器用貧乏な赤魔道士は、パーティーでの役割を果たしてないと言って追い出されるが…彼の真価を見誤ったメンバーは後にお約束の展開を迎える事になる。

アノマロカリス

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第二部

第四話 お約束的な…反応

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 全く…自分と戦う事になるとは思わなかった。
 そして嫌な予感というのは当たるものだ。  
 魔境転写の俺…はシャドウと呼ぼう。
 シャドウは複合統一魔法の準備を始めていた。

 「あれは…氷系の複合統一魔法だな?だがあの威力を考えるとアブソリュートではな…」

 俺は甲板を見ると、クラーケンとクラーゴンと戦いを広げている仲間達がいた。
 俺はシャドウが放とうとしている複合統一魔法を見て、下の者達に指示をした。

 「ミュンとティルティアは周囲にフレイムウォールを展開! リールーは甲板全体に行き渡る守護結界を張れ‼」
 「いきなりそんな事を言われても…」
 「死にたくなければ早くしろ‼奴の使おうとしている複合統一魔法は、氷系最強範囲魔法のニブルヘイムだ‼」

 ティルティアは分かったかどうかが怪しかったが、ミュンとリールーは表情が一変した。
 俺の言われた通りに守護魔法を張り巡らせると、シャドウの放ったニブルヘイムが甲板に落とされて…仲間達には影響がなかったが、船体から周囲を凍てつかせた。
 その効果でクラーケンとクラーゴンは完全に凍り付いていた。

 「全く…なんつー魔法を使いやがる! ニブルヘイムなんて俺にも出来ない…事はないが、完全な状態でも1発放っただけで魔力の保有量が空に…ん?」

 魔境転写は映った本人と同じ性能を持つ者が襲ってくるという物だった。
 映った本人という事は…俺と同じ性能という事になるのだから、ニブルヘイムなんて放ったら魔法関係は使えないと思いたい所だが?
 シャドウの髪を見ると、今の俺ほどではないが全体的に白くなっていた。
 俺と同レベルという事は、恐らく鑑定魔法は弾かれる。
 だが、あの頭を見れば…残りの魔力の保有量が大体わかる。
 
 「挑発させて魔力を空にさせる方法もなくは無いが…?」

 問題は何の魔法を使ってくるかによる。
 俺の魔法は攻撃・防御・補助・回復などの魔法が500種類くらいある。
 他の種類の魔法もあるが、自分でも数が多すぎてあまり覚えていない。
 だから何の魔法を使って来るのかが予想出来なかった。
 まぁ髪の色が半分以上白くなっているので…ニブルヘイムの連発はないとは思うが?

 「テクト、お前は何でそれ程までの力があって勇者じゃ無いんだよ‼︎」
 「知るか! 俺は勇者には選ばれなかったんだよ…」
 「二人とも喧嘩している場合じゃないでしょ!」

 アーヴァインの言葉に、リールーが叫んだ。
 確かに普通に考えれば、これだけの力がある者が勇者に選ばれないというのはおかしな話である。
 俺は勇者を望んだことなんか無いし、勇者なんて面倒なだけだからなりたいとも思わないという考えが、選ばれなかった理由では無いかと思う。

 「それよりもテクト、アイツはどうやって戦うんだ⁉︎」

 アーヴァインは空に向かってシャドウを指差した。
 皆は…浮遊魔法や飛行魔法の類は使えないからなぁ?

 「とりあえず、今は何も現れないとは思うが…一応警戒だけは怠るなよ!」

 俺は下にいる奴らにそう言った。
 クラーケンもクラーゴンも完全に凍り付いていて身動きが取れない。
 ガイアスとその他の者達が、トドメを刺しているので問題は無い。
 それに…シャドウの目的は、あくまでも俺だった。
 甲板にいたのなら協力を願ったかもしれないが、アーヴァインやティルティアでは…恐らく歯が立たないだろうな。
 力的には…アーヴァインやティルティアの方が上なんだけど、手合わせの時に俺の姑息な攻撃の所為で勝てた事が無かったからな。

 「さて、どうやって戦うかだが…?」

 髪の色からして、それほど強い魔法はもう放てない筈?
 そう思っていたら、シャドウは剣を抜いて向かって来たのだった。
 俺もすかさず向かって来たシャドウに応戦するが、大規模魔法を使っていた割には余力が残っているみたいで俺は苦戦を強いられた。

 「このままだとヤバイな…」

 俺はシャドウの攻撃に押され気味になっていた。
 俺は適当な魔法を放つと、シャドウはその場から引いて距離を取った。
 勝つ方法はなくは無い…が?

 「能力は同じでも…収納魔法の中まで一緒というわけでは無いよな?」

 あまり使用したくは無いが、俺は収納魔法の中から勝機を見出すある物を取り出す為に、収納魔法の中に手を入れてソレの柄を掴んだ。
 ソレとは…魔境の森時代にやたら手古摺らされた魔神を倒した際に手に入れた魔剣だった。
 ただその魔剣はかなり厄介な物で、使用する間は魔力を奪われ続け…魔力が無くなると、今度は精神をやられるという危険な魔剣だった。
 精神がやられると自我を失い周囲を見境なく攻撃するという代物で、魔境の森の様に周囲に味方がいない場合だったら使用しても問題が無いのだが、この場所で使用すると…アーヴァイン達に斬りかかる可能性があるので使用は控えたかった。
 
 「やるからには短期決戦…と言いたいところだけど、楽に勝たせてくれる相手では無いよなぁ?」
  
 俺は魔神の魔剣を収納魔法から取り出して鞘を抜いた。
 鞘に収まっている状態なら何も問題は無いのだが、鞘から抜いた途端に言いようも無い悪寒が全身に広がっていた。
 魔神の魔剣を使用した際に発生する後遺症のような物だろう。
 人が魔剣を手にすると、大体の者達は精神がおかしくなるから…俺もその可能性がないわけでは無いので短期決戦と言ったのはそういう意味だった。

 「居合…というのは得意では無いが、あの剣術を真似してみるしか無いな。」

 東方の武器で刀と呼ばれる武器を扱う、サムライと呼ばれるジョブを持つ者達が居合という剣術を得意としていた。
 過去にアーヴァインが勇者になる前にパーティーを組んでいた頃に、東方のユリアザミという国に行った際に習った事がある。
 だけど、居合の型は…あの反り返った刀身だから可能なのであって、諸刃の剣であの芸当は無理に近かった。
 
 「だけど、魔神の魔剣の性能を考えると…この方法しか無いよな?」

 シャドウは俺の方に近付いて来た。
 だが、まだ射程内には届いてはいなかった。
 まぁ、当然か…幾ら刀身を抜いてないとは言っても、態々危険を犯して間合いに踏み込んで来たりはしないだろう。
 余程の自信があるか、余程のバカでも無い限りはね。
 俺は逆に慎重すぎるから、シャドウ…俺と同様なら無闇に突っ込んで来る事は…あ、来た!
 コイツは本当に俺のコピーなんだろうか?
 シャドウは剣を振り上げて、間合いの射程内に入って来た。
 なにか策でもあるのだろうか…とも思ったのだが、俺は魔神の魔剣を刀の様に居合で斬り刻んだ。

 「えっと…?」

 分身の魔法でも使用していたのかと思う位に、あっさりと葬る事が出来た。
 分身の魔法の場合、斬られたらそのまま消えるか、何か身代わりになった物が残る筈なのだが…?
 鏡の欠片の様な破片が散らばって行ったのだった。
 魔境転写から出て来たシャドウは、元は鏡の中の戦士。
 倒された後の肉体は、こうなるのが必然か。

 「う…ぐぐ…ガガァ~~~~~‼︎」

 あまりにも呆気なく倒してしまった所為で、呆けていて魔神の魔剣を鞘に戻すのを忘れていた。
 俺はすぐにでも魔神の魔剣を鞘に戻そうとしたのだが、異常な迄の眠気が襲って来て意識を保つ事が出来ずにいた。
 
 「ヤバい…このままだと、皆を襲い掛かってしまう!」

 まぁ、アーヴァインとティルティアとガイアスに関しては問題は無いだろう。
 あの三人は俺より強いからな。
 だけど、他の者達はそういう訳には行かない。
 俺は…皆が無事である事を祈りながら、意識を失った。

 ~~~~~半日後~~~~~

 俺は意識を取り戻すと、船室のベッドに寝ていたみたいだった。
 起き上がって周りを見たが、誰も怪我をした者達はいなかったみたいだった。
 
 「起きたか…身体はもう大丈夫なのか?」
 「アーヴァイン…誰も犠牲者はいないよな?」
 「それは問題は無いんだが、テクトは色々と溜まっていたんだな。」

 アーヴァインは僕の肩を叩いてから、部屋を後にした。
 続いて…ティルティアが、リールーが、ガイアスが肩を叩いて部屋を退室して行った。

 「一体…何があったというんだ?」

 俺は思い出した様に魔神の魔剣を見た。
 魔神の魔剣はしっかり鞘に収まっていた。
 俺は安堵の溜め息を吐くと、魔神の魔剣を収納魔法に放り込んだ。
 
 「テクト君、色々ごめんね。」

 最後にミュウが俺に謝って来た。
 俺には何の事かが全く分からなかった。
 すると、ミュウは赤い顔をして部屋から出て行ったのだった。
 一体…何だというんだ?

 後日、船員達から話を聞くと…?
 魔神の魔剣を使用した際に、意識を失った後の事…俺はミュンとの関係で進展の無さに対する不満を大声で叫び捲っていたみたいだった。
 てっきり意識を失った後に、誰かに切り掛かると思っていたのだが…?
 実はこの魔神の魔剣は、精神がやられた後に意識を失うと…心の中に溜め込んでいた物が表に出て来て、色々と不満をぶち撒けるという物だった。
 前回に魔境の森で使用した際には、師匠に対する不満が表に現れて周囲に被害があったみたいだったが…?
 今回は…こういう事だったらしい。
 だからミュンが赤い顔をしていたのだ。

 「一体、俺は何を言ったんだ?」

 内容に関しては、誰も話してはくれなかった。
 ただ、船から降りる迄の間は、すれ違う度に笑い声が聞こえて来た。
 本当に何を言ったのだろうか?
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