25 / 63
第二十三話 黙らせても良いですか?
しおりを挟む
「ファスティアさん、貴女の魔法なら可能だったりしませんか?」
突然ヴァッシュ殿下がこんな事を言い出して来た。
その言葉に対してカリオスも私の方を向いて来た。
私は無言で首を振ると言った。
「流石に自然界の脅威を退けられる様な魔法はありません!」
レントグレマール王国で私の張った結界は、あらゆる災害を退けられる効果があり…熊車の周囲に結界を展開すればできない事はないけど…?
「そうですか…って、ファスティアさん…そんな仮面を付けておられましたっけ?」
貴方が余計な事を言って注目を向ける様な発言をするからでしょ!
そのお陰でカリオスが私を見ても問題なさそうにしているから構わないけど。
私は多分この仮面に関して聞かれると思っていたから、事前にメナスと打ち合わせをしていた設定を話した。
「私はこの国の出身で、横柄な態度をして来る貴族から逃げる為に他の大陸に移ったのです。 まさかこの国に戻って来るとは思わなくて…素性を隠す為に仮面で隠しているだけなので。」
「そうだったのですか…」
これで話が終わってくれると良かったんだけど…?
「実は僕の能力には魔力視というのがありまして、他人の魔力を見る事が出来るのです。」
なるほど、それでか~!
船で甲板に出た時にピンポイントで私のいる場所を探り当てて接触して来たのね。
てっきり私と話をする為に扉の前で見張って後を着いて来たストーカー野郎だと思っていたんだけど、どうやら違ったみたいね。
「それで僕の魔力視によると、貴女の魔力量はここにいる誰よりも高いので…もしかしたら可能ではないかと思ったのですが?」
「確かに私は生まれ付き魔力が高いですが、それでも自然界の脅威を抑制出来る力は有りません。 それが可能なら…私は貴族とのいざこざが無く逃げ出しておりましたし、こんな仮面で顔を隠す様な真似はしません。」
こうでも言っておけば…諦めるだろうと思っていた。
ところが…?
「僕は魔法の使い方は色々知っていますので、もし良ければ教える事が出来ますが…」
「結構です! 私は身の丈に合った魔法で充分ですので…」
これで退いてくれると良いんだけど…?
ところがそれでは終わらないヴァッシュ殿下と…
「ヴァッシュ殿下、この女はライラよりも魔力が高いのか?」
「ライラ殿とは比べ物にならない位に高いですね、レイラ殿がどの位の総魔力量なのかが分かりませんが…この方が居れば、レントグレマール王国の結界を張る事が出来るかも知れませんよ。」
「何だと⁉︎」
ヴァッシュ殿下…永遠に黙らせてやろうか?
それにカリオスも余計な事を聞いて来るんじゃないわよ‼︎
その証拠に…カリオスが私の方を見て考え込んでいる。
カリオスの目的がデルバディル城に行く事となれば、レイラを連れ戻すのが目的なんだろうけど…?
私で代用が出来るなら、足止めを喰らっていつまでもこんな場所で待つよりも…私を連れ去ろうとか考える筈?
あんな王国に戻りたくもないし、あんな王国がどうなろうとか知った事ではない。
「おい、女! お前を…」
「お断りします! 先程に結界の話云々が聞こえましたけど、レントグレマール王国の結界を私に張れと仰りたいみたいですが…私も以前にレントグレマール王国に赴いた事がありますが、アレって聖属性の結界ですよね? 私に聖属性はありませんけど…」
私の言葉でヴァッシュ殿下とカリオスが呆けていた。
「まさか…知らなかったのですか? 私は結界の存在を知った時に神殿に赴いて誰が結界を張ったのかという話を聞いたら、神殿の方が聖女様が張ったと聞かされましたけど?」
流石に結界に聖属性が絡んでいた事をヴァッシュ殿下は知らなかったみたいで…魔力が有れば結界を張れると思い込んでいたみたいだった。
「呆れましたね、魔力を使った魔力結界では攻撃を弾き返す効果があるだけで、加護や恩恵の効果がまるで無いのに…」
「だからライラの張った結界は何の効果ももたらさなかったのか!」
「まさか…レントグレマール王国の結界にそんな秘密があったなんて⁉︎」
これで…私をどうこうするという話は無くなったと思う。
まぁ、実際にはあの結界に聖属性なんて全く使われてはいないんだけどね。
私があの結界を張った時は、家族を振り向かせ為に加護や恩恵といった類の祈りを込めた物で、それなりに魔力が高ければ誰でも張れる物なんだけど…ライラの場合はそんな事を考えずにただ魔力を使っただけなんでしょうね。
あの子は私と違って、家族に甘やかされて裕福に育てられたから…王国の為にどうこうしようとか思っていた訳では無いから、結界に何も反映されなかったのでしょう。
「なら…やはりレイラを連れ戻すしか無いのか。」
「レイラ殿が聖女様なら…豊穣の加護や恩恵も納得が出来る!」
これで完全に私の興味が無くなったでしょう。
それにしても魔力視ですか…厄介な能力ですね?
どの程度の範囲まで探れるのかが分かりませんが、中央都市デルーランスに行って魔力の反応が無ければ…手紙の内容が嘘だとバレる可能性があるかも知れない。
やはりここは…?
私は二人にある提案をしようと試みた。
「納得してくれれば良いんだけどねぇ?」
突然ヴァッシュ殿下がこんな事を言い出して来た。
その言葉に対してカリオスも私の方を向いて来た。
私は無言で首を振ると言った。
「流石に自然界の脅威を退けられる様な魔法はありません!」
レントグレマール王国で私の張った結界は、あらゆる災害を退けられる効果があり…熊車の周囲に結界を展開すればできない事はないけど…?
「そうですか…って、ファスティアさん…そんな仮面を付けておられましたっけ?」
貴方が余計な事を言って注目を向ける様な発言をするからでしょ!
そのお陰でカリオスが私を見ても問題なさそうにしているから構わないけど。
私は多分この仮面に関して聞かれると思っていたから、事前にメナスと打ち合わせをしていた設定を話した。
「私はこの国の出身で、横柄な態度をして来る貴族から逃げる為に他の大陸に移ったのです。 まさかこの国に戻って来るとは思わなくて…素性を隠す為に仮面で隠しているだけなので。」
「そうだったのですか…」
これで話が終わってくれると良かったんだけど…?
「実は僕の能力には魔力視というのがありまして、他人の魔力を見る事が出来るのです。」
なるほど、それでか~!
船で甲板に出た時にピンポイントで私のいる場所を探り当てて接触して来たのね。
てっきり私と話をする為に扉の前で見張って後を着いて来たストーカー野郎だと思っていたんだけど、どうやら違ったみたいね。
「それで僕の魔力視によると、貴女の魔力量はここにいる誰よりも高いので…もしかしたら可能ではないかと思ったのですが?」
「確かに私は生まれ付き魔力が高いですが、それでも自然界の脅威を抑制出来る力は有りません。 それが可能なら…私は貴族とのいざこざが無く逃げ出しておりましたし、こんな仮面で顔を隠す様な真似はしません。」
こうでも言っておけば…諦めるだろうと思っていた。
ところが…?
「僕は魔法の使い方は色々知っていますので、もし良ければ教える事が出来ますが…」
「結構です! 私は身の丈に合った魔法で充分ですので…」
これで退いてくれると良いんだけど…?
ところがそれでは終わらないヴァッシュ殿下と…
「ヴァッシュ殿下、この女はライラよりも魔力が高いのか?」
「ライラ殿とは比べ物にならない位に高いですね、レイラ殿がどの位の総魔力量なのかが分かりませんが…この方が居れば、レントグレマール王国の結界を張る事が出来るかも知れませんよ。」
「何だと⁉︎」
ヴァッシュ殿下…永遠に黙らせてやろうか?
それにカリオスも余計な事を聞いて来るんじゃないわよ‼︎
その証拠に…カリオスが私の方を見て考え込んでいる。
カリオスの目的がデルバディル城に行く事となれば、レイラを連れ戻すのが目的なんだろうけど…?
私で代用が出来るなら、足止めを喰らっていつまでもこんな場所で待つよりも…私を連れ去ろうとか考える筈?
あんな王国に戻りたくもないし、あんな王国がどうなろうとか知った事ではない。
「おい、女! お前を…」
「お断りします! 先程に結界の話云々が聞こえましたけど、レントグレマール王国の結界を私に張れと仰りたいみたいですが…私も以前にレントグレマール王国に赴いた事がありますが、アレって聖属性の結界ですよね? 私に聖属性はありませんけど…」
私の言葉でヴァッシュ殿下とカリオスが呆けていた。
「まさか…知らなかったのですか? 私は結界の存在を知った時に神殿に赴いて誰が結界を張ったのかという話を聞いたら、神殿の方が聖女様が張ったと聞かされましたけど?」
流石に結界に聖属性が絡んでいた事をヴァッシュ殿下は知らなかったみたいで…魔力が有れば結界を張れると思い込んでいたみたいだった。
「呆れましたね、魔力を使った魔力結界では攻撃を弾き返す効果があるだけで、加護や恩恵の効果がまるで無いのに…」
「だからライラの張った結界は何の効果ももたらさなかったのか!」
「まさか…レントグレマール王国の結界にそんな秘密があったなんて⁉︎」
これで…私をどうこうするという話は無くなったと思う。
まぁ、実際にはあの結界に聖属性なんて全く使われてはいないんだけどね。
私があの結界を張った時は、家族を振り向かせ為に加護や恩恵といった類の祈りを込めた物で、それなりに魔力が高ければ誰でも張れる物なんだけど…ライラの場合はそんな事を考えずにただ魔力を使っただけなんでしょうね。
あの子は私と違って、家族に甘やかされて裕福に育てられたから…王国の為にどうこうしようとか思っていた訳では無いから、結界に何も反映されなかったのでしょう。
「なら…やはりレイラを連れ戻すしか無いのか。」
「レイラ殿が聖女様なら…豊穣の加護や恩恵も納得が出来る!」
これで完全に私の興味が無くなったでしょう。
それにしても魔力視ですか…厄介な能力ですね?
どの程度の範囲まで探れるのかが分かりませんが、中央都市デルーランスに行って魔力の反応が無ければ…手紙の内容が嘘だとバレる可能性があるかも知れない。
やはりここは…?
私は二人にある提案をしようと試みた。
「納得してくれれば良いんだけどねぇ?」
59
あなたにおすすめの小説
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。
私を裁いたその口で、今さら赦しを乞うのですか?
榛乃
恋愛
「貴様には、王都からの追放を命ずる」
“偽物の聖女”と断じられ、神の声を騙った“魔女”として断罪されたリディア。
地位も居場所も、婚約者さえも奪われ、更には信じていた神にすら見放された彼女に、人々は罵声と憎悪を浴びせる。
終わりのない逃避の果て、彼女は廃墟同然と化した礼拝堂へ辿り着く。
そこにいたのは、嘗て病から自分を救ってくれた、主神・ルシエルだった。
けれど再会した彼は、リディアを冷たく突き放す。
「“本物の聖女”なら、神に無条件で溺愛されるとでも思っていたのか」
全てを失った聖女と、過去に傷を抱えた神。
すれ違い、衝突しながらも、やがて少しずつ心を通わせていく――
これは、哀しみの果てに辿り着いたふたりが、やさしい愛に救われるまでの物語。
素顔を知らない
基本二度寝
恋愛
王太子はたいして美しくもない聖女に婚約破棄を突きつけた。
聖女より多少力の劣る、聖女補佐の貴族令嬢の方が、見目もよく気もきく。
ならば、美しくもない聖女より、美しい聖女補佐のほうが良い。
王太子は考え、国王夫妻の居ぬ間に聖女との婚約破棄を企て、国外に放り出した。
王太子はすぐ様、聖女補佐の令嬢を部屋に呼び、新たな婚約者だと皆に紹介して回った。
国王たちが戻った頃には、地鳴りと水害で、国が半壊していた。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました
柚木ゆず
ファンタジー
より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。
「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」
現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる