鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~

今田勝手

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章の二

第五十七話/エイジとマンジュ

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 翌朝、王京からの馬車が村の入口へ到着した。
「マンジュ殿!もう出ますよ!」
「ああ!この工程だけっスから!」
「メイ、もう先に行って待っとこうぜ」
「マンジュ殿!」
「行くっス!行くっスから!」
 急ピッチで作業を進めるマンジュを尻目にメイとアンナは家を出る。
 続いてエイジがシュテンと共に自宅から出てくる。
「シュテン殿!こちらですよ!」
 メイに促され、荷物を持って村の入口まで歩く。
 首に掛かったクロも大きな欠伸をする。
 しばらくすると、マンジュが走ってきた。
「遅れて申し訳ねえっス!」
「作業は終わったのですか?」
「バッチリっス!」
 息を切らしながらメイの方へ親指を立てる。
「マンジュ」
 エイジが声を掛けると、息を整えながら顔を上げた。
「エイジ…なんスかその顔は?」
「ん…すまん」
 エイジの顔はどこか晴れきらない。
「…エイジ、アタシは大丈夫っスよ」
「え?」
「親父の言ってた事、気にしてるんスよね」
 エイジは言葉に詰まる。
 ホエンがエイジに掛けた強化術は、エイジの潜在能力を無理やり引き出す物だった。
 いずれ魔力量や技術が向上すればたどり着くであろう領域、その過程を飛ばして手に入れる技だ。
 その力を未熟なまま手に入れたエイジは、一歩間違えたら人を殺すところだった。
 そんな経験をしたエイジであるが故に、強大な力を欲するマンジュも同じ様になってしまわないかと不安になる。
だがそんな不安を、マンジュは笑顔で吹き飛ばした。
「心配要らねえっスよ!アタシは、アニキの元でじっくり鍛えてもらうっス!そして最強になって、この村に帰ってくるっスから!」
「……マンジュ」
「ん?…んえ?あ、わっ!」
 後ろで見ていたアンナが「おー」と声を漏らした。
 その横でメイも思わず両手が口元にいく。
 エイジがマンジュを強く抱き締めたのだ。
「ちょ、エイジ、苦しいっスよ!」
「マンジュ」
「ひゃいっ!」
「俺も、もっと強くなるから。お前を守れるくらい、強くなって待ってるから。だから、絶対に帰って来い」
「…はい…っス」
 エイジはマンジュを離す。
「行ってらっしゃい」
「い、行ってきます…っス」
 マンジュは踵を返すと、荷物を馬車に放り込み、そそくさと乗り込んだ。
「…じゃ、元気でな」
「またお会いしましょう」
 アンナとメイがエイジに挨拶し馬車へ向かう。
 シュテンもエイジを一瞥し振り返る。
「シュテン」
 その時、エイジがシュテンを呼び止めた。
「んァ?」
「マンジュを宜しく頼む、何かあったら承知しないからな?」
「ん…あァ、分かったァ」
 シュテンが馬車へ乗り込むと、御者の声を合図に進み出す。
「よし…頑張るか」
 小さくなっていく馬車を見ながら、エイジは決意を新たにした。

「…なんスか」
 一方馬車の中では、マンジュにメイとアンナの生暖かい視線が注がれていた。
「いや?若いっていいなって思ってな。なぁメイ」
「ええ、本当に尊い物です」
 マンジュに対する弄りを含んでいるアンナに対して、メイは純度100パーセントの老婆心だから余計タチが悪い。
「もうこっち見ないで欲しいっス!」
「良いじゃねえか減るもんじゃなし」
「うふふふふふ」
「アニキ~、助けて欲しいっス~!」
「あァ…?」
 マンジュの呻きとシュテンの困惑が木霊する、そんな馬車道中であった。




「…やられた」
 コージツ・ギルドの中で、ひとり頭を抱える者がいた。
 昨日必死で掻き集めた魔道具や機材の一切、それらを置いていたはずの部屋で、ギルドマスター・ケンゲンはため息をつく。
「魔導鞄か…そんな単純な事にも気づかないとは…」
 ケンゲンは増えた仕事を数えながら、空っぽの子供部屋を後にした。
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