新桃太郎

菊千代

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話其の拾壱/世は情け

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猿と一緒に猿の隠れ家へ向かう桃太郎。

猿を追い掛けて森の中の道無き道を進んで行く。

すると、目の前に崖が現れる。

森を抜けると猿が何処にも居ない。

崖に猿なら入れそうな割れ目があった。

恐らく、あの割れ目が隠れ家なのだろう。

桃太郎は待つ事にした。

幾らもしない内に、猿がその割れ目から出て来る。

猿は卵を二つ抱えていた。

そして桃太郎のところまで来ると、その卵を桃太郎に渡す。

「これが、俺が捕った雉の卵だよ」

「これで全部?」

桃太郎が確認をする。

「ああ、俺が捕ったのはこれだけだ。他にもあるのかは知らない」

「ありがとう。じゃあ、俺はあっちに戻るね」

「ちょっと待った」

猿が桃太郎を引き留めた。

「何!?まだ何かあるの?」

「俺も鬼ヶ島までついて行ってやろうか?」

「ん!?どういう事?」

「だから、雉の卵を返したくらいで、お前に助けられた借りは返した気になれないんだよ」

ばつが悪そうに猿が答えた。

「そっか」

「鬼ヶ島の鬼達と喧嘩をするなら、助太刀してやるよ」

「ありがとう。でも、助太刀はいらない」

「どうしてだ?」

「だって俺は争うつもりはない」

「お前はそうでも、あっちはどうだか分からないぞ」

「それでも、今はそんな事を考えたくもない」

「そっか」

「でも、君にも話し合いを見届けて貰いたいから、一緒に鬼ヶ島へ行こう」

「お前にそう言われたら、仕方がないな」

「じゃあ、行こうか」

今度は桃太郎が前を行き、森の中へ戻って行く。

「一つ訊きたい事があるんだが」

猿が前を行く桃太郎に話し掛ける。

「何?」

「何故、俺を助けてくれたんだ?」

「俺は単に事情が知りたかっただけ」

「お前が事情を知って、どうしようと?」

「だから事情を知れば、こうやって、争わずに解決する事も出来るのかもしれないじゃん」

「そっか」

桃太郎と猿はそこで会話を止め、犬と雉の下へ足を急ぐ。
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