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第二章・片思い自覚編〜帝都へ
昼休憩と馬に選ばれし者
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オアズ町の憲兵の兵舎前。
魔法騎士団の騎士服姿のルドに気がついた警備兵が敬礼をして声をかけた。
「お待ちしておりました。そのまま中へどうぞ」
重そうな鉄の門が左右に開く。馬に乗ったまま中に入ると、中年の兵士が数人の兵士とともに現れて敬礼をした。
「町の警備を任されております、ガッテムです! 指令通り食事と馬の準備は出来ております」
ルドがクリスを残したまま馬から降りる。それだけで並んだ兵士たちに緊張が走った。
張りつめた空気の中、ルドが白い布で顔を隠したまま穏やかに話す。
「急なことでしたが、素早い対応ありがとうございます」
思わぬ言葉に兵士たちの目が丸くなる。ガッテムは崩れかけた表情を固くして答えた。
「いえ! 当然のことであります! ここで馬を預かります」
「では、お願いします」
クリスは馬から降りられず、わたわたする。そこに、ルドが手を差し出した。これ以上、醜態をさらせないクリスは、大人しくルドの手を借りて馬から降りる。
そこにガッテムが声をかけた。
「狭いところですが、こちらへどうぞ」
「行きましょう」
「……あぁ」
(今度、馬に乗る練習をしよう)
クリスは密かに決意して、ガッテムに案内されるまま兵舎に入った。
兵舎内の応接室。良質なソファーやテーブルがあり、壁には絵画や装飾品が飾られている。
「すぐに食事を運んでまいりますので、おかけになってお待ち下さい」
二人がソファーに腰かけるとガッテムの言葉通り、すぐに兵士が食事を運んできた。緊張しているのか、微かに震える手で食事を並べていく。
ルドが白い布で顔を隠したまま、食事を運んできた兵士の顔を見た。
「ありがとうございます」
「うぇ!? あ、い、いえ! し、失礼しました!」
兵士が慌てて敬礼をして下がる。ルドはこわばった顔でこちらを見ているガッテムに言った。
「すみませんが、食事中は席を外してもらえませんか? 何かあれば呼びますので」
「それは気が利かず、失礼しました!」
ガッテムはこの場を離れられることに安堵したように、そそくさと部屋から出た。
その様子にクリスは肩をすくめる。
「ここの兵士たちは緊張し過ぎではないか?」
「魔法騎士団は尊敬とともに畏怖の対象でもあるんですよ。これぐらいの憲兵なら魔法騎士一人で潰せますから。とある兵士が粗相をして、その兵士がいる町ごと魔法騎士が一人で滅ぼしたという噂が流れたぐらいですし」
「そうやって魔法騎士団の強さを広めているわけか」
「根も葉もない噂ですけどね」
説明しながらルドが顔を隠している布を外す。
クリスは並んだ料理の一つを食べた。空腹ではあるが勢いよく食べず、一品ずつ少量を口に入れて味わう。変な苦みや甘みはないか、舌が痺れないか、毒の類は入っていないか、ゆっくり確認する。
「……なかなか良い食材を使っているな」
基本は兵士の食事で、それに少し肉を多めにした程度なので豪華さはない。それでも食材はなるべく新鮮な物を使用しており、素材の味が活きた美味しさがある。
ルドも同意して頷いた。
「そうですね。無理をさせたみたいで心苦しいです」
「ならばさっさと食べて、さっさと出たほうが余計な気苦労をさせなくていいだろう」
「そうですね」
食事をしながらクリスはふとルドに訊ねた。
「そういえば今日の宿はどうするんだ? リミニ領は大きい街だが、宿の目星はついているのか?」
「領主の屋敷に宿泊します。領主は厳つい顔をした年配の方ですが、気前が良い豪快な方ですよ」
「知り合いか?」
「はい」
「そうか」
その後は会話をすることなく食事を終わらせ、ガッテムを呼び、すぐに出発したいと伝えた。
「こちらに馬を準備しております」
ガッテムに案内された先には、一頭の馬がいた。大人しくも悠然としている姿は気品さえ感じる。
しかし、その馬を見たルドが悩んだ。
「良い馬ですが……他の馬も見させてもらえませんか?」
「は、はい!」
馬舎に移動したルドが馬を一頭一頭じっくり見て回る。その途中、黒毛の馬の前で足を止めた。
「試しにこの馬に乗ってもいいですか?」
ルドの申し出にガッテムが焦る。
「いや、この馬は気性が荒くて乗りこなすのは難しいかと……」
「難しければ他の馬にします」
「で、では少しなら……」
後ろに控えていた兵士が黒毛の馬に鞍を装着し、馬舎から出そうとするが、馬が暴れて進まない。焦る兵士に対して、馬が全身を揺すって抵抗する。
その様子にガッテムが恐る恐るルドに再確認した。
「本当に、この馬でよろしいのですか?」
「はい。これぐらい元気なほうが良いですから」
どうにか外に出てきた黒毛の馬の手綱をルドが受け取る。そのまま馬と目を合わすと、あれだけ暴れていた馬が大人しくなった。
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
「いつも触るだけで暴れるのに」
ルドに大人しく撫でられる黒毛の馬の様子に兵士たちが驚愕する。ルドが軽く馬に飛び乗った。
「危なっ……」
「振り落とされ……ない!?」
「なんでだ!?」
馬がルドの指示通り優雅に歩く。その光景にガッテムや兵士たちがポカンと口を開けた。
「初めて会った人なのに……」
「こんなに大人しく言うことを聞くとは……」
「どうして……」
驚いている面々にルドが声をかける。
「良い馬ですね。お借りしてもよろしいですか?」
「は、はい……」
目の前の光景が信じられないガッテムが生返事をする。
「では、このままお借りします」
ルドが馬に跨がったままクリスに手を伸ばす。クリスはルドの手をとって馬に乗ったが、馬が暴れる様子はない。
クリスを前に座らせたルドが馬上からガッテムたちに声をかけた。
「いろいろありがとうございました。失礼します」
軽く頭を下げてルドが馬を走らせる。クリスはルドに声をかけた。
「お前は馬に好かれるんだな」
「馬は頭が良いですから。自分の全力を出してくれる人なら喜んで乗せて走ります」
「つまり、あそこにいた奴らは全力を出しきれないと、この馬に判断されているのか」
ルドが苦笑いをする。
「まぁ……そういうことですね」
「否定しないのか。ところで何故、最初の馬はやめたんだ?」
「あの馬は気性が穏やかで誰でも乗れます。それも良いのですが、もう少し力強さが欲しかったのと……あと色がちょっと目立つんですよね」
「手入れが行き届いた白馬だったな」
「あそこまで綺麗にされて、真っ白だと……」
クリスはルドが着ている魔法騎士団の服を無言で見つめた。ルドが困り顔のまま頭を振る。
「わかっています。この服は戦場で敵を威嚇するためワザと目立つように作られていますから。あとで目立たなくします」
「そうか」
「検問所を抜けたら全力で走ります」
「わかった」
町に入って来た時とは違う検問所を止まることなく抜ける。右の草原と左の森を分けるように作られた少し広い道。馬車や徒歩の旅人が進む。
馬が走る速度を上げていく。ルドが左手をクリスの腰に回し、覆いかぶさるように背中を密着させた。
「どうし……」
驚いて振り返ろうとしたクリスをルドが声だけで止める。
「かなり揺れますから。振り落とされないようにしてください」
その真剣な声にクリスは黙って前を向いた。背後から複数の蹄の音が迫る。
「何があっても声を出さないで下さい」
耳元で囁かれたクリスは赤くなった顔を隠しながら頷いた。
魔法騎士団の騎士服姿のルドに気がついた警備兵が敬礼をして声をかけた。
「お待ちしておりました。そのまま中へどうぞ」
重そうな鉄の門が左右に開く。馬に乗ったまま中に入ると、中年の兵士が数人の兵士とともに現れて敬礼をした。
「町の警備を任されております、ガッテムです! 指令通り食事と馬の準備は出来ております」
ルドがクリスを残したまま馬から降りる。それだけで並んだ兵士たちに緊張が走った。
張りつめた空気の中、ルドが白い布で顔を隠したまま穏やかに話す。
「急なことでしたが、素早い対応ありがとうございます」
思わぬ言葉に兵士たちの目が丸くなる。ガッテムは崩れかけた表情を固くして答えた。
「いえ! 当然のことであります! ここで馬を預かります」
「では、お願いします」
クリスは馬から降りられず、わたわたする。そこに、ルドが手を差し出した。これ以上、醜態をさらせないクリスは、大人しくルドの手を借りて馬から降りる。
そこにガッテムが声をかけた。
「狭いところですが、こちらへどうぞ」
「行きましょう」
「……あぁ」
(今度、馬に乗る練習をしよう)
クリスは密かに決意して、ガッテムに案内されるまま兵舎に入った。
兵舎内の応接室。良質なソファーやテーブルがあり、壁には絵画や装飾品が飾られている。
「すぐに食事を運んでまいりますので、おかけになってお待ち下さい」
二人がソファーに腰かけるとガッテムの言葉通り、すぐに兵士が食事を運んできた。緊張しているのか、微かに震える手で食事を並べていく。
ルドが白い布で顔を隠したまま、食事を運んできた兵士の顔を見た。
「ありがとうございます」
「うぇ!? あ、い、いえ! し、失礼しました!」
兵士が慌てて敬礼をして下がる。ルドはこわばった顔でこちらを見ているガッテムに言った。
「すみませんが、食事中は席を外してもらえませんか? 何かあれば呼びますので」
「それは気が利かず、失礼しました!」
ガッテムはこの場を離れられることに安堵したように、そそくさと部屋から出た。
その様子にクリスは肩をすくめる。
「ここの兵士たちは緊張し過ぎではないか?」
「魔法騎士団は尊敬とともに畏怖の対象でもあるんですよ。これぐらいの憲兵なら魔法騎士一人で潰せますから。とある兵士が粗相をして、その兵士がいる町ごと魔法騎士が一人で滅ぼしたという噂が流れたぐらいですし」
「そうやって魔法騎士団の強さを広めているわけか」
「根も葉もない噂ですけどね」
説明しながらルドが顔を隠している布を外す。
クリスは並んだ料理の一つを食べた。空腹ではあるが勢いよく食べず、一品ずつ少量を口に入れて味わう。変な苦みや甘みはないか、舌が痺れないか、毒の類は入っていないか、ゆっくり確認する。
「……なかなか良い食材を使っているな」
基本は兵士の食事で、それに少し肉を多めにした程度なので豪華さはない。それでも食材はなるべく新鮮な物を使用しており、素材の味が活きた美味しさがある。
ルドも同意して頷いた。
「そうですね。無理をさせたみたいで心苦しいです」
「ならばさっさと食べて、さっさと出たほうが余計な気苦労をさせなくていいだろう」
「そうですね」
食事をしながらクリスはふとルドに訊ねた。
「そういえば今日の宿はどうするんだ? リミニ領は大きい街だが、宿の目星はついているのか?」
「領主の屋敷に宿泊します。領主は厳つい顔をした年配の方ですが、気前が良い豪快な方ですよ」
「知り合いか?」
「はい」
「そうか」
その後は会話をすることなく食事を終わらせ、ガッテムを呼び、すぐに出発したいと伝えた。
「こちらに馬を準備しております」
ガッテムに案内された先には、一頭の馬がいた。大人しくも悠然としている姿は気品さえ感じる。
しかし、その馬を見たルドが悩んだ。
「良い馬ですが……他の馬も見させてもらえませんか?」
「は、はい!」
馬舎に移動したルドが馬を一頭一頭じっくり見て回る。その途中、黒毛の馬の前で足を止めた。
「試しにこの馬に乗ってもいいですか?」
ルドの申し出にガッテムが焦る。
「いや、この馬は気性が荒くて乗りこなすのは難しいかと……」
「難しければ他の馬にします」
「で、では少しなら……」
後ろに控えていた兵士が黒毛の馬に鞍を装着し、馬舎から出そうとするが、馬が暴れて進まない。焦る兵士に対して、馬が全身を揺すって抵抗する。
その様子にガッテムが恐る恐るルドに再確認した。
「本当に、この馬でよろしいのですか?」
「はい。これぐらい元気なほうが良いですから」
どうにか外に出てきた黒毛の馬の手綱をルドが受け取る。そのまま馬と目を合わすと、あれだけ暴れていた馬が大人しくなった。
「なっ!?」
「嘘だろ!?」
「いつも触るだけで暴れるのに」
ルドに大人しく撫でられる黒毛の馬の様子に兵士たちが驚愕する。ルドが軽く馬に飛び乗った。
「危なっ……」
「振り落とされ……ない!?」
「なんでだ!?」
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「どうして……」
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「は、はい……」
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「では、このままお借りします」
ルドが馬に跨がったままクリスに手を伸ばす。クリスはルドの手をとって馬に乗ったが、馬が暴れる様子はない。
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馬が走る速度を上げていく。ルドが左手をクリスの腰に回し、覆いかぶさるように背中を密着させた。
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