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クリスの失態と出生の秘密
高層ビルと古い時代の墓〜ルド、クリス視点〜
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※※ルド視点※※
一棟だけ空を突くように高く立つ純白の建物。その光景はかつての人間の繁栄と儚さの象徴のようで。
ルドが入り口の前で建物を見上げる。
「こんな高さを、どうやって建てたんだ……?」
呟くルドの後ろでは不機嫌顔で椅子に腰掛けたベレンと、険しい顔のまま仁王立ちで建物を睨むイディ。
そこへ若い女性の声が飛んできた。
「あら、いい男。初めて見る顔ね。どうして、ここに?」
ルドが視線をさげると、少し離れたところから金髪、緑目の二十代ぐらいの女性が歩いてきた。品定めをするような鋭い視線に甘ったるく誘惑するような声。
「自分は……」
普通に答えようとして、ルドは自分の手が微かに震えていることに気が付いた。じんわりと冷や汗も。
今朝、クリスの隣にいても、なにもなかったため、女性恐怖症は克服したと思っていたのに。
「なぜ……?」
ルドが驚いて自分の体を見る。そこに優雅な微笑みを浮かべたベレンがきた。
「私たちはカイ様のところに客人として招かれておりますの。詳しいことはカイ様にお聞きください」
「あら、そんな堅苦しくしないで。私は楽しく遊べないかと思っただけよ。そちらのお兄さんも、どう?」
女性がイディに流し目を送る。イディは興味なさそうに顔を逸らしたが、ベレンが顔を赤くして怒った。
「それが客人への態度ですの!?」
「あら、あら。これぐらいで真っ赤になっちゃって可愛らしい」
「なんて無礼……」
ベレンが声を荒らげかけたところで、二人を遮るように腕が入った。イディがベレンを下げて女性を睨む。
「用がないなら、帰れ」
「まあ、そんなに怒らないで。近くでみると、立派な体ね。いい素材だわ」
若い女性がうっとりとイディの全身を眺める。そこにバスケットを持ったミレナが駆けてきた。
「ジェイ! その子たちは客人だよ。移住者ではないから手を出したらいけない」
「一緒に暮らして、なんて言わないわよ。ちょーっと、お相手をお願いしていただけ」
ミレナが肩をすくめる。
「だから、それがいけないんだよ。彼らには決まった相手がいるんだから手を出したらいけない」
「はーい。でも、もし気が向いたら遊んでね」
女性が軽く手を振りながら去った。
ベレンが怒りの冷めない様子でミレナに訊ねる。
「なんですの!? 今の失礼な方は!」
「すまないね。“神に棄てられた一族”は女性しか生まれないから、慢性的な男不足なんだ。だから男がいたら自然と目をつけてしまうんだよ。特に外見が良い男はね」
ミレナがルドに微笑みかけた。
「女性恐怖症は大丈夫だったかい?」
「自分は、別に……」
額に浮いた汗をミレナが見つける。
「汗?」
「いや、これは!」
「女性恐怖症は克服できてない?」
「……」
俯くルドにミレナが慰めるように肩を叩いた。
「あんなのに迫られたら再発するよね。ま、気にしない。気にしない」
「はぁ……」
落ち込むルドの隣でベレンが再び怒る。
「やはり、許せませんわ」
「そんなに怒らないで。ほら、甘いものでも食べて、落ち着いて」
ミレナがバスケットを開けた。焼きたてのレモンパイの甘酸っぱい香りにベレンの顔がほころぶ。
「美味しそうですわ」
「そうでしょ? たくさん食べて。ほら。あなたも、こっちにきて座って」
いつの間にか建物の入り口の前で仁王立ちをしていたイディをミレナが呼ぶ。だが、イディは動かない。
ミレナはもう一度、微笑みながら声をかけた。
「こちらにきなさい、イディ」
名前を呼ぶ声に込められた気迫にイディの背中に悪寒が走る。イディは全身を震わした後、ゆっくりと振り返り小さく歩いてきた。
「そう、そう。素直が一番」
満足そうなミレナの隣でベレンが美味しそうにレモンパイを頬張る。
ルドはイディの心情を察して、紅茶が入ったコップを差し出した。それをイディが無言で受けとる。
ベレンはレモンパイの味に満足しながら、ミレナに訊ねた。
「そういえば三人とも同じような服装で中に入りましたが、なぜですの?」
「あれは空中庭園での正装でね。カイ曰く、ここは古い時代のお墓なんだって」
「古い時代……ですか?」
「そう。この空中庭園が空を飛んでいることが普通だった遠い昔。その時代の知識と人々が眠るお墓。だから、入る時はみんな正装なんだ」
ベレンが建物を見上げる。
「立派なお墓ですのね」
「そうだね」
ミレナもベレンと同じように見上げた。
※※クリス視点※※
ツルツルに磨かれた床に高い天井。窓や灯りはないのに、なぜか明るい。不気味な程の静寂で、広いホールに足音が空しく響く。
オグウェノとクリスとカイは高い建物の入り口にいた。
「それにしても広いな」
感心しているオグウェノにカイがうんざりしたように話す。
「入り口っていうのは、建物の顔みたいなものだからな。でかく作って立派にみせているだけだ」
「それにしても、人がいないのにこんな格好をする必要があったのか?」
カイとオグウェノも、クリスが着ている服と似た形の服を着ていた。
しかし、オグウェノは胸元のボタンを外し、少し着崩してアレンジを。逆にカイは首元まできっちりとボタンを閉め、そこに紫の宝石が付いた飾りをつけている。
「これから人が来るんだよ」
「お待たせして、すみません」
複数の足音とともに奥から数人の女性が現れた。年齢は二十代から五十代ぐらいとバラバラだが、全員が金髪、緑目。クリスと同じような服で髪を一つにまとめ隙がない。
クリスは女性たちの前に立った。
「久しぶりだな」
「えぇ、久しぶりね。そちらが……」
五十代ぐらいの女性がオグウェノに視線を向ける。
「昔、月からの流れ星を回収に向かった部隊の子孫だ」
オグウェノがいつもの軽い雰囲気を消し、王族の気配をまとう。
「ケリーマ王国第四王子のオグウェノ・ケリーマだ」
「本当に子孫なのね。会うことが出来て嬉しいわ」
感無量という雰囲気にオグウェノが少しだけ眉を寄せた。
「なぜ、我が子孫だと信じられる? その名を語っているだけかもしれないぞ?」
「申し訳ないけど、事前にあなたのことを調べさせてもらったの」
「調べた?」
カイが苦笑いをする。
「髪の毛を一本失敬したんだ。そこから、本当に子孫かどうか調べさせてもらった」
「髪の毛で分かるのか?」
「あぁ。で、間違いなく子孫であることが判明した」
五十代ぐらいの女性が頷く。
「男性ということで半信半疑だったけど、遺伝子は嘘をつけないわ。あなたは月からの流れ星を回収に行った部隊の一人、リュノン・ハーウェイの子孫よ」
その名にオグウェノは威圧感を消した。
「そこまで分かるのか。確かにオレはリュノンの子孫だ」
「私はエーヴァ・ノッカラ。私たちはあなたを歓迎するわ、オグウェノ・ケリーマ」
オグウェノとエーヴァが握手をする。二人が挨拶を終えたと判断したクリスはエーヴァに訊ねた。
「データは全て解析できたか?」
「そのことなんだけど……」
エーヴァの話を引き継ぐように、二十代ぐらいの女性が出てきた。
「情報の解析を担当しているマーリア・エヴォガリよ。よろしく」
クリスが差し出された手を無言で握る。
「情報だけど、あなたが鍵となっているところがあって、その部分だけはまだ解析できていないの」
「私が鍵?」
「そう。あなたの声紋と指紋。両方が同時に揃わないと、開かない仕組みになっているの」
「よほど重要な情報ということか?」
「たぶんね。だから、先にそちらの解除をしてもらっても、いいかしら? 解析している間に他の情報を見てもらうから」
「あぁ」
エーヴァが声をかける。
「こっちよ」
エーヴァを先頭に一行は建物の奥へ移動した。
一棟だけ空を突くように高く立つ純白の建物。その光景はかつての人間の繁栄と儚さの象徴のようで。
ルドが入り口の前で建物を見上げる。
「こんな高さを、どうやって建てたんだ……?」
呟くルドの後ろでは不機嫌顔で椅子に腰掛けたベレンと、険しい顔のまま仁王立ちで建物を睨むイディ。
そこへ若い女性の声が飛んできた。
「あら、いい男。初めて見る顔ね。どうして、ここに?」
ルドが視線をさげると、少し離れたところから金髪、緑目の二十代ぐらいの女性が歩いてきた。品定めをするような鋭い視線に甘ったるく誘惑するような声。
「自分は……」
普通に答えようとして、ルドは自分の手が微かに震えていることに気が付いた。じんわりと冷や汗も。
今朝、クリスの隣にいても、なにもなかったため、女性恐怖症は克服したと思っていたのに。
「なぜ……?」
ルドが驚いて自分の体を見る。そこに優雅な微笑みを浮かべたベレンがきた。
「私たちはカイ様のところに客人として招かれておりますの。詳しいことはカイ様にお聞きください」
「あら、そんな堅苦しくしないで。私は楽しく遊べないかと思っただけよ。そちらのお兄さんも、どう?」
女性がイディに流し目を送る。イディは興味なさそうに顔を逸らしたが、ベレンが顔を赤くして怒った。
「それが客人への態度ですの!?」
「あら、あら。これぐらいで真っ赤になっちゃって可愛らしい」
「なんて無礼……」
ベレンが声を荒らげかけたところで、二人を遮るように腕が入った。イディがベレンを下げて女性を睨む。
「用がないなら、帰れ」
「まあ、そんなに怒らないで。近くでみると、立派な体ね。いい素材だわ」
若い女性がうっとりとイディの全身を眺める。そこにバスケットを持ったミレナが駆けてきた。
「ジェイ! その子たちは客人だよ。移住者ではないから手を出したらいけない」
「一緒に暮らして、なんて言わないわよ。ちょーっと、お相手をお願いしていただけ」
ミレナが肩をすくめる。
「だから、それがいけないんだよ。彼らには決まった相手がいるんだから手を出したらいけない」
「はーい。でも、もし気が向いたら遊んでね」
女性が軽く手を振りながら去った。
ベレンが怒りの冷めない様子でミレナに訊ねる。
「なんですの!? 今の失礼な方は!」
「すまないね。“神に棄てられた一族”は女性しか生まれないから、慢性的な男不足なんだ。だから男がいたら自然と目をつけてしまうんだよ。特に外見が良い男はね」
ミレナがルドに微笑みかけた。
「女性恐怖症は大丈夫だったかい?」
「自分は、別に……」
額に浮いた汗をミレナが見つける。
「汗?」
「いや、これは!」
「女性恐怖症は克服できてない?」
「……」
俯くルドにミレナが慰めるように肩を叩いた。
「あんなのに迫られたら再発するよね。ま、気にしない。気にしない」
「はぁ……」
落ち込むルドの隣でベレンが再び怒る。
「やはり、許せませんわ」
「そんなに怒らないで。ほら、甘いものでも食べて、落ち着いて」
ミレナがバスケットを開けた。焼きたてのレモンパイの甘酸っぱい香りにベレンの顔がほころぶ。
「美味しそうですわ」
「そうでしょ? たくさん食べて。ほら。あなたも、こっちにきて座って」
いつの間にか建物の入り口の前で仁王立ちをしていたイディをミレナが呼ぶ。だが、イディは動かない。
ミレナはもう一度、微笑みながら声をかけた。
「こちらにきなさい、イディ」
名前を呼ぶ声に込められた気迫にイディの背中に悪寒が走る。イディは全身を震わした後、ゆっくりと振り返り小さく歩いてきた。
「そう、そう。素直が一番」
満足そうなミレナの隣でベレンが美味しそうにレモンパイを頬張る。
ルドはイディの心情を察して、紅茶が入ったコップを差し出した。それをイディが無言で受けとる。
ベレンはレモンパイの味に満足しながら、ミレナに訊ねた。
「そういえば三人とも同じような服装で中に入りましたが、なぜですの?」
「あれは空中庭園での正装でね。カイ曰く、ここは古い時代のお墓なんだって」
「古い時代……ですか?」
「そう。この空中庭園が空を飛んでいることが普通だった遠い昔。その時代の知識と人々が眠るお墓。だから、入る時はみんな正装なんだ」
ベレンが建物を見上げる。
「立派なお墓ですのね」
「そうだね」
ミレナもベレンと同じように見上げた。
※※クリス視点※※
ツルツルに磨かれた床に高い天井。窓や灯りはないのに、なぜか明るい。不気味な程の静寂で、広いホールに足音が空しく響く。
オグウェノとクリスとカイは高い建物の入り口にいた。
「それにしても広いな」
感心しているオグウェノにカイがうんざりしたように話す。
「入り口っていうのは、建物の顔みたいなものだからな。でかく作って立派にみせているだけだ」
「それにしても、人がいないのにこんな格好をする必要があったのか?」
カイとオグウェノも、クリスが着ている服と似た形の服を着ていた。
しかし、オグウェノは胸元のボタンを外し、少し着崩してアレンジを。逆にカイは首元まできっちりとボタンを閉め、そこに紫の宝石が付いた飾りをつけている。
「これから人が来るんだよ」
「お待たせして、すみません」
複数の足音とともに奥から数人の女性が現れた。年齢は二十代から五十代ぐらいとバラバラだが、全員が金髪、緑目。クリスと同じような服で髪を一つにまとめ隙がない。
クリスは女性たちの前に立った。
「久しぶりだな」
「えぇ、久しぶりね。そちらが……」
五十代ぐらいの女性がオグウェノに視線を向ける。
「昔、月からの流れ星を回収に向かった部隊の子孫だ」
オグウェノがいつもの軽い雰囲気を消し、王族の気配をまとう。
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カイが苦笑いをする。
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「髪の毛で分かるのか?」
「あぁ。で、間違いなく子孫であることが判明した」
五十代ぐらいの女性が頷く。
「男性ということで半信半疑だったけど、遺伝子は嘘をつけないわ。あなたは月からの流れ星を回収に行った部隊の一人、リュノン・ハーウェイの子孫よ」
その名にオグウェノは威圧感を消した。
「そこまで分かるのか。確かにオレはリュノンの子孫だ」
「私はエーヴァ・ノッカラ。私たちはあなたを歓迎するわ、オグウェノ・ケリーマ」
オグウェノとエーヴァが握手をする。二人が挨拶を終えたと判断したクリスはエーヴァに訊ねた。
「データは全て解析できたか?」
「そのことなんだけど……」
エーヴァの話を引き継ぐように、二十代ぐらいの女性が出てきた。
「情報の解析を担当しているマーリア・エヴォガリよ。よろしく」
クリスが差し出された手を無言で握る。
「情報だけど、あなたが鍵となっているところがあって、その部分だけはまだ解析できていないの」
「私が鍵?」
「そう。あなたの声紋と指紋。両方が同時に揃わないと、開かない仕組みになっているの」
「よほど重要な情報ということか?」
「たぶんね。だから、先にそちらの解除をしてもらっても、いいかしら? 解析している間に他の情報を見てもらうから」
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