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第二章・片思い自覚編〜帝都へ
女装クリスの災難
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クリスは目に包帯をして見えないため、城内のどこを歩いているか分からなかった。ルドに手を引かれるまま歩く。
重いドアが開く音とともに、冷えた風がフードの隙間から頬を撫でた。
全身で状況を感じようとしているクリスにルドが説明する。
「外に出ました。太陽が昇り始めたところで、雲一つありません。良い天気になりそうです」
「そうか」
爽やかな朝をグイドの大声が貫いた。
「おはよう! しっかり休めたか?」
「おはようございます。おかげで、しっかり休めました」
「そうか。馬は体力があって足も速い、うちで一番いい馬を準備したぞ」
「ありがとうございます。良い馬ですね」
ルドが礼を言いながら兵士が連れて来た亜麻色の馬の首を撫でる。
そこでルドがクリスに視線を移した。
「そういえば、その恰好で馬に乗れそうですか?」
「……跨がって乗るのは無理だな」
「ですよね」
少し考えたルドがポンッと手を叩く。
「失礼します」
ルドがクリスの両脇に手を入れ、軽く持ち上げると、馬の鞍に横座りで乗せた。
「ちょっ、ちょっと待て。これは……」
クリスは慌ててバランスをとろうとしたが目を包帯で隠しているため、余計に難しい。
掴む場所を探して手を動かしていると、ルドが馬に乗った。そのままクリスを包むように左手で抱きかかえる。
その状況は目隠しをしているクリスでも想像できた。むしろ、見えないから余計に体で感じる。
クリスは包帯を巻いている目でルドに抗議した。
「おまっ、何を!?」
「その座り方で馬に乗るのは難しいと思いますので、自分に体重をかけて下さい」
「それだと、お前に負担が……」
「なら自分に掴まって下さい」
「う……」
クリスは戸惑った。
ただでさえ馬には不慣れなのに、このまま走り出せばバランスを取ることは難しい。かと言って他の方法が浮かばない。
いろいろ決意を固めたクリスは、ルドの胸に頭をつけ、両手でルドの服を掴んだ。その頬はほんのり赤い。
そんな二人のやり取りをグイドや使用人たちが生温かい目で見守る。
そこにルドが声をかけた。
「グイド将軍、ありがとうございました」
存在を忘れられていたと思っていたグイドが慌てて答える。
「お、おう。気を付けてな」
「出発します」
ルドがクリスに声をかけてから馬を走らせた。
「くっ」
動き出すと分かっていても視覚からの情報がないため反応が遅れる。かまえていてもバランスを崩したクリスの体をルドが左腕で抱きとめた。
「おい、もう大丈夫だ」
「落ちたら大変ですし、横乗りに慣れるまで支えています」
「いや、もう慣れたから……」
馬の足音とともに声が消えていく。そんな二人にグイドがため息を漏らした。
「あの堅物で無表情で真面目一辺倒のルドがなぁ……たった一年で変わるもんだ。セルシティ第三皇子から聞いた時は、にわかに信じられなかったが……これからルドがどうなるか、面白そうだ。まずは、報告か」
グイドが楽しそうに城内へ戻った。
※
昨日の獣道とは違い、整備された街道は商人や旅人など人通りもあり、たまに馬車も走る。各々がそれぞれのペースで移動して、のどかな雰囲気。
そんな街道に激しい蹄の音が響く。行き交う人々がその音に驚いて振り返り、走ってくる馬を見て慌てて道を譲る。
親衛隊の服を着たルドと、マントで全身を隠しているクリスに奇異の視線が向けられるが、進行を邪魔する人はいない。
ルドがクリスに声をかけた。
「師匠、疲れていませんか?」
「……大丈夫だ」
「昨日と違って人の目が多いので、隠匿の魔法を使っての休憩は出来ませんが、町は所々にあります。そこで休みますので、疲れたら言ってください」
「わかった」
目隠しをしているため周囲の状況が見えないクリスは自然と耳に神経を集中させていた。その慣れない状況に疲れがでる。
だが、誰にいつ狙われるか分からないため、出来るだけ止まらず先に進みたい。
そう考えたクリスはルドに気付かれないように、疲労がこもったため息を吐いた。
※
結局、休憩をしなかったため予定より少し早い、昼前にカントゥー町に到着した。
魔法騎士団の騎士服の時は、検問で止められることはなかったが、親衛隊の服では止められた。
それでも、馬から降りることなく通行証を見せるだけで、あっさりと町の中へ。
憲兵が駐在している町だけあって、人が多く活気がある。
人目を避けるようにルドが一直線に兵舎へ向かう。すると、頬に傷がある筋肉質な男が出迎えた。
「グイド将軍から伺っております。この町の警備長のザックです。馬はここで預かります」
「お願いします」
ルドが馬から降りてクリスに手を伸ばす。
「馬から降りますよ」
クリスは無言のまま頷いた。いつもと違う様子にルドが首を傾げる。
「大丈夫ですか?」
クリスは再び無言で頷く。その様子にルドが伸ばした手の位置を変え、クリスを横抱きで馬から降ろした。しかも、そのまま歩き出す。
「なっ!?」
横抱きのままの移動に、クリスは思わず声が漏れ、慌てて口を押えた。その動きで深く被っていたフードが外れ、見事な金髪が広がる。
「おー……」
「へぇ……」
「ヒュー」
目は包帯で隠れているが、整った顔立ちに赤く染まった頬。スカート姿で恥じらう様子は、可愛らしい乙女にしか見えない。
そんなクリスの姿は、女っ気のない男所帯の兵士たちの目の保養となり、好色な視線が集まる。
クリスは慌ててフードを被り、髪をマントの中に隠す。そこに、今度は別の声が聞こえてきた。
「うっ」
「ヒッ」
「ッ……」
目が見えないクリスは何が起きているか分からない。そこにザックが謝罪をする。
「しつけがなってない奴らばかりで申し訳ない。後で処罰するので、その物騒な殺気は収めてもらえませんか?」
「失礼しました。そんなつもりは、なかったのですが」
「いや。眼力だけで大の男の腰を抜かすことが出来るとは、さすがセルシティ第三皇子の親衛隊」
「そんなことはありませんよ」
ザックが背後に向かって叫ぶ。
「おい、おまえら! 邪魔になるから、そこで気絶するな! 誰か水ぶっかけて起こせ!」
クリスはこの会話から何があったのか想像がついた。そして、肉体的ではなく精神的疲労から、ため息を吐いていた。
重いドアが開く音とともに、冷えた風がフードの隙間から頬を撫でた。
全身で状況を感じようとしているクリスにルドが説明する。
「外に出ました。太陽が昇り始めたところで、雲一つありません。良い天気になりそうです」
「そうか」
爽やかな朝をグイドの大声が貫いた。
「おはよう! しっかり休めたか?」
「おはようございます。おかげで、しっかり休めました」
「そうか。馬は体力があって足も速い、うちで一番いい馬を準備したぞ」
「ありがとうございます。良い馬ですね」
ルドが礼を言いながら兵士が連れて来た亜麻色の馬の首を撫でる。
そこでルドがクリスに視線を移した。
「そういえば、その恰好で馬に乗れそうですか?」
「……跨がって乗るのは無理だな」
「ですよね」
少し考えたルドがポンッと手を叩く。
「失礼します」
ルドがクリスの両脇に手を入れ、軽く持ち上げると、馬の鞍に横座りで乗せた。
「ちょっ、ちょっと待て。これは……」
クリスは慌ててバランスをとろうとしたが目を包帯で隠しているため、余計に難しい。
掴む場所を探して手を動かしていると、ルドが馬に乗った。そのままクリスを包むように左手で抱きかかえる。
その状況は目隠しをしているクリスでも想像できた。むしろ、見えないから余計に体で感じる。
クリスは包帯を巻いている目でルドに抗議した。
「おまっ、何を!?」
「その座り方で馬に乗るのは難しいと思いますので、自分に体重をかけて下さい」
「それだと、お前に負担が……」
「なら自分に掴まって下さい」
「う……」
クリスは戸惑った。
ただでさえ馬には不慣れなのに、このまま走り出せばバランスを取ることは難しい。かと言って他の方法が浮かばない。
いろいろ決意を固めたクリスは、ルドの胸に頭をつけ、両手でルドの服を掴んだ。その頬はほんのり赤い。
そんな二人のやり取りをグイドや使用人たちが生温かい目で見守る。
そこにルドが声をかけた。
「グイド将軍、ありがとうございました」
存在を忘れられていたと思っていたグイドが慌てて答える。
「お、おう。気を付けてな」
「出発します」
ルドがクリスに声をかけてから馬を走らせた。
「くっ」
動き出すと分かっていても視覚からの情報がないため反応が遅れる。かまえていてもバランスを崩したクリスの体をルドが左腕で抱きとめた。
「おい、もう大丈夫だ」
「落ちたら大変ですし、横乗りに慣れるまで支えています」
「いや、もう慣れたから……」
馬の足音とともに声が消えていく。そんな二人にグイドがため息を漏らした。
「あの堅物で無表情で真面目一辺倒のルドがなぁ……たった一年で変わるもんだ。セルシティ第三皇子から聞いた時は、にわかに信じられなかったが……これからルドがどうなるか、面白そうだ。まずは、報告か」
グイドが楽しそうに城内へ戻った。
※
昨日の獣道とは違い、整備された街道は商人や旅人など人通りもあり、たまに馬車も走る。各々がそれぞれのペースで移動して、のどかな雰囲気。
そんな街道に激しい蹄の音が響く。行き交う人々がその音に驚いて振り返り、走ってくる馬を見て慌てて道を譲る。
親衛隊の服を着たルドと、マントで全身を隠しているクリスに奇異の視線が向けられるが、進行を邪魔する人はいない。
ルドがクリスに声をかけた。
「師匠、疲れていませんか?」
「……大丈夫だ」
「昨日と違って人の目が多いので、隠匿の魔法を使っての休憩は出来ませんが、町は所々にあります。そこで休みますので、疲れたら言ってください」
「わかった」
目隠しをしているため周囲の状況が見えないクリスは自然と耳に神経を集中させていた。その慣れない状況に疲れがでる。
だが、誰にいつ狙われるか分からないため、出来るだけ止まらず先に進みたい。
そう考えたクリスはルドに気付かれないように、疲労がこもったため息を吐いた。
※
結局、休憩をしなかったため予定より少し早い、昼前にカントゥー町に到着した。
魔法騎士団の騎士服の時は、検問で止められることはなかったが、親衛隊の服では止められた。
それでも、馬から降りることなく通行証を見せるだけで、あっさりと町の中へ。
憲兵が駐在している町だけあって、人が多く活気がある。
人目を避けるようにルドが一直線に兵舎へ向かう。すると、頬に傷がある筋肉質な男が出迎えた。
「グイド将軍から伺っております。この町の警備長のザックです。馬はここで預かります」
「お願いします」
ルドが馬から降りてクリスに手を伸ばす。
「馬から降りますよ」
クリスは無言のまま頷いた。いつもと違う様子にルドが首を傾げる。
「大丈夫ですか?」
クリスは再び無言で頷く。その様子にルドが伸ばした手の位置を変え、クリスを横抱きで馬から降ろした。しかも、そのまま歩き出す。
「なっ!?」
横抱きのままの移動に、クリスは思わず声が漏れ、慌てて口を押えた。その動きで深く被っていたフードが外れ、見事な金髪が広がる。
「おー……」
「へぇ……」
「ヒュー」
目は包帯で隠れているが、整った顔立ちに赤く染まった頬。スカート姿で恥じらう様子は、可愛らしい乙女にしか見えない。
そんなクリスの姿は、女っ気のない男所帯の兵士たちの目の保養となり、好色な視線が集まる。
クリスは慌ててフードを被り、髪をマントの中に隠す。そこに、今度は別の声が聞こえてきた。
「うっ」
「ヒッ」
「ッ……」
目が見えないクリスは何が起きているか分からない。そこにザックが謝罪をする。
「しつけがなってない奴らばかりで申し訳ない。後で処罰するので、その物騒な殺気は収めてもらえませんか?」
「失礼しました。そんなつもりは、なかったのですが」
「いや。眼力だけで大の男の腰を抜かすことが出来るとは、さすがセルシティ第三皇子の親衛隊」
「そんなことはありませんよ」
ザックが背後に向かって叫ぶ。
「おい、おまえら! 邪魔になるから、そこで気絶するな! 誰か水ぶっかけて起こせ!」
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