SUN×SUN!

楠こずえ

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第2話:魔法相談所開設(その7)

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「な・・何の音?」

恐る恐る廊下に出てみた。
相変わらず真っ暗で何も見えないが、
「ギシッ、ギシッ」という不気味な音だけが
どんどんこちらに向かって近づいてくる。

手元の懐中電灯かいちゅうでんとうを向けてみようと思ったが、
あまりの恐怖に全く体が動かない。

『幽霊だったらどうしよう!?
幽霊じゃなくても、ドロボウとかだったらどうしよう!
もうダメです!!』
と目をつぶった瞬間だった。

「ひまわり!!」
聞き覚えのある声に目を開く。

すると目の前には
懐中電灯かいちゅうでんとうを持った太陽がいるではないか。

「き・・・桐島君!!」

ひまわりはびっくりしたのと
ホッとしたせいか腰が抜け、
ヨロヨロとその場に座り込んでしまった。

そしてボロボロと泣き出す。

「な、何泣いてんだよ。ほら立て」 

 そう言って差し出された太陽の手をひまわりは 
 ギュッと握りしめた。 

 その手はまだガクガクと震えていて、 
 どれだけひまわりが怖がっていたのか、 
 太陽には痛いほど分かった。 

「ほら、もう泣くな」 

「だ・・だって、すごく怖かったから・・・ 
 でも、戻ってきてくれてよかったです・・」 

 ひまわりにそう言われ、太陽はびっくりした。 

「き・・桐島くんがいないと、私一人じゃ何もできないから 
 ほんとによかったです・・・」 

 こんな言葉を言ってくれる人は、今まで誰もいなかった。 

 一族の中ではいつもこうだ。 

「太陽に任せても無理だって」 

「どうせ太陽は何もできないんだろ?」
 
「太陽の力は借りなくて、私達で大丈夫だから」 

 周囲の人達は誰一人として、自分の力なんて頼ろうともしなかった。 

 でも、ひまわりは自分の力を必要としているなんて・・・。 

 やっと泣き止みそうになったひまわりを見つめながら、 
 太陽はポツリとつぶやいた。 

「ひまわり・・」 

「はい?」 

「おまえ、絶対将来だまされて変なツボとかハンコとか 
 買わされそうだよな」 

「え!な、何を急に!?」 

 突然わけのわからないことを言われ、 
 ひまわりの頭の中は「?」状態である。 

 太陽はそんなことを言ったかと思うと、 
 急にクルッと背を向ける。 

「でも、ま・・・」 

 ゴニョゴニョ小さな声で何か言っているようだが、 
 いまいち聞き取りにくかったので、 
 近づいた瞬間、 
 太陽が再びふり返り、 
「今回はおれが悪かった!ごめん!」 
 とあやまった。 

 あのプライドの高い太陽が突然謝ってきたので、 
 ひまわりはびっくりしすぎて目が丸くなってしまった。
 
 太陽も慣れないことをして
 非常に照れてしまったのか、あわてて話題を変える。 

「ということで、さっさとペンダントを見つけるぞ!!」 

 太陽に気合いを入れられ、ひまわりも、 
 「ハイ!」 
 と大きな声で返事した。 

 まだ照れているせいか、 
 真っ赤な顔をそっぽを向いて隠している太陽の背中を見つめる。 

 心にポッと温かな光が灯ったみたいだ。 
 あんなに不安だった気持ちが、 
 その光のおかげでウソみたいに消えていく。 

 改めて感じた。 
 太陽の力のすごさを。 

 太陽は再び人形を取りだし、 
 ひまわりに見せた。 

「もう1回、魔法をかけて人形の力を借りよう」 

 そう提案されたが、ひまわりは自信がない。 

 太陽がいない間も、 
 ずっと魔法を使おうと念じてみたが、 
 人形は全く動かなかったからだ。 

「でも、さっき動かそうとしたのですが、全く動かなくて・・。 
 だから、その・・ ・
 一度動いたのは、単なる偶然ぐうぜんだったんじゃないかと 
 思い始めてきて・・・」 
 
 またマイナス思考に走り出しそうになっているひまわりに、 
「ドン!」と壁を叩いて、 
 「このバカッ!」 
 と太陽が一喝いっかつ入れた。 

「絶対、おまえは才能あるんだからもっと自信を持て!」 

 太陽に怒られ、ひまわりはハッとする。 

 そうだ。 

 自分は強くなるために自信を持ちたいと思っていたのに、
 今はすっかりそのことを忘れていたなんて・・・。

 激しく反省しているひまわりの顔を太陽がのぞきこんできた。

「ひまわり、 
『自信ない』とか、今度言ってみろ。 
 どうなるか分かってるだろうな?」 

 不気味な微笑みを見せる太陽に、ひまわりは、 
『ひ~っ!?怖い!!』 
 と怖さのあまり再び泣きそうになったが、 
 それでも先ほどの一人ぼっちの時に比べると 
 恐怖もないし、心に余裕も出てきた。 

 そうだ、太陽が言っているとおり、
 もっと自分を信じてみなくては! 

 ひまわりは、
 紙人形を近くにあったテーブルの上に乗せる。 
 スウッと大きく深呼吸して、精神統一せいしんとういつをはかった。 
 
 いまだに、 
 魔法の使い方はよく分からない。 
 どうすれば魔法が発動するのかもよく分からない。 

 でも、一生懸命がんばれば、なんとかなるかもしれない。 

 顔を上げて、自信を持って、 
 そうすればきっと上手くいく! 

「人形よ、もう一度私に力を貸して!」 

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