戸を開こうという動きが各国で盛んになっていた。エリーズ国の騎士学校もその一つだ。
そういう意味では、アノースログ学園は、昔ながらの運営体制であり、今となっては珍しい学校とも言える。
「だが、本来貴族とは、騎士のサラブレッドとも呼べる者たちだ。その実力はやはり群を抜いている。そして、アノースログ学園は名門と呼ばれるだけあって厳しい学風でもあるそうだぞ。一方、お前たちは……」
そう呟いて、アイザックは生徒たちの顔を見渡した。
何だかんだで、このクラスは貴族出身者が多い。
彼らは、市井の出の者にも差別しない度量が大きい生徒たちである。
それは教師としては、とても誇らしいことだった。
しかし、同時に、彼らは自由奔放すぎるメンバーでもあった。
貴族も平民も関係なく、馬鹿騒ぎが大好きなのである。
アイザックは、少し頭が痛くなってきた。
「なあ、お前ら」
少しだけ、本気で提案する。
「交流会、レイハート以外、全員自宅待機する訳にはいかないか?」
「「「いやいやいや」」」
全員が、パタパタと手を振った。
「なんでこんな面白そうなイベント、ぶっちしなきゃいけないんすか!」
「そうそう! しかも、深窓のご令嬢が集団でやってくるんだぜ!」
「きっと、王子さまみたいな人もいるよね~」
「うんうん」
男女問わず、そんな声が挙がる中、
「流石に、わたくし一人で対応は無理かと」
と、一人の女生徒が言う。
美しい蜂蜜色の長い髪を、紅いリボンで結いだ美少女。
スレンダーな肢体と、楚々たる仕草が印象的な、リーゼ=レイハートだった。
礼節、実力を兼ね揃えた、アイザック自慢の生徒である。
さらに言えば、彼女は公爵令嬢でもある。
すでに、社交界での経験さえもあるそうだ。
彼女ならば、どこに出しても恥ずかしくなかった。
「う~ん、じゃあ、ヒラサカも付けるぞ」
「それならば」
「いやいや、リーゼ」
アイザックの提案に頷きかけたリーゼを、自席からコウタが止めた。
「学校同士の交流会なんだよ。二人だけで出迎えてどうするのさ」
「まあ、そうだよな」
コウタのツッコミに、アイザックが苦笑を零した。
「自宅待機は冗談だ。しかし、本当にあまり羽目を外してくれるなよ。相手は他国の騎士候補生なんだ。お前らの態度がそのままこの国の印象になるんだからな」
真剣な顔つきの教師に、生徒たちも少し面持ちを改めた。
アイザックは、さらに言葉を続ける。
「なにせ、初めて行うイベントだ。何があるのか分からない。お前たちも、それだけは心掛けておいてくれ」
生徒たちは、それぞれ頷いた。
「交流会で行う主なイベントは、いま学校で揉んでいるところだ。近日中には公開するから各自目を通してくれ。さて」
アイザックは、一度言葉を切った。
「ともあれ、皇国の交流先の学校が決まった。今日の連絡は以上だ。今は通常授業だ。気持ちを切り替えろ」
アイザックはそう言って、生徒たちに目をやった。
そして――。
「それじゃあ、授業を始めるぞ」
今日も一日が始まった。
森の国・エリーズ国。
その王都パドロにある騎士学校は今、一つの話題で持ちきりだった。
「さて。いよいよ交流会が近づいてきたんだが……」
騎士学校の教室の一つ。
このクラスの担任教師であるアイザック=ハリーが、教壇に手をついて告げる。
「交流先の学校も決まった。来るのは『アノースログ学園』の二回生だ」
「「「おお~」」
生徒たちから、感嘆の声が上がる。
「やっぱ本命が来たな」「皇国一番の有名校か」「あれだろ? アノースログって、爵位持ちの貴族しか通ってねえっていう学校だろ?」
ざわざわ、と生徒たちが騒ぎ出す。
「ああ~、静かにしろ、お前たち」
アイザックが苦笑を浮かべた。
「まあ、お前たちが興奮する気持ちも分かるがな」
今回の交流会は、過去に例のない初めての催しだった。
隣国であるグレイシア皇国と、エリーズ国は長い間、不仲な間柄だった。
時には戦争にまで発展した歴史もある。
だが、近年になって徐々に交流関係も改善し、友好国に近い発展を遂げていた。
そしてその友好の証の一つとして行われるのが、今回の交流会なのだ。
未来を担う騎士学校同士の交流。
二大国が、これからも友好を続けたいと願う象徴でもあった。
「お前達たちも知っての通り、皇国には三つの騎士学校がある」
アイザックは言葉を続けた。
「『アノースログ』、『フルスコウ』、『ドレアレス』」
三本の指を掲げる。
「元々は競い合わせるために分校にしたそうだ。その中でも今回、交流会に参加するアノースログは名門で知られる学校だ」
「「「おお~」」」
と、再び声を上げる生徒たち。
そんな中、一人の生徒が手を上げる。シルバという名前の少年だ。
「あれっすよね。アノースログって、レイハートみたいなガチの令嬢とか、お坊ちゃんが通っているっていう貴族御用達の学校なんすよね」
「まあ、他の二校や、うちとは違い、通うのは貴族とその従者だけとは聞いているな」
アイザックが腕を組んで告げる。
元々、王立の騎士学校とは貴族のためにあるものだ。
多くの市民は日曜学校か、個人や市民団体で運営する学校に通う。例外としては、貴族の子弟の従者である者たちぐらいだった。
しかし、昨今では、優秀な人材を幅広く募るため、貴族でない者にも騎士への門戸を開こうという動きが各国で盛んになっていた。エリーズ国の騎士学校もその一つだ。
そういう意味では、アノースログ学園は、昔ながらの運営体制であり、今となっては珍しい学校とも言える。
「だが、本来貴族とは、騎士のサラブレッドとも呼べる者たちだ。その実力はやはり群を抜いている。そして、アノースログ学園は名門と呼ばれるだけあって厳しい学風でもあるそうだぞ。一方、お前たちは……」
そう呟いて、アイザックは生徒たちの顔を見渡した。
何だかんだで、このクラスは貴族出身者が多い。
彼らは、市井の出の者にも差別しない度量が大きい生徒たちである。
それは教師としては、とても誇らしいことだった。
しかし、同時に、彼らは自由奔放すぎるメンバーでもあった。
貴族も平民も関係なく、馬鹿騒ぎが大好きなのである。
アイザックは、少し頭が痛くなってきた。
「なあ、お前ら」
少しだけ、本気で提案する。
「交流会、レイハート以外、全員自宅待機する訳にはいかないか?」
「「「いやいやいや」」」
全員が、パタパタと手を振った。
「なんでこんな面白そうなイベント、ぶっちしなきゃいけないんすか!」
「そうそう! しかも、深窓のご令嬢が集団でやってくるんだぜ!」
「きっと、王子さまみたいな人もいるよね~」
「うんうん」
男女問わず、そんな声が挙がる中、
「流石に、わたくし一人で対応は無理かと」
と、一人の女生徒が言う。
美しい蜂蜜色の長い髪を、紅いリボンで結いだ美少女。
スレンダーな肢体と、楚々たる仕草が印象的な、リーゼ=レイハートだった。
礼節、実力を兼ね揃えた、アイザック自慢の生徒である。
さらに言えば、彼女は公爵令嬢でもある。
すでに、社交界での経験さえもあるそうだ。
彼女ならば、どこに出しても恥ずかしくなかった。
「う~ん、じゃあ、ヒラサカも付けるぞ」
「それならば」
「いやいや、リーゼ」
アイザックの提案に頷きかけたリーゼを、自席からコウタが止めた。
「学校同士の交流会なんだよ。二人だけで出迎えてどうするのさ」
「まあ、そうだよな」
コウタのツッコミに、アイザックが苦笑を零した。
「自宅待機は冗談だ。しかし、本当にあまり羽目を外してくれるなよ。相手は他国の騎士候補生なんだ。お前らの態度がそのままこの国の印象になるんだからな」
真剣な顔つきの教師に、生徒たちも少し面持ちを改めた。
アイザックは、さらに言葉を続ける。
「なにせ、初めて行うイベントだ。何があるのか分からない。お前たちも、それだけは心掛けておいてくれ」
生徒たちは、それぞれ頷いた。
「交流会で行う主なイベントは、いま学校で揉んでいるところだ。近日中には公開するから各自目を通してくれ。さて」
アイザックは、一度言葉を切った。
「ともあれ、皇国の交流先の学校が決まった。今日の連絡は以上だ。今は通常授業だ。気持ちを切り替えろ」
アイザックはそう言って、生徒たちに目をやった。
そして――。
「それじゃあ、授業を始めるぞ」
今日も一日が始まった。
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