【完結】全てを後悔しても、もう遅いですのよ。

アノマロカリス

文字の大きさ
24 / 63

第二十二話 ノースファティルガルドの実態…

しおりを挟む
 ノースファティルガルドに到着する少し前…

 私とメナスはある対策を取る為に行動を起こしていた。

 「コレなんかどうかしら?」

 「それって…祭りの道化師の仮面? なんかすっごく怪しいよ…」

 その対策とは、元婚に顔を見られない為に仮面を用意するという物だった。

 それで用意した道化師の仮面なんだけど、何とも不気味な笑みを浮かべた仮面でメナスには不評だった。

 「なら、コレは?」

 「それって西方民族のパルーダコニャスタ族の戦士の仮面よね? 恥ずかしくないなら…」

 まるでハワイの仮面の様な怒った表情の物だった。

 「ファスティア、普通の仮面は無いの?」

 「なら…コレなんかどう?」

 「それなら…いくらかマシかな?」

 私は女神の銅像の顔を模った仮面を作ってみた。

 全くの無表情の仮面だけど、他の2つよりかは良い反応だった。

 「それにしてもさぁ…護衛場所ってノースファティルガルドに到着で終わりじゃ無かったの?」

 「ノースファティルガルドの中央都市デルーランスまでという話みたいだね。 そこからデルバディル城は目と鼻の先みたいだから、そこまで案内をしたら終わりみたいだけど…」

 船が到着したらそこで別れて、私達はUターン出来るかと思っていたら違っていた。

 私はメナスからギルドの指名依頼を今一度確認すると、確かにノースファティルガルドの中央都市デルーランスと書かれていた。

 そうなると…船では別々に行動していたけど、中央都市デルーランスまでとなると接近距離は近くなって来る。

 そうなったりすると、船内では接近禁止をされていたけど…ヴァッシュ殿下の事だから絶対に声を掛けてくるはず。

 その為に顔を隠す為に仮面を用意しようという考えが浮かび上がったのだった。

 「私は中央都市デルーランスまでは窮屈な仮面をしておかないと行けないのね…」

 「それにしてもさぁ、馬鹿王子とファスティアはほとんど目の前で会っている筈なのに…なんで気付かないんだろう?」

 「カリオスってね、自分が興味を示す相手以外はあまり顔を見ようとはしないのよ。 今は妹に夢中みたいだから、他の女の子には興味がないんじゃ無いかな?」

 ※この時のファスティアは、レントグレマール王国でカリオスとライラが破局していた事を知らない。

 そんな事を話していると、高速船はノースファティルガルドの港街ザックロアに到着した。

 私達は船を降りる前にドレクス達は防寒服に、私とメナスは防寒コートに身を包んだ。

 そして船を降りると…目の前にはカリオスとヴァッシュ殿下が先に降りていた。

 「皆さん、お久しぶりで…」

 ヴァッシュ殿下がそう言おうとして私達に近付いてこようとすると…ドレクス達が私達の前に立って、不用意に近付かない様に制止させた。

 「悪いが…あまり娘達に近寄らないでくれねぇか!」

 「僕の誤解は…解けた訳ではないのですね。」

 そう言ってヴァッシュ殿下は、一礼をして下がった。

 そして船の荷台から荷車が降ろされると、近くで繋がれている雪熊に手綱を付けた。

 「なんだ? 馬じゃ無くて…熊なのか?」

 「雪原エリアでは馬は全く役に立ちません。 熊が荷車を引いて走るんです。」

 「熊なんかで速く走れるのか?」

 「速くは走れませんよ、安全に旅をするには速さよりも安定を大事にするんです。」

 「俺は急いでいるんだが?」

 「なら王子さんよ、街から外に出て10m歩いてみろ! 言った意味が分かるからな…」

 カリオスはドレクスに連れられて門に着くと、ドレクスは外に指を差してカリオスを歩かせた。

 ノースファティルガルドの街中は炎の魔石を用いた魔道具のお陰で、吹雪や雪もある程度防げているのだけれど…?

 外は吹雪の所為で1m先ですらまともに見れない程に視界が悪く、腰の高さまで積もっている雪で歩くのは困難だった。

 カリオスは腕で視界を確保しながら雪の中を歩いていくが…数mも歩かないうちに引き返して来た。

 「分かったか? ここでは速さよりも安定差が求められるという意味が…」

 「良く分かった! 確かに…速く走るのは無理そうだな。」

 「しかし…流石に寒冷期に入っているだけあって、吹雪が止む気配が一向にないな。」

 寒冷期はほとんど毎日の様に外は吹雪いていた。

 吹雪が治まる事はほとんど無く、仮にあったとしても…すぐに吹雪が起きるのだった。

 「寒冷期が治まってから、この国の冒険者に案内をしてもらった方が良いと思いますが?」

 「だな、流石にこの時期にデルーランスまで行くのは自殺行為だし、寒冷期が治まるまではこの街に留まるしかないぞ?」

 「寒冷期が終わるにはいつ頃なんだ?」

 「寒冷期が始まったばかりだからな、約三ヶ月は足止めを喰らうだろうな。」

 「な、なんだと…⁉︎」

 カリオスは一刻も早くデルバディル城に向かいたい感じだった。

 だが、先程の外の様子からだと…どう足掻いても先に行ける気がしなかった。

 「まぁ、寒冷期が終わるまでは宿に泊まるしかないだろうな。」

 「俺は…一刻も早く向かいたいのに!」

 カリオスは無念そうに地面を叩いた。

 その様子を見ていたヴァッシュ殿下は、私の方を見て尋ねて来た。

 「ファスティアさん、貴女の魔法なら可能だったりしませんか?」
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?

ゆるり
恋愛
アリシエラは聖女であり、婚約者と結婚して王太子妃になる筈だった。しかし、ある少女の登場により、未来が狂いだす。婚約破棄を求める彼にアリシエラは答えた。「はい、喜んで」と。

わたくしを追い出した王太子殿下が、一年後に謝罪に来ました

柚木ゆず
ファンタジー
 より優秀な力を持つ聖女が現れたことによってお払い箱と言われ、その結果すべてを失ってしまった元聖女アンブル。そんな彼女は古い友人である男爵令息ドファールに救われ隣国で幸せに暮らしていたのですが、ある日突然祖国の王太子ザルースが――アンブルを邪険にした人間のひとりが、アンブルの目の前に現れたのでした。 「アンブル、あの時は本当にすまなかった。謝罪とお詫びをさせて欲しいんだ」 現在体調の影響でしっかりとしたお礼(お返事)ができないため、最新の投稿作以外の感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

婚約破棄が私を笑顔にした

夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」 学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。 そこに聖女であるアメリアがやってくる。 フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。 彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。 短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。

〖完結〗役立たずの聖女なので、あなた達を救うつもりはありません。

藍川みいな
恋愛
ある日私は、銀貨一枚でスコフィールド伯爵に買われた。母は私を、喜んで売り飛ばした。 伯爵は私を養子にし、仕えている公爵のご子息の治療をするように命じた。私には不思議な力があり、それは聖女の力だった。 セイバン公爵家のご子息であるオルガ様は、魔物に負わされた傷がもとでずっと寝たきり。 そんなオルガ様の傷の治療をしたことで、セイバン公爵に息子と結婚して欲しいと言われ、私は婚約者となったのだが……オルガ様は、他の令嬢に心を奪われ、婚約破棄をされてしまった。彼の傷は、完治していないのに…… 婚約破棄をされた私は、役立たずだと言われ、スコフィールド伯爵に邸を追い出される。 そんな私を、必要だと言ってくれる方に出会い、聖女の力がどんどん強くなって行く。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

婚約破棄はまだですか?─豊穣をもたらす伝説の公爵令嬢に転生したけど、王太子がなかなか婚約破棄してこない

nanahi
恋愛
火事のあと、私は王太子の婚約者:シンシア・ウォーレンに転生した。王国に豊穣をもたらすという伝説の黒髪黒眼の公爵令嬢だ。王太子は婚約者の私がいながら、男爵令嬢ケリーを愛していた。「王太子から婚約破棄されるパターンね」…私はつらい前世から解放された喜びから、破棄を進んで受け入れようと自由に振る舞っていた。ところが王太子はなかなか破棄を告げてこなくて…?

〖完結〗醜いと虐げられて来た令嬢~本当は美しかった~

藍川みいな
恋愛
「お前は醜い。」ずっとそう言われてきたメリッサは、ずっと部屋に閉じこもっていた。 幼い頃から母や妹に、醜いと言われ続け、父テイラー侯爵はメリッサを見ようともしなかった。 心の支えは毎日食事を運んでくれるティナだけだったが、サマーの命令で優しいふりをしていただけだった。 何もかも信じられなくなったメリッサは邸を出る。邸を出たメリッサを助けてくれたのは… 設定はゆるゆるです。 本編8話+番外編2話で完結です。

処理中です...