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狙われたシェットランド領
ギリギリの交渉
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クラウディウスの首に剣を突きつけたルドに親衛隊が怒鳴る。
「貴様! 何をしているのか、分かっているのか!?」
騒ぐ周囲を無視してルドがクラウディウスに訊ねた。
「あの球体の起動の方法を教えてください」
「だ、誰が教え……クッ」
ルドが剣をクラウディウスの首に押しつける。
「時間がありません」
足元の転移魔法陣が強く輝く。魔法陣の上にいる人間の魔力を吸いとり発動の準備を始めた。
ルドが左手を球体に向け、魔法を詠唱する。
『風よ、揺りかごにのせ我が下へ』
浮かんだ球体がルドの足下に転がった。
青ざめた親衛隊の男が叫ぶ。
「やややっやめっやめろ! すぐに戻せ! 魔法陣が吸っている魔力に反応している! このままだと威力は落ちるが、ここで爆発してしまう!」
「起動方法は?」
「こんな所で爆発させたら、皇子がっ……」
ルドが殺気を放つ。
「ここで爆発させますか? それとも素直に教えますか?」
親衛隊の男がゴクリと唾を飲む。その様子にクラウディウスが一喝した。
「話すな!」
「では、爆発するまで待ちましょう」
ルドの開き直りともとれる落ち着いた態度に親衛隊の男が唇を噛む。琥珀の瞳に焦りや恐れはない。本当に爆発するまで動きそうにない。
親衛隊の男は覚悟を決め、声を絞り出した。
「起動方法を教えたらクラウディウス様を解放するか?」
「はい」
「やめっ!」
叫びかけたクラウディウスの首に薄い赤い線が浮かぶ。
これ以上、ルドを刺激してはいけないと判断した親衛隊は落ち着いた声で説明を始めた。
「わかった、教える。だから、それ以上剣を動かすな」
「早く説明してください」
「強大な魔力を一気に注入するんだ。ここにいる魔法騎士団の半分ぐらいの魔力になるが。そうすれば、すぐに爆発する」
「この球体はどこに飛ばす予定でしたか?」
「シェットランド領の中心地だ。魔力を注入すると同時に転移させ、爆発させる予定だった。もう、いいだろ!」
「はい」
ルドがクラウディウスを親衛隊の方へ突き飛ばす。親衛隊の男が倒れかけたクラウディウスを支えて顔を上げた。
そこには、球体を抱えているルドが。
「近づかないでください。近づいたら、即爆発させます」
親衛隊に支えられたクラウディウスが叫ぶ。
「いくら魔力が強いからといって、貴様一人の魔力で爆発させられるわけなかろう! 自惚れるな!」
「本当にそう思いますか?」
ルドの堂々と自信に溢れた顔にクラウディウスが歯ぎしりをする。
クラウディウスはルドの魔力量を測りかねていた。普通の人間なら魔力を搾り取っても起動させることは不可能。だが、ルドの場合は別。魔力量が多すぎて底がみえない。
ダーチェが落ち着いた様子でルドに声をかけた。
「どうするつもりだ?」
ルドが軽く笑って答えを誤魔化す。
「そこにいたら、シェットランド領へ飛ばされてしまいますよ」
「ルドヴィクス!」
ルドは答えることなく球体を小脇に抱えたまま、馬車に近づき馬を離した。
「この球体を処理してきます」
そう言うと、ルドは馬に跨がり小屋へ移動した。
※
小屋を目指して走っていたイディは大剣を抜き、ドアを斬り壊して中へ飛び込んだ。
イディの姿を小屋の中から見ていたアウルスたちが抜刀してかまえる。
「何者だ!?」
敵意と警戒心の視線を浴びながら、イディは剣を収めた。予想外の行動にアウルスたちが驚きながらも警戒は緩めない。
イディは淡々と言った。
「全員出ろ」
「は?」
「ここは爆発する。死にたいなら残れ」
「何を言っ……!?」
アウルスの言葉の途中だったが、イディは姿勢を低くすると力強く地面を蹴った。
イディが一瞬でアウルスの懐に入り、鳩尾を肩で突き上げるように体当たりをした。
あまりにも速いイディの動きに対処が遅れたアウルスがもろに攻撃をくらう。
「ヴッ!?」
激痛とともに足が地面から浮かんだ。イディはアウルスが動く前に、肩に担いだまま小屋から駆け出す。
「隊長!?」
アウルスを追って他の隊員が小屋から出ていく。そこへ入れ代わるようにルドが小屋の前に到着した。
「ルド!?」
引き返そうとした隊員にルドが叫ぶ。
「こいつを爆発させます! できるだけ遠くに逃げてください!」
ルドがしようとしていることに気づいたアウルスが担がれたまま叫ぶ。
「小屋の中だと魔力が吸収されて、そいつを爆発させることは出来ないぞ!」
「ですから、外で球体に魔力を注いで、爆発する寸前で小屋の中に入れます」
「なっ!? 爆発した魔力を魔法陣が全て吸いきれるとは限らないぞ! 無謀だ! おまえも爆発に巻き込まれる!」
忠告するアウルスの声を聞きながらルドは馬から降りた。馬の首を軽く叩いて馬を逃がす。
走り去る馬と魔法騎士団を見送ったルドは抱えている球体に視線を落とした。
「許可はないが……一瞬で大量の魔力を注入するには、この方法しか浮かばないからな」
ルドが球体を置いて両手を合わせる。
『全てを断ち斬る神の力を我が手に!』
ルドがゆっくりと手を離すと、左手の掌から剣の柄が現れた。それを右手で掴み、一気に引き抜く。
青空を写し、鈍く輝く刃。いつもの変わらぬ形なのに、ずしりと重い。
ルドが剣を持ったまま、球体を片手で持ち上げる。そして、手のひらに球体をのせると、そのまま軽く真上に投げた。
高く空へと昇る球体を目で追いながら、迷いなく剣をかまえる。頂点まで登った球体が落下を始めた。落ちてくる球体に狙いを定める。絶対にここで外すわけには、いかない。
柄を握る両手に力を込め、呼吸を止める。
狙いを研ぎ澄まし、剣を突き刺した。同時に魔力を注入しながら、勢いを殺すことなく小屋の中に突進する。
ドォォォ…………ン…………
爆発音とともに小屋が崩れ、見えない振動が周囲を襲った。
オグウェノが全身を貫いた痛みに顔を歪める。
「赤狼のヤロー……魔法陣が魔力を吸収できる量には限度があるんだぞ。吸収しきれなかった魔力がこっちにくることも考えろ」
オグウェノが隣を見ると、クリスは真っ青な顔で崩れた小屋を見ていた。
「……」
全身が震え、言葉を出そうとするが声にならない。
「……うそ、だろ?」
クリスがゆっくりと歩き出す。
「あれぐらいで……」
少しずつ歩調が速くなる。
「くたばるわけが……」
足をもつらせながら走る。
「ルド!」
草原を駆け出したクリスの手をオグウェノが掴んだ。クリスが手を振り払おうと暴れる。
「放せ!」
「待て、待て。月姫の体力だと、あそこまで辿り着けないだろ」
オグウェノがひょいとクリスを抱えた。
『筋力強化』
オグウェノが足に力を入れて地面を蹴る。それだけで馬よりも早く進み、あっという間に小屋があった場所に到着した。
オグウェノが下ろすより先にクリスが飛び降りる。粉々になった残骸と瓦礫の山。生き物の気配どころか、音さえもない。そこに乾いた風が埃を巻き上げる。
「まさ……か……」
クリスは服の上から魔宝石を握りしめた。
「貴様! 何をしているのか、分かっているのか!?」
騒ぐ周囲を無視してルドがクラウディウスに訊ねた。
「あの球体の起動の方法を教えてください」
「だ、誰が教え……クッ」
ルドが剣をクラウディウスの首に押しつける。
「時間がありません」
足元の転移魔法陣が強く輝く。魔法陣の上にいる人間の魔力を吸いとり発動の準備を始めた。
ルドが左手を球体に向け、魔法を詠唱する。
『風よ、揺りかごにのせ我が下へ』
浮かんだ球体がルドの足下に転がった。
青ざめた親衛隊の男が叫ぶ。
「やややっやめっやめろ! すぐに戻せ! 魔法陣が吸っている魔力に反応している! このままだと威力は落ちるが、ここで爆発してしまう!」
「起動方法は?」
「こんな所で爆発させたら、皇子がっ……」
ルドが殺気を放つ。
「ここで爆発させますか? それとも素直に教えますか?」
親衛隊の男がゴクリと唾を飲む。その様子にクラウディウスが一喝した。
「話すな!」
「では、爆発するまで待ちましょう」
ルドの開き直りともとれる落ち着いた態度に親衛隊の男が唇を噛む。琥珀の瞳に焦りや恐れはない。本当に爆発するまで動きそうにない。
親衛隊の男は覚悟を決め、声を絞り出した。
「起動方法を教えたらクラウディウス様を解放するか?」
「はい」
「やめっ!」
叫びかけたクラウディウスの首に薄い赤い線が浮かぶ。
これ以上、ルドを刺激してはいけないと判断した親衛隊は落ち着いた声で説明を始めた。
「わかった、教える。だから、それ以上剣を動かすな」
「早く説明してください」
「強大な魔力を一気に注入するんだ。ここにいる魔法騎士団の半分ぐらいの魔力になるが。そうすれば、すぐに爆発する」
「この球体はどこに飛ばす予定でしたか?」
「シェットランド領の中心地だ。魔力を注入すると同時に転移させ、爆発させる予定だった。もう、いいだろ!」
「はい」
ルドがクラウディウスを親衛隊の方へ突き飛ばす。親衛隊の男が倒れかけたクラウディウスを支えて顔を上げた。
そこには、球体を抱えているルドが。
「近づかないでください。近づいたら、即爆発させます」
親衛隊に支えられたクラウディウスが叫ぶ。
「いくら魔力が強いからといって、貴様一人の魔力で爆発させられるわけなかろう! 自惚れるな!」
「本当にそう思いますか?」
ルドの堂々と自信に溢れた顔にクラウディウスが歯ぎしりをする。
クラウディウスはルドの魔力量を測りかねていた。普通の人間なら魔力を搾り取っても起動させることは不可能。だが、ルドの場合は別。魔力量が多すぎて底がみえない。
ダーチェが落ち着いた様子でルドに声をかけた。
「どうするつもりだ?」
ルドが軽く笑って答えを誤魔化す。
「そこにいたら、シェットランド領へ飛ばされてしまいますよ」
「ルドヴィクス!」
ルドは答えることなく球体を小脇に抱えたまま、馬車に近づき馬を離した。
「この球体を処理してきます」
そう言うと、ルドは馬に跨がり小屋へ移動した。
※
小屋を目指して走っていたイディは大剣を抜き、ドアを斬り壊して中へ飛び込んだ。
イディの姿を小屋の中から見ていたアウルスたちが抜刀してかまえる。
「何者だ!?」
敵意と警戒心の視線を浴びながら、イディは剣を収めた。予想外の行動にアウルスたちが驚きながらも警戒は緩めない。
イディは淡々と言った。
「全員出ろ」
「は?」
「ここは爆発する。死にたいなら残れ」
「何を言っ……!?」
アウルスの言葉の途中だったが、イディは姿勢を低くすると力強く地面を蹴った。
イディが一瞬でアウルスの懐に入り、鳩尾を肩で突き上げるように体当たりをした。
あまりにも速いイディの動きに対処が遅れたアウルスがもろに攻撃をくらう。
「ヴッ!?」
激痛とともに足が地面から浮かんだ。イディはアウルスが動く前に、肩に担いだまま小屋から駆け出す。
「隊長!?」
アウルスを追って他の隊員が小屋から出ていく。そこへ入れ代わるようにルドが小屋の前に到着した。
「ルド!?」
引き返そうとした隊員にルドが叫ぶ。
「こいつを爆発させます! できるだけ遠くに逃げてください!」
ルドがしようとしていることに気づいたアウルスが担がれたまま叫ぶ。
「小屋の中だと魔力が吸収されて、そいつを爆発させることは出来ないぞ!」
「ですから、外で球体に魔力を注いで、爆発する寸前で小屋の中に入れます」
「なっ!? 爆発した魔力を魔法陣が全て吸いきれるとは限らないぞ! 無謀だ! おまえも爆発に巻き込まれる!」
忠告するアウルスの声を聞きながらルドは馬から降りた。馬の首を軽く叩いて馬を逃がす。
走り去る馬と魔法騎士団を見送ったルドは抱えている球体に視線を落とした。
「許可はないが……一瞬で大量の魔力を注入するには、この方法しか浮かばないからな」
ルドが球体を置いて両手を合わせる。
『全てを断ち斬る神の力を我が手に!』
ルドがゆっくりと手を離すと、左手の掌から剣の柄が現れた。それを右手で掴み、一気に引き抜く。
青空を写し、鈍く輝く刃。いつもの変わらぬ形なのに、ずしりと重い。
ルドが剣を持ったまま、球体を片手で持ち上げる。そして、手のひらに球体をのせると、そのまま軽く真上に投げた。
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柄を握る両手に力を込め、呼吸を止める。
狙いを研ぎ澄まし、剣を突き刺した。同時に魔力を注入しながら、勢いを殺すことなく小屋の中に突進する。
ドォォォ…………ン…………
爆発音とともに小屋が崩れ、見えない振動が周囲を襲った。
オグウェノが全身を貫いた痛みに顔を歪める。
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「……」
全身が震え、言葉を出そうとするが声にならない。
「……うそ、だろ?」
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「あれぐらいで……」
少しずつ歩調が速くなる。
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「ルド!」
草原を駆け出したクリスの手をオグウェノが掴んだ。クリスが手を振り払おうと暴れる。
「放せ!」
「待て、待て。月姫の体力だと、あそこまで辿り着けないだろ」
オグウェノがひょいとクリスを抱えた。
『筋力強化』
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