20 / 63
第十八話 休暇日
しおりを挟む
私とメナスはカフェに来てケーキや紅茶を楽しみながらまったりとしていた。
今日は休暇日で日頃の疲れを癒す為の大事な時間だった。
「最高だね!休暇日って…ファスティアが加入する前だったら考えられない物だったのに。」
「ドレクス達は宵越しの金を持たないって感じだったものね。」
「多少の蓄えはあるんだけど、雑貨や薬品の購入や宿代と食事代でほぼ消えちゃうからね。」
「でも、今はそんな心配もいらないわよね?」
「あれだけ荒稼ぎしているからね…」
ここ最近の討伐は依頼料の高い魔獣討伐のみで、初めの頃は私に頼り切ったおんぶに抱っこ状態だったけど、ドレクス達も慣れてきたのか…最近では私の出番も少なくなってきている。
更に…今迄に使用していた宿屋を引き払い、浴槽付きの高級宿屋に拠点を移して生活をしている。
「郊外なら家も買える値段だとは思うんだけど…」
「私達はこの国の出身ではないから、ある程度稼いだら他の街に移動するから…家は憧れるけどね。」
今の所…まだ他の大陸に移動しようという話は無い。
いずれは…という話は上がっていた。
「それにしても、数日前にファスティアはなんかニヤニヤしていたけど…もう理由を聞いても良いかな?」
「あぁ、それはね…」
メナスだけには私の素性は話していた。
元はレントグレマール王国の侯爵令嬢で、第一王子との婚約を破棄されて国を出たという話を。
「北方のノースファティルガルドって…随分遠くを選んだわね?」
「私の元婚って…頭が悪い癖に、妙な所が鋭くてね。 あのまま行き先を告げずに逃亡を続けていると、何処かで嗅ぎ分けられるのかが心配で…」
「なるほどね、ならハッキリと居場所が分からないなら…敢えてその場所を教えておいた方が反らせるには良い口実だもんね。」
「それに、ノースファティルガルドだったら下手なちょっかいをかけようとすることもしないでしょうし…」
「あそこの国王様は、素手でバドルグリズリーの首を捩じ切る程の猛者で…下手な事をして怒らせたりでもしたら、簡単に処刑すると言う話で有名だからね。」
「だから、王族に迎え入れられて懇意にして貰っていると書いたの。」
「王族と結婚とは書かなかったのね?」
「それだと…各国に通達が行くからね。 そんな嘘はすぐにバレちゃうし…」
私は何故こんな事を知っているのかと言うと、カリオスから毎日の様に任されていた書類整理で事情を知った。
この世界には通信用の魔道具は存在するけど、その理由は主に脅威を報されるだけに使われていて…例え国王であっても私的利用で使うことは出来なかった。
だから私は敢えて…レントグレマール王国の王族に手紙を出して、私はノースファティルガルドにいると書いたのだった。
確認の為なら現地に赴く事で確認する術がないからだった。
「でも、誰か使者に任せて赴かせるって思わなかったの?」
「それは無いわね、今回の件はカリオスが私と婚約破棄をした所為でこの様な事態になっている訳だし、多分本人が向かう筈よ。 あの男なら自分の説得なら…とか思っているだろうし。」
「それにしても、ノースファティルガルドかぁ…? あそこは1度行った事があるけど、全大陸で一番広い場所だし…港から王都までかなりの距離があるからねぇ?」
「どんなに急いでも年内で辿り着けるかは微妙だろうしねぇ? ノースファティルガルドはこれから寒冷期を迎える筈だから、天候が荒れて碌に移動出来る日も多くはないだろうから…」
「本当に策士よね? ファスティアって…」
カリオスの移動手段は、レントグレマール王国から西方のダルンデス港から船で行く手段しかない為にそこまでの移動手段で約二週間、それから船に乗って約1ヶ月半、大陸に着いてから王都までは天候次第だけど約三ヶ月は掛かる。
なので、年内に辿り着けられる可能性がないとはそう言う事だった。
「なら、間違ってもフレマアージュ王国に来る事はないわよね?」
「フレマアージュ港からでもノースファティルガルド迄の船は出ているけど、こっちからだと乗り替えもあるし、逆に日数が掛かるから選ばないでしょう。」
流石のカリオスもそこまでは愚かでは無い…と思う。
「そう…思っていたんだけどねぇ?」
今日は休暇日で日頃の疲れを癒す為の大事な時間だった。
「最高だね!休暇日って…ファスティアが加入する前だったら考えられない物だったのに。」
「ドレクス達は宵越しの金を持たないって感じだったものね。」
「多少の蓄えはあるんだけど、雑貨や薬品の購入や宿代と食事代でほぼ消えちゃうからね。」
「でも、今はそんな心配もいらないわよね?」
「あれだけ荒稼ぎしているからね…」
ここ最近の討伐は依頼料の高い魔獣討伐のみで、初めの頃は私に頼り切ったおんぶに抱っこ状態だったけど、ドレクス達も慣れてきたのか…最近では私の出番も少なくなってきている。
更に…今迄に使用していた宿屋を引き払い、浴槽付きの高級宿屋に拠点を移して生活をしている。
「郊外なら家も買える値段だとは思うんだけど…」
「私達はこの国の出身ではないから、ある程度稼いだら他の街に移動するから…家は憧れるけどね。」
今の所…まだ他の大陸に移動しようという話は無い。
いずれは…という話は上がっていた。
「それにしても、数日前にファスティアはなんかニヤニヤしていたけど…もう理由を聞いても良いかな?」
「あぁ、それはね…」
メナスだけには私の素性は話していた。
元はレントグレマール王国の侯爵令嬢で、第一王子との婚約を破棄されて国を出たという話を。
「北方のノースファティルガルドって…随分遠くを選んだわね?」
「私の元婚って…頭が悪い癖に、妙な所が鋭くてね。 あのまま行き先を告げずに逃亡を続けていると、何処かで嗅ぎ分けられるのかが心配で…」
「なるほどね、ならハッキリと居場所が分からないなら…敢えてその場所を教えておいた方が反らせるには良い口実だもんね。」
「それに、ノースファティルガルドだったら下手なちょっかいをかけようとすることもしないでしょうし…」
「あそこの国王様は、素手でバドルグリズリーの首を捩じ切る程の猛者で…下手な事をして怒らせたりでもしたら、簡単に処刑すると言う話で有名だからね。」
「だから、王族に迎え入れられて懇意にして貰っていると書いたの。」
「王族と結婚とは書かなかったのね?」
「それだと…各国に通達が行くからね。 そんな嘘はすぐにバレちゃうし…」
私は何故こんな事を知っているのかと言うと、カリオスから毎日の様に任されていた書類整理で事情を知った。
この世界には通信用の魔道具は存在するけど、その理由は主に脅威を報されるだけに使われていて…例え国王であっても私的利用で使うことは出来なかった。
だから私は敢えて…レントグレマール王国の王族に手紙を出して、私はノースファティルガルドにいると書いたのだった。
確認の為なら現地に赴く事で確認する術がないからだった。
「でも、誰か使者に任せて赴かせるって思わなかったの?」
「それは無いわね、今回の件はカリオスが私と婚約破棄をした所為でこの様な事態になっている訳だし、多分本人が向かう筈よ。 あの男なら自分の説得なら…とか思っているだろうし。」
「それにしても、ノースファティルガルドかぁ…? あそこは1度行った事があるけど、全大陸で一番広い場所だし…港から王都までかなりの距離があるからねぇ?」
「どんなに急いでも年内で辿り着けるかは微妙だろうしねぇ? ノースファティルガルドはこれから寒冷期を迎える筈だから、天候が荒れて碌に移動出来る日も多くはないだろうから…」
「本当に策士よね? ファスティアって…」
カリオスの移動手段は、レントグレマール王国から西方のダルンデス港から船で行く手段しかない為にそこまでの移動手段で約二週間、それから船に乗って約1ヶ月半、大陸に着いてから王都までは天候次第だけど約三ヶ月は掛かる。
なので、年内に辿り着けられる可能性がないとはそう言う事だった。
「なら、間違ってもフレマアージュ王国に来る事はないわよね?」
「フレマアージュ港からでもノースファティルガルド迄の船は出ているけど、こっちからだと乗り替えもあるし、逆に日数が掛かるから選ばないでしょう。」
流石のカリオスもそこまでは愚かでは無い…と思う。
「そう…思っていたんだけどねぇ?」
62
あなたにおすすめの小説
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。
わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました
柚木ゆず
ファンタジー
より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。
「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」
現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない
nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる