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二人の意識の変化
麗人による悦楽な遊び
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クリスは不機嫌な顔で朝食をとっていた。給仕するカルラの表情も固い。
そんな二人の先には。
白金の髪を編込み背中に流し、優雅に朝食を食べるセルシティ。隣には給仕をするカリスト。
その背後には近衛騎士が二人。鋭い視線で警戒している。
そんな緊張感の中、カリストが平然と給仕をこなす。
クリスは紅茶を飲みながらセルシティを睨んだ。
「例の事件で犬を自宅監禁にしていたそうだな。おまえなら監禁しなくても、身分証明ぐらいすぐに出来ただろ」
犬がルドのことと察したセルシティが茶化すように質の悪い笑みを浮かべる。
「三日もルドに会えなくて寂しかったかい?」
「だ、誰が! そんなこと!」
紅茶を吹き出しかけたクリスに、セルシティがますます口角を上げた。
「おや、おや。そんなに真っ赤になって否定するとは。あながち間違いではないようだね」
「だから! そんなこと一言も言ってないだろ!」
クリスは激しくテーブルを叩いて立ち上がる。
「そんなに声を荒げるところを久しぶりに見たよ。まさか、クリスティがねぇ……」
ニヤニヤするセルシティに、クリスは水が入ったピッチャーを持った。そのままセルシティにぶちまけようとしたところで、黒い瞳と目が合う。
カリストが微笑み、首を左右に振った。
その姿にクリスは大きく息を吐き、忌々しそうに椅子に座る。
これ以上、感情を出すのはセルシティの思うツボ。のせられてはいけない。
クリスは大きく息を吸って呼吸を整えた。
「で、そんなことを言うために朝食をたかりに来たのか?」
「もう少し遊びたかったのに。ルドのようにはいかないか」
「犬のことは、もういい。で、ここに来た目的は?」
セルシティが珍しく真面目な顔になる。
「悪魔召喚の事件について、続報だ。オンディビエラ子爵を捕縛した」
「そうか」
驚く様子なく食事を再開したクリスにセルシティが肩を落した。
「なんだ。知っていたのか」
「捕縛は知らん。ただ、私について嗅ぎ回っていたから少し調べたら、いろいろ良くないモノが出てきた」
「その辺りはルドが裏でいろいろ動いていたからね。おかげで捕縛しやすかったよ」
「犬が?」
「そう。クリスティの前だと、あんな感じだけどね。敵にまわしたら厄介だよ、ルドは」
無言のクリスにセルシティが話を戻す。
「オンディビエラ子爵はクリスティに治療を断られた後、ベッティーノと接触してね。オンディビエラ子爵は奴隷誘惑の疑惑を密告して、クリスティが警備兵によって牢に留置されたところを裏金で助けて恩を売る。ベッティーノはクリスティが不在の間に妊婦の奴隷を誘拐。と計画していたそうだ」
クリスは肩をすくめた。
「変なところで利害が一致したんだな」
「まったくだよ。それに、まだ関わっている人間がいる。ベッティーノが数多くある検問を、どうやって突破して、オークニーに侵入したのか。どうやって、二人が出会ったのか」
「そこまで手引きをした者がいる、か。この国でそこそこの権力や人脈を持っていないと無理だな」
「あぁ。調査中だが、私の失策を狙っている者か、内部から撹乱してこの国の力を削ごうとしている者か。そんなところだろう」
「大変だな」
他人事のクリスにセルシティが眉尻を下げる。
「もう少し協力的になってくれてもいいと思うんだけど」
「それは、そっちの仕事だ。私を巻き込むな。用が済んだなら、さっさと帰れ」
「まぁ、まぁ。もう一つ話があるんだ」
セルシティが今までの雰囲気を消し、クリスを咎めるように睨む。
「今回はかなり無理をしたらしいな」
クリスは無言のまま答えない。
「奴隷を助けるな、とは言わない。だが、世界を見ろ。助けを必要とする人は何千、何万といる。全員を助けようとすれば、クリスティの方が先に潰れる」
セルシティからの本気の忠告に、クリスは思い出すように語り始めた。
「カリストがいた国ではエンという言葉があるそうだ」
セルシティが黙ってクリスの言葉に耳を傾ける。
「エンには、丸を意味する円や、人との繋がりを意味する縁などがある。私の一族は、あの時あのままだったら、私が出てくる前に滅んでいた、と聞いている。それを先代の領主が狭い円から出て、この国で縁を創り、広げた。そのおかげで一族は絶滅を免れ、命を繋いだ。その結果、私はここにいる。エンとは、どこでどう繋がり、どのような結果をもたらすか分からない」
相づちも打たず、黙って聞くセルシティにクリスは続けた。
「私は全ての人を助けることは出来ないし、そんな力もない。だが、せっかく繋がった命だ。目に留まった人だけでも助けたい。それは贅沢か?」
まっすぐ見つめてくる深緑の瞳に、セルシティが大きく息を吐く。
「……贅沢だな。やりたいことがやれる。それは、とても贅沢なことだ」
「では、その贅沢を全力でやらせてもらおう」
ニヤリと笑うクリスにセルシティが諦めたように笑う。
「好きにすればいい」
「安心しろ。迷惑はかけない」
「少しぐらいかけてもいいぞ?」
「おまえに貸しを作るものほど怖いことはない」
「そんなことないよ」
セルシティが楽しそうに否定する。そこで、カリストがクリスに声をかけた。
「犬が来たようですね」
クリスは一瞬立ち上がりかけ、椅子に座り直した。
その様子にセルシティがニヤリと笑う。
「ほう? 朝早くからルドは熱心だな。さて、私はそろそろお暇しよう」
セルシティが立ち上がるが、クリスは動かない。
「今度、用事がある時は私を呼び出せ。おまえがここに来たら使用人たちが苛立って仕事にならん」
「そうか。なら、次から気を付けよう」
「二度と来るな」
「はい、はい」
セルシティが廊下に出ると、ルドと鉢合わせた。
「セル!? どうして、ここに!?」
予想外の人物の出現にルドが臨戦態勢になる。一方のセルシティが意味ありげに笑う。
「おはよう、ルド。いや昨日の夜、世話になってな。朝食を済ませて、これから帰るところだ」
「夜?」
困惑しているルドの耳元でセルシティが囁いた。
「クリスのベッドは、なかなか寝心地が良かったよ」
「ベッド? ベッドの寝心地をなぜ……」
首を傾げていたルドが何かに気付いたのか、突然顔を真っ赤にして叫んだ。
「どういう意味だ!?」
「他人のベッドで寝る目的など、そう多くないだろ」
「なっ!?」
ルドが真っ赤な顔のまま口をパクパクと動かすが声が出ない。そこに飛んできたクリスはルドの腹を蹴った。
「なにを想像している!? なにを!」
「え? あ、師匠!」
次にクリスはセルシティを睨んだ。
「おまえも! ないこと! ないこと! ないこと、言うな!」
「何もないんですね!」
嬉しそうなルドにクリスは怒鳴り返す。
「あってたまるか!」
「いや、ちゃんとあったことも言ったよ」
「何があったんですか!」
両肩を掴んで迫るルドをクリスは殴った。
「落ち着け! セルティもこれ以上引っ掻き回すな!」
「そうかい。じゃあ、そろそろ帰るよ」
「早く帰れ!」
「セル! 師匠に何をしたんだ!」
「何もされとらん! 朝食を一緒に食べただけだ!」
クリスはルドを何度も蹴る。そんな二人を眺めながら、セルシティが楽しそうに城へ戻った。
セルシティが屋敷から出た後もルドが何度もクリスに確認する。
「あ、あの師匠? 本当になに……」
「しつこい! セルティは早朝にいきなりやって来て、飯を食わせろと言うから、食わせただけだ! そもそも男同士で何があるというんだ!」
ルドの顔がキョトンとなり目が丸くなる。
「師匠、知らないのですか?」
「どういうことだ?」
「男同士だからこそ、あるんです」
予想外の言葉にクリスは固まった。
「は?」
クリスの間抜けな声が響いた。
そんな二人の先には。
白金の髪を編込み背中に流し、優雅に朝食を食べるセルシティ。隣には給仕をするカリスト。
その背後には近衛騎士が二人。鋭い視線で警戒している。
そんな緊張感の中、カリストが平然と給仕をこなす。
クリスは紅茶を飲みながらセルシティを睨んだ。
「例の事件で犬を自宅監禁にしていたそうだな。おまえなら監禁しなくても、身分証明ぐらいすぐに出来ただろ」
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「三日もルドに会えなくて寂しかったかい?」
「だ、誰が! そんなこと!」
紅茶を吹き出しかけたクリスに、セルシティがますます口角を上げた。
「おや、おや。そんなに真っ赤になって否定するとは。あながち間違いではないようだね」
「だから! そんなこと一言も言ってないだろ!」
クリスは激しくテーブルを叩いて立ち上がる。
「そんなに声を荒げるところを久しぶりに見たよ。まさか、クリスティがねぇ……」
ニヤニヤするセルシティに、クリスは水が入ったピッチャーを持った。そのままセルシティにぶちまけようとしたところで、黒い瞳と目が合う。
カリストが微笑み、首を左右に振った。
その姿にクリスは大きく息を吐き、忌々しそうに椅子に座る。
これ以上、感情を出すのはセルシティの思うツボ。のせられてはいけない。
クリスは大きく息を吸って呼吸を整えた。
「で、そんなことを言うために朝食をたかりに来たのか?」
「もう少し遊びたかったのに。ルドのようにはいかないか」
「犬のことは、もういい。で、ここに来た目的は?」
セルシティが珍しく真面目な顔になる。
「悪魔召喚の事件について、続報だ。オンディビエラ子爵を捕縛した」
「そうか」
驚く様子なく食事を再開したクリスにセルシティが肩を落した。
「なんだ。知っていたのか」
「捕縛は知らん。ただ、私について嗅ぎ回っていたから少し調べたら、いろいろ良くないモノが出てきた」
「その辺りはルドが裏でいろいろ動いていたからね。おかげで捕縛しやすかったよ」
「犬が?」
「そう。クリスティの前だと、あんな感じだけどね。敵にまわしたら厄介だよ、ルドは」
無言のクリスにセルシティが話を戻す。
「オンディビエラ子爵はクリスティに治療を断られた後、ベッティーノと接触してね。オンディビエラ子爵は奴隷誘惑の疑惑を密告して、クリスティが警備兵によって牢に留置されたところを裏金で助けて恩を売る。ベッティーノはクリスティが不在の間に妊婦の奴隷を誘拐。と計画していたそうだ」
クリスは肩をすくめた。
「変なところで利害が一致したんだな」
「まったくだよ。それに、まだ関わっている人間がいる。ベッティーノが数多くある検問を、どうやって突破して、オークニーに侵入したのか。どうやって、二人が出会ったのか」
「そこまで手引きをした者がいる、か。この国でそこそこの権力や人脈を持っていないと無理だな」
「あぁ。調査中だが、私の失策を狙っている者か、内部から撹乱してこの国の力を削ごうとしている者か。そんなところだろう」
「大変だな」
他人事のクリスにセルシティが眉尻を下げる。
「もう少し協力的になってくれてもいいと思うんだけど」
「それは、そっちの仕事だ。私を巻き込むな。用が済んだなら、さっさと帰れ」
「まぁ、まぁ。もう一つ話があるんだ」
セルシティが今までの雰囲気を消し、クリスを咎めるように睨む。
「今回はかなり無理をしたらしいな」
クリスは無言のまま答えない。
「奴隷を助けるな、とは言わない。だが、世界を見ろ。助けを必要とする人は何千、何万といる。全員を助けようとすれば、クリスティの方が先に潰れる」
セルシティからの本気の忠告に、クリスは思い出すように語り始めた。
「カリストがいた国ではエンという言葉があるそうだ」
セルシティが黙ってクリスの言葉に耳を傾ける。
「エンには、丸を意味する円や、人との繋がりを意味する縁などがある。私の一族は、あの時あのままだったら、私が出てくる前に滅んでいた、と聞いている。それを先代の領主が狭い円から出て、この国で縁を創り、広げた。そのおかげで一族は絶滅を免れ、命を繋いだ。その結果、私はここにいる。エンとは、どこでどう繋がり、どのような結果をもたらすか分からない」
相づちも打たず、黙って聞くセルシティにクリスは続けた。
「私は全ての人を助けることは出来ないし、そんな力もない。だが、せっかく繋がった命だ。目に留まった人だけでも助けたい。それは贅沢か?」
まっすぐ見つめてくる深緑の瞳に、セルシティが大きく息を吐く。
「……贅沢だな。やりたいことがやれる。それは、とても贅沢なことだ」
「では、その贅沢を全力でやらせてもらおう」
ニヤリと笑うクリスにセルシティが諦めたように笑う。
「好きにすればいい」
「安心しろ。迷惑はかけない」
「少しぐらいかけてもいいぞ?」
「おまえに貸しを作るものほど怖いことはない」
「そんなことないよ」
セルシティが楽しそうに否定する。そこで、カリストがクリスに声をかけた。
「犬が来たようですね」
クリスは一瞬立ち上がりかけ、椅子に座り直した。
その様子にセルシティがニヤリと笑う。
「ほう? 朝早くからルドは熱心だな。さて、私はそろそろお暇しよう」
セルシティが立ち上がるが、クリスは動かない。
「今度、用事がある時は私を呼び出せ。おまえがここに来たら使用人たちが苛立って仕事にならん」
「そうか。なら、次から気を付けよう」
「二度と来るな」
「はい、はい」
セルシティが廊下に出ると、ルドと鉢合わせた。
「セル!? どうして、ここに!?」
予想外の人物の出現にルドが臨戦態勢になる。一方のセルシティが意味ありげに笑う。
「おはよう、ルド。いや昨日の夜、世話になってな。朝食を済ませて、これから帰るところだ」
「夜?」
困惑しているルドの耳元でセルシティが囁いた。
「クリスのベッドは、なかなか寝心地が良かったよ」
「ベッド? ベッドの寝心地をなぜ……」
首を傾げていたルドが何かに気付いたのか、突然顔を真っ赤にして叫んだ。
「どういう意味だ!?」
「他人のベッドで寝る目的など、そう多くないだろ」
「なっ!?」
ルドが真っ赤な顔のまま口をパクパクと動かすが声が出ない。そこに飛んできたクリスはルドの腹を蹴った。
「なにを想像している!? なにを!」
「え? あ、師匠!」
次にクリスはセルシティを睨んだ。
「おまえも! ないこと! ないこと! ないこと、言うな!」
「何もないんですね!」
嬉しそうなルドにクリスは怒鳴り返す。
「あってたまるか!」
「いや、ちゃんとあったことも言ったよ」
「何があったんですか!」
両肩を掴んで迫るルドをクリスは殴った。
「落ち着け! セルティもこれ以上引っ掻き回すな!」
「そうかい。じゃあ、そろそろ帰るよ」
「早く帰れ!」
「セル! 師匠に何をしたんだ!」
「何もされとらん! 朝食を一緒に食べただけだ!」
クリスはルドを何度も蹴る。そんな二人を眺めながら、セルシティが楽しそうに城へ戻った。
セルシティが屋敷から出た後もルドが何度もクリスに確認する。
「あ、あの師匠? 本当になに……」
「しつこい! セルティは早朝にいきなりやって来て、飯を食わせろと言うから、食わせただけだ! そもそも男同士で何があるというんだ!」
ルドの顔がキョトンとなり目が丸くなる。
「師匠、知らないのですか?」
「どういうことだ?」
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「は?」
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