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幸せだった時間
しおりを挟む夕飯を食べ終え自室に戻ると眠たくなってきた。カフェノートを開こうかなと思ったけれど、それは明日にして寝ることにした。
ベッドに入るとすぐに眠りに落ちた。
そして、夢を見た。
お父さんとお母さんとわたしとそれから奈央が手を繋ぎながら歩いている。わたしと奈央は真ん中でわたしはお父さんと奈央と手を繋ぎ、奈央はお母さんとわたしと手を繋いでいる。
何を話しているのか分からないけれど、その夢の中のわたしはにこにこと笑い幸せそうだ。
家族四人でこうして笑い合っていたのはごくわずかな時間だったと思うけれど、確かに幸せな時も存在していた。
だけど、思い出そうと記憶を辿ろうとすると消えてしまいそうになる。
手を伸ばして掴もうとするとするりとわたしの前からすり抜けていく。どうして掴むことができないの……。
ねえ、どうしてと叫びたくなる。
幸せな夢だったのになぜだか哀しい気持ちになる。幸せなあの日の欠片が掴めなくてどうしようもない気持ちになる。
手を伸ばしてお父さんの大きな手を握ろうとするけれど、その手の感触を思い出すことができないのだった。
どうしてなのかな? ねえどうしてと夢の中のわたしが叫ぶ。
大好きだったお父さんの顔もぼんやりとしか思い出せない。思い出すことができない。
わたしとは全然似ていなくてだけど、その笑顔はとても優しかったはずだ。
ねえ、お父さんは何処にいるのと呟いたその時、
『早乙女ちゃんどうしたの?』と祐介君の声が聞こえてきたような気がした。
風に吹かれてカフェノートがぱらぱらとめくれた。
わたしはなんだか不思議な夢を見た。
祐介君が早乙女ちゃん泣かないでとカフェノートとの中から応援してくれている。
そんな気がした。
ぱらぱらとめくれるカフェノートの中から祐介君の笑顔がちらりと見えた。
祐介君の顔なんて知らないのに見えるはずもないのになぜだかぼんやりと浮かんでそして、消えた。
わたしは、夢を見ていた。
お父さんの忘れてしまったその笑顔と見たこともない祐介君の笑顔が一瞬重なって見えた。
『早乙女ちゃん、遠く離れていてもいつでも君のことを応援しているよ』
そんな声が何処かから聞こえてきた。
「お父さん? それとも祐介君?」
わたしは、手を伸ばした。けれど、手を伸ばして掴もうとするとわたしの前からするりとすり抜けていく。
どうしても掴むことができなかった。
目を覚ますと涙が流れていた。わたし、泣いていたんだ……。
手の甲で涙を拭いわたしはベッドから身を起こし立ち上がった。
机の前に行きカフェノートを手に取り眺めた。わたしは祐介君の顔も知らないしそれに声も聞いたこともなかったことに今更ながら気がついた。
それと、お父さんの声も忘れてしまったことも同時に気づき悲しくなった。
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