ザ・チームワーク

チームワークとは

2015.12.03 公式 ザ・チームワーク 第1回

客室乗務員の役割とは

はじめまして。(株)GLITTER STAGEの七條千恵美(しちじょうちえみ)と申します。
このたび、1年間にわたりブログ記事を掲載するはこびとなりました。実は私、国内大手航空会社に客室乗務員として、また教官としての期間も加え、18年間勤務していた経験があります。
元CAといえば「おもてなし」や「マナー」などが十八番だということは、皆さんご存知の通りです。もちろん私も、接客についてはただならぬこだわりを持っておりますが(笑)、このブログでは、元CAの定石といえる「おもてなし」や「マナー」とは一味違った「チームワーク」をテーマにお伝えしていこうと思っています。

旅客機のCAは、「サービス要員」としての側面にスポットライトが当たりやすい職業ではありますが、実はその何倍も「保安要員」として重要な役割をもっている仕事です。
複数の人間が集まれば、お客様をサーブする場合でも何をする場合でも、もちろん高いレベルのチームワークは必須です。しかし、とりわけCAのように「安全」というものに携わる職場では、何よりも「良質なチームワーク」が最重要項目であることは、意外と知られていない事実だと思います。

そもそも「チームとは何か」、そのうえで「チームワークとは何か」。この問いには、おそらくさまざまな答えがあると思います。ですが、私の考える「客室乗務員の仕事を通じて得たチームワーク」という視点の中に、何か皆さまのお役に立てるヒントがあれば幸いです。

良質なチームワークに必要なこと

さて、私は元CAだとお伝えしましたが、さらに歴史を遡ると、学生時代は体育会のフェンシング部に所属しておりました。
フェンシングは個人競技ではありますが、試合では個人戦、団体戦の両方があり、やはりそこにはチームワークが求められます。
体育会と聞くだけで想像に容易いかと思いますが、そこには、先輩と後輩の絶対的な上下関係、体力の限界に挑む激しい練習、厳しい部の規律などなど、心身ともに鍛えられる環境が否応なしに待っています。体育会の世界を経験し、そして一見華やかに見えるCAの世界も経験した私から見ると、実はこの2つの世界はとても似ているような気がします。新人CAと先輩CAの関係、体力の限界を感じるほどのハードワーク、厳しい規律のあるCAの世界… そう考えると、非常に似ていると思いませんか?

誤解のないように付け加えておきますと、双方とも厳しい世界ではありましたが、いずれも私にとっては大切で大好きな場所でした。どちらの世界も、過酷な状況や場面に遭遇することは非常に多くありましたが、それでもその組織に属することに喜びを感じることができました。
それは一体なぜでしょう? 自分なりに分析してみると、やはり「自らが成長できる環境であったこと」も理由のひとつです。しかし最も大きな理由は、やはりそこに「誇りをもてる良質なチームワーク」があったからです。

しかし、そのためにはまず、チームを構成する一人ひとりが強く優しい「個」である必要があります。そこにいる個々の人々が他に依存することなく、懸命に目の前の出来事と向き合う姿こそが、良質なチームワークを育む上での初めの一歩ではないでしょうか。

また、「協調性」という言葉を自身に都合よく解釈している人が多いと感じることも、私には少なくありません。もちろん、いたずらに摩擦やトラブルを起こすのは論外です。しかし、問題解決や軋轢(あつれき)から目を背け、乗り越えていくべき課題を他人事としか捉えていない人が多い環境では、決して「良質なチームワーク」は育たない。私は自身の経験からそう思っています。

「良質なチームワーク」のために最も重要なことは、「なぜ」「何のために」「どこを目指して進んでいくのか」ということに着目し、1つひとつの課題をチーム全員で解決していくことなのです。そしてそこには、個人のプライドやエゴが介在してはいけません。

などといったことを文章で書くのは簡単ですが、やはり何事も複数の人間が集まると、個人の感情やしがらみが絡むことがあるのも事実です。だからこそ、あらゆる人たちとは日頃から良好な人間関係や信頼関係を築いておくことが、レベルの高いチームワークを発揮するためには欠かせません。特に仲間に対しては、常に愛と敬意を忘れてはならないのです。これは、先輩や上司であっても部下や後輩であっても変わりません。

「1+1=3」にするチームの力

「良質なチームワーク」を育むためには、まず1人ひとりが強く優しい「個」であることが重要だと先程もお伝えしました。そして、チームや組織で目標を達成するために、本音で意見をぶつけ合える環境を整えることが最大のキーとなるのです。
その最大のキーとなる環境を作るためには、仲間との良好な関係性を築くための「コミュニ―ション能力」が何よりも重要といえるでしょう。

チームが1つになることができれば、「1+1=2」という単純計算ではなく、それぞれが持つ力が相乗効果を発揮して「1+1=3」になるとよく言われますし、実際に私も自身の経験からそう確信しています。しかし、企業理念の遂行や目標の達成を考えるとき、最もフォーカスすべきは「個人の在り方」に尽きると思います。
いくらチームだ、組織だといっても、それを構成しているのは紛れもなく「個」なのです。朝礼などで何度も企業理念の唱和をすることに効果がないとはいいません。ですが、これを「やらされている」と感じている人にとっては、極めて効果は低いと言わざるを得ません。まずは、それぞれの人間がチームを構成する一員として、「自分がどんな人で在りたいのか」「仕事を通じてお客さまに何を提供したいのか」ということを真剣に自身と向き合って考える必要があると思います。

最後になりましたが、私は入社時のレポートに「出会ったお客さまを1人でも多く自社のリピーターにする!」と書いていました。その想いは、入社時から退職まで一度も途絶えたことはありませんでした。しかし、その想いを継続することができたのは、自分自身の想いの強さだけではありません。やはりそこには、多くの仲間と共有できた「お客さまに快適な空間を提供したい」「お客さまに安全、安心、上質なサービスを提供したい」という追い続けたい想いがあったからです。同じ志を持つ仲間と一緒ならば、たとえ満席でハードなフライトが続いたとしても、そのフライトを清々しい気持ちで終えることができました。そしてこうした瞬間こそ、「良質なチームワーク」の素晴らしさを実感する瞬間でもあったのです。

さて、次回からは「良質なチームワークを築くために客室乗務員が行っている工夫」についてお伝えしていきたいと思います。

次回もこのブログを読んで頂けると幸いです。

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プロフィール

七條千恵美
七條千恵美

同志社大学卒業後、国内の大手航空会社に入社。お客様から多くの賞賛をいただいた客室乗務員に贈られるDream Skyward賞を受賞。
さらには、その中でも際立った影響力を持つとしてDream Skyward優秀賞を受賞。皇室チャーターフライトの選抜メンバーにも抜擢される。2010年より、客室教育訓練室サービス教官として、1000人以上の訓練生の指導にも従事。会社評価は最上級のS評価を受けるなど、CAとしても教官としても数々の実績を残す。現在は株式会社GLITTER STAGEの代表取締役として、企業研修や人材育成など、さまざまなビジネスシーンで、強い牽引力と高いスキルを存分に発揮しながら活躍中。

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